著者
上杉 貴信 高雄 由美子 安藤 俊弘 魚川 礼子 前川 信博
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.495-498, 2009-09-25 (Released:2011-09-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1

幻肢痛が持続硬膜外ブロックを併用した鏡療法により軽減した症例を報告する.症例は37歳の男性で,腕神経叢引き抜き損傷と多発外傷に起因した難治性の幻肢痛であった.最初に鏡療法を用いて幻肢痛の軽減を試みたが,鏡療法を導入した後に,断端痛が増悪し,鏡療法を継続することが困難となった.持続頸部硬膜外ブロックを行い,断端痛を軽減させると,鏡療法が円滑に可能となった.その後,硬膜外刺激電極植込み術を行い,幻肢痛と断端痛は軽減した.
著者
今井 美奈 三枝 勉 松本 園子 山口 敬介 光畑 裕正
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.106-109, 2016 (Released:2016-06-30)
参考文献数
10

舌痛症は器質的変化がないにもかかわらず,舌に慢性的な痛みやしびれが生じる疾患である.とくに更年期の女性に多く発症し,歯科治療後に発症することが多いが,原因は不明なことが多く難治性である.心因性の問題が大きく関与していると考えられている.疼痛は舌尖部から舌縁部に好発し,摂食時,睡眠時には軽減する傾向がある.今回,舌痛症の診断で西洋医学的治療を行ったが無効であった4症例に対して,証に合わせてそれぞれ四逆散合香蘇散(柴胡疎肝湯の方意),桂枝人参湯,加味逍遙散,四逆散を使用し,numerical rating scale(NRS)で0~3に痛みが改善した.このように難治性舌痛症に対しては証(漢方学的所見)に従う漢方を使用することにより,効果があることが示された.
著者
有川 智子 眞鍋 治彦 久米 克介 加藤 治子 武藤 官大 武藤 佑理
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.15-0010, (Released:2017-05-26)
参考文献数
11

静脈穿刺による末梢神経障害は,時に痛みや感覚障害が長期に持続し,治療に難渋する.静脈穿刺に伴う末梢神経障害で受診した16例について,症例の背景,穿刺部位,症状,治療経過を診療記録より後ろ向きに検討した.対象は,女性14例,男性2例,21~79歳.穿刺部位は,肘皮静脈11例(正中5例,橈側4例,尺側2例),橈側皮静脈3例,前腕尺側静脈2例であり,初診時に14例が痛み,2例が違和感を訴えた.握力低下10例,アロディニア6例,冷覚鈍麻6例,腫脹3例,血腫2例があった.治療は薬物療法を13例,リドカイン点滴を8例,星状神経節ブロックを4例,持続硬膜外ブロックを2例で行った.転帰は軽快10例,治療中4例,転院2例であった.今回の調査では,静脈穿刺による末梢神経障害は報告が少ない肘部橈側静脈でも発生していた.末梢神経と静脈の走行と神経損傷の知識の普及が重要である一方,どの部位でも起こりうることから,末梢神経障害を疑った場合にはただちに抜針・止血し,早期より治療を開始するよう啓発する必要がある.
著者
岡崎 良平 難波 宏好 吉田 広幸 岡井 恒 河村 稔
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.407-413, 2008-09-25 (Released:2011-12-01)
参考文献数
24

目的:ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン®,以下NTP)と疼痛疾患治療に使われる非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)および抗うつ薬の抗アロディニア作用を比較した.また,NTPとミルナシプランの併用効果についても検討した.方法:9週齢Wistar系雄性ラットを用い,麻酔下でL5脊髄神経の後根神経節末梢側を結紮した.手術28日後に薬物を経口投与し,機械刺激性アロディニアを測定した.NTPとミルナシプランの30%有効用量を求め,アイソボログラムにより併用効果を評価した.結果:NTPは400 NU/kgでアロディニアを抑制した.NSAID(ロキソプロフェン)およびCOX-2選択的阻害薬(セレコキシブ)は100 mg/kgで抑制しなかった.抗うつ薬であるSNRI(ミルナシプラン)は100 mg/kgでアロディニアを抑制したが,SSRI(パロキセチン)は10 mg/kgで抑制しなかった.NTPとミルナシプランとの併用により相加効果が認められた.結論:神経障害性疼痛に対してNTPはSSRIおよびNSAIDより有効であり,NTPとSNRIの併用が有用であることが示唆された.
著者
齋藤 朋之 橋本 雄一 立川 真弓 島崎 睦久 新井 丈郎 奥田 圭子 斎間 俊介 安達 絵里子 奥田 泰久
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.516-518, 2012 (Released:2012-11-16)
参考文献数
8

神経障害痛に対する各治療ガイドラインで第一選択薬であるプレガバリンの通常初回投与量は150 mg/日とされる.主な副作用に浮動性めまい,傾眠,浮腫および体重増加などがあり,強く発現した場合はその投与の継続を中止せざるを得ない場合も少なくはない.今回,他施設にて150 mg/日の投与が開始されたが,副作用のために投与が中止された4症例に対して,当科ペインクリニック外来において再度75 mg/日から開始して,その後に重篤な副作用は発現せずに継続および増量投与が可能となった症例を経験したので報告する.特に副作用が生じやすい高齢者などでは,初回は少量投与で開始し,徐々に増量する方法が推奨される.
著者
小川 節郎 鈴木 実 荒川 明雄 荒木 信二郎 吉山 保
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.141-152, 2010-05-25 (Released:2010-08-22)
参考文献数
15
被引用文献数
18

帯状疱疹の皮疹消褪後に3カ月以上痛みが持続している帯状疱疹後神経痛患者371例を対象に,プレガバリン150 mg/日,300 mg/日,600 mg/日(1日2回投与)を13週間投与したときの有効性および安全性を無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験にて検討した.いずれのプレガバリン群においても疼痛は投与開始1週後から速やかに軽減し,最終評価時の疼痛スコアは300 mg/日群および600 mg/日群ではプラセボ群に比べ有意に低下した.プレガバリンは痛みに伴う睡眠障害を改善し,アロディニアや痛覚過敏にも有効であることが示された.主な有害事象は浮動性めまい,傾眠,便秘,末梢性浮腫,体重増加などであった.これらの有害事象は用量依存的に発現頻度が高くなる傾向があったが,ほとんどが軽度または中等度であった.以上の結果より,プレガバリンは帯状疱疹後神経痛に対して有用性の高い薬剤であることが示された.
著者
御村 光子 佐藤 公一 井上 光 並木 昭義
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.141-144, 2003-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
7
被引用文献数
1

目的: 発症より1年以上経過した帯状疱疹後神経痛 (PHN) における局所麻酔薬による神経ブロックの効果を retrospective に検討した. 方法: 発症後平均31.5ヵ月を経過したPHNの6症例を対象とし, 痛みの推移を pain relief score (PRS) を指標として評価した. これら症例においてはアミトリプチリンを併用し, 1%リドカインを用いた星状神経節ブロックまたは硬膜外ブロックを初診より1~2ヵ月間は週1~2回の頻度で行った. 結果: 6症例はすべて女性, 平均年齢64歳, 平均観察期間は19ヵ月, 罹患部位は三叉神経第1枝3症例, 頸, 胸神経各々1, 2症例であった. 初診より約4週間において痛みの程度の低下は顕著であり, その後疼痛が軽減した症例は1症例のみであった. 5症例については神経ブロックにより段階的に痛みが軽減した. 初診時の痛みの程度を10とするPRSでみた場合, 最終的に3症例でPRS 5, 2症例で3, 1症例で1となった. 結論: 発症後1年以上を経過したPHN症例においても, アミトリプチリン併用下に局所麻酔薬を用いた神経ブロックにより痛みの軽減を期待できる.
著者
鵜瀬 匡祐 木本 文子 中原 春奈 別府 幸岐 吉村 真紀 深野 拓
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.165-168, 2009-05-25 (Released:2011-09-01)
参考文献数
12

アルコール性慢性膵炎の急性増悪による上腹部痛が柴胡桂枝湯で消失し,画像所見も改善した症例を報告する.62歳の維持透析中の男性で,内科に入院中であった.視覚アナログスケールで60-80/100 mmの上腹部痛と背部痛があり,疼痛の治療のために麻酔科を紹介された.モルヒネの持続静脈内投与を開始し,疼痛は軽減し,2週間後にモルヒネを中止した.しかし,経口摂取を開始後に膵炎が再燃し,上腹部痛が再発した.モルヒネ,フェンタニルの持続静脈内投与,アトロピン,非ステロイド性抗炎症薬を併用したが,上腹部痛は軽減しなかったので,柴胡桂枝湯の内服を追加した.上腹部痛は10日後に消失し,オピオイドを中止した.腹部CTで遷延していた膵の炎症性変化が軽減していた.柴胡桂枝湯は単に疼痛を軽減しただけでなく,膵炎の治癒も促進したと考えられた.
著者
金井 成行 岡野 英幸 織田 真智子 阿部 博子
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.393-399, 1996-10-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
15
被引用文献数
7

目的: 肩凝りに対する磁気治療器の効果を皮膚温度, 深部温度, 皮膚血流量など客観的な方法を用いて検討した. 方法: 肩凝りの強い患側とその反対側 (健側) の皮膚温度をサーモグラフィで測定した. また, 磁気治療器の効果は, 二重盲検法により無作為に患者を磁気治療器貼付群とダミー貼付の対照群に分け, 4日間の疼痛, 筋硬結の症状, 皮膚温度, 深部温度, 皮膚血流量を測定した. 結果: 肩凝りを訴える患者は, 肩の強く凝る部位の皮膚温が反対側より低い者 (低温群), 高い者 (高温群), 両側に差のみられない者 (均一群) の3種類に分類され, 罹病期間が短いほど高温群が多く, 罹病期間が長くなると低温群が増加した. 罹病期間1カ月以上の低温群に磁気治療器を貼付すると貼付24時間目から疼痛, 筋硬結の症状が改善されはじめ, 48時間後には皮膚温度, 深部温度も有意の上昇を示した. 血流量の有意な増加は72時間後にみられた. 結論: 磁気治療器は, 患部が低温化した凝りの部位を明らかに改善し, 皮膚温度, 深部温度, 血流量を上昇させた.
著者
安部 伸太郎 原賀 勇壮 比嘉 和夫 楠本 剛 重松 研二
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.506-510, 2014 (Released:2014-11-07)
参考文献数
6

【目的】使い捨て注射器は,プランジャー(押し子)と注射器内側が接する部位があり,注射器内側が汚染する可能性がある.プランジャーの往復回数と使い捨て注射器内側の汚染の程度を検討した.【方法】菌液塗布群5本,対照群5本の計10本の20 ml使い捨て注射器で実験を行った.滅菌した液体培地を最大目盛の25 ml吸引し,プランジャーの突出部に菌液を塗布し,液体培地をすべて排出するという操作を,注射器1本につき10回繰り返した.対照群では,菌液ではなく滅菌した液体培地を塗布して同様の操作を行った.排液25 mlのうち0.1 mlを培養し,菌数を計測した.【結果】菌液塗布群では,1回目の排液に菌が含まれていた使い捨て注射器は1本,2回目では0本,3回目では3本,4回目では4本,5回目以降では5本すべての使い捨て注射器の排液から菌が検出された.使用回数の増加とともに排液中の菌数が増加した.対照群では,1本の使い捨て注射器で9回目の排液から菌が1個検出され,それ以外の検体からは菌は検出されなかった.【結論】使い捨て注射器のプランジャーが汚染された状態で往復運動を繰り返すと,注射器の内側が汚染され,使用回数が増えると汚染の程度は増加する.
著者
伊吹 京秀
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.71-80, 2012 (Released:2012-06-20)
参考文献数
26

近年医学研究の進歩はめざましく,痛みの研究については,米国議会の決議した1990年からのThe Decade of the Brainや2001年からのDecade of Pain Control and Researchキャンペーンにより,新たな知見が集積されてきた.しかし残念ながら,難治性の痛みの画期的な治療を生み出すには至っていない.その実現には,われわれ実地医家も基礎にある科学的知識を習得する必要がある.本稿では,このような視点から痛み学説の変遷,痛覚神経系の特徴,痛覚伝導の仕組み,末梢感作,中枢感作を解説する.20世紀初頭われわれが受け継いだ痛みの理論は,17世紀以来のデカルトの特異説であるが,1965年革命的なゲートコントロール説が提唱され多くの疑問が解決された.しかしその後,機序の解明されていない現象を説明できる新たな学説はまだ日の目を見ていない.人間の痛みを対象として診療を行っているという非常に有利な立場から,われわれには新たな発想で画期的な説を打ち出せる可能性がある.本稿が実地医家の方々に何らかの影響を及ぼすことになれば,幸いである.
著者
大野 由夏 小長谷 光
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.93-100, 2019-06-25 (Released:2019-06-28)
参考文献数
37

遷延性術後痛の発症危険因子は明らかではないが,内因性鎮痛系の減弱も一部関与している可能性がある.生体に備わっている内因性鎮痛系の一種に,身体のある部位に与えた刺激により別の部位の痛みが抑制される現象があり,これは,動物においては広汎性侵害抑制調節(diffuse noxious inhibitory controls:DNIC),またヒトにおいてはconditioned pain modulation(CPM)と呼ばれる.DNIC/CPMは中枢性の抑制性修飾であり,セロトニン作動系やノルアドレナリン作動系などの内因性鎮痛系が関与する.健康成人を対象にCPM評価を行うとCPM効果の大きさに個人差が認められることから,CPM効果は内因性鎮痛系の評価法として応用できると考えられる.さらに,予定手術患者を対象に術前のCPMを評価した結果,術後痛とCPM効果の関連が示されたことから,CPMは遷延性術後痛発症危険因子スクリーニング検査として応用できる可能性がある.本総説では,DNIC/CPMの概要,CPM評価法について概説し,さらにCPMの遷延性術後痛発症危険因子スクリーニング検査としての可能性について,最新の知見を自験例とともに報告する.
著者
石黒 直樹 原田 紀子 江端 望 藤井 幸一
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.19-0018, (Released:2020-01-21)
参考文献数
48

変形性関節症の痛みについて,患者には「関節軟骨が剥がれて,むき出しになった骨が擦れて痛い」「骨棘がぶつかるから痛い」と説明されることが多いと思われるが,実際はそれ以上に複雑である.もちろん,骨や軟骨,関節周囲の支持組織の構造変化は痛みの原因になり得るが,変形性関節症の痛みには,滑膜炎や軟骨・半月板内側などの無神経野への神経伸長,中枢性/末梢性感作や下行性疼痛抑制系の異常など,さまざまな要素が関連している.これらの要素は,密接にかかわりながらもそれぞれ独自の機能を有するため,独自に異常をきたし得る.つまり,変形性関節症の痛みは,非常に複雑かつ病期や患者個人によって痛みの主因がさまざまであるため,異常をきたしている要素に応じた治療が求められる.超高齢社会を迎えるにあたり,われわれ医療従事者が変形性関節症患者の診療を行う機会はさらに増えていくと思われる.変形性関節症の痛みに対するテーラーメイドの治療を実現するには,まず変形性関節症で起きている変化や痛みの原因について,深く理解することが重要である.
著者
谷口 千枝
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.63-68, 2018-06-25 (Released:2018-06-29)
参考文献数
34

がん関連痛は,手術,化学療法,放射線治療といったがん治療に伴うものから,終末期のがん性疼痛によるものまで,さまざまな病期に起こる.喫煙は急性症状として一時的に痛みを軽減させるが,その後に起こるニコチン離脱症状は痛みの感受性を上げる.患者は痛いとタバコを吸いたくなり,吸いたくなると痛みは増す.そのようななかでわれわれ医療従事者は,痛みのある喫煙がん患者に対しどのように対応すべきか.本稿では,喫煙と痛みの関連について特にがん関連痛を中心に文献レビューを行い,痛みのある喫煙がん患者に対する症状緩和につながる禁煙支援について説明する.
著者
安部 伸太郎 廣田 一紀 平田 和彦 竹本 光一郎 井上 亨 比嘉 和夫
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.52-55, 2013 (Released:2013-03-22)
参考文献数
11

硬膜外自家血注入を3カ所に行うことで,外傷性低髄液圧症候群が治癒した症例を報告する.患者は44歳の男性で,入院の3週間前に後頸部から背部にかけて強くマッサージをされ,その翌日から起立性頭痛が生じた.頭部と頸部MRI,MRミエログラフィー,RI脳槽·脊髄液腔シンチグラフィー,髄液圧測定により,硬膜下血腫を伴う外傷性低髄液圧症候群と診断したが,髄液の明確な漏出個所は特定できなかった.入院での安静臥床と輸液による保存的治療を開始したが,入院7日目に頭痛は増悪し,硬膜下血腫は増大した.入院11日目に瞳孔不同をきたしたため穿頭血腫除去術を行い,同日に第7頸椎/第1胸椎間の硬膜外腔に自家血13 mlを注入した.しかし,頭痛は消失しなかった.入院15日目の腰部MRI,17日目の胸部MRIで,胸椎下部から腰椎上部にかけての硬膜外腔に髄液が漏出していたが,明確な漏出個所は不明であった.入院19日目に第3/4腰椎間の硬膜外腔に自家血16 mlを注入したが,頭痛は消失しなかった.入院22日目に第9/10胸椎間の硬膜外腔に自家血12 mlを注入し,2時間後に頭痛は消失した.頭痛が消失して1カ月後には,硬膜下血腫と瞳孔不同は消失した.
著者
樋田 久美子 境 徹也 北島 美有紀 澄川 耕二
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.52-54, 2011 (Released:2011-06-04)
参考文献数
6

電撃傷は,体に電気が通り,筋や神経の障害が生じる病態であり,労働災害が原因となることが少なくない.われわれは就労中に感電し,左腕の痛みと筋力低下を生じたが,疾病利得が影響し,症状が誇張されたと思われる症例を報告する.56歳の男性で,溶接作業中に左指から感電し,受傷翌日,当院に入院した.左上肢の強い痛み,筋力低下,関節可動域制限を訴えていたが,病棟では左上肢を支障なく動かしており,補償の獲得を示唆する発言があった.患者に退院を勧めたが,患者は激しい痛みを訴えて入院継続を強く求め,当院に16日間入院した後,他院に転院し,2カ月間入院を継続した.症状を誇張する背景に疾病利得の影響が考えられた.
著者
山田 直人 加藤 幸恵 木村 丘 松井 秀明
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.46-49, 2015 (Released:2015-03-07)
参考文献数
9

難治性の疾患である間質性膀胱炎の下腹部痛に上下腹神経叢ブロックが有効であった3症例を経験した.3症例はいずれも薬物療法,膀胱水圧拡張療法などでは鎮痛困難であった.最初の症例に硬膜外ブロックが有効であったため,より効果期間の長いアルコールを用いた上下腹神経叢ブロックを行った.合併症がなく,痛みは著明に改善した.その経験より連続した他の2症例にも行い,同様に痛みが改善した.今回の経験から間質性膀胱炎に対して上下腹神経叢ブロックの有効性が示唆された.
著者
安部 真教 中村 清哉 比嘉 達也 大久保 潤一 垣花 学
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.14-0035, (Released:2015-09-25)
参考文献数
11

今回,有痛性糖尿病性神経障害の下肢痛に対してプレガバリンの漸増中に低血糖の頻度が増加し,インスリン投与量の調節に難渋した症例を経験した.症例は50歳,女性.有痛性糖尿病性神経障害で両下肢痛としびれがあった.プレガバリン50 mg/日の眠前内服を開始し,75 mg/日に増量後に眠気・ふらつきが出現したため,内服量を50 mg/日と75 mg/日の交互に変更した.鎮痛効果は高かったが,低血糖の頻度が増加したため内科へ入院となった.入院期間27日中の低血糖は11回,そのうち朝に9回発生した.インスリン投与量は,持効型が入院期間中に22単位から18単位に,超速効型が毎食後7単位から5単位に減量された.糖尿病性神経障害の治療は,高血糖を予防し,厳重に血糖管理を行うことが重要である.痛みの治療経過中に低血糖の頻度が増加し,血糖管理に難渋した.インスリン過量,インスリン感受性の改善が低血糖の原因として考えられた.