著者
小杉 大輔
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.129-132, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究は,大学生がインターネット上で現実の自己に近い自己を表出するのか,あるいは,より理想に近い自己を表出するのかについて,自己呈示の観点から明らかにすることを目的とした.大学1年生に対し,Big Five 尺度を用いて,現実の自己・理想の自己・インターネット上の自己のパーソナリティ特性についての評価を求め,Big Five の5因子の特性が,これら3つの自己においてどのように変わるのかについて分析を行った.その結果,調査対象は,インターネット上において,開放性については現実の自己に近い自己を,その他の4因子では現実の自己よりも理想に近い自己を表出する可能性が示唆された.
著者
三井 一希 藤森 啓太 戸田 真志
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S47037, (Released:2023-11-24)
参考文献数
7

小学生を対象に,AI(Artificial Intelligence)による画像認識機能の体験を組み込んだ水産業に関する授業を開発し,授業実践を通じた評価を行った.質問紙やインタビュー調査の結果から,開発した授業は児童や教師に概ね好意的に受け止められること,児童が水産業への興味や関心を高めたりすることに寄与する可能性が示された.また,自分にとって身近な問題として児童が学習に取り組める可能性が示唆された.
著者
城戸 楓 池田 めぐみ
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.579-587, 2022-09-10 (Released:2022-09-15)
参考文献数
31
被引用文献数
1

昨今,これまで多くの研究分野において最も強力なツールの一つとして研究のエヴィデンスを支えてきた帰無仮説有意性検定に疑問が投げかけられている.本稿では,こうした帰無仮説有意性検定の際に信頼性を高めるために報告が求められる効果量を取り上げ,『日本教育工学会論文誌』において過去10年間でどの程度効果量が論文に記載されていたのかについて調査を行った.この結果,『日本教育工学会論文誌』では,2016年ごろより効果量について論文内で掲示される比率が増加していたが,海外での掲載比率ほど高まってはおらず,また近年では少し下落している傾向が見られた.また,教育システム論文では特に効果量が記載されない比率が高かったことが分かった.
著者
酒井 浩二 吉川 秀樹 徳田 仁子 松本 しのぶ 千葉 晃央 西川 潤 中木 直子 高見 茂
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.3, pp.180-187, 2023-10-16 (Released:2023-10-16)

大学設置基準改正で,2019年度から大学は学部等が連携して編成する教育課程「学部等連係課程」を置くことができるよう制度化された.本稿では,学部等連係課程の特色を概観し,本学で設置された学部等連係課程「人間健康学群」を事例として,設置の背景,連係学部,教育プログラムの特徴を概説する.社会課題の発見・解決力を修得して社会で活躍するための教育課程として,学部等連係課程の効率性と有効性を考察する.
著者
高橋 純
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.4, pp.82-89, 2022-11-28 (Released:2022-11-28)

1人1台端末を活用した高次な資質・能力の育成のための授業づくりに関する検討を行った.その結果として,1)複線型の授業展開とし,その実現のために子供自身が「問」に正対した「学習過程」の充実を行うこと,2)端末の活用では,クラウド環境を活かしたコミュケーションツールによる「白紙共有」「他者参照」「途中参照」といった学習状況の参照ができること,3)子供自身が,「問」,学習過程,学習形態,協働の相手やタイミング,端末活用のタイミング等を自己決定していく,等が重要であると示した.
著者
福市 彩乃 山本 佑実 菅村 玄二
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.369-377, 2019-03-20 (Released:2019-03-25)
参考文献数
50
被引用文献数
2

正座が,通常の椅座位やあぐらと比べて,授業場面でどのような影響を与えるか検討した.研究1では,カウンターバランスしたうえで36名が同じ椅子に3種類の姿勢で座り,それぞれ5分ずつ論文を読んだり講義を聞いたりした.その結果,あぐら条件や椅坐位条件よりも正座条件で参加者の眠気が低かった(ps < .02).また,正座条件では肉体的疲労が高かった(p = .013)が,精神的疲労は他条件との差が見られなかった.研究2では,実際の大学の授業でそれぞれ同一の椅子に座った83名の参加者を正座群と椅坐位群にランダムに割り付けた.その結果,正座群で,正座中及び正座後10分後の両時点で正座前よりも眠気が低く(ps < .05),足の痛みが高かった(ps< .002).一方で,姿勢間には肉体的疲労度,精神的疲労度,ストループ課題及び文字流暢性課題の有意差はなかった.正座は足の痛みをもたらすものの,痛みでは説明されない眠気緩和効果をもたらした.
著者
岡野 健人 藤川 大祐
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.2, pp.274-279, 2023-07-21 (Released:2023-07-21)

ChatGPTをはじめとする大規模言語モデルを利用した生成AIが注目を集めている.活用のためには,その性質を理解し利点と欠点を考慮した上で使用するといった,生成AIリテラシーを身に着ける必要がある.本研究では,ChatGPT APIを用いて独自データ活用型生成AIチャットボットを製作することが可能なプログラムを作成し,学習者がチャットボットの製作を通して生成AIリテラシーを学ぶ教育実践デザインを検討した.
著者
手塚 和佳奈 佐藤 和紀 堀田 龍也 谷塚 光典
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46046, (Released:2022-10-27)
参考文献数
13

本研究は,写真を読み取る力の育成を目指した小学校第6学年児童向けの教材に繰り返し取り組む学習指導の効果を検証した.この学習では,①児童が写真の読み取りを行った結果を文章でまとめ,②その内容を児童同士が話し合い,③最後に教師が1名の児童の読み取りの結果を学級に共有した.写真を読み取る力の育成を目指した小学校第6学年児童向けの教材に繰り返し取り組む学習指導を全14回実施した結果,10回目から写真を読み取る力が向上した.
著者
藤崎 聖也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.47034, (Released:2023-07-27)
参考文献数
26

本研究では,高等学校公民科の必修科目である「公共」と中学校社会科公民的分野の検定教科書の記述から,「メディア・リテラシー」と「情報リテラシー」を比較した.その結果,公共では,両者を並列したり,同じような表現で異なるリテラシーを言い表したりするなど,公民的分野に比して両者の差異がより曖昧であることがうかがえた.また,「批判」「判断」などがメディア・リテラシーにおいて重要であるのは公共と公民的分野で共通しているが,公共ではより具体的かつ主体的な行動が求められること,電子的なメディアやそれらがもたらす影響に一層の注意を向けようとしていることが示唆されている.加えて,「世論」を形成する「国民」としての意識を求める社会科・公民科ならではの文脈も念頭に置く必要がある.
著者
小牧 瞳 郡司 日奈乃
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.2, pp.182-189, 2023-07-21 (Released:2023-07-21)

OECDが2019年に提唱して以降注目の集まる"agency"概念は日本の教育にも影響を与える可能性が高い.本発表では,学習者が問題解決者となる場合に,次の5つの立場が示されることによって,学習者のagencyを発揮した授業デザインが可能になるという仮説を検証する.5つの立場とは,①問題が生じて困っているもの,②問題に関する情報を調べるもの,③問題について詳しいもの,④問題について詳しいものと学習者を繋ぐもの,⑤その他のステークホルダーである.
著者
名知 秀斗 向後 千春
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.2, pp.154-161, 2023-07-21 (Released:2023-07-21)

本研究の目的は,発表年や教科,対象,研究の概要を整理した上で,初等中等学校の批判的思考教育において,eラーニングがどのように取り入れられてきたのか,研究資料を提示することとした.年別に整理した結果,2019年以前と比較すると,2020年から2023年の文献数が多いことが明らかとなり,これは新型コロナウィルスの影響受けたことが要因と推察された.また,小学生を対象とした研究数が少なく,国語科の研究は見受けられないことが明らかとなった.さらに,初等中等学校の批判的思考教育で使用されるeラーニングは,「WebQuest」「Webサイト学習」「Web情報の評価」「インタラクティブなアプリ学習」「オンライン交流」「コンセプトマッピング学習」「電子漫画」「動画学習」の8つに分類されることが明らかとなった.
著者
阿部 真由美 石川 奈保子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.2, pp.105-111, 2023-07-21 (Released:2023-07-21)

大学3年生を対象としたゼミナールにおいて,2022年度春学期に反転授業形式で研究指導を行い,効果を検証した.その結果を踏まえ,同年秋学期には事前学習や授業内での活動を一部変更し,また,オンライン同期・非同期の授業形式を織り交ぜることで,多面的な授業を展開した.本発表では,秋学期終了後に行った受講生対象のインタビュー調査をもとに,授業デザインの各要素について検証した結果を報告する.
著者
岩間 徳兼
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.237-248, 2023-06-20 (Released:2023-07-14)
参考文献数
18

近年,様々な学習場面において相互評価が用いられるようになっている.しかしながら,評価者特性や評価者における評価負担などの問題があり,教育評価のための利用はあまり行われていないのが実情である.そこで本研究では,厳しさや一貫性といった評価者特性を組み込んだ項目反応モデルの利用を前提に,モデル母数の推定精度の点から評価数をどの程度減らせるかを実践に即したシミュレーションから確認した.また,その結果に基づいて20名規模の大学の授業における教育実践として,評価数を計画的に減らして相互評価を行わせ,そのデータの分析を通じて教育評価のための情報を得ることを試みた.実データの分析から,評価数を抑えつつも,課題の特性,評価者の特性,能力について,教育改善に資するような情報が得られることが示された.
著者
高橋 暁子 根本 淳子 竹岡 篤永 市川 尚 鈴木 克明
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.249-258, 2023-06-20 (Released:2023-07-14)
参考文献数
17

本研究では,Instructional Design(ID)の専門家の養成を目指した「大学版上級ID 専門家養成講座」のワークショップを題材に,修了者の継続的な参加が修了者自身にどのような意義があるのかを明らかにしようとした.参加者アンケートから,前年修了者がファシリテータとしてワークショップに参加したことで,参加者は有用なアドバイスを得られたと感じていることが示唆された.また,前年修了者に対するフォーカスグループインタビューでは,ワークショップへの継続参加がリフレクションの機会になっていることなどが示唆された.一方で,継続参加の効果についてさらなる分析が必要であることが確認された.
著者
佐藤 和紀 小田 晴菜 三井 一希 久川 慶貴 森下 孟 谷塚 光典
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.Suppl., pp.117-120, 2021-12-20 (Released:2022-02-02)
参考文献数
6

小学校高学年児童がクラウドサービスの相互参照を用いて,他者の文章を参照して意見文を作成する実践を行った.意見文の評価と意識調査の結果,他者の意見文を参照したグループ児童の意見文の評価は有意に高く,他者の意見文を参照していないグループの児童よりも読み手にどう伝わるか気をつけて書く,自分の考え以外の視点でも書く,主語と述語のつながりを注意して書く,形式的なミスを少なくする,ことを意識していた.
著者
木村 明憲
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.46105, (Released:2023-03-07)
参考文献数
25

近年,教員養成コースに,情報リテラシーを育成するための科目が設置されるようになっている.そこでは,情報活用の指導力を育成することが求められている.また,大学の授業では,アクティブ・ラーニングに基づいた学修を行うことも求められている.これらの目的を達成するため,1年次に履修する「情報リテラシー1,2」において,スチューデント・エージェンシー(以下,エージェンシー)を考慮したアクティブ・ラーニング型のシラバスおよび授業設計案を開発し,実施した.本研究では,「情報リテラシー1,2(通年)」の前期,中期,後期の3回にわたって,ICT 活用指導力に関する意識を調査した.加えて,授業に関わるエージェンシーを年度末に調べた.それらを基に,意識の変容とエージェンシーの実態が明らかになり,それらの相関が算出された.結果,ICT 活用指導力についての意識は,年間を通して高まることが明らかになり,また,一定程度の相関が見られた.
著者
保田 幸子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-13, 2021-06-10 (Released:2021-06-18)
参考文献数
43

研究成果を報告する科学論文では,「I やWe の使用は避ける」,「曖昧で冗長な表現は避ける」といったディスコースが推奨され,現在もアカデミック・ライティング授業や論文作成ガイドの中で指導されることがある.しかし,このアカデミック・ディスコースはいつどのように誕生したものなのか.なぜ特定の語られ方に権威が与えられるようになったのか.この権威は21世紀現在も変わらず固定的なものなのか.これらの問いについては国内では十分な検証が行われていない.本研究は,こうした通説を再考すべく,科学論文において客観性が求められるようになった歴史的背景とその後のパラダイムシフトを明らかにするとともに,21世紀型の科学論文において書き手がどのように読み手を導いているか,その主観性の表明技法を明らかにすることを目指す.得られた成果を元に,科学論文執筆に迫られた学習者層に対する21世紀型の高年次英語教育支援のあり方について提案する.
著者
尾之上 高哉 井口 豊
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.Suppl., pp.193-196, 2023-02-13 (Released:2023-03-28)
参考文献数
6

困難に直面している人に,「皆にその能力があるわけではない」「あなたには別の強みがある」といった言葉かけ(以後,comfort と表記する)を行うと,その領域での相手の動機づけを低下させてしまう可能性がある.先行研究では,「その領域で必要な能力を“固定的”に(つまり,変わりにくいものとして)捉えていると,comfort を行い易くなる」との知見が報告される.本研究の結果は,その知見が,相対的にみた時に,当該の能力が“固定的に捉えられ易い領域”と,“可変的に捉えられ易い領域”の両方で追認されることを示した.先行研究と本研究の結果は,能力の捉え方と言葉かけとの関連に注意を向ける必要性を示している.
著者
岩﨑 千晶
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.46090, (Released:2023-04-06)
参考文献数
35

本研究の目的は,教員が「初年次教育で学習支援に従事する学生スタッフ」に対して求める能力・経験と彼らの育成方法を明示することである.教員5名にインタビューをし,分析考察をした結果「課題探究において考えるプロセスを深める」「活動を振り返るためにフィードバックをする」「受講生のロールモデルとなる」等,11の能力・経験が導出された.これらは「初年次生の課題と初年次生に培ってほしい能力」への密接な関わりや,「受講生に共感し,共に考える」「教員と受講生の架け橋になる」等,教員に担えない学生ならではの能力を含んでいた.また教員は能力別にレベル分けする段階性の方法ではなく,複数の学生スタッフが足りない部分を補い合える学びあいや模倣学習を重視し,どの学生スタッフも活動できる場を提供し,活動にフィードバックをすること等による方法で学生スタッフを育成していることが示された.
著者
川村 美好 松葉 龍一 鈴木 克明 中野 裕司
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45071, (Released:2021-09-13)
参考文献数
5

建築設計業界では人材不足により協力スタッフ(派遣社員)への依存度が高い状況であるため,一定水準の業務遂行能力と社内ルール習得のための協力スタッフ向け自学用学習支援ツールを開発した.協力スタッフと協働する社員へのヒアリング調査及びその分析から,協力スタッフが習得すべき内容を,技術レベルの異なる3分野と全員必要な社内ルールの1分野に分類・整理した.それに基づき,TOTE モデルを用いて,自学用学習支援ツールを設計し,Moodle 上に実装した.専門家レビューと形成的評価により改善をおこなった.結果,ばらつきに対応した実務直結型の学習支援ツールを開発でき,限られた範囲内であるが,意欲の向上を確認した.