著者
大森 正子 和田 雅子 吉山 崇 内村 和広
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.435-442, 2003-06-15
参考文献数
19
被引用文献数
6

老人保健施設における結核の早期発見方策を検討する目的で, 1都4県358の老人保健施設にアンケート調査を実施し, 169 (47.2%) から回答を得た. 施設は併設病院あり36.1%, 診療所あり12.4%, どちらもなし51.5%で, 平均年齢は入所者83.2歳, 通所者79.6歳, 平均利用期間は入所者7ヵ月, 通所者13ヵ月だった. 施設利用時に胸部X線検査を実施していた施設は入所者42.6%, 通所者23.7%, 利用期間中に結核検診を実施していた施設は入所者45.6%, 通所者15.4%だった. 職員への定期結核検診は94.7%の施設で実施していた. 入所者の食欲低下や全身倦怠といった症状は, 67.5%の施設で毎日点検していると答えたが, 呼吸器症状は18.9%と少なかった. 2週間以上続く呼吸器症状で病院を受診させる際, 入所者では93.5%の施設が文書を持たせ, 63.9%が胸部X線と喀痰検査を依頼すると答えたが, 通所者では医療機関受診を勧めるだけで特に症状を説明する文書を持たせず結果を確認することもしないと答えた. 結核患者発生率は, 施設利用者10万対104.6で, 調査地域の一般住民 (同年齢) の結核発生率よりやや高かったが有意の差は見られなかった. 老人保健施設は医療機関とみなされ結核予防法で健診の対象にはなっていない. 法的措置の基に効果的な患者発見方策を確立する必要がある.
著者
山口 淳一 大場 有功 金田 美恵 内田 紀代美 石川 洋 鈴木 公典 八木 毅典 佐々木 結花 山岸 文雄
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.82, no.8, pp.629-634, 2007-08-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
8

〔目的〕定期外健康診断にクォンティフェロン ® TB-2G検査(以下QFT検査)を応用する際の留意点を明らかにすることを目的とする。〔対象と方法〕30代男性の肺結核患者(bII2,ガフキー9号,咳症状1.5カ月)を端緒として実施した会社の定期外健康診断の経過と結果を分析する。〔結果〕40歳未満の43名に対して,2カ月後の定期外健康診断において,ツベルクリン反応検査,QFT検査・胸部エックス線検査を行い,6カ月後の定期外健康診断において,胸部エックス線検査を実施した。また,9カ月後に2回目のQFT検査および胸部CT検査を実施した。2カ月後のツベルクリン反応検査は二峰性の分布を示し,QFT検査では10名が陽性,2名が疑陽性であった。QFT検査陽性・疑陽性の12名を化学予防としていたところ,6カ月後の胸部エックス線検査で,QFT陰性者から2名の肺結核患者が確認され,さらに9カ月後の胸部CT検査により5名の発病者が確認された。2回目のQFT検査では,発病者7名のうち3名が陽性または疑陽性であった。〔考察と結論〕QFT検査の結核患者における感度は80~90%とされており,偽陰性の可能性は無視できない。今回の経験を踏まえ,集団定期外健康診断において,QFT陽性・疑陽性者の割合が高かったり,ツベルクリン反応が明らかな二峰性の分布を示すなど,感染者が多数含まれている可能性が濃厚な集団では,以下に留意することが必要と考えられる。(1) 化学予防の対象者は,QFT検査結果のみでなく,ツベルクリン反応検査,接触状況などを総合的に判断して決定すべきである。(2)QFT検査陰性だった者についても,胸部X線検査の経過観察を行うべきである。
著者
佐渡 紀克 中村 保清 北 英夫
出版者
一般社団法人 日本結核・非結核性抗酸菌症学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, pp.821-824, 2014 (Released:2016-09-16)
参考文献数
11

〔目的〕肺非結核性抗酸菌(NTM)症による胸水貯留例の報告は少なく,またその頻度に対しての報告も少ない。そこで当院で経験した症例を報告する。〔対象〕2009年1月から2014年1月までに当院を受診した肺NTM症患者116人について検討した。〔結果〕NTMによる胸膜炎と診断した症例は7例,6.0%であった。7例中6例がMAC症で1例はM.abscessusであった。既往歴としては,潰瘍性大腸炎,ステロイド内服加療を受けている関節リウマチ,網膜色素変性症の患者がそれぞれ1例ずつみられた。胸水検査は7例で施行された。胸水の抗酸菌塗抹陽性例は認めなかったが,4例で抗酸菌培養陽性であり,その全例がMACであった。また7例中4例で胸水はリンパ球優位であった。胸水中ADA値の平均は86U/mlで,7例中5例でADAが50U/ml以上であった。5例においては気胸の合併を認めていた。胸水貯留を認めた7例中5例でNTMに対する抗菌薬による治療が行われ,その全例で胸水の減少,あるいは消失が認められた。〔結論〕NTM胸膜炎の実態を明らかにするため,さらなる症例の蓄積が必要である。
著者
瀬戸 順次 阿彦 忠之
出版者
一般社団法人 日本結核・非結核性抗酸菌症学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.503-508, 2014 (Released:2016-09-16)
参考文献数
9

〔目的〕接触者健診における高齢者に対するQFT-3G検査の有用性を検討すること。〔方法〕2010年9月~2013年5月,山形県での結核患者の濃厚接触者等2,420人に対して実施したQFT-3G検査成績を分析し,QFT-3G陽性者のLTBI届出の有無および結核発病状況を調査した。〔結果〕QFT-3G陽性率は7.3%(95% CI 6.2-8.3%)であり,年齢階級の上昇とともに陽性率が高くなる傾向が確認された(P<0.001)。〔考察〕QFT-3G陽性率は高齢者(60歳以上)で高い傾向を認めたものの,結核推定既感染率に対して大きく下回っており,過去の古い結核感染歴があっても必ずしもQFT-3G陽性にはならないと考えられた。さらに,QFT-3G陽性者の分析から,60歳代の2分の1,70歳代の3分の1,80歳以上の4分の1程度は最近の結核感染と推定された。結論として,高齢者のQFT-3G検査結果の解釈は結核患者との接触状況等を踏まえ慎重に行う必要があるものの,結核患者との濃厚接触歴のある高齢者に対してQFT-3G検査を実施することは,潜在性結核感染症のスクリーニングとしては意義があると考えられた。
著者
川辺 芳子 田中 茂 永井 英明 鈴木 純子 田村 厚久 長山 直弘 赤川 志のぶ 町田 和子 倉島 篤行 四元 秀毅
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR TB AND NTM
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.443-448, 2004-07-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
12
被引用文献数
1

[目的] 防じんマスクの密着性の評価に使用されているマスクフィッティングテスターを用いてN95微粒子用マスク (N95マスク) の顔面への密着性の定量的評価を行うことの妥当性を検討することと, N95マスクの装着状況およびマスクの選択と使用方法の指導の重要性を明らかにすることを目的とする。 [対象] 当院に勤務する職員133名で, 男性29名, 女性104名, 常時N95マスクを使用している者は46名, 毎日は使用していない者87名であった。 [方法] 労研式マスクフィッティングテスターMT-02型TMを用いてマスクの漏れ率を測定し, 10%以下を許容範囲とした。基準に達しない場合は装着方法を指導し, それでも達しない場合はマスクの種類を変更した。 [結果] 1回目で漏れ率が10%以下であったのは87名 (65%) であった。10%を超えた46名のうち40名は指導やマスクの変更により10%以下になったが, 最終的に6名は達しなかった。マスクの選択, 鼻の部分の密着性, ゴムひもの使用方法が問題であった。 [結論] マスクフィッティングテスターはN95マスクの顔面への密着性の定量的評価に有用であり, 顔に合ったマスクの選択と日常的な指導点検, 3種類以上のマスクを準備しておくことが重要であることが明らかになった。
著者
伊東 恒夫
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR TB AND NTM
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.176-181, 1963 (Released:2011-05-24)
参考文献数
8

Although the knowledge of the degree of drug resistance of tut ercle bacilli is an important factor in the choice of the therapeutic regimen, an accurate determination of complete or incomplete drug resistance is actually a matter of great difficulty. Here, the present author proposes a new method of determining complete or incomplete drug resistance by using a random sampling method in colony counting.
著者
谷口 夏子 福岡 篤彦 天野 逸人 岡村 英生 竹中 英昭 森井 武志 岡本 行功 吉川 雅則 古西 満 塚口 勝彦 濱田 薫 米田 尚弘 成田 亘啓
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR TB AND NTM
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.367-371, 2002-04-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
7

われわれは膿胸関連リンパ腫の症例を経験したので報告する。患者は67歳男性で左側胸部腫脹と疼痛で受診した。既往としては6歳時に肺結核, 24歳時に結核性胸膜炎に罹患していた。生検標本の組織学的検査の結果, 悪性リンパ腫びまん性大細胞B細胞型と診断した。THP-COP (THP, CY, VCR, PSL) による化学療法を施行し徐々に胸痛と腫脹は改善し, 現在維持療法継続中である。また, 分子生物学的見地から膿胸壁のEBウイルス感染を証明した。悪性リンパ腫を併発した結核性慢性膿胸症例の全例にEBウイルスの感染が証明されたとの報告があり, EBウイルス陽性の結核性膿胸の患者ではより注意深く検査を進める必要がある。
著者
吉田 亜由美 松本 博之 飯田 康人 高橋 啓 藤田 結花 辻 忠克 藤兼 俊明 清水 哲雄 小笠原 英紀 斉藤 義徳
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR TB AND NTM
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.415-421, 1996-06-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
10

The patient was 69-year-old male. He had a history of treatment for tuberculosis by artificial pneumothorax about 47 years ago. He was admitted an another hospital under the diagnosis of tuberculous pyothorax. He was transferred to our hospital because of chest pain and fever. Laboratory findings on the admission were as follows: ESR was 120 mm/hr, CRP was 20.22mg/dl and other data were almost within normal limits. Chest X-ray showed a massive shadow in the right lower lung field, adjacent to the chest wall. Computed tomography (CT) showed tumor shadow with low density and invasions into the adjacent chest wall. Histological examination of surgically excised tumor biopsy revealed malignant lymphoma. The patient's condition improved and the size of tumor decreased temporarily by chemotherapy. Then, he began to complain of chest pain and high fever, and tumor in the chest wall invaded into the whole chest wall. He died of disseminated. intravascular coagulation despite continuing chemotherapy. Postmortem examination re vealed the following findings: the tumor existed mainly in the parietal pleura or the chest wall, adjacent to the lesion of pyothorax, and immunohistochemical examination showed that tumor was malignant lymphoma, diffuse, large B-cell type. Recent studies have shown a close association between EBV infection and pyothorax-associated lymphoma. We have to keep in mind the possible development of malignant lymphoma following tuberculous pyothorax, when we see patients complaining of fever or chest pain with tuberculous pyothorax.
著者
高原 誠
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR TB AND NTM
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.711-716, 2004-12-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
16

[目的] 肺結核治療中に死亡退院した患者の死亡原因を検討した。 [対象と方法] 対象は平成11年~14年の4年間に当院に入院した結核患者のうち, 死亡退院の40例 (男性32例, 女性8例, 平均年齢76歳), 方法は患者背景, 合併症, 結核の重症度, 治療成績をコホート調査にて山下の定義で治療成功の162例と比較検討した。 [結果] 結核死17例, 非結核死23例で, 後者の内訳では肺炎が最も多く9例を占めた。死亡例は年齢とパフォーマンス・ステータス (PS) の値が有意に高く, 栄養状態は悪く, 炎症反応は亢進していた。治療開始までの期間も長かったが, 有意ではなかった。合併症は死亡例全例が有し, 肝疾患, 脳血管障害で対照群と差を認めた。病変の拡がりも死亡例には進行例が多かった。治療成績では副作用で薬剤変更する割合が死亡例で有意に高く, 標準治療可能例が少なかった。 [考察と結語] 患者発見の遅れより標準治療が不能だった点が死亡に影響した。そのため排菌陰性化が得られにくく, 結核によって直接的または間接的に死亡した。非結核死の肺炎死の中には, 結核死に含めてもよいと考えられる症例も存在した。
著者
豊田 誠
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR TB AND NTM
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.78, no.12, pp.733-738, 2003-12-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
15

[目的] 建築物の環境が結核集団感染におよぼす影響を検討する。 [対象と方法] 中学校で発生した集団感染の接触者718人を対象に, 初発患者との接触状況別に感染率を比較した。6フッ化硫黄をトレーサーガスとして用い, 教室の換気状況を測定した。 [結果] 接触者から34人の結核患者が発見され, 155人に予防内服が指示された。同クラス生徒での感染率は90.0%であり, 初発患者と直接接触のないグループからも11人の発病があった。校舎の窓はアルミサッシで閉めきられており, 教室の換気回数は1.6~1.8回/hrと少なかった。教室の引き戸を開けた状態では, 教室と廊下のガス濃度は急速に撹拝された。 [考察] 初発患者がHighly Infectious Caseであったことに, 過密して換気の少ない教室の環境が重なり, 同クラス生徒の高い感染率につながった。間接的な接触者にも感染が拡大した要因としては, 初発患者が時間割によって3年校舎の1, 2階の共用教室を使っていたことや, 感染性飛沫核が休み時間中に廊下に拡散し, 初発患者の教室が3年校舎の入り口に位置したため, 3年校舎に出入りする者の動線と交わったことが考えられ。
著者
伊藤 邦彦 吉山 崇 中園 智昭 尾形 英雄 和田 雅子 水谷 清二
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR TB AND NTM
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.75, no.12, pp.691-697, 2000-12-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
19
被引用文献数
1

Study objectives: To assess the usefulness of commercial kits of nucleic acid amplifica tion test (NAAT) for diagnosis of smear negative (SN) pulmonary tuberculosis.Design and patients: Retrospective study of patients who were diagnosed as, or sus pected of pulmonary tuberculosis during 3 years from January 1996 to December 1998 in Fukuiuii Hospital which has 100 beds for tuberculosis patients.Measurements and Results: 145 smear-negative culture-positive pulmonary tuberculosis patients are entered to our analysis. The DNA-based amplification test kit (Amplicor Mycobacterium tuberculosis Test (AMPL), Roche Diagnostic Systems, Basel, Switzerland) detected 39.2% (20/51, 95% confidence interval (CI): 25.8-52.6%) of smear-nega tive culture-positive (SNCP) pulmonary tuberculosis cases. The RNA-based amplification test kit (Gen-Probe Amplified Mycobacterium tuberculosis Direct Test (AMTDT), Gen-Probe Inc., San Diego, Calif., USA) detected 40.5% (15/37, 95% CI: 24.7-56.3%) of SNCP pulmonay tuberculosis cases. For both NAATs (AMPL and AMTDT), between two groups with and without the NAAT at diagnosis of SNCP pulmonary tuberculosis, there was statistical difference in culture-positive rate (proportion of positivity in sputum culture tests at diagnosis), but no statistical difference in maximum number of colony of Mycobacterium tuberculosis (MTB). When stratified for the culture-positive rate, adjusted sensitivity for SNCP patients was 44.2% (AMPL) and 40.4% (AMTDT) respec tively. On the other hand, among 245 patients with sputum AMPL positive results during the 3 years, 8 were smear-negative culture-negative (SNCN), only one out of these 8 cases was judged as true active tuberculosis without treatment. Among 89 patients with sputum AMTDT positive results, 7 were SNCN, and 3 out of them were judged as true active tuberculosis without treatment.Conclusion: Usefulness of commercial NAAT kits (AMPL and AMTDT) to diagnosis SN pulmonary tuberculosis is limited in the point of sensitivity.
著者
伊藤 邦彦 豊田 恵美子
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.81, no.12, pp.721-730, 2006-12-15
参考文献数
27
被引用文献数
4

欧米における結核患者の入退院基準を明らかにし,本邦の基準と比較考察を行った。アメリカ(USA)/ニューヨーク/カナダ/EU/イギリス(UK)/ドイツ/フランス/スペイン/イタリアの9地域を対象に,インターネット/PubMed等で入退院基準を述べた公的文書を抽出し,化学療法後の感染性推移に関する見解/入退院基準/隔離解除基準を調査した。欧米においては,化学療法開始後に感染性が消失する時期については不明であるとする見解を採る場合が多い。短期隔離やadherence確保のための入院適応も存在している場合が多く,隔離解除基準や退院基準では,患者の感染性そのものよりは,患者のもつ可能性のある接触の総合的リスク(接触者の結核の発病しやすさや,多剤耐性結核/播種性結核/結核性髄膜炎等の重篤な結核発症のリスク)を勘案して決定されているものと考えられた。欧米では外来治療に固執するのではなく柔軟な対応が可能である。米国においても初期入院治療の頻度は高く,場合によって長期の入院治療も行われている。本邦の基準は感染性に過度に偏重しているものと思われた。
著者
山田 勝雄 川澄 佑太 杉山 燈人 安田 あゆ子 関 幸雄 足立 崇 垂水 修 林 悠太 中村 俊信 中川 拓 山田 憲隆 小川 賢二
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.407-413, 2015 (Released:2016-09-16)
参考文献数
19

〔目的〕今回6例の肺M.abscessus症に対する手術を経験した。肺M.abscessus症に対する外科治療の報告は多くない。同時期に手術を施行したMAC症例との比較検討も含めて報告する。〔対象と方法〕2012年7月から2014年6月までの2年間に6例の肺M.abscessus症に対する手術を経験した。6例全例を完全鏡視下手術で行った。手術を施行した6例の肺M.abscessus症例に対し,年齢,性別,発見動機,菌採取方法,病型,術前抗GPL-core IgA抗体価,術前化学療法,術前治療期間,手術適応,手術術式,手術時摘出組織の菌培養結果,術後入院期間,手術合併症,術後再燃再発の有無に関し検討した。これらの項目の一部に関しては,同時期に手術を施行した36例のMAC症例との比較検討を行った。〔結果〕手術に関連した大きな合併症は認めず,術死や在院死もなかった。6例のうち3例が術後1年以上を経過し化学療法を終了したが,現時点で6例とも再燃再発は認めていない。MAC症例との比較では,肺M.abscessus症例の術前治療期間の平均が5.5カ月とMAC症例より18.9カ月短く,統計学的にも有意差を認めた。〔結論と考察〕肺M.abscessus症に対する手術は安全で有効な治療手段と考える。また内科医が肺M.abscessus症に対してMAC症よりも早期に外科治療が必要と考えていることが示唆された。
著者
大森 正子 和田 雅子 西井 研治 中園 智昭 増山 英則 吉山 崇 稲葉 恵子 伊藤 邦彦 内村 和広 三枝 美穂子 御手洗 聡 木村 もりよ 下内 昭
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.77, no.10, pp.647-658, 2002-10-15
参考文献数
15
被引用文献数
4

検診成績を利用し中高年齢者の結核発病予防の方法論と実行可能性を検討した。対象は50~79歳男女, 胸部X線で1年以上変化のない陳旧性結核に合致する陰影があった者 (440名) のうち, 住所の提供, 研究への同意, 事前の諸検査で問題のなかった29名となった。治験対象者を無作為に6カ月のINH服薬群 (14名), 経過観察のみの非服薬群 (15名) に分けた。服薬中副反応を訴えた者は6名 (42.9%), うち治療開始後2週以内に胃腸症状を訴えた2名 (14.3%) は肝酵素値に異常はみられなかったが服薬を中止した。副反応を訴えなかった者でも2名に肝酵素の上昇が認められた。その異常は服薬開始2カ月後から出現し, 長く継続した者でも服薬終了後には正常値に戻った。これまで追跡不能は3名, 1名は服薬終了時X線上活動性結核と診断, 1名は8カ月目に乳癌が再発, 1名は2.5年目に肺腺癌と診断。この他4例で陰影拡大が疑われたが結核発病は確認されていない。副反応, 偶然の事故等がかなり高率であり, 本事業を集団的に推進するには, 副作用の頻度とそれを上回る有効性を確認するより大規模な調査が必要である。それまでは個別の臨床ベースでの実施で対応し, 高齢者対策としては早期発見・治療に重点を置くべきだろう。
著者
山中 克己 明石 都美 宮尾 克 石原 伸哉
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.99-105, 1999-02-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
20
被引用文献数
1

An Investigation by questionnaire was conducted in 1996 to know the tuberculosis (TB) status and living conditions of 50 homeless people registered as TB patients at one of Nagoya city's 16 health centers.1. All patients had one or more symptoms of TB, 64% of them showed positive TB bacilli on smear, and 35.3% of them had a previous history of TB treatment. However, only 15.2% suspected they had TB at the onset of symptoms.2. Main reasons of seeking medical treatment: 28.6% arrived by ambulance after falling down from exhaustion, 25.7% had consulted with welfare agencies after the onset of symptoms, and 20.0% had been diagnosed during the treatment of other diseases.3. When they were admitted to the hospital they had many concerns 29.0% loss of income, 19.4% living expenses, 19.4% smoking prohibition, 12.9% admission fee, and 9.7% privacy.4. They lived in the following: 42.9% construction camps, 20.0% parks or streets, 17.1% single room occupancy hotels, 17.1% daily or monthly paid apartments, and 11.4% sauna baths.5. Past medical histories of the subjects included 40.6% injuries by labor accidents, and 25.0% stomach ulcers. Current diseases were 15.6% mental diseases, 15.6% liver diseases, 15.6% diabetes mellitus, and 9.4% alcoholic dependance. Seventy percent of them consumed alcohol daily (average pure ethanol 125m1 per day).6. From the results outlined above, the following proposals relating to TB control of the homeless should be considered.1) Educating the homeless as to the need for a health check when TB symptoms are present.2) Opening a clinic for the homeless for easy access to consultation on TB.3) Directly observed therapy, short-course, for TB in the homeless.4) Health examination of the employees of single-room occupancy hotels and sauna baths which are used frequently by the homeless.5) A fundamental countermeasure to deal with alcoholic dependancy among the homeless.
著者
倉澤 卓也 佐藤 敦夫 中谷 光一 池田 雄史 吉松 昭和 池田 宣昭 井上 哲郎 金井 廣一
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.389-394, 2000-05-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
18

We report an outbreak of pulmonary tuberculosis (TB) in a dormitory of construction labors, and this outbreak is suspected to have been caused by exogenous reinfection, based on the restriction fragment length polymorphism (RFLP) analysis and other findings.After a patient entered our hospital with active TB, 12 new other patients were discovered by contacts examination. These patients lived together in the same dormitory. They were all male and single, and were aged from 43 to 63 years old. Except one patient (No.3) previously treated for TB for three months about 2 years ago and was suspected to be the index case of this outbreak, 12 other patients did not have a medical history of TB.The bacilli cultured from 11 patients (No.1-11) were tested by RFLP analysis, three patterns were identified, and the fingerprints from 9 patients (No.1-9) were identical, and the patterns of incomplete resistance of some antituberculous drugs were quite similar between No.1-9 and No.12 and between No.10 and No.13, respectively.The locations of the main lesions of TB on chest X-ray pictures were the apico-posterior segments of bilateral upper lobes. No signs suspected to indicate primary tuberculosis were detected.Considering the rate of tuberculous infection in Japan among the middle age and above as well as the identical RFLP results, most of patients in this outbreak except the index case No.3 were suspected to have TB due to the exogenous reinfection.
著者
溝口 大輔 松島 敏春 副島 林造
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.351-355, 1979

An autopsy case of acute tuberculous pneumonia and miliary tuberculosis in a 79-year-old man, was reported.<BR>He was admitted to the hospital because of high fever and dyspnea. Chest X-ray films showed diffuse confluent air-space opacities throughout both lung fields with small nodular and ground-glass lesions.<BR>Transbronchial lung biopsy of the right lower lobe was performed eight days after admission. The biopsy specimen was caseous granuloma with infiltrations of epithelioid cells and giant cells. Therefore, intensive anti-tuberculous chemotherapy with INH, RFP and SM, and tapering of predonisolone was started. Rapid tapering of corticosteroid gave rise to flare up of acute tuber culous pneumonia, and resulted in respiratory failure. The findings at autopsy were widely disseminated miliary tuberculosis, acute tuberculous pneumonia, interstitial pneumonitis, and multiple gastric ulcers.<BR>The use of corticosteroid in tuberculosis was discussed.
著者
鹿住 祐子 板垣 信則 大森 正子 和田 雅子 星野 斉之 御手洗 聡 菅原 勇 石川 信克 森 亨
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.891-896, 2007-12-15
参考文献数
16
被引用文献数
3

〔目的〕平成12年度(2000年)結核緊急実態調査時の慢性排菌患者におけるMDR-TBとXDRTBの頻度を調べる。〔対象および方法〕平成12年度結核緊急実態調査時の慢性排菌者1234例における結核菌434株を用いて薬剤感受性試験(小川培地使用の比率法,MGIT法,プロスミックNTM)を行い,MDR-TBとXDR-TBを決定した。被検株の条件は,1999年末現在保健所に登録されている結核患者のうち1999年の1年間に菌陽性であり,1998年1月1日以前に登録された患者とした。少なくとも登録されてから2年以上経過し,培養陽性だった患者である。〔結果・考察〕薬剤感受性試験が実施された434株のうちINHとRFPに耐性でMDR-TBと判定された株は321株(74.0%),そのうちの180株(56.1%)がLVFX耐性,かつ,KMあるいはAMKのどちらか(または両方)に耐性のXDR-TBであった。MDR-TB321名のうち,初回登録患者が165名,再登録患者は143名,不明が13名であった。XDR-TB180名の内訳は初回登録患者が95名,再登録患者は78名,不明は7名であった。初回登録患者では1990年代がMDR-TB94名(57.0%)とXDR-TB49名(51.6%)ともに半数以上をしめ,再登録患者では1960年代と70年代がMDR-TB62名(43.4%)とXDR-TB41名(52.6%)であった。日本で使用の少ないAMKの耐性頻度が高率だったのはAMKの使用によるものかSM・KMの交差耐性か解明できなかったが交差耐性を否定できない。
著者
斎藤 肇 佐藤 勝昌 冨岡 治明 井上 圭太郎 重藤 えり子
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.89-95, 1992-02-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
18

Fourty-five sputum specimens collected at the National Sanatorium Hiroshima Hospital were subjected to cultivation using either BACTEC 460 TB System (BACTEC method; Becton Dickinson Co., Towson, Md., U.S.A.) or 3% Ogawa egg medium. Test suptum was treated with four volumes of 4% NaOH for approximately two minutes, after which 0.1ml of the treated sputum was immediately inoculated onto 3% Ogawa egg medium. After neutralizing the remaining pretreated sputum with 1N HCl, and diluting with 1/15 M phosphate buffer PB; pH 6.8), it was then centrifuged at 3, 000rpm for 20min and the sediment was suspended in 1.5 ml of PB. Volumes of 0.5 ml each were inoculated into BACTEC 12B medium (4ml), containing PANTA for prevention of contamination and POES for promoting the growth of mycobacteria.In the BBCTEC method, bacterial growth was measured in terms of increases in the Growth Index (GI) values which were determined by the amount of 14CO2 released from the 14C -labelled palmitate during cultivation at 37°C (positive growth;GI≤50). Moreover, ρInitro-α-acetylamino-β-hydroxy-propiophenone (NAP)-sensitivity testing was done by transferring a part of the BACTEC 12B culture showing positive growth to a NAP vial, and thereafter subjected to further cultivation.Among the 45 sputum specimens, the number of positive specimens for mycobacterial growth in the afore mentioned cultivation methods and time required for growth were as follows: 3% Ogawa egg medium, 12 specimens (27%), seven M. tuberculosis complex strains at 12-35 days (average 21 days), five M. avium complex strains at 14-21 days (average 18 days): BACTEC method, 18 specimens (40%), 11 M. tuberculosis complex strains at 3-28 days (average 14 days), six M. avium complex strains at 3-10 days (average 6 days) and one M. scrofulaceum strain at 28 days. There were no specimens that tested positive for mycobacterial growth on 3% Ogawa egg medium but negative in BACTEC 12B medium. The BACTEC method was most efficacious in cultivating acid-fast bacilli from smear-negativeWhen NAP-sensitivity testing was done using the BACTEC method, mycobacteria in 11 test sputa were deteremined as NAP-sensitive, thereby belonging to M. tuberculosis complex. The fact that all of the organisms determined as NAP-sensitive using the BACTEC method were rough and nonphotochromogenic, and identified as M. tuberculosis complex by AccuProbeTM testing, confirmed the reliability of NAP-testing. sputa.The mycobacteria in seven sputum specimens detected using the BACTEC method were determined as NAP-resistant. Six of them were smooth and nonphotochromogenic, and identified as M. avium complex by AccuProbe testing. The one remaining strain was a scotochromogen with a smooth colony morphology, and had no reaction to either the M. tuberculosis complex- or M. avium complex-AccuProbe tests. This strain was identified as M. scrofulaceum using an α-antigen analysis.These results indicate the usefulness of the BACTEC 460 TB system in the rapid diagnosis of mycobacteria including M. tuberculosis complex and M. avium complex.
著者
大角 晃弘 吉松 昌司 内村 和広 加藤 誠也
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.90, no.10, pp.657-663, 2015

<p>〔目的〕わが国における2011年の潜在性結核感染症(latent tuberculosis infection: LTBI)登録者数は10,046人で,前年4,930人の約2倍になり,2012年には減少して8,771人であった。LTBI登録者数増加および減少の要因について推定することを目的とした。〔対象・方法〕2012年と2013年に,計2回の全国495カ所自治体保健所を対象とする,半構造式調査票を用いた横断的・記述的調査を実施し,2009年以降の接触者健診対象者数・interferon-gamma release assay(IGRA)検査実施状況・IGRA検査で偽陽性と考えられる事例等について情報収集した。〔結果〕IGRA検査実施者数・割合は,2009年から2012年まで増加傾向を認めたが,IGRA検査陽性者数・割合と同判定保留者数は,2011年に増加傾向を認め,2012年には減少していた。IGRA検査結果の信頼性に問題がある事例の発生を回答したのは,2012年調査で34保健所(8%)であった。〔考察〕2011年における接触者健診に関わるIGRA検査実施者数・同検査陽性者数は,より高齢者における増加傾向が大きく,LTBI検査対象者の年齢制限撤廃が影響したと考えられた。2011年のIGRA検査陽性者割合・判定保留者割合増加の理由として,医療従事者や高齢者等のより結核既感染率が高いと推定される集団に対して同検査を実施するようになったことや,IGRA検査法の変更により感度が上昇したこと等の可能性が考えられた。2012年におけるLTBI登録者数減少要因として,集団感染事例の減少等が推定された。〔結論〕2011年におけるLTBI登録者数増加要因として,IGRA検査実施者数増加・QFT検査法変更による陽性結果者や判定保留結果者増加等が推定された。2012年におけるLTBI登録者数減少要因として,集団感染事例の減少・感染性結核患者数の減少等が推定された。</p>