著者
岩澤 絵里子 宮川 浩 菊池 健太郎 新見 晶子 原 まさ子 鎌谷 直之
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.210-218, 2007 (Released:2007-05-29)
参考文献数
30
被引用文献数
5 5

原発性胆汁性肝硬変(PBC)は,自己免疫異常に基づく肝疾患で,各種膠原病を少なからず合併する.しかしながら,各種膠原病におけるPBCの合併については不明な点も少なくない.そこで今回,各種膠原病を対象として,PBCの血清診断に必須の抗ミトコンドリア抗体(AMA)を検索し,その臨床的意義を検討した.各種膠原病と診断された302例を対象として,間接蛍光抗体法とELISA法にてAMAをスクリーニングし,さらにWestern blot法にてAMAの解析を行った.AMAは302例中14例(4.6%)と比較的高率に検出され,疾患別には,強皮症で4例,全身性エリテマトーデスで3例,慢性関節リウマチと血管炎で各2例に検出された.PDC-E2抗体(74kDa)は6例に検出されたに過ぎなかったが,BCOADC-E2抗体(50kDa)は10例と多数に検出された.この14例のうち6例に,抗セントロメア抗体が検出された.さらに,14例中9例は経過中PBCの合併は疑われておらず,今回の検討で初めてAMA陽性と判明した症例であった.膠原病の診療においてもPBCの合併を念頭に入れていく必要があると結論された.
著者
中村 正治 平良 勝也 大野 惇 平良 雅克 佐久川 廣 高橋 和明 三代 俊治
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.161-162, 2006 (Released:2006-11-24)
参考文献数
6
被引用文献数
9 9

We investigated for HEV-RNA in serum samples obtained from 15 wild boars in the Iriomote Island of Okinawa Prefecture, and 2 of 15 (13.3%) were positive for HEV-RNA. Sequence analysis of a part of ORF1 region (326 nt) indicated that the 2 isolates from the Iriomote's boars (wbOK126 and wbOK128) were fairly remote from known strains: none of known sequences showed a nucleotide similarity greater than 90%. In phylogenetic tree analyses, however, the wbOK126 and wbOK128 isolates segregated to genotype 4, and formed a cluster with Chinese strains, rather than with Japanese ones interestingly. Regarding the geographical situation of the Iriomote Island (i.e., nearer to China than to Japan's main lands), our present results provide a clue to the origin of Japan-indigenous HEV strains.
著者
山崎 潔 鈴木 一幸 佐藤 公彦 大内 健 吉成 仁 磯崎 一太 中舘 一郎 班目 健夫 吉田 俊巳 柏原 紀文 佐藤 俊一 村上 晶彦
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.724-729, 1991-07-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20
被引用文献数
9 6

漢方薬が原因と推定された劇症肝炎の1例を経験した.症例は62歳男性.痔核治療のため漢方薬(金鵄丸)の服用を開始したところ,6週間後に倦怠感と尿濃染が出現した.服用中止により一旦症状の消失をみたが,服薬再開後5週間で上記症状が再出現,黄疸の出現をみ入院となった.凝固能低下が著明で(PT 28%, HPT 19%),種々の治療にもかかわらず,4週間後多臓器不全の状態で死亡した.剖検肝は495gと萎縮著明で,肝組織像は広範性肝壊死を示した.金鵄丸による薬剤性肝炎は本例を含め9例が報告されている.その特徴は,金鵄丸が原因との認識が遅れたため反復服用により肝炎の繰り返しをみる例が多いこと,発疹,好酸球増多がみられないことであった.本例は,漢方薬により劇症肝炎を来した初めての報告である.漢方薬の使用が増加しているおり,漢方薬によっても本例のごとき重症肝障害が惹起されうることに注意すべきである.
著者
安永 満 松田 彰史 村田 誠 荻野 昌昭 門 祐二 新開 泰司 名和田 浩 半田 哲郎 野田 健一 福本 陽平 沖田 極 竹本 忠良
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.493-499, 1985-04-25 (Released:2010-01-19)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

アセトアミノフェンの大量服用により,急性肝障害の発症をみることは,よく知られた事実である.最近,教室では,少量のアセトアミノフェンの服用にもかかわらず,重症肝障害を生じた2例を経験したので報告した.患者は38歳の男性と31歳の女性である.アセトアミノフェン服用量は,それぞれ,3.7gと6.4gで,いずれも嘔吐,腹痛,全身倦怠感を訴えて入院した.本剤服用時,前者はアルコールを摂取し,後者は絶食状態であった.検査上,前者は著明な血清トランスアミナーゼの上昇,軽度の黄疸を認め,心内膜炎,腎障害,急性膵炎を併発し,肝組織では小葉内に巣状壊死が散在し,中心静脈周囲にも壊死が認められた.後者でも重篤な肝障害と血小板減少がみられ,肝組織像はbridging necrosisを示していた.アルコール摂取と絶食のために,少量のアセトアミノフェン服用にもかかわらず,予想以上に肝障害が重症化したと考えられ,本剤の使用にあたり,注意が必要である.
著者
北村 宏 松村 任泰 中川 幹 松下 明正 荒井 正幸 小池 祥一郎 大谷 真紀 中澤 功
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-7, 2021-01-01 (Released:2021-01-14)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

症例は66歳男性.大腸癌に対する5-FUをベースとした全身化学療法中(FOLFILI+パニツムマブ)に食欲不振,倦怠感と急激な腹水の貯留を認めた.血液生化学所見では肝逸脱酵素の上昇と低アルブミン血症,PTの低下を認めた.画像診断では著明な脂肪肝を認め薬物性の肝障害,脂肪肝と考えられた.薬物の中断,利尿剤の投与等を行ったところすみやかに症状,肝機能の改善,腹水の消失,画像上の脂肪肝の消失を認めた.発症1年前の肝切除標本においては背景肝に脂肪化,肝細胞障害,線維化,炎症所見等は認めなかった.発症2カ月前のCTにおいても肝臓に異常所見を認めなかった.3回の肝切除後の肝容積の回復は良好で5年9カ月の全経過の後,間質性肺炎で死亡するまで肝転移の再発は認めなかった.臨床経過からイリノテカンを被疑薬とする薬物性急性脂肪肝と考えられた.
著者
石崎 有澄美 正木 尚彦 秋山 純一 松川 雅也 松枝 啓 新野 史 林 茂樹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.727-735, 2000-10-25 (Released:2010-11-29)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

自己免疫性肝炎 (AIH) に肝細胞癌 (HCC) を合併した2例 (ともに女性) を経験した. 症例1は62歳時肝機能障害を指摘. 原発性胆汁性肝硬変疑いにてウルソデオキシコール酸を投与されたが無効. 73歳時後下区に径1.5cm大のHCC出現. 肝動脈塞栓術を施行するも肝内多発転移を来し, 約8カ月目に腹腔内破裂のため死亡. 剖検所見 (慢性活動性肝炎: A2, F3) を加えたAIH scoreは17点で, AIHと最終診断した. 症例2は64歳時肝機能障害を指摘. AIHが疑われプレドニゾロン内服で不完全寛解したが, 肝生検では肝硬変 (A3, F3-4) であった (現行score 17点). 71歳時外側区に径2cm大のHCC出現. 肝動脈塞栓術が有効であったが, 腎不全のため約1年10カ月目に死亡. 両症例において抗核抗体価の上昇ないし陽転化がHCCの進展に並行していたことから, 自己免疫反応がHCC発症に関与する可能性が示唆された.
著者
松本 光太郎 菊池 健太郎 守時 由起 茂木 千代子 山田 はな恵 綱島 弘道 小澤 範高 馬淵 正敏 梶山 祐介 土井 晋平 宮川 浩 安田 一朗
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.179-185, 2015-05-20 (Released:2015-05-29)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

当院における敗血症性肝障害の臨床的特徴をretrospectiveに調査し,発症早期に予後予測に役立つ因子を検討した.過去1年間の敗血症116例中,敗血症性肝障害を61例(52.6%)に認めた.敗血症性肝障害を合併した例は非合併例に比べて死亡率が有意に高かった.敗血症性肝障害合併例は非合併例と比較してDICの併発例が多く,DIC非併発例でも血清FDP, D-dimer値が高値であることから,敗血症性肝障害の発生にDICが関与していると考えられた.またDICを併発した敗血症性肝障害における死亡例と生存例の比較では死亡例で血清ALPが有意に高値であり,γ-GTPも死亡率に影響を与える可能性があった.敗血症性肝障害例において総ビリルビン値の推移を生存例と死亡例で比較したところ,死亡例で有意に総ビリルビン値の上昇を認め,経過中に黄疸を呈し死亡した例は10例であった.また死亡した10例中,3例からMRSAが検出されており,菌種別の死亡率ではMRSAが最も高かった.予後予測因子について多変量解析(ロジスティック回帰分析)で検討した結果,敗血症性肝障害発生時においてはALP高値が唯一の予後予測因子であった.以上から敗血症性肝障害の発症時に血清ALP, γ-GTPが高値であること,またMRSAが検出されることは,早期の予後予測マーカーになる可能性があると考えられた.
著者
久米井 伸介 柴田 道彦 本間 雄一 松橋 亨 日浦 政明 大西 裕 阿部 慎太郎 田原 章成 原田 大
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.814-820, 2012 (Released:2012-12-26)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

症例は42歳男性.20歳頃より記銘力障害や軽度の人格障害が出現し,30歳頃より暴言,被害妄想を認め,統合失調症と診断され内服加療をされていた.2010年12月に原因不明の肝硬変及び肝機能障害を指摘され,非アルコール性脂肪性肝炎及び薬物性肝障害と診断された.治療を受けていたが2011年1月より歩行障害,転倒,動作緩慢を認め薬剤性パーキンソニズムが疑われ,肝硬変の精査とともに当院を受診した.Kayser-Fleischer角膜輪の存在,血清セルロプラスミン低値,尿中銅排泄量の増加,肝生検での肝硬変の所見と肝組織中銅含量増加ならびに頭部MRIにて大脳基底核の信号異常を認め,一連の精神,神経症状と合わせて肝神経型のウイルソン病と診断した.Trientine hydrochlorideと酢酸亜鉛の内服及びリハビリテーションの開始により,肝機能ならびにパーキンソニズムや精神症状は徐々に改善を認めている.
著者
渡辺 明治
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.641-650, 2001-12-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
67
被引用文献数
1
著者
河野 豊 吉田 純一 原田 文也 植原 治 安彦 善裕 永易 裕樹 舞田 建夫 川上 智史 江口 有一郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.388-391, 2022-08-01 (Released:2022-08-10)
参考文献数
4

We investigated whether the humanoid robot, Pepper, could help patients in taking hepatitis virus tests at an oral dental clinic. Ninety-five patients interacted with Pepper, followed by visiting the physician and answering a questionnaire. One asymptomatic patient was diagnosed as HBs-Ag positive. Most patients who operated Pepper were female and older than 50 years of age. Only a few patients (16%) knew a hepatitis subsidy system. Results of the questionnaire revealed that Pepper's promotion was beneficial and useful for understanding the severity of hepatitis. These findings suggest that the application of a humanoid robot may encourage hepatitis examinations in an oral dental clinic.
著者
角谷 眞澄 藤永 康成
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.195-202, 2006 (Released:2006-10-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1
著者
芝山 雄老 松本 和基 斉藤 雅文 中田 勝次
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.21, no.10, pp.1283-1294, 1980-10-25 (Released:2010-01-19)
参考文献数
38
被引用文献数
4 5

肝細胞は低酸素に極めてvulnerableであり,空胞変性は低酸素による最も初期の光顕的変化で,それが小葉中心帯に好発する理由は周辺帯よりも中心帯がより低酸素状態になるためであると信じられている.著者は肝細胞の空胞変性がいかなる条件下で発生するかを摘出肝潅流実験で検討した.その結果,低酸素血で5時間以上潅流しても肝機能(胆汁産生量・酸素消費量)が低下するのみで空胞変性は発生しなかった.一方,高酸素血で潅流しながら下大静脈圧を60~70mmH2Oに上昇させると小葉中心帯の肝細胞に空胞変性が発生し,さらに圧を上昇させると小葉周辺帯の肝細胞にも発生してきた.また,160mmH2O以上の門脈圧で潅流すると小葉周辺帯の肝細胞に空胞変性が発生した.以上の実験成績より,肝細胞の空胞変性の発生には類洞内圧上昇が重要であり,低酸素血症はその直接的原因ではないと結論した.空胞変性が小葉中心帯に好発する理由は同部のcritical sinusoidal pressureが周辺帯のそれよりも低いためと考えられた.
著者
内田 俊和 下田 敏彦 志方 俊夫 大塚 昇
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.499-510, 1979-05-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
50

9歳男児で,腹痛と全身の水痘様皮疹を訴えわずか3日間で死亡したヘルペスウイルスの全身播種の一症例.剖検によりウイルス封入体が肝臓(肝細胞, Kupffer細胞)をはじめ脾臓(細網細胞,血管内皮細胞)食道(扁平上皮細胞)肺(肺胞上皮細胞)骨髄(細網細胞,巨核球)リンパ節(細網細胞,リンパ球)に多数認められ,組織の巣状壊死を伴なっていた.臨床症状からその成因として水痘-帯状疱疹ウイルスが最も疑われたが,単純性疱疹ウイルスの可能性もありえる.本症例は肉眼的に胸腺を欠如し,リンパ節は低形成,白脾髄のリンパ球の著減・全身の形質細胞の著減などから素因として免疫不全があったことがうかがわれた.ウイルス封入体の広範な分布,及び肝細胞や食道上皮細胞では核内のみならず細胞質内にも封入体が認められたことが特異的であった.また出血傾向の合併はウイルスの巨核球感染によるものと思われる.
著者
谷口 礼央 永井 康貴 千田 彰彦 鈴木 洸 髙橋 宏太 川村 允力 田村 哲哉 友成 悠邦 後藤 駿吾 岩崎 暁人 武内 悠里子 斯波 忠彦 厚川 和裕
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.470-477, 2020-09-01 (Released:2020-09-09)
参考文献数
15

症例は58歳男性.黄疸,肝機能障害,腹痛にて近医より紹介受診.採血では,黄疸,肝機能障害,好酸球の増多を伴う白血球上昇を認めた.CTでは,肝臓両葉に多発する不整形の低吸収域,十二指腸球部の浮腫性の肥厚を認めた.上部消化管内視鏡では,球部にびらんや粘膜炎症所見を認めた.内視鏡による生検,肝低吸収域の生検を実施したところ,双方共に悪性所見はなく,著明な好酸球の浸潤を認めた.好酸球性胃腸炎診断基準(腹痛等の症状,内視鏡生検での好酸球浸潤,末梢血中の好酸球増多,等)を満たし,同症と診断した.肝低吸収域もこれに伴う好酸球性の炎症性腫瘤と診断した.ステロイドによる治療を開始したところ,開始数日で採血,画像所見の改善を認めた.その後,ステロイド漸減を進め,現在は,プレドニゾロン5 mg/日にて外来管理を続けている.発症2年を経て,再発は一度もなく,内視鏡・CTなどの画像所見も正常化している.
著者
中村 篤志 朝倉 均 吉村 翼 出口 愛美 細川 悠栄 染矢 剛 佐藤 知巳 市川 武 奥山 啓二 吉岡 政洋
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.552-563, 2020
被引用文献数
1

<p>肝硬変(LC)は多様な免疫異常を呈し,リンパ球減少が特徴となる.</p><p>近年,LCの免疫不全と惹起される感染症・炎症はcirrhosis-associated immune dysfunction(CAID)と呼ばれ,肝病態の悪化との関連から注目されている.我々はLCの総リンパ球数(total lymphocyte counts,以下TLC)を調査し,さらにTLCと白血球の好中球分画を基にCAIDのステージ分類を作成した.LCでは早期からTLCが減少し,多変量解析で白血球数,脾腫,肝細胞癌,好中球増多がTLC減少に寄与する因子であった.またTLCはLCの独立した予後因子となり,CAID分類はLCの生存率を有意に層別化し得た.LCの免疫不全は炎症の誘因としてCAIDによる肝病態悪化に寄与する可能性があり,hemogramによるCAID分類の有用性が示された.</p>
著者
近藤 寿郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.591-599, 1992
被引用文献数
2 1

IFN療法を行ったC型慢性肝炎例より,血清ALTが1年以上持続的に正常化した症例と正常化しなかった症例を各々14例ずつ無作為に選び,血清中のHCV-RNAの推移ならに,C100-3抗体,KCL-163抗体,CP-9抗体およびCP-10抗体を定量的に測定し,その推移を検討した.HCV-RNAが投与終了12ヵ月後以降陰性であったのは有効例の8例のみであった.有効例では投与終了12から18ヵ月後に,C100-3抗体価は投与前陽性の11例中10例で,KCL-163抗体価は13例中12例で投与前値の25%以下に低下した.さらに,HCV-RNA陰性化例では8例中7例でCP-9抗体価とCP-10抗体価がともに投与前値の25%以下に低下したが,HCV-RNA非陰性化例のcore抗体の推移には有意な変化は認めなかった.一方,無効例の各抗体価には有意な変化は認めなかった.この成績はcore抗体の推移がHCV-RNAの消長を密接に反映することを示しており,IFNの抗ウイルス効果の指標として有用と考えられた.
著者
上司 裕史 原田 英治 大林 明 矢倉 道泰 福田 彰 片山 透 岡 輝明 市川 光洋 宮村 達男
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.235-242, 1991

慢性肝疾患(CLD),肝細胞癌(HCC)の550例についてHCV抗体をEIA法により測定し,成因別検出頻度をみた.NANB型では輪血歴の有無にかかわらず,きわめて高率(74%,225/306)に検出された.B型では9% (8/88)であったが,陽性者の大半に輸血歴があった.アルコール多飲者のCLDでは,輸血歴のある症例を除いても比較的高率(20%, 10/51)であった.しかし,断酒後のASTの推移と,肝生検像からアルコール性CLDと診断された症例群での検出率は低かった(6~7%).多飲歴をもつHCCでは高率(59%, 20/34)で,NANB型HCC (67%, 28/42)との間に有意差を認めなかった.この知見から,多飲者CLDからの発癌の大部分にもHCV感染の関与していることが示唆された.なお,補足的観察としてアルコール依存症についてHCV抗体を測定し,8% (4/48)とやや高い検出率をえた.
著者
鍛治 恭介 鵜浦 雅志 小林 健一 中沼 安二 西村 浩一 坂本 徹 竹内 正勇 寺崎 修一 下田 敦 卜部 健 松下 栄紀 金子 周一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.872-876, 1992
被引用文献数
4

症例は53歳女性で1991年3月検診時にGOT 329, GPT 306とトランスアミナーゼの上昇を指摘され精査加療目的にて当科入院.検査成績では血沈65mm/hrと亢進,γ-glb 3.5g/dl,IgG 5.5g/dlと上昇,抗核抗体が160倍と陽性,また抗C100-3抗体,PCR法にてHCV RNAが陽性であり,自己免疫型の病型を示すC型慢性肝炎と診断した.プレドニゾロン(PSL) 40mgより加療するも改善は認めず,PSL漸減後α-インターフェロン(α-IFN)投与を開始した.α-IFN投与後GPT値は速やかに正常化し,また,γ-glb値は2.1g/dlまで減少した.一方,抗核抗体は持続陽性であったが,抗体価の上昇は認めなかった.なおIFN投与後22日目の時点で測定したHCV抗体,HCV RNAはいずれも陽性であった.C型慢性肝炎の一部に自己免疫型の病型を示す症例が存在し,また,IFNが有効な症例が存在することを示す貴重な症例と思われ報告した.