著者
高根沢 均
出版者
神戸夙川学院大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本年度に調査を行ったサンタンジェロ聖堂(ペルージャ、5世紀末)とサンタ・マリア・マッジョーレ洗礼堂(ノチェーラ、6世紀中頃)、およびサント・ステファノ・ロトンド聖堂(ローマ、5世紀末)は、周歩廊を備えた円形平面の集中式建築である。サント・ステファノ・ロトンド聖堂ではイオニア式とコリント式の柱頭が使用されているが、外壁の開口部と対応する場所にはコリント式を使用している。また外壁にはアーチが、一方で中央空間にはアーキトレーヴが使用されるなど、様式と部材の配置には明確な計画が見られる。他の2例では、多色大理石と数種類の柱頭を再利用して色と様式を規則的に組み合わせ、色彩感と躍動感のある内部空間となっている。これらの事例では、再利用材の組み合わせによってアプシスと入口を結ぶ軸線及び直交する軸線の視覚的な強調が確認された。また、再利用材の組み合わせと配置の法則は、色彩と材料の価値、様式といった複数の要素で構成されており、本来均質である円形の堂内に空間の階層性を導入する手法として利用されていると思われる。同様の円形平面をもつサンタ・コスタンツァ霊廟(ローマ、4世紀前半)では、周歩廊ヴォールトのモザイク装飾においてブロックごとに異なる図像が描かれており、前述の3事例と同様に空間の機能または階層性との関連が考えられる。集中形式の教会堂における軸性の強調と空間の階層性は、古代建築の円形平面をキリスト教建築に導入する際に必要とされた要素であり、キリスト教建築の形成の重要な側面と考えられる。中央空間を外壁に開かれたアプシスや入口とつなぐ空間である周歩廊の機能を検討するにあたって、これらの要素との関係性を手がかりに検討を進める予定である。
著者
大野 陽子
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

初年度の現地調査の結果、アントニオ・カンピ作品のうちミラノのサンタンジェロ聖堂ガッララーティ礼拝堂とミラノ近郊の巡礼地インヴェリゴの聖堂の作品に研究を絞ることとなった。前者はミラノ北辺の聖カテリーナ巡礼地への注文者の崇敬に結びつていると判明し、後者とともにカトリック改革期における巡礼地と美術の関係、民衆的信仰心により生まれたイメージの排除と残存の問題という更なる研究テーマへ繋がった。画家の制作背景に関する研究の一環として外国支配下にあった16世紀のミラノにおける外来の芸術家と地元画家の軋轢を明らかにした。
著者
伊集院 良祐
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、一酸化窒素合成酵素(NOS)のPETイメージングを目的として、その分子プローブ開発およびプローブ合成における標識反応の開発を行った。反応開発として、PET標識条件下における炭素-炭素結合、特に最も反応性の低いsp^3-sp^3カップリング反応を放射条件下において行うことに成功した。現在、所属研究室ではsp-sp^3、sp^2-sp^3カップリング反応を効率的に行うことができているが、sp^3-sp^3カップリング反応に成功したことにより、さらに多くの化合物への標識が可能となるものである。
著者
霜川 修
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,正常線維芽細胞のγ-線照射を行った後に細胞をクローニングして,個々の細胞のゲノム変化を定量化することを目的とした。正常男性ヒト線維芽細胞に4グレイのγ-線照射を行い限外希釈して再培養して,細胞クローン10個を得た。また,対照としてγ-線照射を行わないでクローニングした細胞クローン10個を得た。ゲノムコピー数の解析を行うためにaffymetrix社製のGeneChipシステムを用いて,γ-線非照射細胞クローンとγ-線照射細胞クローンを解析してゲノムの大きな構造変化数を比較した。結果,γ-線非照射細胞とγ-線照射細胞クローンの両方にコピー数変化をともなった大きな部位(>1Mb)を検出できたが,γ-線非照射細胞において明らかにコピー数変化部位数が増加している傾向は認められなかった。理由としては,実験に用いたクロンーン化細胞数が少ないことが挙げられるが,明瞭な差異を検出できないのであれば解析細胞数を増やすことは,研究費用内では無理であったので,次の実施計画に移った。DNAの塩基変異を検出して定量化することを試みた。方法は,正常男性ヒト線維芽細胞に4グレイのγ-線照射を行いそのまま10万個の細胞を1日培養して,DNAを抽出してPCR後にプラスミドヘクローニング後シークエンス解析を行い変異部位の数を数えてγ-線非照射群と比較するのである。現在,xxx遺伝子,yyy遺伝子,zzz遺伝子をhigh-fiedility Taq polymeraseで増幅しクローニング後のシーケンス解析を行っている。一遺伝子当たり,500bp/clone x800clone=400,000,のべ400kbを解析している最中である。
著者
廣川 直 モーザー ゲーオグ
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

探索やソートアルゴリズムを開発したとき、「入力の大きさに対しどれくらいの速度(ステップ数)で動作するか」という自然な疑問が生じる。現在に至るまで時間的計算量は、プログラムごとに手作業で解析するものと認識されていた。本研究では、関数型プログラムの計算モデルである項書き換え系に対して、解析を自動化する強力な理論を構築した。さらにそれに基づく計算量自動解析ツールを実装した。既存手法との比較実験を行った結果、解析精度の劇的な向上が確認された。
著者
早川 竜馬
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、近年、フレキシブルな機能を有する電子デバイスとして注目されている有機トランジスタの特性を有機ヘテロ界面での電荷移動を光により制御することによって変調することである。下地となるクォテリレン有機トランジスタの高性能化に成功し、2分子層程度でも良好に動作する薄膜トランジスタの作製に成功した。有機ヘテロ界面での効果的な電荷移動を誘起させるために電子受容性が極めて高い電荷移動錯体を用いて積層型トランジスタを作製した。電荷移動錯体分子を蒸着することによりクォテリレントランジスタの閾値電圧を変化させることに成功した。この結果から、有機ヘテロ界面を利用したデバイス制御が可能であることが示された。
著者
陳 豊史
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

「ドナー不足」に対する打開策として、心臓死ドナー(donation after cardiac death, DCD)肺を用いた肺移植がある。DCDでは心停止後の温虚血による臓器傷害が甚大であるが、吸入による薬物投与などの手法を開発することで、傷害肺の有効利用が可能になる。これに基づき、申請者は、以下一連の研究を行った。(1) rat肺ex vivo潅流モデルを用いて、さらに優れた肺保護作用を有する薬剤の検索(2)新しいDDSを用いた薬剤の吸入効率改善についての検討(3) 大動物ex vivo肺潅流モデルの確立。
著者
西村 将洋
出版者
西南学院大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、19世紀から20世紀へと移行する世紀末転換期から、1945年の第二次世界大戦終結までの期間を対象として、ヨーロッパで形成されたジャポニスムの内実を検討しつつ、その上で、日本人がジャポニスムをいかに受け入れ、そして、いかなる日本イメージを再構築したのかを調査・考察した。研究成果は大きく以下の4点にまとめられる。(1) ロンドンでの文献調査ロンドンの専門機関を利用して、1910年に開催された日英博覧会や、同時期のロンドン演劇界に深く関わった劇作家・舞踏研究家の坪内士行の足跡を調査し、1910年代の日英異文化交渉の一端を明らかにした。(2) ジャポニスムに関する日本語文献の収集と分析当時の日本人によるヨーロッパの旅行記やジャポニスム関連文献を収集することで、日露戦争(1904-1905年)前後から第二次世界大戦終結までの期間を対象として、通史的な観点から、ジャポニスム概念の質的な変化を析出した。(3) 1910年代のイギリス・ジャポニスムと日本人についての考察イギリスのジャポニスムと日本人の関係を探るために、特に1910年代に注目し、日英博覧会、演劇批評、文芸批評の観点から、日英異文化交渉の一面を明らかにした。具体的には、1910年代前後にイギリスを訪れた長谷川如是閑、坪内士行(作家・坪内逍遙の息子)、長谷川天渓らの異文化体験について考察を加えた。(4) 1930年代~1940年代の日仏文化交流についての考察1930年代から1940年代にかけてのパリにおける日本文学紹介や、異文化交渉の状況を調査した。具体的には、川路柳虹、松尾邦之助、坂本直道(坂本龍馬の末裔)、藤田嗣治について考察を加えた。
著者
澤田 健二郎
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

卵巣癌腹膜播種には、上皮細胞間の接着因子であるE-cadherinの発現抑制によって誘導されるIntegrin α5が重要な役割を果たしており、Integrin α5の分子標的治療は卵巣癌腹膜播種の抑制に有用である可能性を証明した。また、妊娠初期において絨毛細胞が母体子宮筋層内に浸潤する際に、低酸素刺激によるE-Cadherinの発現消失から誘導されるIntegrin α5の発現が重要な役割を果たしていることを臨床胎盤検体のデータを併せて証明した。
著者
大橋 慶介
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

河川流域への降水の位置エネルギー年平均値と, 流域から流出する土砂量の年平均値との間に相関があることが確かめられているが, 河口地点すなわち流域全体のエネルギーのみが明らかであった. 本研究では, 流域内の任意地点でのエネルギーを明らかにし, 土砂流出量分布を得るために, 支川の合流順序を反映した解析方法を提案してそれを実現した.
著者
本山 敬一
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

メチル化シクロデキストリン(M-CyD)を用いて腫瘍細胞選択的新規抗癌剤を構築するため、腫瘍細胞に高発現する葉酸レセプター(FR)に特異的に結合する葉酸(FA)を修飾した葉酸修飾M-CyD結合体を調製した。葉酸修飾M-CyD結合体は、FR発現細胞選択的に取り込まれ、強い細胞障害性を示した。これらの知見は、FAやM-CyDを用いた腫瘍細胞選択的新規抗がん剤の構築に際し、有用な基礎資料となるものと考えられる。
著者
佐藤 文彦
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究は1920年代の両大戦間期にドイツで流行し、同時代の日本でも受容されたプロレタリア革命童話を、作家や挿絵画家、出版者の活動を鑑み、後期表現主義の潮流と相まった国際的な芸術文化運動として位置付けた。その上で、国民童話を素材にして書かれた日独のプロレタリア革命童話を、狭義の左翼文学ではなく、国民文学史の書き換えを試みた20世紀都市モダニズム文学の一種として理解し、プロレタリア革命童話は今日、パロディ文学として読み直せることを指摘した。
著者
泉 安彦
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

1. 神経幹細胞賦活作用の評価系の構築中脳初代培養細胞を用いた神経幹細胞賦活作用の評価系の構築を目的とした。中脳初代培養細胞に神経幹細胞が存在することは確認できたが、神経幹細胞からドパミンニューロンへの分化は起こっていなかった。GABAAアンタゴニストであるビククルンおよびピクロトキンの処置により神経系細胞のうち成熟神経細胞の割合が上昇し、ドパミンニューロン数が増加した。このことから、GABAAアンタゴニストは中脳初代培養細胞において神経前駆細胞からニューロンへの成熟過程を促進することが示唆された。また神経系細胞のうち成熟神経細胞の割合を算出する方法は神経分化成熟過程を評価できることが分かった。2. 神経投射再生作用の評価系の構築黒質-線条体神経投射をin vitroで再構築し、評価系として有用であるか検証した。シリコン製隔離壁を用い領域内に中脳細胞を播種し、領域外へ進展した成長円錐の距離を測定する。この方法では、主に軸索を評価できていることが分かった。プロテインキナーゼ阻害薬スタウロスポリンおよび神経栄養因子GDNFがドパミンニューロンの突起伸長を促進することを確認し、さらに、薬剤処置による突起伸長様式の違いが観察された。また、前述のシリコン製隔離壁外に線条体細胞を播種したところ、線条体細胞に向けてドパミン神経突起が伸長することを明らかとした。したがって、本評価系は黒質から線条体へのドパミン神経投射をin vitroで反映しており有用なものであることが分かった。
著者
守口 絵里
出版者
明治鍼灸大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

軽度発達障害、なかでも行動に障害を有するADHDをもつ子どもの集団生活における安全管理あるいは見守りという点でのICタグの有用性を検討するために、本研究では、疾患の有無を問わず一般の保育園に通う子どもを対象としてICタグシステム(RFID)を用いた実験を行った。実験の結果、保育士の背後にいる子どもが離れた際に保育士がその情報をすぐにキャッチできるという点で本システムは有用であった。ICタグシステムに対する保育士のニーズとしては、遠足のようにさらに大きい集団を引率する必要がある場合に、子どもの活動範囲も拡大するため有効であろうとのことであった。ただし、本実験のように研究者が同行しない状況下で使用するためには、アンテナを簡易に保持できることが求められる。ADHDを幼児期から鑑別することは難しい例が非常に多い。本研究の対象者にはADHD児は含まれておらず、多動性のみられる子どももいなかったため、ADHD児にとってのRFIDシステムの有用性についての確認はできなかったが、アラーム信号の頻度から多動性を推測し、経時的に子どもの行動をフォローアップすることは可能であると考える。
著者
木村 拓也
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

テストによる品質保証が教育において求められている中で、「テストの専門家」は戦後減少の一途を辿り、「テストの専門家」の供給源も1 大学と限定されてきた現状が明らかとなった。結果、日本の公的テストを支える人材は限られており、少数の者の労苦と彼らのマンパワーに支えられている現状が浮き彫りになった。テスト学会会員対象に行った調査では、多種多様な分野からの参入が浮き彫りになり、様々なレベルでの「テストの専門家」の養成に努めなければならない事態であることが確認された。
著者
荒川 歩
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

意図(特に殺意)および「合理的疑い」に関する、裁判員のしろうと理論について検討した。その結果、殺意の認定については、裁判員に独特の判断傾向があること、評議において、裁判官側が裁判員役の役割を提示せずに、裁判員側の主張を先に聞いた場合も、裁判官側が先に、定義等をしない場合も裁判員が納得する程度には違いがないことが示唆された。このことは、裁判員評議の運営において示唆を与えるとともに、学術的にも、市民の判断の特徴を考える上で有用であると考えられる。
著者
向後 恵里子
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、日露戦争(1904-05)の視覚イメージを、絵画作品や新聞・雑誌等を含む当時の多様なメディアを横断的・包括的に調査し、分析と考察を行うものである。従来未調査の部分が多く残されていた日露戦争と視覚文化のかかわりについて、基本的な見取図を描くことができた。また、戦争の表象をめぐる多様なあり方が明らかになるにつれ、日露戦争のイメージ形成の道筋が一つではなく多層的になされていること、戦争の推移に連れてその様相が移りかわってゆく様子をとらえることができた。こうした観察から、日露戦争の視覚イメージが、当時の社会状況と不可分であること、また「文明国」の「国民」を表象する傾向の多いことが明らかとなった。
著者
中村 寛
出版者
多摩美術大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、アメリカ国内の複数の地域におけるムスリムたちに焦点を当て、個々の地域における彼らの語り、日常的実践、価値や制度の構築・変容のプロセスを比較し解明するという全体構想のもとに行われる文化人類学的研究である。イスラームの地域性やムスリムの多様性を明らかにするために、ハーレムとデトロイトにおけるアフリカ系アメリカ人ムスリムたちの活動と彼らの地域との関係についての資料や文献、フィールド・データの収集・整理を行った。またフィールドワークや資料・文献収集を進めるなかで、これまで出会った問題群を理論的に取りまとめる作業を行った。
著者
山田 協太
出版者
鳥取環境大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

本年度は、昨年度の成果を踏まえ、研究の焦点となるインドの3つの植民都市、ゴアGoa、ディウDiu、ダマンDamaoにおいて、臨地調査をおこなった。調査は、街路網、街区、施設分布、広場、敷地割、建造物など都市組織を構成する物理的諸要素に着目しておこない、それぞれの都市空間の特質とその構成原理を把握することができた。また、各都市の都市型住居の基本的構成を把握することができた。研究をつうじて、これらの植民都市は、18世紀中頃から19世紀初頭にかけて一様に大きな変容を経験し、現代都市へと至っていることが明らかとなった。その意味でこの時期に都市内外に生じた一連の変化は近代化として理解し得るものである。考察をつうじて、こうした変化は、周辺状況に加えて同時期の宗主国でおこなわれた政策と密接な関連を持って進行したこと、宗主国の都市建設の伝統が色濃く反映されていることが明らかとなった。研究の成果は、論文、学会発表をつうじて順次公開している。また、昨年度から引続いて宗主国および調査地域の双方において文献・地図資料の収集をおこない、アジアにポルトガルが建設した植民都市について市街の状態が詳細に描かれた都市図を網羅的に収集することができた。双方の研究者、研究機関との交流を深めることができたことも成果である。こうした成果をもとに、アジアにおけるポルトガル植民都市の形成と変容という、より大きな枠組で研究を展開できる可能性が見えつつある。
著者
岡崎 真紀子
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

平安時代から鎌倉時代にかけての時期にしるされた歌学書の叙述と、同じ時期にしるされた仏典の注釈類の叙述との間に、接点が見られることを具体的に検討した。その結果、当時の歌学に、法会の場で語られていた内容や、梵字の音声に関する学問である悉曇学における言語意識などが、深い影響を与えていることが明らかになった。