著者
山田 直人 加藤 幸恵 木村 丘 松井 秀明
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.46-49, 2015 (Released:2015-03-07)
参考文献数
9

難治性の疾患である間質性膀胱炎の下腹部痛に上下腹神経叢ブロックが有効であった3症例を経験した.3症例はいずれも薬物療法,膀胱水圧拡張療法などでは鎮痛困難であった.最初の症例に硬膜外ブロックが有効であったため,より効果期間の長いアルコールを用いた上下腹神経叢ブロックを行った.合併症がなく,痛みは著明に改善した.その経験より連続した他の2症例にも行い,同様に痛みが改善した.今回の経験から間質性膀胱炎に対して上下腹神経叢ブロックの有効性が示唆された.
著者
安部 真教 中村 清哉 比嘉 達也 大久保 潤一 垣花 学
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.14-0035, (Released:2015-09-25)
参考文献数
11

今回,有痛性糖尿病性神経障害の下肢痛に対してプレガバリンの漸増中に低血糖の頻度が増加し,インスリン投与量の調節に難渋した症例を経験した.症例は50歳,女性.有痛性糖尿病性神経障害で両下肢痛としびれがあった.プレガバリン50 mg/日の眠前内服を開始し,75 mg/日に増量後に眠気・ふらつきが出現したため,内服量を50 mg/日と75 mg/日の交互に変更した.鎮痛効果は高かったが,低血糖の頻度が増加したため内科へ入院となった.入院期間27日中の低血糖は11回,そのうち朝に9回発生した.インスリン投与量は,持効型が入院期間中に22単位から18単位に,超速効型が毎食後7単位から5単位に減量された.糖尿病性神経障害の治療は,高血糖を予防し,厳重に血糖管理を行うことが重要である.痛みの治療経過中に低血糖の頻度が増加し,血糖管理に難渋した.インスリン過量,インスリン感受性の改善が低血糖の原因として考えられた.
著者
眞鍋 博明 遠藤 佐緒里 門田 奈実 赤木 洋介 馬場 三和 小林 洋二
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.542-545, 2016 (Released:2016-11-04)
参考文献数
13

フェンタニルクエン酸塩経皮吸収型製剤(フェントス®テープ)が難治性慢性腰痛に対して奏効した症例を経験したので報告する.症例は44歳,女性.数年来の腰痛(NRSで9)でNSAIDsおよび物理療法などでは症状の改善が得られず当科外来を受診した.下肢症状は認めず,腰椎CT,MRIではL3/4椎間板の変性を認め,椎間板ブロックが著効したことから椎間板由来の腰痛と診断した.プレガバリン,トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェンでは十分な鎮痛効果が得られなかったため,フェントス®テープ1 mg/dayを開始した.腰痛はNRSで4と軽減し十分な鎮痛効果が得られたが,長期のオピオイド使用は仕事に支障が生じるとの理由で最終的に脊椎固定術を行いフェントス®テープから離脱した.腰痛に関してはNRSで2程度にコントロールできている.強オピオイドであるフェントス®テープは椎間板由来と思われる慢性腰痛に有用であった.他の鎮痛薬でコントロール困難な難治性腰痛に対するオプションの一つとなると考えられた.
著者
三浦 皓子 鈴木 健二 鈴木 翼 大畑 光彦 中里 龍彦
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.33-39, 2015 (Released:2015-03-07)
参考文献数
25

【目的】末梢性顔面神経麻痺予後判定におけるMRIの有用性を検討した.【方法】発症後14日以内に受診した患者のうち,造影MRIを撮影した55例を対象とした.造影剤増強効果の有無により2群に振り分け比較した.また,全症例を対象とし随伴所見(痛み・帯状疱疹・味覚障害・聴覚過敏・涙分泌低下・MRIで造影剤増強効果)の有無と完治率との関連性を調査した.さらに,造影剤増強効果を認めた部位と随伴所見による障害部位診断との関連性について検証した.【結果】造影剤増強効果あり:A群35例,造影剤増強効果なし:B群20例であった.経過中の最低麻痺スコアおよび発症後1週間以内のelectroneurography値はB群で高かった.治療内容ではA群で入院治療・神経ブロックなど,濃厚な治療が施行された.完治率はA群71.4%,B群100.0%とB群で高かった.随伴所見の有無と完治率との関連性については,MRI上造影剤増強効果なしでのみ完治率が高かった.造影剤増強効果を認めた部位は膝神経節上が88.6%と最も多かったが,随伴所見から得られる部位診断では,鼓索神経下が48.6%と最も多かった.【結論】造影MRIは,末梢性顔面神経麻痺の予後を予測するうえで有用であることが示唆された.造影剤増強効果を認めた部位と随伴所見による部位診断との間に関連性は認めなかった.
著者
吉河 久美子 田代 章悟 清永 夏絵 西村 絵実 大納 哲也 上村 裕一
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.32-35, 2019-02-25 (Released:2019-03-12)
参考文献数
6

帯状疱疹関連痛に対してパルス高周波法(pulsed radiofrequency:PRF)を施行した症例を,後ろ向きに検証した.対象は,2016年1月から12月までの帯状疱疹関連痛に対してPRFを施行し治療から評価までの間に新規治療の導入のない,7症例(のべ10回のPRFを施行)とした.患者数は7名(男4名,女3名),年齢71.2±12.3(平均±標準偏差)歳に対して治療を行い,うち1名には2回,もう1名には3回施行した.帯状疱疹発症から初めてのPRF施行までの期間は最短で42日,最長で5年3カ月であり,治療から評価までの期間は17±3.6(平均±標準偏差)日であった.評価は治療前後の視覚アナログスケール(VAS)に対してVAS値30%以上低下を有効,VAS値50%以上低下を著効とし検証を行い,また,個々の症例における鎮痛効果に対して考察を行った.結果は,有効が5回,そのうち著効は4回であった.また,いずれも治療による合併症はなかった.今後,病期ごとに分類しVAS値に加え効果持続期間などを項目として前向き研究を行う必要があると考える.
著者
原 温子 八島 典子
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.86-90, 2018-06-25 (Released:2018-06-29)
参考文献数
7

三叉神経第1枝(V1)領域の帯状疱疹は眼症状(角膜炎,虹彩毛様体炎,強膜炎など)を伴うことが多い.しかし,複視を呈する眼球運動障害はまれな合併症である.今回われわれは,外転神経麻痺を合併した帯状疱疹を経験したので報告する.症例は52歳,男性.右V1領域に水疱が出現し,皮膚科で帯状疱疹と診断.ファムシクロビル,プレドニゾロン,ロキソプロフェン,プレガバリンが投与された.2週間後,複視を自覚したため,脳MRIを施行したが,脳内に異常はなかった.ステロイドはいったん増量後3週間で漸減中止した.1カ月で皮膚症状は軽快したが,複視の回復がないため当科受診となった.初診時,右方視時に右眼の外転障害を認め,眼科検査でも右外転神経麻痺が考えられた.星状神経節ブロック(SGB)を開始し,麻痺は徐々に改善した.V1領域帯状疱疹による眼球運動障害の機序として,ウイルスによる神経炎や血管炎によるもの,三叉神経炎に伴う腫脹による上眼窩裂での神経圧迫などが考えられている.治療は抗ウイルス薬,ステロイド投与に加えてSGBの有効性も報告されている.V1領域帯状疱疹においては経過中の眼球運動にも注意深い観察が必要である.
著者
輪嶋 善一郎 志賀 俊哉
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.61-65, 2015 (Released:2015-03-07)
参考文献数
14

セロトニン症候群は,セロトニン作動薬の投与中に出現する副作用で,神経系のセロトニン作用の増強によって生じ,時に致死的合併症を伴う症候群である.症状として,発熱,高血圧,頻脈などの自律神経症状,振戦,ミオクローヌス,筋強剛などの神経・筋肉症状,不安,興奮,錯乱などの精神症状を呈する.今回われわれは,帯状疱疹関連痛の患者に対しデュロキセチンを投与開始したところ,セロトニン症候群と思われる症状をきたした症例を経験した.患者は77歳,男性,左C4~C6領域の帯状疱疹関連痛.治療として,プレガバリン,トラマドール/アセトアミノフェン配合錠,アミトリプチリンなどを投与していたが,アミトリプチリンに替えてデュロキセチンを投与開始した翌朝,ミオクローヌス,筋強剛などが生じ,患者は自己判断にて服用を中止した.セロトニン症候群は,頻度は少ないが,ペチジン,ペンタゾジン,トラマドール,デキストロメトルファンなどと抗うつ薬の併用時に発現することもある.また,一部のオピオイドもセロトニン作動性の薬剤であることがわかってきている.神経系におけるセロトニン作用を増強する薬剤を多く用いるペインクリニックの臨床では,注意が必要である.
著者
川口 慎憲 筒井 紗也子 吉川 晶子 田邉 豊
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.549-552, 2015

今回われわれは,重篤な開胸術後痛の患者に対しリドカイン点滴静注が有効であった症例を経験したので報告する.患者は79歳の女性で,右肺がんの診断で右肺下葉切除を受けた.その際に第6肋骨と肋間神経を切断した.術後20日目頃より痛みが増強し,非ステロイド性抗炎症薬,プレガバリン内服で改善が認められなかったため術後30日目に当院ペインクリニック外来を受診した.来院時の痛みの強さはnumerical rating scale(NRS)8/10で,手術創に沿った部位,とくに胸骨周囲の痛みが強かった.肋間神経ブロックで痛みは完全に消失したが,数時間で効果は消失した.内服薬を処方し肋間神経ブロックを数回行ったが痛みの改善効果は認めなかった.術後52日目よりリドカイン100 mgの点滴静注を開始したところNRSは3まで改善し,その効果は2日後まで持続した.再度同量のリドカインを投与したところ同様の効果を認めたため,本治療を継続した.60日目より硬膜外ブロックを併用したところ痛みはさらに改善し,90日目には痛みが完全に消失した.難治な開胸術後痛に対し,リドカイン点滴静注が有効であった症例を経験した.治療抵抗性の開胸術後痛に対して,リドカイン点滴静注を検討してもよいと考える.
著者
滝本 佳予 西島 薫 森 梓 金 史信 小野 まゆ
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.14-0039, (Released:2015-11-20)
参考文献数
13

全身の痛みを中心とする多彩な症状を訴え心因性多飲を合併する患者に対し,薬物療法・認知行動療法と併せて行った,患者の語りの傾聴と対話を重視した診療が有用であった1例を報告する.症例は68歳の女性,全身の痛みを訴えて当科を紹介受診した.併存合併症として心因性多飲による低ナトリウム血症と意識混濁,むずむず脚症候群,過敏性腸症候群,睡眠障害,失立失歩があり,ドクターショッピングを長年続けた後の受診であった.患者の語りの傾聴と対話により,まず心因性多飲が改善した.次いで痛みの訴えを線維筋痛症・中枢感作性症候群と診断し薬物療法・認知行動療法を実施したところ,ドクターショッピングをやめ症状も軽減した.“説明不能な”痛みの訴えはペインクリニックではたびたび遭遇する.器質的原因が明確ではない疾患の症状を一元的にとらえ,診断治療を行う役目を果たすためには,患者との語り合いにも問題解決への可能性があることが示唆された.
著者
高雄 由美子 村川 和重 森山 萬秀 柳本 富士雄 中野 範 福永 智栄 上嶋 江利 真田 かなえ 佐藤 仁昭 前川 信博
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.11-16, 2010-01-25 (Released:2010-08-04)
参考文献数
15

ボツリヌス毒素療法は痙性斜頸に対しての有効性が報告されているが,痙性斜頸には明らかな頭位偏奇がなく慢性的な頸肩部の疼痛や随意運動障害が症状の主体である,いわゆる重度の肩こり症例も含まれる.今回われわれは,このような患者に対するボツリヌス毒素療法を施行し効果と安全性を検討した.症例は26症例(男性12症例,女性14症例),平均年齢58.6歳であった.ボツリヌス毒素(BTX-A)100 単位を肩から頸部にかけての持続性緊張状態にある筋群の筋腹に10~20単位/カ所で施注し,4週ごとに12週まで追跡調査をした.痛みとこわばりは視覚アナログスケールで評価し,SF-36によるアンケートを実施し,副作用を問診した.頸肩の痛みやこわばりはボツリヌス毒素投与によりすべての観察期において治療前と比較して有意に軽減した.SF-36のアンケートの結果からは,治療に伴うQOLの改善があまりみられなかった.副作用は4例で頸部の不安定性が出現したが,いずれも短期間で消失し重篤な副作用は認めなかった.ボツリヌス毒素療法は重度の肩こりの症状の軽減に対して効果的な治療である.
著者
加葉田 大志朗 新谷 歩
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.18-0017, (Released:2019-01-10)
参考文献数
4

治療などの介入を研究対象者へ無作為(ランダム)に割り付けるランダム化比較試験(randomized control trial:RCT)では,介入群と対照群の背景因子は平均的に似通ったものとなる.日常臨床では治療を行うかどうかは臨床的判断によるため,各群への割り付けには一定の傾向が生じることが多い.そのため日常臨床から得られたデータのみを利用する観察研究においては,この治療を受ける傾向によって比較群間で背景因子に差異が生じてしまう.この背景因子の違いによってアウトカムの群間比較の結果にバイアスが生じることを交絡と呼び,観察研究ではこの交絡への対処が必須となる.交絡への基本的な統計的対処方法としては多変量回帰分析が利用されている.多変量回帰分析では介入因子以外の背景情報についても考慮することができるため,それらのアウトカムへの影響を差し引いた介入効果を推定できる.また多変量回帰分析と並んで,交絡への対処方法として広く活用されるようになった傾向スコア手法とあわせてその概要を紹介する.加えて,これらの手法について医学研究における不適切な利用が指摘されることもあるため,本稿ではその利用方法に関する基本的な注意事項についても言及する.
著者
伊達 久 森田 行夫 北村 知子 山城 晃 綿引 奈苗 渡邉 秀和 滝口 規子 堤 祐介 岩永 浩二 千葉 知史
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.238-243, 2018-10-25 (Released:2018-11-07)
参考文献数
13

【目的】慢性疼痛に対しトラマドール含有製剤(以下,トラマドール)が広範に使用されるようになった.そこで日常診療においてトラマドールを長期投与した症例について投与量,効果,副作用などの推移を調査することとした.【方法】当院の診療録を後方視野的に検索し,トラマドールを3年以上長期に投与した症例の投与量,痛みの程度,副作用などについて集計することとした.【結果】トラマドールは2,656例に投与され,そのうち,3年以上継続投与された症例が50例あった.平均年齢は約61歳,痛みの内訳は運動器疾患(腰背部痛)24例,運動器疾患(頸部上肢痛)14例,運動器疾患(下肢痛)7例,帯状疱疹後神経痛4例などであった.痛みの程度については,開始時の視覚アナログスケール(VAS)が平均70.7 mmであったが,投与後3カ月以降はおおむね40 mm以下に推移し,投与後約3年時には平均33.6 mmまでに改善した.おもな副作用はめまい・傾眠・倦怠感,悪心・嘔吐,便秘で,投与期間別に発現頻度をみると,開始後3カ月までの発現率が高かった.【結論】トラマドールを3年間以上継続投与した症例では重大な副作用はなく,トラマドールは患者の観察を行いながら注意深く使用すれば長期に使用できることが確認された.
著者
樋田 久美子 境 徹也 北島 美有紀 澄川 耕二
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
The journal of the Japan Society of Pain Clinicians = 日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.52-54, 2011-05-25
参考文献数
6

電撃傷は,体に電気が通り,筋や神経の障害が生じる病態であり,労働災害が原因となることが少なくない.われわれは就労中に感電し,左腕の痛みと筋力低下を生じたが,疾病利得が影響し,症状が誇張されたと思われる症例を報告する.56歳の男性で,溶接作業中に左指から感電し,受傷翌日,当院に入院した.左上肢の強い痛み,筋力低下,関節可動域制限を訴えていたが,病棟では左上肢を支障なく動かしており,補償の獲得を示唆する発言があった.患者に退院を勧めたが,患者は激しい痛みを訴えて入院継続を強く求め,当院に16日間入院した後,他院に転院し,2カ月間入院を継続した.症状を誇張する背景に疾病利得の影響が考えられた.
著者
明星 康裕 遠山 一喜
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.373-376, 1999

脊麻後頭痛がいったん寛解した後, 急激な気圧変化により一過性のメニエール病類似症状を出現した症例を経験した. 症例は26歳の男性で, 脊椎麻酔下で急性虫垂炎の手術を受けた. 術後脊麻後頭痛が出現したが, 解熱鎮痛薬の内服および安静にて症状が消失したので退院した. 術後12日目で, 高地 (海抜2,500m以上) まで自動車にて日帰り旅行をした. その夜より耳鳴・眩暈が出現し, 次第に頭痛も出現した. 脳脊髄低圧症候群, 両側の急性低音域の聴力障害, 回転性の眩暈と耳鳴などメニエール病と酷似している症状であった. 7日間の内服と点滴治療を施行後症状は軽快した. 脳脊髄液の漏出による潜在的な脳脊髄液腔の圧低下に, 急激な気圧の変動が加わり, 外リンパ腔と内リンパ腔の圧の差により, メニエール病様の症状が出現したと考えられた. また, 長時間の座位姿勢と旅行による精神的ストレスが症状を増悪させたことも考えられる.
著者
森岡 亨
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.95-97, 2005

肥満患者の神経ブロックにはしばしば難渋する. 38歳男性 (168cm, 124kg), および幼児期のポリオ後遺症で腰下肢の運動障害, 萎縮, 躯幹の肥満の51歳男性 (身長測定不能, 体重75kg) に, 脊髄麻酔下の痔疾手術が企図された. 前者では高度の肥満のために腰椎棘状突起や腸骨稜を触れず, 後者では胸郭変形, 脊柱の側膏と長軸方向捻転, 骨盤の非対称性のため, くも膜下穿刺ができなかった. 両者とも腎部の肥満のために仙尾骨も触れなかったが, 肛門内指診では, 仙尾骨前面には余分の脂肪組織がなく, 直腸内から仙尾骨の輪郭を容易に確認できた. 肛門内外からの双手診により得た立体感覚を基礎に, 体表からの仙骨硬膜外麻酔による適確な神経ブロック効果が得られ, 手術が可能になった. 仙骨硬膜外麻酔の安全性の向上や適応拡大のために, 肛門内指診の機会をみつけ, 仙尾部の解剖学的関係を直腸側からも体感しておくことを, ペインクリニシャンや麻酔科医に勧めたい.
著者
日本ペインクリニック学会用語委員会 寺井 岳三 長櫓 巧 西江 宏行 有田 英子 表 圭一 鈴木 孝浩 中谷 俊彦 藤井 善隆 森脇 克行
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.509-514, 2009-09-25 (Released:2011-09-01)
参考文献数
35

Neuropathic painは,ペインクリニック用語集第2版で,神経障害(因)性疼痛,ニューロパシックペインと和訳されているが,他の用語集ではニューロパチックペイン,ニューロパシー性疼痛と和訳されている.そこで,日本ペインクリニック学会・用語委員会は,用語集第3版でneuropathic painの和訳をどのようにすべきか検討した.医学辞典でneuropathyはニューロパシーおよび神経障害と和訳され,neuropathicで始まる言葉は神経障害性と和訳される場合が多い.医学中央雑誌のウェブ検索では,1991年から2008年まで神経因性疼痛の使用頻度が最も高く(66.5%),神経障害性疼痛(15.3%),ニューロパシックペイン(4.7%)であったが,2008年には神経障害性疼痛が著増(47.4%)し,神経因性疼痛は減少(48.5%)した.この神経障害性疼痛の使用頻度増加は,より的確な和訳語を使用することになったためと考えられる.医学辞典の和訳および現在の言葉の使用状況より,用語委員会ではneuropathicを神経障害性と和訳することを提案する.
著者
廣瀬 宗孝 坂井 美賀子 松木 悠佳 田畑 麻里 関 久美子 重見 研司
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.134-140, 2010-05-25 (Released:2010-08-22)
参考文献数
8

目的:神経障害性疼痛の臨床症状から,ガバペンチンの鎮痛効果を予想できるかを検討した.方法:神経障害性疼痛の患者におけるガバペンチンの鎮痛効果に関係がある臨床症状を抽出するため,後向きコホート研究でロジスティック解析を行った.つぎに抽出した臨床症状の有無による鎮痛効果の違いを,前向きコホート研究で確認した.結果:後向きコホート研究(n=53)では,ガバペンチンで痛みが軽減する補正オッズ比はアロディニアがある場合は11.43(1.87-70.06)で,異常感覚がある場合は0.08(0.01-0.74)で,アロディニアと異常感覚がガバペンチンの鎮痛効果の予測因子として抽出された.前向きコホート研究(n=24)では,アロディニアの有無は,ガバペンチンを含むさまざまな治療の鎮痛効果に明らかな関連はなかったが,異常感覚がない場合は,ある場合に比べて,ガバペンチンで痛みが軽減する因子であった.結論:ガバペンチンの鎮痛効果は,異常感覚の有無で予測できる可能性があり,異常感覚がない神経障害性疼痛の患者では,異常感覚がある患者より,ガバペンチンで痛みが軽減する可能性が高い.