著者
長谷川 伸
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.185_1, 2019 (Released:2019-12-20)

本研究では大学野球投手24名を対象として、投球側と非投球側の他動的肩関節可動域(外旋可動域、内旋可動域、総回旋可動域)とその両側差、および投球速度(最高速度、平均速度)の測定を行い、投球側と非投球側の肩関節可動域の特性、および肩関節可動域と投球速度の関係を明らかにすることを目的とした。その結果、投球側と非投球側の比較において、肩関節の外旋可動域では投球側が非投球側に対して有意に高い値を示し(p<0.001)、内旋可動域では非投球側が投球側に対して有意に高い値を示した(p<0.001)。また、肩関節可動域と投球速度の関係では、投球側の肩関節外旋可動域(p<0.05)と外旋可動域の両側差(p<0.05)、総回旋可動域(p<0.01)と総回旋可動域の両側差(p<0.05)の4つの指標と最高球速および平均球速との間に有意な正の相関関係が認められた。このことから、肩関節の外旋可動域、およびそれに伴う総回旋可動域の大きさは投球速度を決定する要因の1つとなりうることが示唆された。
著者
仲間 厚人
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.76_1-76_1, 2017

<p> スポーツは長らく若者文化として捉えられていたが、次第に大衆化され、幅広い年齢層に親しまれるようになった。しかし、依然として若者と結び付けられて考えられていることは多く、とりわけ高校生の行うスポーツというものは日本人になじみの深いものであると思われる。例えば、全国高校サッカー選手権大会は、競技レベルにおいて優っていると思われる全日本大学サッカー選手権大会よりも格段に高い知名度を誇るものであるし、甲子園は日本人にとって「夏の風物詩」ともいえるほど馴染んでいる。また、漫画という日本に固有性を持つ文化においても、「SLAM DUNK」や「タッチ」など一世を風靡したものも含め、多くは高校生を題材にしている。このように、日本人にとって、「高校生とスポーツ」という関係は社会意識として深い結びつきを有している。しかし、そもそもどうしてスポーツと高校生は、日本において強く結びつき、物語として社会全般に提供されるようになったのであろうか。本研究では、「高校生とスポーツ」というものが社会意識に浸透する事象に対して、比較社会学的視点からその特徴を分析することによって、「物語」の持つ社会的意味を明らかにしてみたい。</p>
著者
前鼻 啓史 渡 正 伊藤 真紀 鈴木 宏哉 渡邉 貴裕
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.290_3, 2018

<p> 2020東京パラリンピックのレガシーにより、著しく障害者スポーツに関するニーズが高まることが予想される。したがって、量的普及の後に期待される質的な充実や多様なニーズに対応できる基盤を如何に構築していくかという課題がある。2012ロンドンパラリンピックを契機に同様の課題を抱え、かつ先進的な経験と知見を有する英国の障害者スポーツに関する事例は、日本にとって有益な情報を提供してくれるものと考えられる。そこで、本研究は英国エヴァートンフットボールクラブにおける障害者サッカーの包括的な取り組みについて明らかにすることを目的とした。英国にてクラブの代表者へインタビュー調査を実施するとともにクラブの活動資料を収集し調査内容を質的に分析した。調査の結果、多様なニーズに対応した多種目の障害者サッカーチームを組織しているとともに、地域の特別支援団体と提携し、毎年千人程度の障害のある子どもや大人を対象としたサッカーや身体活動の機会を提供するマルチスポーツプログラムを有していることが明らかとなった。今後は本研究で得られた知見やノウハウをもとに、次世代型パラスポーツモデルの拠点形成に関する取り組みへと繋げていきたい。</p>
著者
河部 誠一
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.59_2-59_2, 2016

<p> バレーボールのトップレベルでは、イタリア、データプロジェクト社が開発したバレーボールの情報収集・統計分析ソフト、「データバレー」が広く使われている。データバレーの特徴は、高い統計分析力に加え、最新バージョンでデータバレーに統合される予定の「データビデオ」というソフトのビデオ分析機能が、統計分析とリンクされている点にある。もともと試合に勝つための「戦術ツール」として開発され、対戦相手を分析する目的で使われ続けてきた。野球やアメリカンフットボールのようにゲームに中断が存在するバレーボールにおいても、データは勝利にそった適切な分析がなされ、それが選手の適切な判断支援につながれば、勝率を高める有力な手段となりうる。また、選手自身が能動的にデータやビデオを確認する意識の高さがチームの強さのバロメータの一つとなってきている。そのため、トップレベルのチームでは、自チームの練習や練習試合をデータバレーで分析し、選手やチームの課題抽出や強化計画へのフィードバックを目的とした「強化ツール」、さらには選手のゲームインテリジェンスと意識を高めるための「育成ツール」としての役割が注目されるようになってきている。</p>
著者
竹安 知枝 青木 敦英 石川 峻
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.343_1, 2019

<p> 2020年東京パラリンピック競技大会を控え、国内では障がい者スポーツへの関心が高まってきている。本研究では2017年に開催された国内初の3つの取り組み【「障がいの有無に関係なく実施」「夏のナイター開催」「民間出資100%」】により行われた「近畿アンリミテッド・パラ陸上」に着目し、この大会の有用性について、ボランティアとスポンサー企業の視点より検討・考察を行った。研究にあたり、大会ボランティア(10名)とスポンサー企業(23社)に対して、アンケート調査を実施した。その結果、この大会に魅力を感じていると回答したボランティアは80%、スポンサー企業は86.9%であった。また、対象ボランティア全員が「今後も参加したい」と回答しており、スポンサー企業においても全社(100%)が「イベントに協賛して良かった」と回答していた。以上の結果から、この大会のような新しい取り組みは、ボランティアやスポンサー企業の両者にとって好意的に捉えられ、さらにボランティアだけでなく協賛企業にとっても価値のあるイベントである可能性が高いということが推察された。</p>
著者
高橋 和子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.264_1, 2017

<p> 創作ダンスの基本的内容とされる即興表現を、北京林業大学と上海東華大学の初体験の大学生80名4クラスにアクティブ・ラーニングを活用して実施し、その有効性を探る事を目的とする。教材は「幸せ体操、彫刻家、ダイヤモンドウォーク、鏡、群像、新聞紙、英雄、花は咲く」等の典型教材から、筆者が受講生の様子に合わせ取捨選択して行った。1クラスの時間は90–120分とし、レジリアンス尺度と受講生の感想並びに指導者の振返シートから、把握する方法を取った。なお、初心指導者による上海海洋大学生40名への即興表現授業も参考にした。その結果、レジリアンス効果は肯定的な変容が見られた。自由記述からは「初体験、心身の解放、楽しい、自信、自他の新しい面、自分の可能性、大学に入って1番素晴らしい授業」等、前向きに受け止める様子が伺えた。指導の課題としては、振付に慣れている中国学生にとっては初めから即興表現をするのではなく、ある程度やり方が決まっている部分と自由に工夫できる部分を織り交ぜ、他者と関わりながら即興表現に慣れていくやり方がよく、日本の初心者への指導でも同様の観点であった。以上の事より即興表現の有効性が明らかになった。</p>
著者
坂口 雄介 村山 敏夫 小山 清夏 YELITU HEQI 尾山 裕介
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.190_1, 2018

<p> 平成29年度における交通死亡事故の特徴として、高齢者の占める割合は過去2番目の高さであること、さらに歩行中の死者数は高齢者の占める割合が72.2%であるという警察庁の報告から、高齢者の歩行中における交通事故抑止は喫緊の課題といえる。高齢者の交通事故抑止に向けた研究として、事故状況をまとめて高齢者の事故局面における特徴を把握したものが多く報告されている。しかし高齢者の交通死亡事故に歯止めがかかっていないという現状より、新たな視点からの研究が必要であると考える。</p><p> そこで本研究では、高齢者を対象に判断パターンの分類を目的としたテストを実施する。ここでいう判断パターンとは、様々な状況下における個人の判断特徴を定量的に示すことを目的とし、定型化することである。さらに感覚刺激認知に着目した運動機能測定、及び歩行環境シミュレータとアンケート調査を実施し、これらの結果の比較、検討を行った。これにより高齢者の交通事故局面における注意喚起システムの開発と提案を行うことで、今後の新たな交通事故抑止に向けた取り組みの一助になることが期待される。</p>
著者
鈴木 健介 中山 雅雄 浅井 武
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.265_2-265_2, 2016

<p> 現在のサッカーは、プレーするのに十分な時間とスペースが確保されていた1970年頃のサッカーから変化し「Less Time、Less Space」と形容されるような、相手チームに時間とスペースを与えないコンパクトな守備組織の形成が主流となっている。試合に勝利するためにはこのようなハイプレッシャーの中でも正確で早い判断と技術を発揮しゴールに向かい、得点をあげる必要がある。特にディフェンスとミッドフィルダーとの間のエリアを指す「バイタルエリア」における技術発揮は多くの指導書等で重要視されている。しかし、バイタルエリアにおいてどのようなプレーが行われているかという分析・研究は報告されていない。そこで本研究は2014W杯優勝チームであるドイツ代表の選手が最も多く所属するドイツのトップリーグであるブンデスリーガと、日本のトップリーグであるJリーグのバイタルエリアでの攻撃プレーを対象に、記述的ゲームパフォーマンス分析を行うことで、バイタルエリアにおけるプレーの特徴及び、それぞれのリーグにおける同エリアでのプレーの特徴や違いを明らかにすることを目的とした。</p>