著者
森田 裕介
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.593-600, 2023-02-02 (Released:2023-02-11)
参考文献数
40

本稿では,教育工学におけるオンライン教育の研究動向を概観することを目的とした.まず,オンライン教育に関連する研究のキーワードとして,遠隔教育,e ラーニング,ブレンディッドラーニング,オンライン教育に焦点を絞り,海外並びに日本の研究動向についてまとめた.次に,日本の高等教育のオンライン化を10年ごとに分け,1990年代を黎明期,2000年代を発展期,2010年代を拡張期,2020年以降を革新期とし,オンライン教育に関する研究の変遷を考察した.
著者
後藤 崇志 加納 圭
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.113-126, 2021-06-10 (Released:2021-06-18)
参考文献数
30

これまでの研究から,インフォーマルな科学教育が理科を学ぶ動機づけを高めることへの有効性が示される一方で,参加者層がもともと理科を学ぶ動機づけが高い人々に偏っているという問題点が指摘されていた.本研究では,商業施設において,遊びを入口とした科学ワークショップを実施することが,参加者層の偏りを解消するために有効な方策であると考えた.商業施設において,スーパーボールすくいを題材とした科学実験のワークショップを実施し,理科を学ぶ動機づけや科学への関心という観点から,参加者の人口統計学的な代表性について検討した.その結果,本研究で実施したワークショップは従来の研究で報告されていたものよりも代表性が高い参加者を集められていることが明らかとなった.
著者
三和 秀平 青山 拓実 解良 優基 山本 大貴
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46013, (Released:2022-12-14)
参考文献数
7

「どうして勉強しなきゃいけないの?」という勉強する理由についての哲学的な対話が学習動機づけに与える効果を検証した.研究1では大学生を対象に対話を行った結果,参加者の勉強に対する動機づけが向上する傾向がみられた.また,児童の動機づけを高めることができると思うか予想を求めたところ,概ね高めることができると考える傾向にあるものの,否定的な意見もみられた.そこで研究2では小学生を対象に対話を行った.その結果,日常生活における価値のみ向上がみられた.一方で,他の価値の側面や興味,努力の意図などの向上はみられなかった.
著者
西条 正樹
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.469-482, 2021-03-20 (Released:2021-03-25)
参考文献数
24

近年,スポーツ分野で海外留学を目指す日本人が増えている.本実践報告では,ジャンル準拠タスクを用いた英語教授法により,将来,海外でサッカーの選手や指導者になることを目指す学生または社会人の6名が,サッカーのトレーニング指導で外国語コミュニケーション能力をどのように高めたかを報告する.参加者は,全15週にわたる学習の中で2回(中期と後期)タスクパフォーマンス・テスト(英語でのサッカーのトレーニング指導)が課された.本研究では,参加者の英語による発話の変化の様子を,「語彙・文法」と「ジャンル構造」の観点から2種類の質的調査(学習ログ記録,半構造化インタビュー)を用いて分析した.その結果,ジャンル準拠タスクを用いた英語教授法により,参加者たちは分野に特化した語彙・文法やジャンル構造への認識を深め,タスクパフォーマンス・テストに応用したことがわかった.
著者
加藤 奈穂子 尾澤 重知
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.433-452, 2022-09-10 (Released:2022-09-15)
参考文献数
43

本研究の目的は,大学入学後のどのような学習経験がアンラーニングを促し,学習観に影響を与えるかを明らかにすることである.そのため大学3年生7名を対象とし半構造化インタビューをおこない複線経路等至性アプローチを用いて分析した.その結果,本研究の対象となった学生は,(1)大学入学後<大学生になり高校との違いに驚く>という経験や,(2)自分の意思とは違う<講義重視・一方向型授業>,(3)意欲的になる<演習重視・参加型授業>,(4)意欲的になる<プロジェクト型授業>のスパイラルな経験などを経て,授業に対して批判的な問題意識を醸成した.その結果,<強制的に知識を詰めこむ>という価値観に対してアンラーニングが生じるというプロセスが明らかになった.またアンラーニングの過程で,<対話により知識を構成する>,<グループで協力しながらゼロからデザインし試作品をつくる>という考えが生み出され<学習とは社会で活躍するために行うこと>とする学習観が強化されていた.
著者
渡辺 雄貴 加藤 浩 西原 明法
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.19-27, 2014-05-20 (Released:2016-08-11)

通勤・通学時に電車のような環境で学習する際には,学習以外に様々な情報を処理する必要がある.そこで本研究では,そのような環境下における情報の介入を想定し,動画コンテンツによる学習を行った際,どのような影響があるかをパフォーマンステストおよび質問紙調査により定量的,定性的に調査を行った.その結果,パフォーマンステストでは,内容理解を必要とする問題において,介入の有無により効果の差異があることが明らかになった.また,質問紙調査により,多くの被験者は視覚に対する介入と比較して,聴覚に対する介入を煩わしく思う傾向があることが明らかになった.
著者
伊藤 貴昭
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46018, (Released:2022-09-09)
参考文献数
8

本研究では対象指示コミュニケーション課題を用いて,図形を伝達するための説明とその正答数ならびに共感性との関連を検討した.大学生29名に対象指示コミュニケーション課題を実施し,同時に共感性尺度に回答させた.その結果,大学生の正答数はそれほど高くないことが示された.また,共感性については自己指向的な認知傾向である「想像性」と正答数との間に負の相関関係が見られた.本研究の結果は,情報を伝達するための説明を促す際の留意点を示唆している.
著者
恩田 真衣 大久保 紀一朗 板垣 翔大 泰山 裕 三井 一希 佐藤 和紀 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46026, (Released:2022-10-13)
参考文献数
9

本研究では,小学校第4学年理科「物のあたたまり方」の単元で日常生活や社会との関連を図るアニメーション教材を開発し,その効果を検証した.その結果,開発したアニメーション教材を使用すると,学習内容と日常生活や社会との関連に気づき,理科学習に対しての興味が高まること,アニメーション教材に,児童が選択したり,繰り返し試行したりできるような機能をつけることで,思考を深めようとする理科学習に対しての興味が高まること,正しい概念形成が促されることが示唆された.
著者
溝口 侑 前川 悠 古賀 友樹
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.3, pp.101-108, 2022-10-03 (Released:2022-10-03)

「居場所」としてのラーニングコモンズに着目し,桐蔭横浜大学を事例として,学生エンゲージメント・大学生活充実度との関連を検討した.その結果,ラーニングコモンズを協働して学習する場として利用している学生が多いことが明らかにされた.そして,ただ友人としゃべるのではなく,勉強を教えてもらうことや一緒に発表の準備をするなど,協働して学習する目的でラーニングコモンズを利用することと,情緒的エンゲージメントに関連が見られることが示された.
著者
長田 尚子 デイヴィス 恵美 髙尾 郁子 神崎 秀嗣 田中 浩朗
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.3, pp.34-41, 2022-10-03 (Released:2022-10-03)

継続的な授業改善を支援するために,実践コミュニティの存在が重要な役割を果たすとされている.しかしながら,実践コミュニティを誰がどのように構築するのか,そこで参加するメンバーはどのように行動するのか,そこでの行動によってコミュニティがどのように発展するのか,等については十分解明されていない.本研究では,相互研修型大学横断型FDの機会を通じて発展した実践コミュニティについて,当事者によるパターン・ランゲージの開発活動における談話例を用いて考察を深め,FDの領域における実践コミュニティ研究に関する課題を明らかにする.
著者
岡崎 善弘 大角 茂之
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.485-491, 2022-09-10 (Released:2022-09-15)
参考文献数
20

本研究では,設計図の利用がプログラミング的思考の「分解」の理解に与える効果を検討した.小学4年生から小学6年生の児童が2日間のプログラミング体験講座に参加した.プログラミング体験講座は,設計図を示しながらプログラミングを教える設計図あり群と単にプログラミングを教える設計図なし群で実施された.プログラミングを終えた後,ゲームに必要な構成要素を考えさせた.構成要素の数を2群間で比較した結果,構成要素の数は設計図あり群の方が多かった.本研究の結果から,設計図の利用はプログラミング的思考の「分解」の理解を促進することが示唆された.
著者
武田 俊之
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.1, pp.135-140, 2021 (Released:2021-10-24)

データ利用による教育効果向上への期待と個人データの収集や分析手法の開発が先行する一方で,利用目的の精査,データ分析の効果,プロファイリングや目的外の利用等の課題について十分な検討がおこなわれているとはいえない.この発表では,教育におけるデータのライフサイクル,種類,教育研究との関連等の問題について論じる.
著者
武田 俊之
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.3, pp.48-55, 2021-10-29 (Released:2021-10-29)

「エビデンスに基づく教育」の推進において,明瞭なエビデンス概念や概念の共有は,実践・研究横断的なエビデンスを「つくる」「つたえる」「つかう」プロセスにおいて重要である.この論文でエビデンスに基づく医療について整理した上で,英米におけるエビデンスに基づく教育,特に仲介機関の役割を論じた上で,日本における受容およびその課題について述べる.
著者
吉田 英彰
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.393-403, 2022-05-20 (Released:2022-06-22)
参考文献数
51

本稿は,未来の学習のための準備(Preparation for Future Learning:PFL)研究に着目し,個別最適な学びの実現について検討を行った.1999年から2020年の間に,学術誌に査読付き論文として掲載された論文のうち,ICT を活用したPFL に関する論文に絞り研究内容のレビューを行った.その結果,ICT を活用したPFL により,既有知識や学習達成度を把握でき指導の個別化に有効であること,自己調整しながら学習を進めることができ学習の個性化に有効であることが示唆された.最後に,PFL の知見を個別最適な学びのアプローチの一つとして位置づけ,今後研究を進めていく上での課題を検討した.
著者
高橋 純 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.suppl, pp.133-136, 2005-03-20 (Released:2016-08-01)
参考文献数
4
被引用文献数
9

22,810人の小学生を対象に, キーボード入力スキルの現状を調査した.その結果, 次のことが明らかとなった.1)ひらがな一文字の入力では, 最も遅い3年生が14.9[文字/分], 最も速い6年生は25.4[文字/分]であった.また, 正確さは, 最も低い3年生が77.3[%], 最も高い6年生は86.2[%]であった.2)キーボード入力の基本的なトレーニングが完了すれば, 学年による差の少ない速さで入力できる.3)入力の速さは, 学年が高いほど少ない試合数で向上する.4)入力の正確さは, 濁音の文字が最も低い.特に, 濁音の中でも「ぢ」「づ」が最も正確に入力ができない.
著者
遠藤 みなみ 佐藤 和紀 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.2, pp.27-31, 2022-06-27 (Released:2022-06-27)

本研究では,クラウド上のスプレッドシートを利用して振り返りを入力する実践の初期段階における児童の意識調査を行った.その結果,児童は,スプレッドシートでの振り返りの効果については【今後の学習に役立つ】,【タイピングが速くなる】と回答した.効率については【修正がしやすい】,【速く書くことができる】と回答した.一方で,負担については【ファイルを開く手間】,【タイピングが大変】と回答した.不満については,【ネットの接続に時間がかかる】と回答した.
著者
大久保 紀一朗 板垣 翔大 佐藤 和紀 中川 哲 山本 朋弘 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.2, pp.60-67, 2022-06-27 (Released:2022-06-27)

本研究では,小学校第6学年を対象にAIの画像認識について理解する学習を開発し,児童のAIに対する理解や意識の変容から授業を評価した.授業は4単位時間で実施し,画像認識の仕組みについてAIについて体験的に理解する学習と,身近な問題解決にAIの活用を体験する学習を実施した.事前調査とAIについて体験的に理解する学習後の事後調査1,身近な問題解決にAIの活用を体験する学習後の事後調査2の結果の比較から,開発した学習プログラムの効果を検討した.
著者
手塚 和佳奈 井澤 美砂 佐藤 和紀 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.2, pp.169-176, 2022-06-27 (Released:2022-06-27)

本研究は,各教科等において想定されるメディア・リテラシーを検討することを目的とした.平成29年告示小学校学習指導要領における教科等の目標及び内容に関する記述から,メディア・リテラシーに関連すると考えられる記述を抽出し,メディア・リテラシーの構成要素(中橋 2014)に対応づけて分析した.その結果,全ての教科等でメディア・リテラシーの構成要素と対応づけることができ,教科等により関連づけた構成要素の種類やその内訳の特徴が異なることが示された.
著者
井澤 美砂 大行 莉乃 堀内 蓮太郎 神生 凌我 佐藤 和紀 森下 孟
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.2, pp.130-135, 2022-06-27 (Released:2022-06-27)

本研究では,教員養成学部生の情報モラル指導力育成に対する有効性とICT活用指導力への影響を明らかにすることを目的とした.学校現場で児童生徒に指導を行っている外部講師による講義後,受講生を対象に情報モラルの意識及びICT活用指導力に関するアンケート調査を実施した.その結果,本講義を通じて情報モラル教育について学ぶ良い契機となったことが窺えたが,実践的なICT活用指導力の向上にはつながらなかった.
著者
齊藤 陽花 金松 萌々花 南條 優 下﨑 高 小泉 遥香 佐藤 和紀 森下 孟
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.2, pp.96-101, 2022-06-27 (Released:2022-06-27)

本研究では,X大学の教員養成学部1年生を対象に,高校時のオンライン授業の経験の有無が,ICT活用指導力にどのような影響を及ぼすのか検討することを目的として,それらに関するアンケートを実施した.その結果,①オンライン授業の経験をしていた学生の割合は,高校2年次が最も高く,次いで高校3年次,また,高校1年次はオンライン授業の経験はほとんどなく,②オンライン授業の経験により,オンライン授業に対する肯定的な意見や情報モラル指導に関する意識を持つことができると示唆された.