著者
竹永 章生 伊藤 真吾 露木 英男
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, pp.705-713, 1987-11-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

貯蔵中におけるきな粉の脂質の酸化防止に対する脱酸素剤の効果について検討するため,丸大豆からきな粉を調製し,これを試料として,脱酸素剤とともにガスバリヤー性の高いフィルム(KON/PE)に封入し(脱酸素剤区),25℃, 5℃, -25℃に150日間貯蔵し,きな粉TLの酸化指数および脂質組成の経時的変化について実験を行った.さらに,対照区として,含気包装した場合についても同様の実験を行い,比較・検討した.(1) 含気包装の対照区の場合,きな粉TLの酸化指数の経時的変化は,各貯蔵温度で,AV, POV, COVの増加,逆にIVの減少がみられ,この傾向は,貯蔵温度の高いほど顕著であった.一方,脱酸素剤区の場合では,25℃貯蔵の場合にPOVが経時的増加を示したが,その他の指数には大きな変化は認められず,さらに5℃, -25℃ではほとんど変化は示さなかった.(2) TLの脂質組成の経時的変化についてみると,対照区の25℃, 5℃貯蔵の場合,CL組成比の減少,逆にNL組成比の相対的増加が認められたが,脱酸素剤区の各貯蔵の場合および対照区の-25℃貯蔵の場合では,上記のような変化はほとんど認められなかった.(3) NLおよびCLの脂質組成の貯蔵に伴う変化については,対照区では,NL中のTG組成比の減少,逆にFFA, DG組成比の相対的増加,またCL中のPC, PE組成比の減少,逆に他の複合脂質組成比の相対的増加が認められた.一方,脱酸素剤区でも対照区の場合と同様の傾向が認められたが,その変化は小さいものであった.(4) TL, NLおよびCLの脂肪酸組成の変化についてみると,対照区でポリエン酸組成比の経時的減少,逆に飽和酸組成比の相対的増加の傾向が認められた.一方,脱酸素剤区では,脂肪酸組成には大きな経時的変化は認められなかった.
著者
赤羽 ひろ 和田 淑子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.34, no.7, pp.474-480, 1987-07-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
12
被引用文献数
8 3

クッキーの性状におよぼす小麦粉中のグルテン含量の影響を検討するため,クッキー生地の材料配合を小麦粉45%,バター26%,砂糖21%,卵8%の一定として,小麦粉中のグルテン含量を乾麸量として0~12%に変化させてクッキー生地を調製した.クッキーの性状として,生地の硬さおよびクッキーのみかけの膨化率,吸水率,みかけの破断特性値,焼色の測定および官能検査を行った.(1) クッキーの生地の硬さは小麦粉中の乾麸量が増加するにつれて大となった.(2) ハンターの色度によるクッキーの焼色は小麦粉中の乾麸量が増加するにつれて明度がやや減少した.(3) クッキーのみかけの膨化率は小麦粉中の乾麸量が増加するにつれて小となり,また,クッキー生地の硬さの大なものほど膨化率も小であった.(4) クッキーのみかけの破断特性値のうち,みかけの破断ひずみはほぼ一定の0.27~0.31であったが,みかけの破断応力,みかけの破断エネルギーは小麦粉中の乾麸量の増加にともない大となった.(5) 官能検査の結果,小麦粉中の乾麸量の大なものほどクッキーの焼色が濃く,硬く,もろさに欠け,口どけが悪く,甘くないと評価された.(6) 物性測定値と官能評価値の関係は,みかけの破断応力と硬さ,みかけの破断エネルギーともろさ,みかけの膨化率または吸水率と口どけがよく対応した.(7) 同一材料配合比のクッキーにおいて,やわらかく,もろく,口どけのよいものがより甘いと評価された.
著者
谷村 和八郎 鴨居 郁三 小原 哲二郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.245-251, 1980-05-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

枝豆のTIを調べる目的で大豆を播種後栽培111日より165日まで毎週経時的にTI活性を測定した。(1) 枝豆中のTIは栽培日数116日までは認められず, 123日の豆粒よりTIがみられた。枝豆として利用出来る粒長1.2~1.4cmの成熟豆は130日より収穫できた。 TI量は127日のものが最高で生豆粒1g中に17.92mgであった。この時の比活性は168である。枝豆の粒長により含まれるTI量は異なり,生豆粒1g中のTIは粒長0.8-1.0cmでは6.91mgが最高であった。粒長1.0-1.2cmは14.7mgで成熟豆に近い値である。(2) Sephadex G-75によるTIのゲル濾過では粒長1.2-1.4cmの豆粒では4~6種のTIピークがみられ,主要ピークはNo.3, No.4であった。栽培日数の増加と共にNo.3, No.4のピークが占める割合が大きくなる。粒長の短かいものは6種のTIピークがみられた。その主要ピークはNo.3, No.4であった。(3) Sephadex G-75でゲル濾過したNo.3, No.4のTIピークについてDEAEセルロースによるクロマトグラフィーを行った。粒長1.2~1.4cmでは123日が7種, 159日が5種, 165日が4種と栽培日数が長くなるに従いピーク数が減少する。また粒長が大きくなるに従いTIピーク数が減少した。(4) 枝豆の加熱によるTIの変化は市販枝豆の生豆1g中のTI量は19.7mgであった。100℃, 5分間煮沸の枝豆は1g中に13mgであった。この時のTIをSephadex G-75でゲル濾過を行ったところ,生豆のピークは2種であったが,加熱により9種のピークがみられた。
著者
アグレバンテ ジヨセフイン 松井 年行 北川 博敏
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.441-444, 1991
被引用文献数
7

60%エタノール(10ml/12果実)処理でバナナの追熟が2~3日促進された.しかしながら,1000ppmエチレンでは,もっと急速な果皮の色調,糖,有機酸の変化をもたらした.HPLCでショ糖,グルコース,フラクトースを同定した.追熟でこの三つの糖すべてが増大し,ショ糖は追熟の全段階で一番含量が高かった.ショ糖の増大は,グルコース,フラクトースよりも先行し,グルコースーフラクトースの割合は,追熟期間中すなわち初期(緑色)から貯蔵の9日目又は14日目まで,ほぼ一定であった.リンゴ酸とクエン酸は緑熟果(カラーインデックス1)で同じ含量であったが,リンゴ酸は追熟果で初期段階の2~3.6倍に増大し,含量の多い有機酸となった.<BR>クエン酸は過熟果や老化果でだけ増大した.
著者
アグレバンテ ジョセフィン 松井 年行 北川 博敏
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.527-532, 1991
被引用文献数
7

エタノール及びエチレン処理による追熟バナナの軟化,呼吸,ペクチンメチルエステラーゼ,ポリガラクチュロナーゼ活性の効果と全ペクチン,水溶性ペクチン全量の変化について検討した.果皮色の着色,全可溶性固形物(全糖として)と酸度も同様に測定した.エタノールはバナナの追熟を促進したが,エチレンより効果は少なかった.エチレン及びエタノール処理とコントロール果実の呼吸ピークは貯蔵後4, 8, 11日に各々見られた.果実はCO2ピークのすぐ後で可食熟度となり,この時の処理区の硬度はコントロールと同じようになった.果実が軟化するにつれて,ポリガラクチュロナーゼ活性は増大し,全ペクチンは減少,水溶性ペクチンは増大した.ポリガラクチュロナーゼ活性はクリマクテリック前期で低く,クリマクテリックで増大し,後期で前期の17~18倍に達した.コントロールは追熟が遅く,ポリガラクチュロナーゼ活性は処理果実よりも常に低かった.ペクチンメチルエステラーゼ活性と硬度の減少との関係は少なかった.全可溶性固形物は追熟中20~22%に増大し,その増大はエチレン処理で最も早く,コントロールで最も遅かった.硬度は各区においてわずかに増大した.
著者
李 榮淳 本間 清一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.515-519, 1991-06-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
7
被引用文献数
2

アジア諸国の穀醤16種と魚醤4種を電気透析にかけ,非透析性画分のFe(II)キレート能を測定した.方法は0.1mM硫酸鉄(II)を含むpH4酢酸緩衝液によるゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)にかけ,溶出画分の鉄濃度を測定した.その結果,鉄錯体はメラノイジン画分と非着色画分に検出された.醤油のFe(II)キレート能は,穀醤は0.11~1.95mg/ml,魚醤は0.13~0.50mg/mlであり,穀醤は一般に魚醤よりキレート能が大きい.穀醤のキレート能が醤油の色素濃度(450nmにおける吸光度)と相関しなかったことは鉄錯体が非着色画分にも検出されたことと関連があると推定した.
著者
川井 英雄 鷹野 真二 内木 美絵子 鈴木 桂子 兼次 忠雍
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.493-497, 1994

紅茶浸出液にビタミンCを添加し, pHおよび加熱殺菌の条件を変えて,密封容器中でのビタミンCの残存率を検討した.また,市販缶詰紅茶飲料のビタミンC量,Brix, pHを調査した.<BR>紅茶浸出液にビタミンCを添加(25mgと40mg/100g)後, pHを5.50, 6.00, 6.50に調整, 115℃で13分と19分, 120℃で4分と6分および121℃, 15分加熱した. 加熱殺菌後,総ビタミンC (TVC)は70~80%残存し, pHや加熱条件による差はほとんど認められなかった.紅茶浸出液に上記と同様にビタミンCを添加し, pHを4.60に調整,上記と同様な条件で殺菌した.この場合に115℃で10分以上より120℃,数分のほうがTVC,還元型ビタミンC (AsA)ともに高い残存率を示した.市販缶詰紅茶飲料のTVC量は平均14.9mg/100gであった.ストレートティーのBrixは平均4.9, pHは平均5.56であった.フレバリーティーはストレートティーより, Brixは高く, pHは低かった.
著者
山内 文男
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.233-240, 1994-03-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
46
被引用文献数
1 1
著者
川村 信一郎 深川 正弘
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.30-33, 1968

香川県産の金成と米国北部産のメリットをヘキサンで余り高温にならないようにして油を抽出した脱脂大豆に水を加えて,脱脂大豆無水物100部に対し水分120部として120℃に50分蒸煮すると,還元糖がはじめ0.1~0.2%であったのが,10倍前後の0.8~1.0%にふえた。これはグルコースとフルクトースであり,ガラクトースもできたらしい。非還元糖は脱脂大豆に10~11%含まれていたのが1~3%だけ減少した。定量的ペーパークロマトグラフィーの結果でもサッカロース,ラフィノース,スタキオースがそれぞれ減少した。全糖の量が減少しているので,非還元糖から生じた還元糖の一部は二次的に変化したものと考えられる。そのひとつとしてアミノカルボニル反応が考えられ,実際着色が進むことは周知のとおりである。水溶性窒素は1%に減少した。
著者
岡崎 邦夫 中山 行穂 川井 信子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.29, no.9, pp.547-552, 1982-09-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
3

市販の果実飲料(86試料)および炭酸飲料(21試料)の糖組成をHPLC法を用いて測定し,以下の結果を得た。(1) Nucleosil 5NH2カラムは5種類の糖(果糖,ブドウ糖,ショ糖,麦芽糖,乳糖)の分離が良好であった。(2) 天然果汁においてミカン果汁の糖組成はショ糖が主成分であり,リンゴ果汁は果糖が多く,ブドウ果汁はショ糖がほとんど認められなかった。(3) 果肉飲料の合計糖量は最も多く,他の飲料に比べ甘口であった。(4) 果粒入り果実飲料および果汁入り清涼飲料の果汁含有率の低い飲料では,添加された糖の影響で,原材料の天然果汁の糖組成の特徴がなく,糖組成およびその比率は果汁の種類に関係なくほぼ一致していた。(5) 炭酸飲料の無果汁は,添加糖類として砂糖単独の使用頻度が多く,果汁入りよりも2倍のショ糖含量であった。
著者
津田 孝範 藤井 正人 渡邉 美栄 中莖 秀夫 大島 克己 大澤 俊彦 川岸 舜朗
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.475-480, 1994
被引用文献数
2

本金時抽出物の抗酸化性について食品レベルで抗酸化効果を示すかどうか検討した.<BR>(1) 本金時抽出物は,リノール酸モデル系において強い抗酸化性を示し, α-トコフェロールと同等かそれ以上の抗酸化性を示した.<BR>(2) 本金時抽出物は,クエン酸との間に強い相乗効果を示すが, α-トコフェロールとの間には,顕著な相乗効果を示さなかった.<BR>(3) ラードを用いたAOM試験においても本金時抽出物は強い抗酸化性を示し,クエン酸との間に強い相乗効果が認められた.従って,本金時抽出物を食品加工へ利用するときには,クエン酸を同時添加することが効果的であると考えられた.<BR>(4) 本金時抽出物を,ラードを用いたビスケットに添加したところ効果的にPOVの上昇を抑制し,クェン酸を同時添加すると更に強い抗酸化効果が認められた.<BR>(5) 本金時抽出物とクエン酸を同時添加したコーンサラダ油で揚げた小麦粉あられは, POVの上昇抑制効果が見られたが,その効果は,ビスケットへの添加効果と比較すると弱かった.<BR>(6) 本金時抽出物をβ-カロチンを含むモデルジュースに添加したところ,効果的にβ-カロチンの退色を抑制し,本金時抽出物は,ジュース中のような水系においても強い抗酸化効果を示すことが明らかになった.
著者
福田 靖子 大澤 俊彦 川岸 舜朗 並木 満夫
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.28-32, 1988
被引用文献数
11

ゴマサラダ油と焙煎ゴマ油の保存酸化安定性およびフ ライに使用した場合のフライ食品(クルトン)の保存安定性について,他の食用油と比較検討した.その結果,<BR>(1)ゴマサラダ油,焙煎ゴマ油,サフラワー油,コーンサラダ油,サラダ油(ナタネ油と大豆油の調合油)を10gずつシャーレに入れ60℃で保存した結果,重量法による抗酸化試験では,焙煎ゴマ油>ゴマサラダ油≫サラダ油>コーン油>サフラワー油の順であった.<BR>(2) 上記, 5種類の油を175℃, 2時間加温後に,同じく60℃で保存した場合にも同様に酸化されにくいことが示された.<BR>(3) ゴマサラダ油,焙煎ゴマ油,コーン油で,パン切片を掲げ,クルトンとし, 60℃に保存し,経日的にクルトンから油を抽出しPV(meq/kg)を測定した結果,30日目で,コーン油613.0に対しゴマサラダ油80.0,焙煎ゴマ油6.0であった.<BR>(4) (3)のクルトンから抽出した油の中のトコフェロール,セサモール,セサミノール量を定量した結果,コーン油では1ヵ月後にトコフェロールは,全く消失していたが,ゴマサラダ油では,約66%残存し,焙煎ゴマ油では,ほとんど分解されていなかった.
著者
栗林 義宏
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.14, no.12, pp.549-552, 1967
被引用文献数
1

(1) 麦麹抽出液のフェノール性物質の検出に1次元ペーパークロマトグラフィーを行なった。展開溶剤としてベンゼン:エタノール:2-ブタノール:N-アンモニア(30:30:30:10v/v)系がバニリン酸,フェルラ酸,バニリンの分離にすぐれていることを見出した。<BR>(2) 麦麹のフェノール性物質として従来未知のバニリン酸,フェルラ酸およびバニリンの存在を証明した。<BR>(3) 麦麹のくり香ようのにおいは,これらフェノール性物質が一因子と考えた。
著者
山口 尹通 小松 美博 岸本 昭
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.501-506, 1977-10-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
8

“レトルトパウチ食品”の製造時および貯蔵性におよぼす残存空気の影響について検討した。その結果:(1) 残存空気量が多くなるにつれて,グリシンーグルコース-AsAモデル系の褐変は進み,リノール酸メチルやアスコルビン酸のような被酸化成分の劣化程度が高くなる。(2) 破袋を防止するためには,残存空気量は10~15ml以下にすべきである。(3) 熱伝達様式がほぼ伝導型で,しかも流動体であるような食品については,残存空気量について特に注意を払うベきで,その量は10ml以下にする必要がある。(4) “レトルトパウチ食品”の許容出来る残存空気量は10ml以下であり,これより多く残存するものについては,何らかの除去手段を構ずる必要がある。
著者
沼田 正寛 河口 麻紀 中村 豊郎 荒川 信彦
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.397-405, 1992-05-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

海水塩および海水塩中の微量成分を所定の割合で塩化ナトリウムと混合した調製塩を用いて,タンパク質の抽出性,ミオシンBの加熱ゲル形成能および食肉加工品の品質に及ぼす影響を検討し,以下の結果を得た.(1)タンパク質の抽出性および抽出したタンパク質中に占めるミオシンの割合は,海水塩中の微量成分あるいは調製塩中の硫酸マグネシウム,塩化マグネシウムおよび硫酸カルシウムの増加に伴って上昇した.これらの変化は抽出液のイオン強度の変化と対応する傾向を示したが,硫酸カルシウムを含む調製塩では,ミオシンの抽割合が特に増加した.(2)ミオシンBの加熱ゲル強度も海水塩中の微量成分あるいは調製塩中の硫酸マグネシウム,塩化マグネシウムおよび硫酸カルシウムの増加に伴って上昇した.昇傾向は40℃から80℃まで,すべての加熱領域で認められたが,その範囲内では加熱温度が高いほど顕著であった.しかし,加熱ゲルの微細構造に供試食塩による差は認められなかった.(3)生ハム,ロースハムおよびボロニアソーセージの保水性や色調に供試食塩による差は認められなかった.前2者では加熱ゲル強度も変化しなかった.しかし,後者では前項までの結果が硬さの増加として現れる傾向を示し,それは硫酸カルシウムを含む調製塩で有意に認められた.呈味性は生ハムで変化がみられ,微量成分の割合が最も高い海水塩および塩化マグネシウムを含む調製塩でまろやかさが向上し,硫酸マグネシウム,塩化マグネシウムおよび硫酸カルシウムを含む調製塩では後味がよいと評価された.
著者
高橋 浩司 近藤 泰男 沢野 勉 森 雅央
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.360-361, 1979-08-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Three kinds of coffee beans (Colombia, Santos, and Madagascar) roasted to four roasting stages respectively, were brewed by the cup-test procedure, and pH values were measured immediatly. The pH value of any kind of coffee fell to minimum at light roast, but began to rise at a subsequent roasting stage. The degree of this falling pH increased by order of Madagascar, Santos, and Colombia. Along the lowering temperature from 70°C to 26°C, the pH fell within ranges of 0.04-0.26. Santos indicated relatively susceptible effect of temperature on the otherhand, Colombia indicated moderate effect, and Madagascar, indicated little effect. It was suggested that these results correlated to organoleptic quality of coffee used in this experiment.
著者
渡辺 容子 松岡 博厚
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.627-632, 1994-09-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
22

P.caseicolumを熟成用スターターに用いた大豆チーズの製造工程および熟成中のフィチン酸の変化について調べた.また, P.caseicolumのフィターゼの産生能について確かめ,諸性質についても検討した.(1) 試料大豆に含まれるフィチン酸の82%は, 10倍加水量豆乳に移行した.乳酸発酵により得たカードでは,豆乳に含まれるフィチン酸の約48%,大豆中のフィチン酸の約40%が移行した.(2) カードに含まれるフィチン酸は,熟成1週目において未熟成カードの約50%に減少した.一方遊離リン量は約10倍に上昇した.熟成1週目以降の変化はゆるやかであった.(3) 小麦ふすま培地にP.caseicolumを培養した結果,抽出液および硫酸アンモニウム画分中(30~80%飽和)にフィターゼ活性がみられた.(4) フィターゼ活性に及ぼすpHの影響を調べた結果, pH3.0~3.6とpH4.8付近に最適作用pHを示す活性ピークがみられた.(5) pH3.6の条件下でのフィ夕ーゼ活性の至適温度は45℃付近, pH4.8の条件下においては30~40℃と至適温度の範囲が広かった.(6) 米のフィチン酸ナトリウムを基質とした場合,至適基質濃度はpH3.6の条件下では0.375mM, pH4.8の条件下では2.5mMであった.
著者
川西 悟生
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.123-128, 1963-04-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
8
被引用文献数
3

イチゴ果汁添加保存性乳飲料に対する縮合リン酸塩類の効果について検討し,つぎの結果を得た。(1) 0.2ppm程度の微量の鉄によってイチゴのアントシアニジンは紫変色を起こすものと推定され,この傾向は鉄濃度,pHの高いほど促進される。(2) この紫変色は市販縮合リン酸塩の0.1~0.5%添加で防止でき,この防止力はほぼ対数的である。実用上は0.1%の添加で十分防止できるが0.3%の添加で鉄8.0ppmまで封鎖できる。(3) 市販縮合リン酸塩をペーパークロマトグラフィーでしらべて見たところ,配合組成と異なったパターンを示した。使用条件に近い酸濃度,すなわち0.3%クェン酸溶液,0.5%乳酸溶液とし,80℃ 7分,15分殺菌,および40℃ 6日間保存を行なうと著しい分解が起こり高分子リン酸塩が減少し,低分子物が増加する。さらに実際試料に縮合リン酸塩を添加し40℃保存を行なうと,モデル実験同様にリン酸塩のスポットは移動し,添加した縮合リン酸塩の分解が推定された。(4) この乳飲料の保存中の安定性(沈澱)に対する縮合リン酸塩類の効果は,適切と思われる4種のなかで,標示組成でポリリン酸ナトリウムの多いポリリン酸-1Dを0.1%添加したものが沈澱量少なく良好であり,顕著な効果が認められた。さらにこの試料を冷蔵,室温,40℃の条件におくと,約3ヵ月の保存で沈澱量は冷蔵ではほとんど増加せず,室温では経時的に増加するが商品価値を失なうには至らないが,40℃では約1ヵ月で商品価値を失なう。また沈澱物中の蛋白質は沈澱量に対してほぼ比例して増加していくことがわかった。
著者
石谷 孝佑 梅田 圭司 木村 進
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.23, no.10, pp.480-485, 1976-10-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

リコピンとβ-カロチンを用い,光分解に関与する光の波長について検討した。(1) n-ヘキサン溶液では, 225~350nmの紫外線で著しく色素の分解が促進され, 500nm以上の可視光線ではほとんど分解が見られなかった。リコピンは, β-カロチンに比べ数倍不安定であった。(2) リコピンの微結晶は,紫外線で著しく退色したのと同時に, 500nmまでの可視光線でも比較的分解が促進された。濾紙に吸着した状態のリコピンは,水に懸濁した状態と比較し,非常に不安定であった。