著者
山野井 徹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.102, no.6, pp.526-544, 1996-06-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
50
被引用文献数
20 16
著者
千葉 達朗 林 信太郎 小野田 敏 栗原 和弘 藤田 浩司 星野 実 浅井 健一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.XXI-XXII, 1997 (Released:2010-12-14)
被引用文献数
1

5月11日午前8時, 秋田県鹿角市の澄川温泉で, 地すべりと石流が発生, 澄川温泉と赤川温泉の16棟が全壊, 国道341号も寸断された. 5月4日頃から水の濁りや道路の変状等が察知され, 適切な警戒避難が行われたため, この災害による死者・負傷者はなかった. なお, 地すべりの最中に末端付近で水蒸気爆発が発生した. ここでは, 5月12日にアジア航測(株)が撮影した空中写真, その後の現地の他, 秋田航空(株)が撮影した水蒸気爆発の瞬間の写真を紹介する.
著者
岡本 敦 桑谷 立
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.9, pp.733-745, 2017-09-15 (Released:2017-12-25)
参考文献数
76
被引用文献数
2

変成作用は,地球内部の温度・圧力・化学組成などの条件に応答して進行する化学反応である.変成作用の時間変化を観測することは難しく,最終状態の空間パターン(岩石組織)という独特な情報をいかに読み解くかが,岩石の形成条件やプロセスを理解する鍵となる.変成岩組織には,解釈がシンプルで理論背景が確立しているものから,複数のプロセスが関与して,モデル自体も手探りなものまで様々なクラスがある.本総説では,鉱物の組成累帯構造の熱力学的解析と,反応–破壊カップリング組織の離散要素法モデルを代表例とし,変成岩組織の逆解析とフォーワードモデリングの最近の進展についてまとめる.また,確率的な逆解析が,不定要素の大きい岩石学の問題に有効であることを示す.数値シミュレーションと観測データを統合するデータ同化的なアプローチは,今後,複雑な岩石組織の解読にブレイクスルーをもたらすものと期待できる.
著者
三浦 大助 和田 穣隆
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.7, pp.283-295, 2007 (Released:2008-03-29)
参考文献数
87
被引用文献数
3 8

平均噴出率・楕円率・ルーフアスペクト比を用いた検討から,圧縮テクトニクスと西南日本の中期中新世カルデラ火山の関係について,以下のような考察が得られた.カルデラ火山とテクトニクスの関係では,マグマの噴出しやすさが重要である.陥没構造の違いは,陥没の仕事量の相違である.西南日本のカルデラ火山群は,圧縮と引張の中間的性質を示す極めて大きな平均噴出率である.楕円率・規模・ルーフアスペクト比とトレンチ距離の関係では,トレンチ側で楕円率×活動規模が大きく,ピストン型カルデラが発生しやすいことがわかった.古応力方位はNNE-SSW~NE-SWの最大圧縮応力方位(σHmax)と推定され,この時代の中央構造線(MTL)の左横ずれ変位と一致する.さらに,火山フロントの後退条件を検討した結果,マグマ供給率の低下とテクトニック応力の増加によって起こると考えられる.
著者
山元 孝広 高田 亮 吉本 充宏 千葉 達朗 荒井 健一 細根 清治
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.8, pp.433-444, 2016-08-15 (Released:2016-09-02)
参考文献数
41

富士山は,国内最大規模の活火山のひとつであり,噴火した場合に首都圏のインフラ施設に深刻な影響を与える恐れがあるとして,防災の観点からも注目されている(Yamamoto and Nakada, 2015).最新期の大規模噴火として,青木ヶ原樹海を作った貞観噴火(西暦864年)の溶岩流と東京や千葉まで火山灰を降り積もらせた宝永噴火(西暦1707年)の火砕物降下がとくに知られている.これらの噴火の噴出量や物理特性などを参考条件に,防災のためのハザードマップが作られている(内閣府, 2004).富士山は,溶岩流や火山灰降下以外にも,火砕流や山体崩壊,スラッシュ雪崩など,さまざまな現象をあらゆる方向へ発生させて現在の形へと成長してきた.今回の巡検では,周辺山麓に約70万人が居住し,重要インフラ施設も各種立地する富士山麓を一周する.再び火山活動が活発化したときに発生する恐れのある地質災害について,過去に発生した溶岩流の作った地形や岩相,火砕流堆積物や岩屑なだれ堆積物の露頭にみられる構造等を観察して現象への理解を深め,富士山の火山防災を考える.
著者
吉川 周作 山崎 秀夫 井上 淳 三田村 宗樹 長岡 信治 兵頭 政幸 平岡 義博 内山 高 内山 美恵子
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.535-538, 2001-08-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

The explosion of a plutonium atomic bomb over Nagasaki city took place on 9 August 1945. After the explosion, a cloud formed, which passed over the Nishiyama district, where 'black rain' fell. Thus, the Nishiyama reservoir, located approximately 3 km from the hypocenter, received the heaviest radioactive fallout from the Nagasaki atomic bomb. Sediment samples were collected from the bottom of the Nishiyama reservoir in 1999 and analyzed for their 137Cs, 241Am and charcoal concentrations. The stratigraphic distribution of 137Cs and charcoal clearly indicate that the 'black rain' horizon is recognized in the Nishiyama reservoir sediments. The 'black rain' horizon contains anthropogenic radionuclides (137Cs and 241Am) and charcoal in high concentrations.
著者
鹿野 和彦
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.10, pp.781-803, 2018-10-15 (Released:2019-01-24)
参考文献数
152
被引用文献数
22 28

グリーンタフは主に本州の日本海沿岸に沿って分布する火山岩主体の地層群で,最近明らかになってきた特徴的な岩相の時空分布に基づけば,下位から順に上部始新統~下部漸新統(44~28Ma),上部漸新統(28~23Ma),下部中新統下部(23~20Ma),下部中新統中部(20~18Ma),下部中新統上部(18~15.3Ma),中部中新統下部(15.3~12.3Ma)に区分できる.これらの層序単元は,1)陸弧内リフティング,2)リフティングと火山活動を伴う地殻のドーム状隆起,3)背弧盆の拡大とリフティングの周辺地域への伝播,4)背弧盆拡大とリフティングの急速な進展,背弧側への暖流の本格的流入,5)日本海東縁での急激なリフティングと日本海盆などにおける熱的沈降の始まり,6)フィリピン海プレートの衝突と沈みこみ,火山前線の太平洋岸への移動,短縮変形の始まりを反映している.
著者
羽地 俊樹 佐藤 大介 仁木 創太 平田 岳史
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.223-238, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
69
被引用文献数
1

山陰地方の中新統堆積盆地の成因の特定に向けて,本論は兵庫県北西部の但馬御火浦地域の中新統八鹿層と基盤の境界部周辺の調査研究を行った.八鹿層の軽石火山礫凝灰岩のジルコンU‒Pb年代測定を行い,19.63±0.15 Maの年代値を得た.この年代値は遠方地域の同層の年代制約と調和的であり,八鹿層の火成活動は広域的に同時期に起こったことが明らかとなった.基盤と八鹿層の境界には基底礫岩と判断される堆積性の角礫岩が点在し,境界部に断層は認められない.このことは八鹿層が基盤をアバット不整合に覆っていることを示している.本地域で見積もられるアバット不整合の比高は200 mを越え,山陰地方の中新統の層厚差には堆積時の古地形が寄与していた.八鹿層相当の岩脈群の方向解析によって,NNE-SSW方向に引張する応力比の低い正断層型応力を得た.この結果は,当時の山陰地方が多様な方向のグラーベンが形成されうる造構応力場にあったことを示唆する.
著者
野田 篤 利光 誠一 栗原 敏之 岩野 英樹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.2, pp.99-113, 2010 (Released:2010-10-13)
参考文献数
82
被引用文献数
9 8

上部白亜系の和泉層群は横ずれ堆積盆を西から東へ埋積した地層と言われているが,四国の西部と東部とでは岩相や地質構造に違いがあり,堆積盆の埋積過程やテクトニクスが異なっていた可能性がある.今回,四国中央部の新居浜地域の和泉層群を調査し,北縁相の楠崎層と主部相の磯浦層・新居浜層の3つの新しい地層名を定義した.新居浜層に挟在する珪長質凝灰岩を用いたフィッション・トラック年代は79.1±2.2 Maを示した.また,新居浜層の泥岩から産出した放散虫化石群集は,前期-中期カンパニアン階のDK群集帯に対比された.これらの結果は新居浜層の堆積年代が中期カンパニアン期であり,四国西部(松山地域)に分布する同層群とほぼ同時期に堆積したことを示唆している.本地域の和泉層群の岩相や地質構造は四国西部と東部に見られる同層群の両方の特徴を持っており,その堆積盆形成・埋積プロセスの過渡期に堆積した地層であると考えられる.
著者
星 博幸 川上 裕 岩野 英樹 檀原 徹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.128, no.1, pp.229-237, 2022-11-03 (Released:2022-11-03)
参考文献数
55
被引用文献数
3

紀伊半島の四万十付加体竜神コンプレックスの堆積年代はこれまで主に半島西部及び中央部で調査され,半島東部からは年代データの報告がなかった.筆者らは半島東部の竜神コンプレックス寒川ユニットに挟在する珪長質細粒凝灰岩からジルコンを分離し,68.1±0.4(2σ)MaのU-Pb年代と13.3±1.6(2σ)MaのFT年代を決定した.U-Pb年代はマーストリヒチアン期後期の堆積を示唆し,これは半島西部及び中央部で放射年代と放散虫化石から推定されている堆積年代と類似する.一方,FT年代は試料採取地周辺に分布する熊野酸性岩類や大峯酸性岩類などの中期中新世火成岩類の放射年代と類似するため,中期中新世火成岩類の熱影響によってリセットされた年代と考えられる.
著者
高木 秀雄 吉田 健一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.128, no.1, pp.131-141, 2022-08-17 (Released:2022-08-17)
参考文献数
32

ジオパーク秩父は1市4町(秩父市,横瀬町,皆野町,長瀞町,小鹿野町)をエリアとしており,2011年に国内で15番目の日本ジオパークに認定された.ジオパークのメインテーマは「大地の守人を育むジオ学習の聖地」であり,東京から比較的近いこともあり明治時代より多くの研究者がこの地を訪れて,近代地質学を発展させた地学の歴史が盛り込まれているとともに,宮沢賢治の足跡を辿ることもできる.また,秩父札所34ヶ所観音霊場などに代表される寺社には,人々が特異な地形に神秘を感じ,大切に守り伝えてきた特別な場所が数多くあり,ジオパーク秩父の見どころともなっている.公開されているジオサイトも札所の数と同じ34ヶ所に絞られており,そのほか文化・歴史サイト,生態サイト,眺望サイトが選定されている.この巡検では,関東を代表する三波川帯,秩父帯(メランジュ),および中新統秩父盆地層群の代表的なジオサイトを見学するとともに,盆地に広がる中新統と,それを取り巻く山々を構成する基盤岩の地形,および両者の境界をなす不整合と断層を,札所と和銅遺跡で見学する.ジオと文化・歴史のつながりを感じることができるコースでもある.
著者
飯尾 能久 松澤 暢
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.5, pp.248-277, 2012-05-15 (Released:2012-10-05)
参考文献数
119
被引用文献数
2 2

東北地方太平洋沖地震の発生過程を明らかにして,なぜM 9が発生したのかという問題に答えることは,今後の地震発生予測とそれによる災害軽減のために大変重要である.本総合報告では,この最終目的へ向けて,既に公表されている色々な解析結果をレビューし,総合的に考察するとともに,今後の課題を示した.最初に,東北地方太平洋沖のプレート境界断層とその周辺における地震発生場の特徴を,主に非地震性すべりの時空間的な変化に着目して調べた.次に,東北地方太平洋沖地震の地震前,地震時,地震後のすべり分布を調べた.これらの知見に基づき,これまで提案された東北地方太平洋沖地震の発生過程に関するモデルを検証した.その結果,M 9の地震を引き起こした鍵は,海溝近傍においてプレート境界断層が長期間にわたって固着していたことか,あるいは,震源から海溝軸にかけての領域において地震時に動的弱化が起こったことである可能性が高いことが指摘された.
著者
小宮 剛
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
日本地質学会学術大会講演要旨 第128学術大会(2021名古屋オンライン) (ISSN:13483935)
巻号頁・発行日
pp.050, 2021 (Released:2022-05-31)

日本地質学会では、2019年に日本鉱物科学会と共同で、大型研究マスタープラン2020に『地球惑星研究資料のアーカイブ化とキュレーションシステムの構築』というタイトルで、国内に地球惑星試料や資料を大規模かつ系統的に保管し、キュレーションをするシステムを構築することを申請しました。大型研究マスタープランとは、科学者コミュニティの代表としての日本学術会議が、各学術分野が必要とする学術的意義の高い大型研究計画を網羅・体系化することにより、学術の発展や学術の方向性に重要な役割を果たす我が国の大型研究計画のあり方について一定の指針を与えることを目的とするものです。 これまで、3年毎に見直しされてきており、2023年に見直しされる可能性があるので、学会では現在次期マスタープランに向けて準備を進めています。 ところで、2020年に日本学術会議において「オープンサイエンスの深化と推進に向けて」と題した提言がされました。そこでは、「研究成果をもたらした第1次物質的試料の永久保存体制の構築やそれらの背景となった第0次試料の選択的保存について、基本方針を確立する必要性」が説かれております。このように、研究試料のアーカイブ化は今や早急に取り組むべき課題となっています。そこで、25期においても、大型研究計画の施設整備に地球惑星研究資料のアーカイブ化とキュレーションシステムを早急に構築することを申請する予定です。本発表では大型研究マスタープラン2020で申請した内容を紹介するとともに、現在進行形ではありますが、次期申請に向けた準備状況を報告し、みなさんのご意見を伺いたいと考えております。大型研究マスタープラン2020で申請した『地球惑星研究資料のアーカイブ化とキュレーションシステムの構築』の概要は以下の通りです。http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/kohyo-24-t286-1.htmlでも見られますので、そちらもご確認ください。 『日本で近代科学が産声をあげて150年、日本の研究者は公的な研究費を用いて国内外から多くの岩石・化石試料や隕石、地質・地形情報等(以下、地球惑星研究資料または資料)を集めてきた。しかし、博物学が重要な位置付けを占める欧米と異なり、日本では研究資料のキュレーション施設の整備が大きく立ち遅れている。そのため、学術的価値の高い資料や科学的遺産にあたる資料でさえ維持するのが難しい。加えて各国の土地開発や紛争及び試料の採取・持出制限によって、新たな外国産資料の確保がますます困難になりつつある。そこでキュレーションがますます重要となる。既存資料の保管による科学的貢献の例として、近年のアポロ試料の再分析による月の水の存在の新証拠の発見やカンブリア爆発の概念を創出したバージェス頁岩の研究等がある。どちらも30年以上、公的機関に保管された試料の研究から始まった。さらに、近年の急速な研究技術の進歩を考えると、現在不可能とされる化石の超微量分析、古代ゲノム、地震時に形成された断層岩の超微小領域解析も将来可能となろう。本計画は、現在分散保管されている資料のデジタル・オープンアクセス化とアーカイブ化、それらを網羅する統合データベースの構築、そうしたデジタルデータと実試料の保管・提供を統括する『地球惑星研究資料アーカイブセンター』の新設を提案する。その体系を早急に構築することで、短期には現在日本の地球科学において国際競争力のある岩石・化石試料を基盤とした研究分野を支え、長期では未来の研究者との共同研究として研究技術が高度に発達した30~100年後を見据えた科学の発展に寄与する。また、古地形や地盤データのオープンアクセス化、資源試料の提供及び研究資料の博物館、初等教育機関及びマスメディアへの貸出の一括管理は日本の産業、国土開発、領土管理、生涯学習及び初等教育にも貢献することが期待される。』 今後進めていく項目として、(1)本申請内容がより広範な科学者コミュニティから支持される内容であり、かつ多くの科学者が切望しているものであることを示すために、他の学会からの賛同を得ることを進めています。6月の時点では、日本鉱物科学会、地球環境史学会、日本堆積学会、日本地球化学会などから共同提案者や賛同者として、賛同を得ることができ、この取り組みは現在も続けられています。(2)地球惑星研究資料アーカイブセンター設立の準備委員会を立ち上げ、設立に向けた議論を関係する学会や機関の関係者と開始します。(3)日本学術会議地球惑星科学委員会地球・惑星圏分科会に学術資料共有化小委員会が設立されました。両委員会には共通の委員も多くいることから、それらの委員会を両輪として、本計画の準備を進めていきたいと考えています。
著者
坂井 志緒乃 伊藤 孝 上栗 伸一 本山 功 小室 光世
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.4, pp.297-305, 2019-04-15 (Released:2019-08-08)
参考文献数
38
被引用文献数
1

本研究では,青森県深浦台地の北一鉱床に認められる層状マンガン鉱床の地質年代を解明することを目的に放散虫化石層序の検討を行った.その結果,層厚50cmの酸化マンガン層およびその下位の凝灰質砂岩層はE. inflatum帯の上部に相当すると考えられる(中期中新世後期:12.9~11.8Ma).一方,酸化マンガン層の上位の凝灰質砂岩はL. pylomaticus帯からH. parviakitaense帯(鮮新世:5.4~2.7Ma)に形成された地層であると推測される.酸化マンガン層とその上位の凝灰質砂岩の間には,約700万年間の無堆積があったと考えられる.従来,北一鉱床の酸化マンガン層および凝灰質砂岩は下部中新統上部の田野沢層に対比されてきた.しかし本研究の結果は,年代的に周辺地域に分布する大童子層,赤石層,および舞戸層相当であることを示している.
著者
関根 康人
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.10, pp.650-663, 2012-10-15 (Released:2013-02-20)
参考文献数
72
被引用文献数
1 1

近年の周回探査機による高解像度リモートセンシングデータや,着陸機による鉱物・化学組成のその場分析により,火星には1000を超える水に関連した堆積物層の露頭が存在することが分かってきた.これら露頭の鉱物・化学組成の解析により,火星の古環境変遷の概要が明らかになりつつある.約43−40億年前の火星では,地下もしくは表層での中性−塩基性の水と玄武岩との化学反応により,粘土鉱物や炭酸塩岩が形成していた.その後,約40−32億年前には,強酸性の表層水が蒸発する際に沈殿する硫酸塩岩やシリカ水和物の存在で特徴付けられる,酸化的かつ乾燥した表層環境に変化してきた.また,これ以降の時代では,液体の水は火星上の堆積物の形成において主要なプロセスではなくなった.本稿では,火星上に見つかった堆積物層の特徴やそれらの起源,環境変動を引き起こした原因,新たに浮かび上がった環境進化に関する謎や課題について議論する.