著者
増田 直紀 合原 一幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.365, pp.19-24, 2001-10-12

ニューロンの同期は生物の情報処理において重要な役割を果たす。そこで、様々な神経回路網モデルにおいて同期条件が理論的・数値的に研究されてきた。ところで、ほとんどの解析では、全結合か局所的結合といった単純なトポロジーが仮定されてきたが、実際の神経回路網ではsmall-worldネットワークなどの高次構造の存在も示されている。本研究ではパルスで結合されたleaky integrate-and-fireニューロンの同期現象を様々なトポロジーのもとで考察し、small-worldネットワークがランダムネットワークやローカルネットワークに比べて同期を導きやすいことを示す。
著者
中野 雅文 新井 潤 夏目 季代久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.341, pp.19-24, 2006-11-03

近年θリズムは記憶機能との関係で積極的に研究されているが、海馬でのβリズムはこれまで研究されなかった。嗅覚学習でのβリズムは、記憶プロセッシングの検索過程に関連していると言われている。青斑核(LC)から生じるノルアドレナリン神経は、海馬に投射する。コリン作動薬であるカルバコールは、invitroにおいてラット海馬スライス様β振動を誘導する。本研究では、ラット海馬スライスCA3領域におけるカルバコール誘導β振動の発生に対するノルアドレナリン(NA)の影響を調べた。カルバコール(30μM)は、周波数15.6±0.3Hz、振幅0.7±0.1mV(mean±S.E.M.;n=24)のβ振動を誘導した。NA(50μM)は、その周波数を有意に増加させたが、振幅には影響しなかった。これらの結果は、LC活性が海馬CA3領域でのβリズムの周波数を調節する可能性があることを示唆している。
著者
山口 陽子 McNaughton B.L.
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング
巻号頁・発行日
vol.98, no.673, pp.15-22, 1999-03-18
被引用文献数
5

ラット空間探索時に観察されたシータ位相歳差という現象を再検討し、神経振動子のダイナミックスとして位相歳差現象をもたらす神経回路モデル提案する。さらに計算機実験により、この回路が位相コードを用いてエピソード記憶を海馬内に固定する働きをもつことを示す。
著者
末次 晃 喜多 伸一 松嶋 隆二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング
巻号頁・発行日
vol.98, no.128, pp.17-24, 1998-06-18

短い時間間隔で同じ位置に呈示された二つの対象間に生じる, 動眼回転性錯視(oculogyal illusion, 以下ではOGI)の見かけの偏位の特性を検討した.前庭への刺激として等速回転停止を用いて, 5種類の回転条件で8名の被験者が0.8秒間隔で呈示された対象間の偏位を120秒間(30試行)評定した.第1試行で偏位の大きさは最大値をとり、時間経過とともに単調に減衰した.この時間特性は, 我々が先行研究で明らかにしたOGIの見かけの動きと同じであったが, 主観的正中面からの見かけの偏位とは異なるものであった.この結果から, 本研究で用いた見かけの偏位は, allocentric coordinatesで処理されるであろうと結論した.
著者
山崎 啓介 渡辺 澄夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.466, pp.23-30, 2000-11-17
被引用文献数
7

多層パーセプトロン、球形基底関数、混合正規分布などの階層構造を持つ推論モデルは、小さなモデルを表現するパラメータの集合が大きなモデルを表現するパラメータの集合の中の特異点を持つ解析的集合(解析関数の零点全体の集合)となり、特異なフィッシャー計量を持つために、学習精度を計算するアルゴリズムが確立されてない。本論では、真の分布を近似的に表現するパラメータ集合が作る体積の指数が学習精度と一致することを証明し、その性質を用いて学習精度を計算する確率的なアルゴリズムを提案し、有効性を実験的に検証する。
著者
大木 政英 鳥飼 弘幸 斎藤 利通
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.225, pp.31-35, 2004-07-19
被引用文献数
2

Adaptive Resonance Theory(ART)ネットワークは、特徴空間上に分布したデータをカテゴリーの集合によって分類や近似できる。本研究では、学習アルゴリズムが簡素化された動径基底ARTネットワークを考える。数値実験により学習の収束特性を考察する。また学習特性のシステムパラメータに対する依存性を考察する。応用例として新聞配達所配置問題のような被覆問題を考える。
著者
伊佐地 友章 中村 清実 森林 広光
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング
巻号頁・発行日
vol.95, no.598, pp.175-180, 1996-03-18
被引用文献数
3

脳の三次元空間認識・記憶情報処理様式を解析するために, ヒト及び動物に対する三次元空間作動記憶学習課題(三次元方向弁別遅延見本合わせ学習課題)とその制御装置を開発した. 本実験装置のヒトでの有用性を確かめるため, 異なる体位条件(正座位・横臥位)で本学習課題を行い音源方向識別能力を比較した. その結果, 体位軸(頭位軸)に垂直な面の方向識別能力は正座位が75.8%であるのに対し横臥位は60.7%であり, その差は統計的に有意(p<0.001)であった. 一方, 体位軸に平行な面の方向識別能力は正座位が54%であるのに対し横臥位は45.5%であり, 有意差はなかった. したがって三次元空間音源識別には聴覚及び視覚又は聴覚及び平衡感覚情報の脳内ニューラルネットにおける統合メカニズムが関与すると考えられる.
著者
田中 耕平 堂薗 浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.281, pp.43-48, 2008-10-31

音楽情報の自動分類の1つとして,MIDIによって作られた楽曲を,時系列情報のモデル化に有効である隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model,HMM)を用いて表現し,HMMをノードとする自己組織化マップを用いて分類する実験を行った.MIDIは楽曲の譜面情報を電子化したもので,楽曲を再生するためのすべての情報を表現することができる.本研究においては,MIDIのデータから1小節毎の音高列を,発音時刻モデルにおいて尤度が最大となるHMMを持つノードを勝者ノードとし,自己組織化マップをバッチ学習させることで,音楽情報の特徴を抽出し,複数の音楽ジャンルごとに分類されるように学習することが可能であるか,実験を行った.
著者
木村 昌弘 斉藤 和巳 上田 修功
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.253, pp.61-66, 2002-07-19

本論文では、成長ネットワークモデルとその学習アルゴリズムを提案する。従来のスケールフリーモデルと異なり、WWWを含む多くの実世界ネットワークの重要な特徴である、コミュニティー構造を組み込む。提案モデルが巾則後部をもつ次数分布を示すこと、および、我々の方法がコミュニティーの情報をもたないデータから新リンク生成確率を正確に推定できることを、実験により確認した。さらに、動的ハブ度という量を導入することにより、コミュニティー間のハブ度の変化を予測できた。
著者
田中 沙織 銅谷 賢治 岡田 剛 上田 一貴 岡本 泰昌 山脇 成人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.157, pp.37-42, 2002-06-20

強化学習において「メタパラメタ」の設定は非常に重要かつ困難な問題である.本研究では神経修飾物質のセロトニンが報酬予測の時間スケールを決定するという仮説の検証に向けた準備実験を行った.長期と短期の報酬予測を行うタスクを用意し,実行中の脳活動をfMRIにより測定したところ,長期の報酬予測では視床下核,視床背内側核,淡蒼球などの基底核と,皮質では帯状回後部,前頭前野,頭頂後頭側頭連合野に顕著な活動が見られた.これに対し,短期の報酬予測では被核,帯状回前部に目立った活動が見られた。これらの結果は,時間スケールの異なる報酬予測は,異なるネットワークを介して行われていることを示唆していた。さらに強化学習理論に基づいた解析を行ったところ,長期の報酬の予測誤差に関連する部位は視床下核,淡蒼球であった.この結果は,大脳基底核の強化学習モデルを支持するとともに,さらに機能ごとに詳細化されたモデルを構築するうえで重要な手がかりになることと思われる.
著者
松野 陽一郎 山崎 達也 松田 潤 石井 信
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.688, pp.91-98, 2001-03-16

本研究では, マルチエージェント競合系の例としてカードゲームであるハーツを取り上げ, Actor-Cmicアルゴリズムと先読みを用いた強化学習法を提案する. この系では, 部分観測マルコフ決定過程における強化学習を取り扱わねばならない. 提案手法では, ゲームを序盤, 中盤, 終盤の3つの局面に分割し, それぞれの局面でActorを切り換えて行動制御と学習を行う. 中盤においては, 期待TD誤差に基づく先読みを用いた行動選択を行う. この際, Criticによって近似された状態評価関数と相手戦略から推定した状態遷移確率を用いて期待TD誤差を計算することで部分観測性に対処する. 本手法の有効性を計算機シミュレーション実験により確認した.
著者
前田 正浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.601, pp.25-29, 2004-01-19

我々は新しいアーキテクチャの人工ニューラルネットワークシミュレータ:"Sphincs"(Simulator with Parallel and Hierarchical mechanisms for Investigation of Neural Computation System)の開発を行っている。このシミュレータは生体脳の持っている特性をより現実的にシミュレーションすること目的としており、大規模かつ複雑な機能を操作するために、1.自動ネットワーク生成機能,2.複数のマルチレイヤネットワークの操作,3.生体神経を参考にしたニューロンモデル(例:Basket,Pyramidal,etc.),4.自動ネットワーク生成する前の元設計図段階で、Genetic Algorithmの様に交差させる機能を持たせる事により、パラメータ調整作業を省力化させる、等の新しいアイデアを導入している。また、開発にJava[TM]を用いているため、Threadを利用した並列処理や様々なプラットフォームでの実行が可能であるだけでなく、新しいモデルの拡張が容易になるなどの利点を数多く合わせ持っている。
著者
長谷 日出海 松山 尚義 徳高 平蔵 岸田 悟
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング
巻号頁・発行日
vol.95, no.598, pp.189-196, 1996-03-18

T. Kohonenの発案した適応部分空間SOMネットワークを構築し, その性能評価として日本語音声の自己組織化学習を試みた. 入力用データとしては, 研究用連続音声データベースを取り上げた. このデータの自己組織化学習を行ない, ウェーブレットフィルタ群を発生させることに成功した. このフィルタ群を用いて音声処理を行なうことの有効性を考察した.
著者
浅井 哲也 大谷 真弘 米津 宏雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング
巻号頁・発行日
vol.96, no.583, pp.17-24, 1997-03-17

近年の半導体集積回路技術の大幅な進歩により、脳に代表される生体の神経システムをシリコンデバイス上にハードウェアとして実現する試みがなされている。本報告では、近年、神経細胞の膜ダイナミクスを表す古典的神経システムと密接な関係が理論的に示されたLotka-Volterra(LV)型競合神経システムの集積回路化と、その振る舞いについて述べる。またハードウェア化されたLVシステムから、神経細胞やトランジスタのような個々の均一性の無い素子でも、大規模な集団を作ることにより、正確な情報処理が可能であるという一つの証拠を示す。
著者
河野 卓郎 横井 博一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.419, pp.75-78, 2005-11-12
被引用文献数
1

ヒトや霊長類は複雑な動作が必要な場合には, まず脳内シミュレーションによって試行錯誤や創意工夫し, 最適な動作を想像する.また同時にその結果を学習することで実空間で最適な動作が可能となる.本研究の目的は, 人間の脳内シミュレーションと学習能力を模倣し, ロボット自身が目的に達する歩行パターンを想像しながら学習をする制御システムを提案し, 二足歩行ロボットに応用させることである.本制御システムは想像するネットワークと学習用ネットワークを用いたシステムで, CPGのパラメータ値をGAで探索することによって, 未知の環境で目的に達する動作を想像し, また同時に想像で得られる歩行パターンと環境情報の関係性を学習用ニューロンネットワークに学習させた.その結果, 想像で得られた歩行パターンが生成され, 本制御システムの有効性が示唆された.
著者
谷添 鉄平 河本 晶晴 武藤 大治 横井 博一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.419, pp.93-96, 2005-11-12
被引用文献数
1

これまでの自動運転の実現は通常のプログラミングによって外部の情報端末と連動することによるものや, ファジィ制御によって開発が進められてきた.しかしこれらの技術には複雑なファジィルール及びメンバーシップ関数の作成が必要であり, また入力変数の増加にともなってファジィルールの数が膨大になるなどの欠点があげられる.そこで状況に応じて必要な操作を生成するシステムの開発のために, 学習能力及び汎化能力を持つニューロンネットワークに着目した.本研究の目的は, インフラの整備が行われていないような駐車場においてボルテラニューロンネットワークを利用することにより, そのような場所での車両単独での自動駐車を行うシステムを提案し, その有効性を検討することである.
著者
有木 由香 森本 淳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.163, pp.37-41, 2006-07-07

近年,モーションキャプチャによって得られた運動データを用いたヒューマノイドロボットの運動生成や,バーチャルキャラクターの動作生成に関する研究が多く行われている.これらの研究は基本となる動作の認識,及び一つの基本動作から他の基本動作に繋げるための遷移動作生成が中心となる.しかしながら,従来研究の多くは関節角データを用いた運動学に基づく動作認識,生成がほとんどであり,生成される動作は物理的な整合性を考慮したものではなかった.本報告では床反力情報とモーションキャプチャデータを共に用いることで動力学的な特徴に基づいた動作生成,認識を検討する.具体的には,歩行,走行という2種類の動作を用いて,新たな動作の生成,及びそれぞれの動作の認識の実験を行った.その結果,床反力情報と関節角に基づく動作生成では関節角のみに基づく場合よりも,物理的に妥当な重心移動を持つ連続動作を生成することが可能となった.認識においてはswitching state-space modelsを用いて行い,歩行及び走行のデータを合成した動作データよりそれぞれの動作の識別を行った
著者
末松 悟 横井 博一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.465, pp.35-38, 2003-11-14
被引用文献数
2

従来の筋電義手の研究では,ニューラルネットワークに指動作を学習させて同様の筋電位が入力された場合に動作を再現する方法がとられている.しかし,日常生活で必要とする動作は無数にあるため学習した動作のみでは十分ではない.そこで,学習した動作情報をもとに新たに動作が生成できるシステムが必要となる.本研究は,手首から先を切断したと仮定して,有限の学習動作から多彩な動作を実現できる多自由度筋電義手の開発を目的とする.そのために,未学習動作の生成について検討を行った.ボルテラネットワークによって前腕から計測した筋電位と指関節角度と各指関節間の相関を学習し,学習していない動作に対応する筋電位を入力した場合の出力について検討を行った.
著者
宮本 博文 魚井 孝則 横井 博一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.419, pp.83-88, 2005-11-12

現在の筋電義手は, 切断者の残存する筋肉から誘導される筋電位信号を読み取り, 読み取った筋電位信号を制御信号として義手を制御している.しかし, 切断部位が高位に及ぶに従って筋電位信号を読み取る箇所が減り, 全ての可動部を操作することは非常に困難になる.そのため, 筋電義手だけでは高位切断者用の義手を開発することは出来ない.そこで本研究の目的は, 高位切断者に対応した, 多自由度の筋電義手補助システムを実現することである.高位切断者の全ての可動部を操作するために, 両腕動作間の関係を利用して, 健常腕の動作から義手に求められている動作を推定し, これを目標値として制御する方法を提案した.複雑な両腕動作間の関係を学習するために, リカレント型のボルテラニューロンネットワークを使用して, 人間の両腕動作間の関係についてシミュレーションを行った.その結果, 目標値とほぼ一致する動作が生成でき, 本システムの有効性が確かめられた.