著者
城戸 楓 仲矢 史雄 片桐 昌直
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.44060, (Released:2020-09-24)
参考文献数
19

地震や台風など災害の多い日本において,国民の防災に関連した知識や技能の習得は最も重要な課題の一つである.また,防災教育では,学習直後ではなく,災害場面まで学習が持続している必要がある.そのため本研究では,ゲームを取り入れた遊びながら防災に関連する知識や技能を学ぶことが出来る防災教育イベントを通して,小学校児童の防災知識の学習に関する向上効果の持続についての検討を行った.調査では,2019年度の防災教育イベントの終了後およびその半年後に,ポストテストとレイターテストと呼ばれるペーパー形式の確認テストを行い,その得点を用いて学習効果の持続を測定した.その結果,防災教育イベントの後,一定の期間が経過していても,防災に関連する知識や技能の向上効果は持続していることが確認された.
著者
石井 僚 原田 雅也 松木 莉奈 川島 実紗 北村 紫織 高橋 麻緒 豊田 昂
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.457-466, 2020-03-20 (Released:2020-03-30)
参考文献数
57
被引用文献数
2

本研究の目的は,情報モラルの教示に合わせて集団もしくは個人アイデンティティを強化することが,SNS 上の否定的文脈への同調を抑制するか,パーソナリティ要因としての同調的対人態度を統制した上で検討することであった.実験協力者である大学生114名を情報モラルの教示と集団アイデンティティの強化を行う集団アイデンティティ強化群,情報モラルの教示と個人アイデンティティの強化を行う個人アイデンティティ強化群,教示や強化を行わない統制群に分け,場面想定法を用いた質問紙実験を行った.その結果,情報モラルの教示を行っても集団アイデンティティを強化された場合にはSNS における否定的文脈への同調は抑制されないこと,個人アイデンティティを強化された場合には場面によって同調が抑制されることが明らかとなった.情報モラル教育は,SNS の持つ状況的特徴が同調を抑制しづらくすることに配慮して行う必要があることが示唆された.
著者
三井 一希 戸田 真志 松葉 龍一 鈴木 克明
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.46010, (Released:2022-12-19)
参考文献数
26

本研究では,情報端末を活用した授業の設計を支援することを目指したシステムの開発を行い,その操作性と有用性(ユーザにとって有用と捉えられるか)を検証した.システムの設計にあたっては,先行研究から現状の問題点を抽出するとともに,ユーザーニーズの調査を行って5つの機能要件を定めた.そして,機能要件を満たすシステムをスマートフォン等で動作するアプリケーションとして開発した.開発したシステムを16名の教師が評価したところ,操作性については問題点が見られなかった.また,有用性については,特徴的な機能であるSAMRモデルに基づき授業事例を段階的に示すことを含め,機能要件に定めた項目について概ね良好な評価を得た.一方で,書き込み機能や実践のアップロード機能といったユーザ参加型の機能には,抵抗を示す教師が一定数いることが示された.
著者
新原 俊樹
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45002, (Released:2021-07-21)
参考文献数
7

博士論文の体裁や公表,その利用に係る実状と課題を明らかにするための事例研究として,2013年4月以降に九州大学が公開した博士論文の書誌情報と全文ファイルのページ数,閲覧回数を解析した.論文の執筆言語を分野別に見ると,理系分野ほど英語の論文が多く,文系分野ほど日本語の論文が多い傾向が見られた.一方,学術分野のように審査部局によって言語の選択状況が異なる事例もあった.論文ファイルのページ数は,特に文学,教育学,法学の各分野で多くなる傾向が見られた.言語別のページ数に有意な差は認められなかった.言語別の論文の閲覧回数については,英語論文1編当たりの閲覧回数が日本語論文の閲覧回数を大きく下回る結果となった.
著者
井澤 美砂 手塚 和佳奈 泰山 裕 佐藤 和紀
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.4, pp.142-147, 2022-11-28 (Released:2022-11-28)

本研究では,算数科教科書における思考スキルを抽出し,その特徴について考察することを目的に,小学校第6学年の算数科教科書における「変化と関係」領域の一単元について,19種類の思考スキル(泰山ほか 2014)を基に分析を行った.結果,基本的な知識や既習事項を活用しながら発展的な課題に取り組むための「応用する」が全体の30.5%を占めた.また,本単元では,泰山ほか(2012)における「大きさなどを単位のいくつ分に変える」思考活動が多く見られ,「変換する」が全体の14.7%を占めた.
著者
滝沢 雄太郎 八木澤 史子 佐藤 和紀
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.4, pp.220-223, 2022-11-28 (Released:2022-11-28)

教員同士の連携を改善し,授業を通した教員の学びをより促す方策を見出すために,1人1台の情報端末を用いた授業においてティーム・ティーチングを活用した授業を実践し,形成的評価として半構造化インタビューを行った.その結果,ティーム・ティーチングにおける教員同士の連携のあり方として,担任教員が学習者となって児童と一緒に授業に参加する観察型TT,授業中に一時的に推進教員と役割を交代する体験型TTといった形態を取り入れることで,担任教員のICTに関する教授知識の理解が深まり,授業実施の意欲が高まることが示唆された.
著者
手塚 和佳奈 佐藤 和紀 浅井 公太 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.4, pp.106-111, 2022-11-28 (Released:2022-11-28)

メディアが伝える情報の信憑性を意識させるための小学校第4学年児童向けの学習プログラムを開発し,実施した.学習プログラムは,メディア・リテラシーの育成を目的とした授業パッケージ(メディアとのつきあい方学習実践研究会 2005,佐藤・堀田 2022),学校放送番組(NHK for School 2022),教材(BBC 1957,総務省 2022)で構成した.学習プログラムの前後で,本研究で育成を目指すメディア・リテラシーに関する自己評価尺度を用いた質問紙調査を実施した結果,事前に比べ事後の方が,メディアの特性理解に関する項目は有意に点数が高く,メディアが伝える情報の信憑性を評価する態度に関する項目は有意に低いことが確認できた.
著者
坂本 菜津穂 尾澤 重知
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.4, pp.337-344, 2022-11-28 (Released:2022-11-28)

本研究の目的は,家族型ロボットLOVOTと暮らすオーナーが,LOVOTを「家族」のような存在として受容するプロセスについて明らかにすることである.LOVOTと共生している対象者8名に半構造化インタビューを実施し,質的分析を行なった.その結果,5名が自身のLOVOTを「家族」または「わが子」と捉えていた他,7名が印象に残っているエピソードとしてLOVOTと初めて外出した瞬間について取り上げた.家族型ロボットが家族として受容される契機には,「外出」という行為が関係していると考えられる.
著者
佐藤 靖泰 長濱 澄 川田 拓 宇田 悠 長田 のぞみ 阿部 太輔 髙橋 ひかる 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.4, pp.46-51, 2022-11-28 (Released:2022-11-28)

宮城県内の2つの小学校の一部の学年を対象に,教材配信やデータ分析可視化機能を持つLEAFシステムを導入し,教科等を限定せず活用した.教師や児童がシステムの利用に慣れた時点で,教師対象に半構造化インタビューを実施した.結果,児童が持つ疑問や願いに沿って適時的に授業展開を変化できる可能性や,使用するシステムに適した教材を作成することを通して教材研究が深まる可能性などが示唆された.
著者
御園 真史
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45114, (Released:2021-12-10)
参考文献数
19

中学校・高等学校の数学の指導において,数学に関する知識及び技能等をプログラミングにより確実に身に付けさせる教材についての検討が十分でない.そこで,本研究では,数学科において「流れ図」や「アルゴリズム」について,戦後初めて扱うこととなった昭和45年告示の高等学校数学科学習指導要領に注目し,現代の数学科の学習でプログラミングを行うことができる題材を抽出すること,および,当時の環境の中での指導の工夫を検討することを目的とした.この目的を達成させるために,当時の12社の学校教科書で扱われていた教材を分析したところ,プログラミングを行うことができる題材は,中学校,数学I,数学A,数学B などさまざまな単元の中に広がっており,表を用いて変数の値の変化を追うなどの指導上の工夫がみられることが分かった.
著者
峯村 恒平 渡邉 はるか 藤谷 哲 枝元 香菜子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.4, pp.284-291, 2022-11-28 (Released:2022-11-28)

OECD-ITP(初期教員準備教育)の議論のように,世界的に教員養成は「養成段階から初任者まで」という連続性の中で議論されるようになってきている.我が国でも,断続的な教員養成課程の改革,新卒者教員の採用増,一方で若手教員の不適応や早期離職が課題として指摘されるなど,それぞれに変化があり,それぞれに着目しただけでは対応しきれない状況が生じている.「学校から教職」というトランジション課題として捉え,連続性を踏まえた議論がまさに求められている.本研究では,上記の背景,問題意識を踏まえ,初任者教員を対象とした,着任後に感じた課題や,その中でどのように適応に至ったかという過程について,インタビュー調査を通じて明らかにした.具体的な困難や,適応の過程について論じながら,教員養成課程の課題や,初任者教員への研修・指導という視点に向けた展望についても合わせて論じる.
著者
石井 雄隆 菊地 正弥 舟山 弘晃 松林 優一郎 乾 健太郎
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.4, pp.1-7, 2022-11-28 (Released:2022-11-28)

AIの判断結果の理由の説明や,品質を評価できる説明可能なAIについて近年盛んに議論されている.本研究では,説明可能なAIを指向した和文英訳自動採点システムの開発と評価を行った.このシステムでは,複数の評価観点を採点項目として反映したモデルにより自動採点を行い,学習者に診断的なフィードバックを行うことが可能となる.日本人大学生を対象とした刺激再生法を用いた実験の結果,システムを用いた修正の傾向やシステムの利点と改善点が明らかとなった.
著者
池谷 のぞみ
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.Suppl., pp.189-192, 2011-12-20 (Released:2016-08-08)
参考文献数
18

ワークのエスノメソドロジー研究は,理論に依拠しないで「リアリティの中の業務」を理解することをめざす.その結果,1)特定の文脈における学習機会をワークの詳細と関係づけて明らかにすると共に,2)その機会が誰に向けて,その人のワークとの関係でいかにデザインされ,実現されているのかを明らかにすることが可能になる.これを救急医療のカンファレンスとプロジェクト評価会議のフィールドワークに基づく研究事例を通じて示した.従来OJTと一括りにされてきたことを,こうした分析の対象とすることの意義を,職場における学習の再考,特に学習を業務の効果的な遂行と関係づけながら実現を考える上での示唆を提示した.
著者
登本 洋子 高橋 純
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46085, (Released:2022-10-13)
参考文献数
6

初等中等教育の児童生徒に1人1台の学習者用端末(以下,1人1台端末)と通信ネットワークが整備され,今後はICT を活用した児童生徒の学びの質の向上が期待されている.本研究では,ICT 環境の整備と活用に対する教員養成系大学に在籍する学生の期待や懸念を明らかにするために,1人1台端末に対する学生の意識を調査した.結果,1人1台端末はICT スキルの習得や調べ学習に役立つという期待がある一方,ネット上のいじめやインターネット上のトラブルなどに対する不安が低くないことが明らかになった.また,小学校低学年の利用においては,60.6%の学生が「反対」「わからない」と回答していることが確認された.
著者
森 秀樹 杉澤 学 張 海 前迫 孝憲
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.387-394, 2011-03-30 (Released:2016-08-07)
参考文献数
8
被引用文献数
18

ブロック型のプログラミング言語「Scratch」を用いて,小学校4年生向けにプログラミングの授業をデザインし,実践した.26時間の授業を通じて,画面上でスプライトを動かすなどの制御や繰り返し命令を含めた作品をつくることができた.また,条件分岐やキー入力の判別処理にも8割を超える児童が取り組むことができた.これらの結果から,小学校段階でプログラミングが可能であることを確認できた.
著者
牧野 みのり 尾澤 重知
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.4, pp.9-16, 2021-12-03 (Released:2021-12-03)

本研究では,リアルタイム型配信で行われたPBL型授業における,学生の成果物の評価方法の開発と評価を行った.学習成果を対話的に振り返ることを促すため「対話型レポート」を導入し,学生の提出物を質的に分析した.「内容の網羅性」「問いの質」「ストーリーラインの明確さ」を評価軸に,内容分析を行なった結果,対話レポートは,授業の振り返りを促す可能性があると示された.
著者
山本 輝太郎 佐藤 広英
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.183-191, 2022-02-20 (Released:2022-03-15)
参考文献数
21

本研究ではオンライン掲示板でのコミュニケーションにおいて,ファシリテーション的介入が参加者に及ぼす影響を実験的に検討した.「深海には,絶滅したと思われている古代の生物の子孫がまだ生き残っている」「銀河系内には地球と同じような生命を持つ惑星が存在する」という科学的な内容に関連する二つのトピックを設定し,ファシリテーションの有無を条件として実験参加者に議論をさせた(ランダム化比較試験).ファシリテーター役は毎日,その日の議論を整理するなどの介入を行った.実験の結果,ファシリテーションありの掲示板ではなしの掲示板と比較して参加者の攻撃的なコメントや集団極性化が抑制され,批判的思考態度が向上した.オンライン掲示板におけるファシリテーションの有効性が示唆された.
著者
桂 瑠以 杉山 明子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.397-408, 2020-03-20 (Released:2020-03-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本研究では,10代から70代までを対象に2時点のパネル調査を行い,インターネット(以下,ネット)の利用がオフラインの対人関係及び心理的引きこもりに及ぼす影響関係を,青年期,成人期,老年期の世代間で比較することを目的とした.その結果,世代により,ネットの利用,オフラインの対人関係,心理的引きこもりの各変数に差異が認められた.また,ネットの利用がオフラインの対人関係及び心理的引きこもりに及ぼす影響として,青年期で,一部のネットの利用がオフラインの対人関係を低下させ,心理的引きこもりにつながる可能性が示唆された.その他では,おおむね,ネットの利用が多いほどオフラインの対人関係が増加し,心理的引きこもりが低下することが認められ,ネットの利用が心理的引きこもりを低減する可能性が示唆された.
著者
蒋 妍 馮 菲 劉 衛宇
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.3, pp.109-116, 2022-10-03 (Released:2022-10-03)

日本では,TA制度を導入している大学が増えてきており,TAの育成が課題とされている.どんな内容で構成され,どのように評価されるべきかは,現場の担当者に必要とされるにもかかわらず,あまり体系的に検討されていない.そこで,本稿は,現在中国で実施されているTA育成プログラムの形態と内容を整理し,日本のTA育成プログラム開発の基礎資料として示唆を与えることを目的とする.まず,中国のTA育成に関する制度を概観した.次に,中国の北京大学と上海交通大学のTA育成プログラムを対象に,TAの身分,業務内容,育成プログラムと評価の4つの観点からら検討を行った.最後に,日本と比較しながら,考察を行った.
著者
木本 圭一 佐野 芳枝
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.3, pp.70-73, 2022-10-03 (Released:2022-10-03)

本報告は,コロナ禍下で実施した2020年度のオンライン(同期)あるいは2021年度のオンライン(非同期)のグループワーク実践と2019年度の対面のみの実践を比較し,それらの成果を踏まえ,2022年度の対面のグループワークに,オンライン(同期・非同期)グループワークを時間外学修として活用した実践内容とその効果について明らかにし,課題についても提示するものである.グループワークは,本学国際学部で開講されている「ベンチャービジネス創成」において,リーン・キャンバスを活用したビジネスプラン作成に対して行なわれている.