著者
永田 郁
出版者
崇城大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究「南インド・アーンドラ地方における宗教美術の様相に関する研究」において、アーンドラ地方における宗教美術の様相は、アマラーヴァティー大塔やナーガールジュナコンダの仏教遺跡を核に、仏教美術、ヒンドゥー教、その他古来より信仰されていた土着のヤクシャや英雄神への信仰といったものが相互に交流し展開しており、すなわち、インドの宗教美術が民間信仰等の基層の文化を軸として、その融合により仏教、ヒンドゥー教の両美術が大きく発展していくという発展過程が本研究の実地調査および研究によって明らかとなった。
著者
鈴木 孝幸
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

私たちは5本の指を持っており、それぞれの指は親指から小指にかけて異なった特徴ある形態をしています。今回、この形の違いが生み出されるメカニズムをニワトリの受精卵を使って調べました。その結果、発生中に指先の先端に指を造るために重要な細胞群を見いだし、PFR(指骨形成領域)の細胞群を新たに命名しました。さらにこの細胞群は指原器の後側の指間部からBMP(骨形成成長因子)を受け取っており、それぞれの指原器のPFRが受け取るBMPシグナルの量的な違いによって指の個性が決定されていることが分かりました。
著者
山崎 将紀
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

分げつ期の日本型イネにウンカ類(セジロウンカ,トビイロウンカ)が産卵すると,殺卵活性をもつ安息香酸ベンジルを含む分泌液で細胞間隙が満たされた液浸化が誘導される.その結果,卵が高率で死亡し,ウンカ類の増殖が抑制される.これまでにセジロウンカに対するイネの殺卵遺伝子Ovc(Ovicidal gene)を同定し,イネの染色体6上に位置付け,約40kbの領域に絞り込んでいる.Ovcは殺卵特性の発現に必須であるので,イネの殺卵特性について,将来の遺伝育種ならびにその遺伝的機構の解明のために,Ovcの単離を試みた.1.日本型イネ品種「日本晴」由来の候補遺伝子が組みこまれた形質転換ベクターを作成し,Agrobacterium法により,SL23(「日本晴」を遺伝的背景とし,Ovc領域がインド型イネ品種「Kasalath」(Ovcをもたない)に置換した系統.この系統は殺卵特性を示さない)に導入する形質転換を行い,目的の形質転換植物の殺卵特性を調査した.現在まで相補した形質転換植物は観察されていないが,引き続き実験を進めている。一方,OvcのcDNAと発現解析は現在進行中である.2.日本型品種とインド型品種を用い,Ovc候補領域のDNA多型におけるアソシエーション解析を行い,Ovcの候補となるDNA多型を検出し,候補領域をさらに絞り込むことができた.この情報を元にさらなる形質転換実験ならびにcDNA・発現解析を行う予定である.
著者
波戸岡 景太
出版者
明治大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

トマス・ピンチョンと大江健三郎は、第二次大戦後の世界文学における中心的役割を担ってきた。しかしながら、両者を対象とした比較文学研究はまだ十分になさられてきたとは言えない。本研究では、両作家およびその同時代のアーティストを対象に、彼らの仕事に通底する、トポロジカルかつ環境論的想像力の在り方を明らかにした。
著者
松原 有里
出版者
明治大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

わが国でここ数年来盛んになってきている、地方自治体による独自の地域環境税導入の試みに注目し、その経緯および将来性について研究した。具体的な研究方法としては、諸外国の環境税および税以外の他の環境(交通)政策との補完性の有無や、明治時代以来のわが国の伝統的な地方税の体系との整合性の有無について検証を行った。それによって、その性質および特徴、今後の課題を明らかにしようと試みたものである。
著者
佐藤 猛
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、15・16世紀フランス王国において、いくつもの高等法院(王国の最高裁判所)が設立された過程を検討することを通じ、当時の国王支配の特質を明らかにするものである。時々の王権はパリからの距離、王領編入時における当該地域と王権との関係、そして裁判組織に関する在地諸身分の要望などを考慮して、地方高等法院導入の是非を決定した。こうして王は、各地で長い伝統をもつ裁判慣行を維持、調整しながら、統一的な裁判体系の確立を目指したことを明らかにした。
著者
井下 綾子
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

日本人の先天性難聴原因遺伝子の中で最多であるGJB2遺伝子変異(コネキシン26)の発症原因の探求を目的とした。GJB2遺伝子変異モデルマウスの聴覚発育段階での内耳の機能・組織学的評価の結果、高度難聴およびコルチ器形成不全を認めた。これらは柱細胞内のmicrotubules形成やGERのアポトーシス遅延との関与が判明し、将来的なGJB2遺伝子変異難聴の根本的治療確立に大きく貢献するものと考えられる。
著者
松尾 誠紀
出版者
関西学院大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、他人が発生させた法益侵害に事後的に関与した者の罪責に関する全体的な理論的枠組みを構築することを最終的目標としながら、特にその第一階段として、事後的な関与時における(当初の正犯に対する)共犯成立の可否について検討することを目的とするものである。その目的の達成のためにはまず、基礎的研究としての共犯の処罰根拠論、承継的共犯論、犯罪の終了時期に関する個別的な調査。検討が欠かせない。そのため初年度は、それら三つの検討課題それぞれに特化した調査・検討に取り組んだ。本年度はそれを受けて、各個別的検討課題に関する基礎的研究を継続する一方、それと並行して、各個別的領域に関するそれぞれの検討結果を統合させ、「共犯成立の時間的限界」に関する詳細な基礎づけに向けた研究に取り組んだ。上記の徹底した取り組みの結果、共犯成立の時間的限界を基礎づけるに際しては、犯罪の終了時期ないし共犯の処罰根拠論の視点に基づく類型化が有効であるとの示唆を得た。現在、名誉毀損罪及び競売入札妨害罪の犯罪終了時期に関する重要な判例が相次いで公刊物に掲載されたことを契機に、学説において特に犯罪の終了時期に関する論考が盛んに発表されている公刊物に掲載されたことを契機に、学説において特に犯罪の終了時期に関する論考が盛んに発表されている状況である。そこで、本研究の最終的成果は、それらの論考に関する検討をも果たした上で速やかに公表する予定である。他方、本研究過程で得られた中間的研究成果についてはすでに、故意作為犯に対して事後的に関与した後行不作為犯の罪責を扱う下記業績に取り入れたかたちで公表している。従前の学説においては、事後的関考者をめぐる罪責自体への関心が低調であったことから、本研究の成果が有する価値は決して小さくない。
著者
望月 智之 秋田 恵一 宗田 大 関矢 一郎
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

1. 腱板停止部(上腕骨大結節)において、棘上筋が停止していると考えられていた部位に棘下筋が停止していることを明らかにした。2. 腱板断裂には棘上筋が最も含まれていると考えられてきたが、棘下筋が断裂に最も関与している可能性が高いことを示唆した。3. 上記の結果を踏まえて、腱板断裂をより解剖学的に修復する手術方法を発表した。
著者
高田 知実
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究の成果は以下のとおりである。(1)利益と純資産における保守主義の関連性を検証したことで保守主義の位置づけを明らかにした。そして、次の2つを明らかにすることで、企業会計における保守主義の経済的機能を解明した。すなわち、(2)市場環境の変化に伴って保守主義に対する需要も変化するという関係を実証的に示し、(3)監査法人の規模の違いによって、監査人の保守的行動に相違があることを明らかにしたのである。
著者
萩田 浩子
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

Sp6は歯胚特異的に発現する転写因子であり、Sp6欠損は過剰歯やエナメル質形成機転の異常をもたらすと報告されている。Sp6分子の構造と機能の解析は歯胚形成機序の解明、さらに将来の再生の臨床応用に重要な知見となると考えられ、Sp6の翻訳後修飾の有無を確認した本研究の成果はその一助となると考えられる。
著者
小塚 良孝
出版者
愛知教育大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、古英語期の散文作品における定形動詞と名詞目的語の語順の決定要因をコロケーションに着目して調査、分析した。分析対象とした文献は年代記(Anglo-Saxon Chronicle)や宗教散文(West Saxon Gospelsなど)などである。本調査から、コロケーションが語順に影響を及ぼしたと考えられる場合があることが明らかになり、古英語の語順研究にはコロケーションという観点も重要であることが指摘された。
著者
西川 勝
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

認知症高齢者をめぐる医療的ディスコミュニケーションの実態については、いまだ明らかでない部分が多い。そもそも医療に関するコミュニケーションには正確無比な指標があるわけではなく、医療的判断や意思決定にも文脈依存的な性格が強く存在しているので、唯一の基準でディスコミュニケーションと決定できない側面がある。患者本人の自己決定に基づくことを最優先するリビング・ウィルや事前指示(advance directives)の思想は、合理的判断能力を有する自立的個人を前提しており、「判断能力には問題があるが、意識がないわけではなく、深刻な認知症のために自己の意思や考えを十分には他者に伝えられない」状況にあって他者の介護を必要とする認知症患者には適当しない。本研究では、認知症高齢者をめぐる医療的ディスコミュニケーションの発生以前に、広く社会に存在する認知症高齢者とのディスコミュニケーションを、さまざまな場面で検討した。主なものをあげると、介護職員を参加者にした定期的な哲学カフェを開催し「認知症ケアと安楽」を議論したものや、保育園児や小学生を対象とした認知症サポーター講座を実施して、「老いの意味」を考える教育のあり方について検討した。これらの研究活動から明らかになったことは、認知症高齢者の医療的ディスコミュニケーションの背後に、認知症ケアの文化的意味が未開拓であり、老いの生き方そのものが問われている現状があるということである。
著者
熊本 博之
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

辺野古では、既存の米軍基地に由来する軍用地料の故に、区の意思決定権が旧住民に偏在していることから、普天間代替施設の受け入れを拒絶できずにいる。東洋町では、周辺に核施設をもたなかったことによる核への不安と、外部からの支援者が県内世論の喚起につとめていたことが、核廃施設の拒絶を可能にした。両事例の比較の結果、行為レベルにおける手続き的正義の実現がNIMBY施設を拒絶する上で重要であることが明らかになった。
著者
鍛治 静雄
出版者
福岡大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

空間を滑らかに変形してゆくときに見られる対称性は,その空間に対するリー群の作用によって記述される.その様子は,リー群そのものやリー群が作用する空間の不変量を通して調べることができる.本研究では特に,その幾何学的な不変量と代数的な構造が綺麗に対応している,旗多様体と呼ばれる種類の空間について,代数的位相幾何学の手法を用いた具体的な計算を通してその詳細を考察した.
著者
保木 邦仁
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

研究代表者がこれまでに研究してきた分子ダイナミクス制御・レーザー制御理論に基づいた, ナノマシンの理論設計・実験結果の解析・機能分子の運動の観測手段の提案を目指して研究を進めた. 特に, 分子モーターの人工合成に必要と思われる基礎理論の構築を目指した研究を行った. また, 第一原理分子動力学法によりモーター分子の運動を評価して回転運動の伝達や散逸の機構を明らかにした.
著者
小沼 孝博
出版者
学習院大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、18世紀後半における清朝とカザフ遊牧勢力との対外交渉を、一次史料である文書史料の分析に基づいて研究した。特筆される成果として、清朝-カザフ関係に関する英文資料集の刊行がある。本資料集の主な目的は、カザフ首長層から清朝に送付された書簡を紹介し、その特徴と歴史史料としての価値を検討することにあり、加えて清朝に派遣されたカザフ使節に関する基礎データも提示した。
著者
中瀬 剛丸
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

世論概念と世論調査結果との関係について理論的な整理を行った上で、マス・コミの世論調査報道の現状を調査し、RDD法という電話調査の普及によって近年になり調査が頻繁に行われ、かつ大きく報道されていることを確認した。また報道の中心である内閣支持率の調査結果は、しばしば社によって大きな違いが出ていて、内閣支持率に触れているプログ記事の分析などから、世論調査に対する不信感を招いている側面があることを見出した。
著者
中道 範人
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

私は、生化学的機能が未知であったシロイヌナズナの生物時計関連タンパク質PSEUDO-RESPONSE REGULATOR9(PRR9), PRR7, PRR5の解析を行い、これらはCIRCADIAN CLOCK ASSOCIATED 1(CCA1)とLATE ELONGATED HYPOCOTYL(LHY)遺伝子への転写抑制因子として機能する事を発見した。
著者
岡村 尚昌
出版者
久留米大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

大学生を対象に健康関連行動調査やGHQ-28を実施すると同時に、唾液を採取し日常生活場面での精神神経免疫学(PNI)反応を測定することで、睡眠時間がPNEI反応に与える影響を検討した結果、最適睡眠時間者(6~7時間睡眠)に比較して、短時間(5時間以下睡眠)あるいは長時間(9時間以上睡眠)睡眠者よって主観的健康観が低下し、ノルアドレナリン神経系の過活動や免疫機能低下などの慢性ストレス状態に至る可能性も示された。