著者
荒木 淳子 中原 淳 坂本 篤郎
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.319-329, 2011-03-30 (Released:2016-08-07)
参考文献数
43

日本では,企業で働く個人にも,自ら学びながら主体的にキャリア構築をすることが求められつつある.しかし,キャリア構築に向けた社会人の学習に関する研究は少ない(濱中2007).そこで本研究では,社会人の学習にとって重要な場である職場(松尾2006)に着目し,個人の仕事に対する態度(挑戦性・柔軟性),職場環境がキャリア確立(荒木2007,2009)に及ぼす影響について,階層線形モデル(hierarchical linear model)による分析をおこなった.17社,1214名の質問紙調査の回答を分析した結果,キャリア確立には個人の挑戦性,柔軟性が重要であること,職場における仕事内容の明示化は個人の挑戦性がキャリア確立に与える効果に正の影響を,知識やノウハウを教え合うといった支援的環境は負の影響を与えることが示された.個人の挑戦性をキャリア確立につなげるためには,職場において,仕事の目的や内容を明示化することが求められる.また,挑戦性が低い人には職場の支援的環境を整えることも必要であると言える.
著者
皆川 寛 高橋 純 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.Suppl., pp.141-144, 2009-12-20 (Released:2016-08-06)
参考文献数
5
被引用文献数
9

「授業中にICTを活用して指導する能力」を向上させるために,模擬授業・研究授業・ワークショップ型事後検討会の3つの活動を組み合わせた校内研修プログラムを開発した.実際に研修を実施し評価を行った.その結果,校内研修プログラムの活動及び構成は妥当であるという評価が得られ,「授業中にICTを活用して指導する能力」を向上させる上で有効であることが確かめられた.
著者
古荘 智子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.Suppl., pp.113-116, 2021-12-20 (Released:2022-02-02)
参考文献数
10

本研究では,認知言語学(Cognitive Linguistics)的知見に基づく中核的意味とその意味拡張を用いた多義語学習法(以下,CL学習法)が,記憶保持および意味推測に有効であると報告されたオランダ人英語学習者を対象に実施された先行研究を応用し,母語や英語力あるいは学習環境が異なる日本の英語学習者にも有効であるかどうかを検証した.さらに,本研究では,日本の学習者が広く用いている一語一義的な暗記学習法とCL学習法を比較し,学習効果に差が示されるかを検証した.結果から,記憶保持および意味推測には効果が示されたが,学習法の違いに主効果は示されなかった.しかし,事後アンケート結果から,CL学習法が,浅い処理の暗記学習から有意味学習へ,学習者を導く役割を果たす可能性が示唆され, 多義語学習への有効性が明らかになった.
著者
有村 美英 山本 朋弘
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.1, pp.145-150, 2023-05-05 (Released:2023-05-05)

本研究では,小学校算数科の図形領域の学習において,ドローンを活用したプログラミング体験を取り入れて,空間の中にあるものの位置をドローンで表す授業を実践し,空間にあるものの位置の表し方についての理解が深まるかを検証した.その結果,授業実践前と授業実践後に行った児童向けアンケートでは,活用への気付き等の項目で有意な差が見られた.自由記述を分析した結果,空間の位置をドローンで表すことができることに驚いた,ドローンが身近で活用されていることを知ることができた等の記述が見られた.児童は授業後,空間にあるものの位置の表し方についての理解が深まり,授業前よりも身近な生活でのドローンの活用に気付いたことが示された.
著者
高橋 薫 鈴木 道代 佐々木 さくら
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.Suppl., pp.169-172, 2023-02-13 (Released:2023-03-28)
参考文献数
7

本実践では創価大学の「学術文章作法Ⅰ」を履修する留学生を対象に,文章診断ソフト「文採」を活用して文章の言語形式へのフィードバックを試み,意見文を自己推敲させた.本研究の目的はフィードバックを手がかりに,学習者が適切に日本語の誤用を自己推敲できるか否かを確認することである.フィードバック前後の意見文を比較したところ,「副詞率」「話し言葉」「助詞の誤り」において,問題箇所の出現頻度が有意に減少した.次に,効果量の大きかった「話し言葉」「助詞の誤り」について修正の適切さを確認したところ,「話し言葉」の約8割,「助詞の誤り」の約7割は適切に修正できていた.しかし,フィードバックの適切性を見ると,「話し言葉」の約9割が適切であったのに対し,「助詞の誤り」へのフィードバックは4割程度に過ぎず,「助詞の誤り」については教師の介入が必要であることがわかった.
著者
佐藤 智文 吉中 貴信 平野 智紀 山本 良太 石橋 純一郎 杉本 昌崇 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.1, pp.112-118, 2023-05-05 (Released:2023-05-05)

川崎市教育委員会により行われた教員調査に基づき,GIGAスクール構想におけるICT活用の小学校・中学校比較を行った.その結果,端末整備後のICT活用は両校種ともに向上していること,授業での活用場面においては小学校の方が進んでいること,ICT利用の指導は小学校と中学校で力点が異なることが分かった.またICT活用高低群の比較では,実験や観察等の手順説明や発表場面は小学校で活用されやすいこと,教師の課題提示や学習理解の深化,子ども同士の相互学習に関しては,小中で同程度であることが分かった.
著者
柴田 美紀
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.1, pp.207-214, 2023-05-05 (Released:2023-05-05)

昨今の複雑な社会問題に対処するため,大学にはこれまでの伝統的な学問分野を超えた学際的な教育研究活動が求められている.しかし,学際教育研究の必要性は認識されているが,その実践については十分明らかにされていない.そこで,本研究は,国立大学の文理融合を目指す学部に所属する教員が学際教育研究をどのように解釈し実践しているかを調査した.その結果,学部内でも学際性の解釈と実践には分野による相違が認められた.
著者
尾関 基行 山本 あすか
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.1, pp.77-83, 2023-05-05 (Released:2023-05-05)

2022年11月に公開されたChatGPTの高い性能と利便性は教育現場においても看過できないとして,その活用方法や懸念点に関する議論が早速始まっている.本研究では,少人数の遠隔グループディスカッションにおいて,1. ChatGPTを各自で利用,2. 一人が画面共有してChatGPTを利用,3. インターネット検索のみを利用の3パターンを比較した結果を報告する.
著者
村重 慎一郎 早原 利香 鈴木 愛彩 新村 綾菜 澁倉 陶子 亀井 由衣
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.1, pp.51-56, 2023-05-05 (Released:2023-05-05)

現代のイノベーションにはデジタル知識・スキルの活用は必須であるが,デジタルはツールであり,活用するための思考プロセスが本質的に重要と考える.大学生主体のNPO法人STEM Leadersでは,デジタル介護などの社会課題解決プロジェクトを実践しており,そこで得られた思考プロセスをモデル化し,自治体と連携した長期ハッカソンを企画運営してきた.その実践報告に加えて,社会課題解決を通じたスキル・マインドセットの成長度合いの評価方法・分析結果についても発表したい.
著者
石井 雄隆
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.1, pp.261-267, 2023-05-05 (Released:2023-05-05)

近年,高等教育におけるリーダーシップ開発は全国の大学で普及が進んでおり,その効果測定も進められている.リーダーシップの能力測定には長い歴史があり,リーダーシップ自体を探究する研究とリーダーシップ開発を念頭に置いた研究の二つの領域が存在する.本研究では,これまでのリーダーシップ研究及びリーダーシップ開発の測定に関するレビューを行い,高等教育におけるリーダーシップ開発を目的とした質問紙開発への基礎的検討を行う.
著者
原 健太郎 渡辺 雄貴 清水 克彦
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.239-252, 2019-12-31 (Released:2020-02-14)
参考文献数
22
被引用文献数
1

夜間定時制高校は,算数・数学の基礎学力に課題を抱える生徒が多く在籍している.本研究では,夜間定時制高校でのアクティブ・ラーニング型の授業設計の検討を見据え,数学科での反転授業の有効性について検証することを目的とした.そのためにADDIE モデルに従って開発した授業に対し,ID の目指す価値としての効果・効率・魅力の観点から検証し,以下の結果を得た.授業前に動画を視聴しない状況,動画を視聴していてもそれを前提とした授業展開は厳しい状況が見られた.学習形態の変容により学習に困難を抱える生徒は取り組みやすくなり,教え合いの対話的活動での動画活用や,復習として主体的な動画利用の状況が見られた.定期考査等の得点が低かった生徒でも得点が増加し,効果的な習得が確認された.学習場面での必要時間が短縮され,効率的な学習が行われた.反転授業によって,基礎学力に課題を抱える生徒において大きな効果が得られる可能性が示唆された.
著者
福山 佑樹 森田 裕介
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.365-374, 2014-02-20 (Released:2016-08-10)
被引用文献数
1

社会的ジレンマにおいて協力行動を取ろうとする「道徳意識」を獲得するためのカードゲーム教材である「The irreplaceable Gift」を開発した.ゲームは,参加者にこれまでのゲームでは体験できなかった「社会的ジレンマによる悪影響の時間的遅れ」を体験させ,協力行動を取ろうとする道徳意識を獲得することができるようにデザインされた.「The irreplaceable Gift」を用いた実験群と,「時間的遅れ」の要素を除いたゲームを用いた統制群との比較実験の結果,本ゲームの参加者は「道徳意識」を獲得しており,その獲得はゲーム終了時のリフレクションを通して「未来への世代」への影響を参加者が判断した結果によることが示唆された.
著者
福富 隆志 油川 さゆり
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-11, 2023-01-20 (Released:2023-02-01)
参考文献数
23

本研究では,フィードバック(FB)の提供と改善支援がスピーチのパフォーマンスに及ぼす効果を,制御焦点の適性と評価観との交互作用の観点から検討した.大学生を,FB に基づいて問題点と改善策を考えさせる条件(FB・改善支援条件),FB の提供のみの条件(FB 条件),問題点と改善策を考えさせるのみの条件(改善支援条件)に20名ずつ振り分けて,スピーチのパフォーマンスに及ぼす効果を比較した.その結果,言語的パフォーマンスについて,改善的評価観(評価とは学習改善に活用するためのものであるという認識)が低い参加者はFB・改善支援条件で最も高く,促進焦点の適性と改善的評価観が高い参加者はFB 条件で最も高かった.改善的評価観が低い人は,FB の活用を促す支援によりFB に注意を向けて改善に活かす一方で,促進焦点の適性と改善的評価観が高い人は,FB の提供のみで改善を行う傾向にあることが示唆された.
著者
香西 佳美 田口 真奈
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.449-460, 2018-03-01 (Released:2018-03-16)
参考文献数
28
被引用文献数
2

本研究は,大学教員の授業力量のうち重要な要素のひとつであるTPACK に焦点をあて,MOOCでの授業実践の経験を通じて大学教員がどのようにTPACK を形成しているのかを明らかにすることを目的とする.具体的には,MOOC での授業実践を経験した大学教員に対するインタビューにより,大学教員の授業力量がどのように変化したのかをTPACK フレームワークを用いて検討した.その結果,単一要素の知識ではなく複合的な知識を形成していることが明らかになった.これは,教員と専門家スタッフの双方が主体的な実践者として関与することで,互いに学び合う関係が構築されていたというMOOC 実践の特徴によるものであることが示唆された.さらに,MOOC での実践を普段の授業と関連づけることでTPACK 形成が促進され,普段の授業との違いが大きいほどより広範なTPACK が形成される可能性が示唆された.
著者
墓本 晃一 藤村 裕一
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.1, pp.121-128, 2021 (Released:2021-10-24)

高校生に対し,性の多様性に関して集団面接を行ったところ,多様性を包摂する社会の創出に向けた取組に肯定的であり,一見すると寛容に見えるものの,当事者意識や想像力の欠如等から,無言の抑圧や無関心さが潜んでいることが示唆された.さらに,同性愛やトランスジェンダー,なかでも,トランスジェンダー女性へのフォビア(嫌悪)が,性別を問わず強く示されるなど,無意識に内在化しているフォビアの実態が明らかとなった.
著者
小山 理子 溝上 慎一
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.375-383, 2018-03-01 (Released:2018-03-16)
参考文献数
22
被引用文献数
8

本研究の目的は,大学生の一般的な「講義への取り組み方」を測定する尺度を開発し,信頼性と妥当性の検討を行い,「講義への取り組み方」が「アクティブラーニング外化」を媒介し,学習成果に与える影響について検討することであった.大学生1,854名を対象とした質問紙調査を行い,分析を行った結果,講義への取り組み方は,アクティブラーニングへの取り組み方を媒介し,学習成果のうち「資質・能力」と「深い学習」にポジティブな影響を与えることが明らかになった.本研究の結果は,講義への取り組み方が学習成果に及ぼす影響を改めて確認するものであり,資質・能力の獲得や学習の深化のためには,講義の質を見直すことが必要であることが示唆された.
著者
大久保 紀一朗 佐藤 和紀 山本 朋弘 板垣 翔大 中川 哲 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.157-169, 2022-02-20 (Released:2022-03-15)
参考文献数
25

本研究では,小学校社会科の農業の学習においてドローンを用いたプログラミング教育を実践し,テクノロジーを米作りへ活用する必要性の理解に関する効果について検証した.授業の事前事後において,米作りへの参画意識に関する調査への回答と,米作りに関連すると考えられる仕事の記述をさせた.その結果,ドローンを用いたプログラミング教育が,ドローンを米作りに活用することを想起させることに有効であり,米作りへの参画意識を育むことが示唆された.また,授業の事後において米作りに対するイメージを自由記述で回答させ,テキストマイニングによる分析を行った.その結果,ドローンを用いたプログラミング教育を経験することにより,ドローンを米作りに活用することの必要性を理解するとともに,人が担う役割について再考するなど,これからの米作りに必要なことについての思考を促すことが示唆された.
著者
姫野 完治
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.95-104, 2020-07-10 (Released:2020-07-10)
参考文献数
26
被引用文献数
2

本研究では,授業実施中の授業者の視線配布と思考様式を解明することを目的として,ウェアラブルカメラを用いて授業者の視線映像を録画・記録し,その映像を事後に視聴しながらインタビューを行う調査を,熟練教師と教育実習生を対象として行った.その結果,教育実習生は子ども全員や発表者等に漠然と視線を向ける回数が多く,教室に生起した出来事を受動的に知覚する傾向があること,一方熟練教師は,特定の意図の下で選定した子ども集団に視線を向け,能動的に知覚する割合が高いことがわかった.また,そのように視線を配布しながら,教育実習生は授業の進み具合等の進度について思考しているのに対し,熟練教師は学力下位層と上位層の子どもの理解や考えの深まり,注目点を意識化したり整理したりすることについて思考していること等が明らかになった.
著者
田中 孝治 水島 和憲 仲林 清 池田 満
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.1-12, 2017-05-20 (Released:2017-05-26)
参考文献数
31
被引用文献数
7

多様化する仕事に適応できるように,企業の人材育成には,日常的に自ら育つ環境づくりが重要である.本研究では,分析過程が残る特徴と分析過程でストーリーラインが記述される特徴を持つ質的データ分析手法SCAT を用いることで,新入社員の学び方の学びとその指導にあたった指導員の支援方法の表出化を試みた.本研究では,新入社員研修で用いる週報を新入社員と指導員とが対話する学習環境として捉え,週報に5週間に渡って記述された新入社員の振り返りとその振り返りに対する指導員のコメントを分析対象とした.分析結果から,指導員が,経験の積み重ねによる知識構築のプロセスである経験学習サイクルに沿って,実習員の学び方の学びを支援することで,実習員の学び方の学びが深化していることが読み取れた.本研究では,週報の分析から得られた結果を基に,学び方の学びの経験学習サイクルを転回する実習員と指導員の相互作用モデルを作成した.
著者
藤井 太平 植木 賢 乾 道夫 上原 一剛 礒江 孝
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.465-484, 2022-09-10 (Released:2022-09-15)
参考文献数
26

国際的な競争が熾烈化している現代,次代を担う子供達の創造性を育成することは重要である.著者らは創造力の定義として高橋(2002)の「既知知識や経験を統合し,新しく価値があるものを生み出す力」を採用し,創造性教育で広く知られるトーランスの知見を背景として,植木(2018)が開発した発明楽と,医療機器開発の考え方を取り入れて創造性育成教育を開発した.これを小学5年生(N=63)に実践し,創造性に関する心理尺度(因子:拡張性,論理性,積極性,独自性,集中性・持続性,収束性,精密性)と批判的思考に関する心理尺度(因子:探究心,客観性,論理的思考,証拠の重視)を用いて前後比較を行った. 本開発授業は,拡張性・論理性,好奇心・積極性,集中性・持続性,好奇心・積極性,精密性,探究心,証拠の重視の因子で創造性の伸長を期待できる結果が得られた.