著者
丸山 浩平 森本 康彦 高橋 菜奈子 櫻井 眞治 宮内 卓也 小嶋 茂稔
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.2, pp.56-63, 2023-07-21 (Released:2023-07-21)

東京学芸大学では学生本位の学びの振り返りを促し,修得主義に基づく教員養成の実現を目指して「eポートフォリオ構築によるデジタル技術を活用した教育実習DX」を進め,本学附属学校園で行われてきた教育実習の教育実習日誌を電子的に扱い,実習の記録や指導・支援の記録を集約するシステム「教育実習日誌eポートフォリオ」(以下,実習ポートフォリオシステム)を開発した.そして実習ポートフォリオシステムを用いた附属学校園における教育実習の試行を実施した.本論文では,本学における教育実習日誌eポートフォリオの構築とその取組みの内容,試行に関する質問紙調査の結果について述べた.
著者
城戸 楓 池田 めぐみ
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.46013, (Released:2022-07-04)
参考文献数
31

昨今,これまで多くの研究分野において最も強力なツールの一つとして研究のエヴィデンスを支えてきた帰無仮説有意性検定に疑問が投げかけられている.本稿では,こうした帰無仮説有意性検定の際に信頼性を高めるために報告が求められる効果量を取り上げ,『日本教育工学会論文誌』において過去10年間でどの程度効果量が論文に記載されていたのかについて調査を行った.この結果,『日本教育工学会論文誌』では,2016年ごろより効果量について論文内で掲示される比率が増加していたが,海外での掲載比率ほど高まってはおらず,また近年では少し下落している傾向が見られた.また,教育システム論文では特に効果量が記載されない比率が高かったことが分かった.
著者
大山 牧子 畑野 快
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.217-228, 2023-06-20 (Released:2023-07-14)
参考文献数
31

大学生のリフレクションと学習成果との関係は,専門教育課程や体験・実習型科目で主に検討されており,また,リフレクションの測定も精緻になされていなかった.本研究では,リフレクションのプロセスモデルの特徴を整理し,講義・演習科目でも適応可能なリフレクションを測定する尺度を開発した上で,リフレクションと学習成果としての成績,能力の獲得感との関係を検討することを目的とした.大学生942名のデータをもとに因子分析を行った結果,「内容の想起・分析」「活動の想起・分析」「活用」の3次元からなるリフレクション尺度が開発された.さらに,クラスタ分析によって,それら3下位次元から6つのタイプを同定した.積極的にリフレクションを行うタイプの学生が,他のタイプよりも能力の獲得感が高い傾向にあることを示した.
著者
加藤 走 木村 充 田中 聡 中原 淳
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.207-216, 2023-06-20 (Released:2023-07-14)
参考文献数
51

大学のリーダーシップ教育プログラムが増加することに伴い,大学生の個人的要因と大学生のリーダーシップ行動との関係についての検討が求められている.本研究の目的は,大学生のリーダーシップ行動とリーダー・アイデンティティの関連を定量的データに基づき明らかにすることである.本研究では,大学生291名を対象にweb による質問紙調査を実施し,取得したデータに対してパス解析を行い仮説の検証を行った.分析の結果,大学生の関係水準のリーダー・アイデンティティならびに集団水準のリーダー・アイデンティティがリーダーシップ行動と正の関係があること,集団水準のリーダー・アイデンティティが関係水準のリーダー・アイデンティティよりも率先垂範,挑戦,目標共有,目標管理のリーダーシップ行動と強い正の関係があることが明らかになった.最後に,以上の結果から考えられる本研究の意義や教育実践への示唆,今後の課題について考察した.
著者
藤木 大介
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.Suppl., pp.21-24, 2021-02-20 (Released:2021-03-08)
参考文献数
8

教師の学習に関するメタ認知的知識の不正確さは不適切な指導へとつながる.例えば効果があるなら体罰もやむなしとする考えもある.しかし罰を用いて行動傾向を変容させることは非常に困難であることが知られている.したがって児童・生徒の不適応行動への指導に罰を用いることは倫理的にも科学的にも不適切である.そこで本研究では,教員養成課程の学生や現職教員が体罰についてどのように考え,その効果についてどのような知識を持っているか検討した.その結果,いずれの者も体罰が有効でないことを完全には否定できなかった.また教職課程での学習や現場での経験が体罰に関する倫理的な態度の形成や体罰の有効性の否定につながる可能性が示された.
著者
安斎 勇樹 森 玲奈 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.135-145, 2011-11-01 (Released:2016-08-08)
参考文献数
23
被引用文献数
2

本研究の目的は,協同制作を課題とした大学生向けのワークショップにおいて,創発的コラボレーションを促すためのプログラムデザインの指針を示すことである.本研究では,創発の源泉としての「矛盾」の効果に着目し,「作品の制作課題に,相反するイメージを持ちながら多様な解釈の可能性を持った2つの条件を設定する」というデザイン原則を仮説として設定した.デザイン原則に基づく実践を4回(全15グループ),比較対象としてデザイン原則に基づかない実践を4回(全11グループ)行い,各グループの制作プロセスを質的に分析した.その結果,デザイン原則に基づく実践においては,制作中に提案されたアイデアや制作物に対する視点に揺さぶりがかかり,創発的コラボレーションが促されることがわかった.ただし,参加者が設定した2条件を「相反するもの」として解釈しなかった場合は,視点の揺さぶりがかからないために創発的コラボレーションは起こりにくいことがわかった.その点に留意すれば,本研究で提案したデザイン原則は有効であることが示された.
著者
長濱 澄 渡邉 文枝 重田 勝介
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.601-616, 2023-02-02 (Released:2023-02-11)
参考文献数
101

COVID-19の感染拡大の影響により,オンライン学習が広範かつ大規模に実施される中で,その利点が広く周知されるようになった.それに伴い,オンライン学習と対面学習を,あるいは,同期型学習と非同期型学習を効果的に組み合わせたブレンディッドラーニングは,「教育のニューノーマル」として改めて注目されている.ブレンディッドラーニングにより教授過程を最適化し学習効果を向上する教育実践は国内外で多数行われており,その多様な効果が認められている.一方,ブレンディッドラーニングを設計し効果的に実施することは必ずしも容易でない.本論では,ブレンディッドラーニングに関する教育工学研究の動向を整理し,COVID-19以降における展望を述べる.
著者
石川 奈保子 石田 百合子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.641-652, 2023-02-02 (Released:2023-02-11)
参考文献数
33

本研究では,大学生対象に,2020年度後期にオンライン授業を受講しての自己調整学習の状況を尋ねた.その結果,以下の3点が明らかになった.(1)「e ラーニングでは計画的に一人でじっくり学習できるところがよい」と考えている学生ほど学習を工夫する方略を使用し,「e ラーニングは単調な感じがするので物足りない」と考えている学生ほど学習とそれ以外の時間にめりはりをつけることで学習意欲の維持をはかる方略を使わない傾向が示された.(2)学習の相談ができる友人の有無によって,e ラーニング指向性や自己調整学習方略使用に違いはなかった.(3)時間割などをベースに学習時間を固定していた学生と,課題の期限などをベースに学習時間を流動的に取っていた学生がおり,いずれでも自己調整していた学生はうまく学習を進めていた.うまく学習を進めるには,時間割ベースの学習計画を立てるとともに,タスクを把握・可視化し,やり残した課題に取り組む日や休息日を設定することが有効であることが示唆された.
著者
廣松 ちあき 尾澤 重知
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.363-380, 2020-03-20 (Released:2020-03-30)
参考文献数
46
被引用文献数
3

内省支援が必要な中堅社員を対象に,仕事観や信念を形成した経験を半構造化インタビューで調査し,TEA によって分析した.その結果,中堅社員は<仕事の大変さ,難しさに直面する>,<異動・配置換えにより新しい仕事に就く>,<一人で完結させる責任の重い仕事を任されるが,予想外のトラブル対処に追われる>という経験を通じて,上司や同僚,顧客などの【周囲の期待・要望】と,【業績達成を求める組織風土】の対立の中で葛藤し,成功経験のみならず失敗経験からも「自分の仕事への取組み方」の理解を深め,仕事観や信念を自覚することが分かった.それらの仕事観・信念は,企業人の仕事観・信念として提唱されていた<社会人としての役割規範>,<自律的に仕事をする>,<他者への貢献>に加えて,<公私ともに充実させる>が新たに示された.最後に,中堅社員の仕事観・信念の確立と熟達者への成長に向けた上司からの内省支援を検討した.
著者
大﨑 理乃 大島 純
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.13-29, 2019-07-10 (Released:2019-07-10)
参考文献数
44
被引用文献数
4

本研究は,アクティブラーニングとして今後発展が期待される知識創造型学習に焦点をあて,新たな評価方法を提案するものである.提案方法では,知識創造型学習のデザイン原則に対して,CSCL 研究をはじめとして成果を挙げつつある社会意味ネットワーク分析と,テキストマイニングの混合法による可視化に基づく評価を行なった.具体的には,知識創造型学習を目指して設計された課題解決型学習(Project Based Learning)で利用されたCSCL システム上の学習者による書き込み内容を分析し,最終成果物の質が異なるグループの知識創造プロセスの違いが評価できることを確認した.その上で,提案した評価方法の有用性と限界を検討した.
著者
畑野 快
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Suppl., pp.81-84, 2013-12-20 (Released:2016-08-10)
被引用文献数
10

本研究の目的は,内発的動機づけと主体的な学習態度を媒介する変数として自己調整学習方略(Self-Regulated Learning Strategy: SRLS)に着目し,主体的な学習態度に対する内発的動機づけ,SRLSの影響を明らかにし,大学生に主体的な学習態度を獲得させる方策を検討することであった.大学1年生266名を対象とした質問紙調査から,内発的動機づけがSRLSを媒介し,主体的な学習態度に影響を与えるモデルを仮定した上でSRLSの間接効果の検証を行ったところ,SRLSの下位尺度である「認知調整方略」,「動機づけ調整方略」の間接効果が有意であった.以上の結果を受け,大学教員が大学生に主体的な学習態度を身につけさせる方策について内発的動機づけ,SRLSの視点から考察した.
著者
濵本 宗我 森田 裕介
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.4, pp.152-157, 2021-12-03 (Released:2021-12-03)

近時,日本の大学ではティーチングアシスタント(TA)が活用されている.TAは大学にとってのメリットのみならず,学生にとってもトレーニングの機会である等のメリットが存在する.TAは大学教員になるための訓練という形で捉えられることも多い.他方で,学生の進路は大学教員に限らない.より幅広い進路に関してTAを務めるメリットを検討する必要があると推測される.そこで,本研究では,TA経験者の,TA経験前後の汎用的スキルに関する主観評価をアンケートにより調査し,その変化を分析した.これにより,TA経験は「キャリア行動」の成長に資する一方で,エンプロイアビリティへの貢献は低いことなどが示唆された.
著者
小倉 光明 佐藤 和紀 森下 孟 村松 浩幸
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46043, (Released:2022-10-17)
参考文献数
6

GIGA スクールプロジェクトに基づく情報端末の運用および活用に対する課題意識(以下,GIGAスクールP における課題意識)について,初期・中期・後期段階の質的変遷を把握した.その結果,小・中学校では初期,中期で運用と活用に関する課題意識が5割程度であり,後期から活用に関する課題意識が6〜7割程度に高まっていた.教育委員会では,中期から活用に関する課題意識が7割程度に高まっていた.運用に関する課題はネットワーク環境やセキュリティに関する内容も多く,教員での解決は難しい.このような内容を踏まえて,主体的・対話的で深い学びの実現に向けてGIGA スクールP における課題意識に合わせた支援が必要であると考えられる.
著者
高橋 薫 鈴木 道代 佐々木 さくら
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46087, (Released:2022-10-20)
参考文献数
7

本実践では創価大学の「学術文章作法Ⅰ」を履修する留学生を対象に,文章診断ソフト「文採」を活用して文章の言語形式へのフィードバックを試み,意見文を自己推敲させた.本研究の目的はフィードバックを手がかりに,学習者が適切に日本語の誤用を自己推敲できるか否かを確認することである.フィードバック前後の意見文を比較したところ,「副詞率」「話し言葉」「助詞の誤り」において,問題箇所の出現頻度が有意に減少した.次に,効果量の大きかった「話し言葉」「助詞の誤り」について修正の適切さを確認したところ,「話し言葉」の約8割,「助詞の誤り」の約7割は適切に修正できていた.しかし,フィードバックの適切性を見ると,「話し言葉」の約9割が適切であったのに対し,「助詞の誤り」へのフィードバックは4割程度に過ぎず,「助詞の誤り」については教師の介入が必要であることがわかった.
著者
加藤 奈穂子 尾澤 重知
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.3, pp.128-135, 2022-10-03 (Released:2022-10-03)

本研究の目的は,グループ学習型アクティブラーニング授業の学習支援活動に携わるTAの支援活動の特徴を明らかにすることである.そのために,大学院生1名,大学生4名を対象とし半構造化インタビューを行いM-GTAにより分析した.その結果,本研究の対象となった研究協力者は,TAの学習観や成長,先輩後輩TAから得た学びを【支援活動の源泉】とし,進捗確認,ポジティブフィードバック,リフレクションの支援,目標のストレッチを組み合わせた【受講生への学びの促進活動】と【教員との創発的分業】を行っていた.
著者
中村 瑠香 工藤 綾乃 南條 優 若月 陸央 萩原 ほのみ 森下 孟 佐藤 和紀
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.2, pp.68-75, 2022-06-27 (Released:2022-06-27)

本研究では,GIGAスクール構想下における,1人1台の情報端末のICTを活用した授業実践を把握し,小学校の授業実践に関するDXの現段階を検討することを目的として,2021年1月から2021年11月までに出版された「GIGAスクール構想」「1人1台端末」に関する書籍21冊に掲載された小学校の1人1台端末を活用した授業実践を,SAMRモデルを用いて分類した.その結果,①中学年になるとM・R(変換)の授業実践が増加すること,②教科全体ではS・A(強化)の授業実践が多いが,総合的な学習の時間ではM・R(変換)の実践が多いことが確認できた.
著者
山野 大星 小林 猛 井庭 崇
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.45127, (Released:2022-07-26)
参考文献数
18

本研究では,専門学校の建築専門職教育における住宅設計課題において,パターン・ランゲージを用いた評価作成と指導の有効性を明らかにすることを目的に研究授業を実施し,その効果を検討した.研究授業前に教員グループによってグループ設計課題「バイオクライマティックデザインによる住宅設計」のパターン・ランゲージ及びルーブリックを作成した.パターン・ランゲージを用いて設計演習の授業内でワークショップを行なった処置群と通常の設計演習の授業を行った対照群とを比較した.処置群,対照群ともに事前に提示していたルーブリックによる教員の作品評価および質問紙調査による学生の授業で「身につける力」の自己評価においても,処置群が高いことを確かめ,パターン・ランゲージを用いた指導の有効性を明らかにした.また,処置群の中でもパターン・ランゲージの内容を理解して,積極的に活用するグループの作品の評価が高いことも確認した.
著者
稲木 健太郎 泰山 裕 三井 一希 大久保 紀一朗 佐藤 和紀 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46058, (Released:2022-07-26)
参考文献数
7

本研究は,児童が学習方法を自己選択する授業の経験と学習方法のメタ認知の関係を調査し,学力の高低ごとに検討することを目的とした.調査対象の授業を週15コマ程行った学級を高頻度群,週3コマ程行った学級を低頻度群とし,学習方法のメタ認知に関する振り返りの記述数と学力との関係を分析した.結果,経験頻度と学力の二要因が,学習方法のメタ認知的活動に関係する可能性が示唆された.一方,学習方法のメタ認知的活動を適切に行うには,学習方法を自己選択する経験だけでなく,学習方法に合わせたメタ認知的活動を適切に行うための支援や,学力下位群への支援が必要となる可能性が示唆された.
著者
松田 稔樹
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.2, pp.204-211, 2022-06-27 (Released:2022-06-27)

1990年代の大綱化で,大学教育における教養教育と専門教育の比重に変化が生じた.近年では,資格取得に直結したカリキュラムを強調する例もある.その一方で,中教審大学教育部会などが教養教育の重要性を強調し,欧米のリベラルアーツ教育を範にしたカリキュラムを提供する大学もある.これらの動向をふまえつつ,本稿では,一般(教養)教育と専門教育とを峻別しつつ,それらをどう連携させるべきか,筆者が初等中等教育の教育課程編成のために提案した「新・逆向き設計」の考え方を援用して,より良い大学教育カリキュラムを設計する視点について考察する.
著者
上野 雄己 日高 一郎 福留 東土
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.419-423, 2022-05-20 (Released:2022-06-22)
参考文献数
18

本研究の目的は,中等・高等教育での議論経験と市民性の関連を検討することである.分析対象者は都内中等教育学校の卒業生392名である.カテゴリカル因子分析の結果から,市民性尺度は政治への関与行動とコミュニティへの関与行動の2因子9項目から構成された.次に,社会人口統計学的要因を共変量とした媒介分析の結果から,市民性の下位尺度である政治への関与行動,コミュニティへの関与行動ともに,中等教育での議論経験が直接的に関連する経路と,高等教育での議論の成功経験を介して,間接的に関連する経路が確認された.