著者
中村 美智子 冨永 敦子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.4, pp.45-52, 2021-12-03 (Released:2021-12-03)

学生チューターを活用した学習支援センターが日本の大学に定着している.しかし,チューターに求められる「学習支援力」とは何か,それを育成するチューター研修とはどのようなものかに関する知見は少ない.本稿では,この問題への探索的な試みとして,チューターによるスキャフォルディング・ストラテジーの分析を行った.分類されたモデル例をもとにストラテジーの習得を促すチューター研修について考察する.
著者
宮尾 万理
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.4, pp.140-143, 2021-12-03 (Released:2021-12-03)

学校教育において思考力・判断力・表現力の育成が重視されているが,思考力とは具体的に何ができる能力で,その国際的な水準とは何なのか.大学英語教育が担うべき思考力育成の具体策を探る一環として,本研究はCambridge International AS & A Levelsにある『Thinking Skills』科目のシラバスとモデル試験問題を分析した.その結果,諸外国で高等教育を開始するまでに,論証に含まれる証拠を評価・使用する力および推論を分析・評価・構築する力を身につけるよう求められていることがわかった.
著者
山本 良太 鈴木 慶樹
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.4, pp.25-32, 2021-12-03 (Released:2021-12-03)

本研究では,結びつきが弱いと想定される正課と正課外の学習活動がどう連関しキャリア展望を軸にした学習へ発展するか,という問いから,著者間の対話データを分析した.その結果,正課にはキャリア展望を意識させるシステムがあり,学生は状況や環境に支えられながら正課や正課外を問わず没入を通じた学習へと参加し,双方を接続させる機会を通じて経験を掘り起こしながらキャリア展望を具体化する可能性が示唆された.
著者
山田 徹志 宮田 真宏 中村 友昭 前野 隆司 大森 隆司
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.44010, (Released:2020-11-27)
参考文献数
25

本論文では,保育分野(就学前教育・養育)において「子どもの育ち」を解釈する為の新たな方策として,子どもの位置・向き情報から関心を推定する分析手法の開発について報告する.我々はこれまでの研究から保育者が経験的に子どもの関心を読み取る際,子どもの位置・向きという行動特徴量を参照することを示した.同時に,人による関心状態の評価に対してベイズ推定を用いることで定量化できることが示唆された.これらをうけ本研究では,記録した保育活動場面の映像データ中の子どもの位置・向き情報と関心の対象について保育者によるアノテーションを実施した.その後,人手による関心記述の行動尤度と機械学習(HMM法,LDA法)による行動尤度を比較分析した.結果,取得した保育活動場面における幼児18名の関心の傾向は位置・向き情報から推定可能であることが示された.
著者
名知 秀斗
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45008, (Released:2021-11-25)
参考文献数
14

近年,汎用的能力や資質・能力の一つとして,批判的思考が着目されている.本研究では,批判的思考態度の育成を目指し,トゥ―ルミン・モデルを取り入れた数学教育の開発と評価を行った.その結果,本研究で開発した授業が,批判的思考態度を向上させる可能性が示唆された.
著者
澁川 幸加
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.3, pp.80-87, 2021-10-29 (Released:2021-10-29)

本稿では,高校と大学における遠隔授業や「ハイブリッド化」の制度上の特徴と相違を整理した.具体的には,①遠隔授業の制度上の相違を整理した結果,大学は教室外の自宅等から受講できる同期・非同期双方向型の遠隔授業が,高校は生徒が教室で受講する同期双方向型の遠隔授業が実施できること,②ハイブリッド化の相違を卒業単位・一単位・活動レベルで検討した結果,高校では一単位レベルの方法が限定されることや,活動レベルに対応するハイフレックス型が原則実施できないことなどを示した.
著者
八木澤 史子 安里 基子 遠藤 みなみ 佐藤 和紀 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.3, pp.118-123, 2021-10-29 (Released:2021-10-29)

クラウドでの共同編集機能を用いて,若手教師が作成した学習指導案を,ベテラン教師の助言を受けながら修正するという実践を行った.修正は2つの方法で実施した.1つめは,クラウドサービスのアプリを利用した「共同編集機能のみ」,2つめはクラウドサービスのアプリに加えて,テレビ会議システムを利用した「共同編集機能およびオンラインによる対話」であった.結果,2つの方法ではやりとりされたコメントの数に違いがあることが示唆された.
著者
丸山 悟 吉井 彰宏 水落 芳明
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Suppl., pp.133-136, 2013-12-20 (Released:2016-08-10)

本研究では,ティーム・ティーチング(以下,TTとする)の授業形態において,同時通話のできるトランシーバーを用いて,教職経験のない大学院生(以下,学卒院生とする)が教員の大学院生(以下,現職院生とする)の発話を聴取可能にすることで,学卒院生の発話に与える効果について検証した.その結果,授業実践の経過と共に,学卒院生の学習者を指導する具体的な発話数が増加したことが確認された.また,学卒院生は指導の不安感が軽減し,学習場面に応じて発話を主体的に選択できるようになったことが明らかになった.以上から学卒院生が現職院生の発話を聴取可能にすることにより,効果的な発話の情報を獲得できることが示唆された.
著者
伏木田 稚子 大浦 弘樹 吉川 遼
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.44054, (Released:2020-09-07)
参考文献数
39

本研究では,統計の基礎とデータ分析を扱う反転授業において,受講生の理解度と講義動画の視聴行動を検討した.実践では,講義動画と対面学習の内容に関連があり,真正性の高い問題解決を要するゲームを用いて,動画視聴の前に認識的準備活動 (EPA) を行った.EPAの実施単位として個人EPA群と協調EPA群を設定し,受講前,中間,受講後の理解度テストの得点を比較した後,動画視聴の比率やスタイルを分析した.その結果,(1) 個人EPA群と協調EPA群の違いにかかわらず,受講生全体の理解度が向上する,(2) 協調EPA群の方が,対面での演習活動前に理解度がより向上しやすい,(3) 個人EPA群の方が講義動画を選択的に反復視聴する傾向がみられる,などの示唆が得られた.
著者
遠藤 みなみ 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45070, (Released:2021-08-06)
参考文献数
12

本研究では,小学校の初任者教師のICT 活用に関する省察について,2020年度から小学校の初任者教師として勤務した教師A(第一著者)による省察の記録を基にした自己エスノグラフィーにより把握し,坂本(2007)の枠組に基づいて整理した.その結果,11カテゴリが生成された.教師A は,「個人での省察」において【ICT 活用による授業の力量不足の補填】などを省察し,「個人での省察」や先輩教師の指導による「協同的な省察」において【ICT を活用した授業の力量不足】などを省察していた.また,「協同的な省察」や,職員室でのICT 活用の話題による「日常的に埋め込まれた学習」において【ICT 活用の授業的な職場の雰囲気】などを省察していた.
著者
見城 佑衣 大山 牧子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
2022

<p>震災や災害を題材とした探究学習はフィールドワークを伴うことが多いが,遠隔地でも学習できるようICTを活用した学習環境の構築が求められる.本研究の目的は,フィールドワークの代替としてのVRの活用を組み込んだ東日本大震災を題材とする中学生向け探究学習プログラムを開発・実践することである.その結果,学習者は震災についての関心・理解が高まるとともに,探究活動で必要とされる汎用的能力を獲得した感覚があることが確認された.VR映像の体験は,提示できる情報に限りがある点や使用感で課題があるものの,学習者が現地の構造物の高度を実感したり,没入感を抱いたりすることができる点において有効で,震災や災害を題材とした探究学習の理解の一助となる可能性が示された.</p>
著者
淺田 義和 村岡 千種 前田 佳孝 鈴木 義彦 川平 洋
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45072, (Released:2021-09-02)
参考文献数
7

脱出ゲーム(Escape Roon,以下ER)を用いた教育は近年で増加傾向にあり,医療分野を含めて種々の事例が報告されている.しかし,2020年度の新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け,従来の対面で行うER 活用教育は実践が困難となっていた.本稿では,従来は対面で実施していたER をMoodle 上でのオンラインER へと形式変更し,実践した結果を報告する.オンラインER としたことにより,密の状態を回避したうえでの運営が可能となった.また,対面とは異なる環境での意見交換の困難さを経験したことによる学びの省察も生じていた.今後はMoodle上でのログ解析などを通じ,ER の学習分析などにも視野を広げる必要があると考える.
著者
登本 洋子 高橋 純
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.45026, (Released:2021-08-24)
参考文献数
18

学校も社会と同様にDXが求められている.2019年12月にGIGAスクール構想が示され,児童生徒一人に1台の情報端末が整備されようとしているが,これまでのICT機器に対する意識や経験の差などから,1人1台の情報端末が学習で活用されるものになるのか懸念がある.本研究ではICT環境の整備やICT活用に対する教員の期待や懸念を明らかにするために,児童生徒1人1台の情報端末の活用に対する初等中等教育の教員の意識を調査した.結果,1人1台の情報端末の活用は進んでおらず,情報端末は学びに役立つと期待がある一方,ICT環境の整備や児童生徒の心身の健康に対する不安も低くない.ICT機器を学習で活用し,児童生徒の生活を向上させるためには,まずはICT環境を整備し,ICT活用に対する理解を深め,児童生徒の心身への影響やトラブルに対する不安を解消していく必要がある.
著者
伏木田 稚子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45104, (Released:2021-07-30)
参考文献数
11

本研究では,学部2年生以上が対象のゼミナールについて,教員が実践上で抱える困難と学生にとってのゼミナールの価値に対する自己評価の検討を目的とした.質問紙調査の結果,「活動および指導の充実」や「学生の能力・意欲の不足」に困難を感じているほど,「自由な探究と積極的な議論」が成り立たず,「活動および指導の充実」を問題視しているほど,「メンバー間の良好な関係」が保たれていないと評価していることが示唆された.その一方で,実践上の困難の認識と学生の認知的な成長の評価には,有意な関係がみられなかった.
著者
高橋B. 徹
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.2, pp.59-63, 2021-07-03 (Released:2021-07-05)

大学でのキャリア教育において自己分析と業界・企業分析を深めさせることは新卒の離職率を抑える上で重要である.一方で,キャリアに対する前向きな態度も離職率を抑える上で寄与すると考えられる.本稿ではそれらが就職後の就職先への満足度にどの程度相関があるかの調査を行った.調査の結果,自己分析や業界・企業分析やキャリアに対する前向きな態度と就職先への満足度に相関が認められた.一方で,キャリアに対する前向きな態度があっても,自己分析や業界・企業分析ほど満足度には結び付かないことも分かった.また,そもそもキャリアに対して前向きな態度を持つものほど自己分析と業界・企業分析をしていることが明らかになった.
著者
山本 朋弘 野上 俊一 石田 靖弘 小柳 和喜雄 廣瀬 真琴
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.2, pp.120-127, 2021-07-03 (Released:2021-07-05)

本研究では,児童生徒一人1台の情報端末が整備された教室環境を想定した,教員養成課程の大学生に今後必要となるICT活用指導力に関する指標について検討した.海外のICTコンピテンシーを参考に検討した結果,教師の学びや新たな技術や方法への対応,授業のデザイン等,指標を定期的に更新する視点について整理した.また,授業でのICT活用や校務の情報化について,ICT活用指導力に関する具体的な場面と具体例を示す必要があるとともに,SNSやAI,VR・AR等の新たなテクノロジーや新たな方法への理解を加えることが必要であることを提案した.
著者
塩崎 雅基 永田 正樹
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.2, pp.13-16, 2021-07-03 (Released:2021-07-05)

現在,データを収集し分析・可視化できるエンジニアの育成が急務となっている.これらのスキルを持った人材をデータサイエンティストと呼ぶが,分野の対応領域が幅広く,明確な定義づけが難しい.そのため,教育手法も確立されておらず,就職した学生のミスマッチが発生している.本研究ではデータサイエンティストの教育手法開発及び,就職マッチングシステムの開発を目指す.
著者
荒木 淳子 高橋 薫 佐藤 朝美
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.47105, (Released:2024-04-05)
参考文献数
25

本研究の目的は,高等学校で探究学習を行った経験と大学での学び,キャリア探索との関連を明らかにすることである.全国の4年制大学1,2年生を対象にWebアンケート調査を実施し,高等学校での探究型授業経験と,大学でのキャリア探索,授業プロセス・パフォーマンス,ライフキャリア・レジリエンスとの関連を調べた.255名の回答を分析した結果,高校時代にSGH/SSHともに経験した回答者は環境探索の得点が有意に高く,SGH/SSHともに経験した回答者とその他の探究型授業をした回答者は探究型授業経験のない回答者よりも自己探索の得点が有意に高かった.一方,主体的な学習態度である授業プロセス・パフォーマンス,ライフキャリア・レジリエンスに有意な差は見られなかった.
著者
稲垣 忠 平井 聡一郎 佐藤 雄太
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2024, no.1, pp.201-208, 2024-05-11 (Released:2024-05-14)

児童生徒に共通したゴール設定のもとで個別あるいはグループで探究に従事するプロジェクト型学習を対象に,生成AIと対話しながら授業構想を検討するシミュレーターを開発した.プロンプトとしてPBLをデザインするIDプロセスを組み込むことで対話的に順を追って授業設計ができるよう支援した.探究学習をテーマとした教員対象のワークショップにおいて本シミュレーターを試用する機会を設定した結果,授業アイデアを広げること,PBLに対する実践意欲の高まりとともに,生成AIを利用することに対しても意欲的になったとの評価を得ることができた.
著者
澁谷 菜穂子 尾澤 重知
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2024, no.1, pp.193-200, 2024-05-11 (Released:2024-05-14)

本研究の目的は,ポテンシャル採用枠の中途採用者5名を対象に,入社から一人前に至るまでに獲得した職務上の技能とアイデンティティの変容プロセスを,組織社会化の観点から検討することである.半構造化インタビューを実施し,複線径路等至性アプローチ(TEA)にて分析した.その結果,技能獲得に至る行動は,前職で形成されたアイデンティティが影響していた.組織が定める一人前に至った後は,前職と現職を比較し,職場におけるアイデンティティを形成していた.