著者
酒井 恵子 久野 雅樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.388-395, 1997-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
13
被引用文献数
6 4

The purpose of this study is to constract a scale to measure value-intending mental acts, characterized by six types of values (theoretical, economic, aesthetic, religious, social, political) originally proposed by Spranger (1921). A typical test based on Spranger's classification of values, i. e.,“Study of Values” (Allport et al., 1951), relates only the socio-cultural objects to which individuals feel the value, without treating the way in which individuals feel the value. Our scale is made to measure the latter subjective experience (“mental act”) itself. Basing upon personal interviews and preliminary survey, 54 items (6 mental acts X 9 items) are selected and administered to 493 college students (292 male and 201 female). With factor analysis, six subscales are extracted from those items to construct a Value-Intending Mental Act Scale. Relations of this scale, focused on subjective mental process of valuation, with preference between school subjects and vocational interest, are regarded as objective manifestations of the subjective processes making the object of a discussion.
著者
髙柳 伸哉 伊藤 大幸 浜田 恵 明翫 光宜 中島 卓裕 村山 恭朗 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.62-73, 2023-03-30 (Released:2023-03-25)
参考文献数
36

本研究では,青年における自傷行為の発生に関連する要因と,自傷行為の発生に至る軌跡の検証を目的とした。調査対象市内のすべての中学生とその保護者に実施している大規模調査から,自傷行為の頻度やメンタルヘルス,対人関係不適応,発達障害傾向等について質問紙による3年間の追跡調査を行った5つのコホートの中学生4,050名(男子2,051名,女子1,999名)のデータを用いた。中3自傷発生群と非自傷群について,各尺度得点のt検定の結果と,非自傷群の中学1年時の得点を基準とした各尺度z得点による3年間の軌跡を比較した結果から,中3自傷発生群は3年時に非自傷群よりもメンタルヘルスや家族・友人関係で問題を抱えていることに加え,1・2年時でも抑うつなどが有意に高いことが示された。中学1―3年時におけるz得点の軌跡からは,中3自傷発生群は非自傷群と比べて1年時からすでにメンタルヘルスや友人関係・家族関係等での不適応が高いこと,3年時にかけて両群の差が開いていくことが示された。本研究の結果,中学3年時に自傷行為の発生に至る生徒の傾向と3年間の軌跡が明らかとなり,自傷行為のリスクの高い生徒の早期発見と予防的対応につながることが期待される。
著者
浜名 真以 分寺 杏介
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.51-61, 2023-03-30 (Released:2023-03-25)
参考文献数
31

感情語を獲得することは子どもの社会化や感情経験の発達に重要な役割を持つ。本研究の目的は,幼児および小学校3年生までの児童を対象とする短縮版感情語彙尺度を開発することである。研究1では,年少児から小学3年生までの子どもを持つ母親からデータを収集し,項目反応理論を用いて幼児用および小学校低学年用の感情語彙尺度を開発し,情動コンピテンスとの関連を調べた。研究2では,幼児用感情語彙尺度で測定される感情語彙能力と一般的な言語能力や社会的コンピテンスとの関連,研究3では,低学年用感情語彙尺度で測定される感情語彙能力と一般的な言語能力との関連を検討した。感情語彙能力と子どもの一般的な言語能力や社会情動的コンピテンスの関連から,本尺度の妥当性の証拠が確認された。
著者
伊藤 亜矢子 宇佐美 慧
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.91-105, 2017 (Released:2017-04-21)
参考文献数
53
被引用文献数
11 11

学級の個別的・心理社会的性質を意味する学級風土は, 学習環境の基盤として重要であり, いじめ・暴力の予防や精神健康の向上, 特別支援教育などの側面から注目を集めている。本研究では, 学級風土質問紙(CCI; 伊藤・松井, 2001)を元に, 近年の子どもをめぐる社会や学校の変化を踏まえて, 新版の中学生用CCIの作成を試みた。首都圏・北海道・東北・北陸・東海・近畿・九州の計24中学校227学級にて回答データを収集し, 得点の経年変化を調べるとともに, マルチレベル因子分析の枠組みを通して尺度の再構成を行い新版のCCIを作成した。また, 基準関連妥当性に基づく妥当性検証を行い, さらに旧版と新版の両者を用いた教師コンサルテーションの結果から, 新版CCIの実践的有用性を例証し, 結果提示の方法・尺度構成の更なる見直しの可能性について検討した。
著者
岡田 智 飯利 知恵子 安住 ゆう子 大谷 和大
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.254-267, 2021-09-30 (Released:2021-11-16)
参考文献数
43
被引用文献数
3

本研究ではASDのある子ども116名のWISC-IVのデータを収集し,従来のWISC-IVの4因子モデルとCHC理論に準拠した5因子モデルを想定した確認的因子分析を行い,その適合度及び下位検査構成を検証した。どのモデルも高い適合度を示したが,「結晶性能力」「視覚空間」「流動性推理」「短期記憶」「処理速度」で構成されるCHCモデルが最も当てはまりがよかった。下位検査構成では「行列推理」が「視覚空間」に負荷する結果となり,海外における因子分析の結果とは異なるものであったが,日本における先行研究と一致した。また,5つのCHCモデルによる合成得点を用いて,クラスター分析を行い5つのクラスターを抽出した。言語能力-視覚空間能力の優位性と処理速度の低さに特徴がある自閉性障害及びアスペルガー障害で従来から報告されてきたプロフィールが確認されたものの,「短期記憶」や「処理速度」に強みがあるクラスターも同定された。また,「視覚空間」と「流動性推理」の得点に乖離があるクラスターもあり,WISCモデルよりもCHCモデルでASDのある子どもの個人内差をより詳細に把握できることを示した。
著者
高橋 登 杉岡 津岐子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.135-143, 1988-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
9
被引用文献数
1

The purpose of this study was to investigate how children understood the plot of animated cartoons. Elementary school children from 1st grade through 6th grade and college students were to watch a T.V. cartoon. And then, they were asked about the story. The content of the interview consisted of two points: One was about the recall of the story, i.e., how much they would remember the content of the story, and the other was about the understanding of the characters, i.e., what attitudes they have toward them. The main results were as follows: 1) All groups of Ss remembered the story in structurally organized manner, but 2) the lower graders' recall was more episodic ; 3) Elementary school children were seen to have more extreme attitudes toward the characters than college students. It was concluded that story understanding was at first based on fragmentary information gradually becoming based on more integrated information.
著者
浦上 涼子 小島 弥生 沢宮 容子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.146-157, 2013 (Released:2013-10-10)
参考文献数
48
被引用文献数
12 4

「痩身理想の内在化」とは, 社会的に魅力がある, 価値があるとされる痩身を, 自己の価値観や理想として取り込んでしまう概念である。本研究の目的は, この痩身理想の内在化と痩身願望との関係について検討することであった。具体的には, 雑誌からの影響の受けやすさ, 他者からの承認欲求, 自尊感情といった個人特性が, 痩身理想の内在化を媒介した場合に痩身願望へどのように結びつくかについて, 男女大学生を対象に多母集団同時分析を行い, その相違点について検討を行った。男女大学生585名を対象に質問紙調査を実施し, 現在の体重(体型)を下回る体重が魅力的だとする336名について分析を行った結果, 男女ともに, 個人特性は痩身理想の内在化を媒介することで, 痩身願望とより強い関連が認められた。また, 男女によって個人特性が直接的に痩身願望に結びつくパターンと痩身理想の内在化と媒介するパターンに違いがみられた。本研究の結果から, 痩身理想の内在化は摂食障害の危険因子である痩身願望に大きな影響を及ぼす要因であることが明らかになった。今後は, この痩身理想の内在化に焦点を当てて実証的な研究を行う必要性が示唆された。
著者
小林 真
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.102-111, 2015 (Released:2015-08-25)
参考文献数
36
被引用文献数
4 2

発達障害のある青年に,様々な精神疾患や行動障害などの2次障害が発症することが知られている。この展望ではまず,ASD者やADHD者に2次障害が発症するメカニズムを解明する必要性があることを訴えた。次に,青年に対する高等学校や高等教育機関での支援の実態を紹介した。高等学校では学校間に支援体制の差があり,高等教育機関では事例や小集団での支援の実践研究が始まったばかりであることを紹介した。最後に今後の研究課題として,本人の自己理解につながるアセスメントツールの開発,仲間による発達障害の理解を促す心理教育プログラムの開発,保護者支援の必要性を提唱した。
著者
新井 雅
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.313-327, 2022-09-30 (Released:2022-10-20)
参考文献数
56
被引用文献数
1

本研究では,スクールカウンセラー(SC)活用調査研究委託事業が開始された1995年から近年までの日本のSC研究の動向を検討することを目的とした。全国の公立中学校へのSC配置が正式に進められた2001年を1つの基準として,表題・副題にSC等の記載がある1995―2019年のSC研究論文数(学術誌・紀要)の推移を把握すると共に,学術誌の研究内容について計量テキスト分析を行った。その結果,学術誌・紀要全体では,2000年以前より2001年以降の論文数が増加していた一方,2001年以降の推移に着目すると,SC配置が年々増加しているにもかかわらず,学術誌・紀要の増加傾向はみられなかった。学術誌の内容分析では,2000年以前は,学校現場でのSCの役割・機能を模索し評価する研究が行われ,2001年以降は,主に不登校支援や相談室の特徴・機能を探る研究等が行われた時期を経た後,近年,教師等との効果的な連携・協働を進めるための研究が盛んに行われている傾向が示された。1995年以降,研究論文の量的な蓄積と共に,学校教育が抱える多様な諸問題・ニーズに呼応するかたちで,扱われる研究内容も変化している。これらの動向を踏まえて,今後のSC研究の発展的課題について考察した。
著者
伊藤 美奈子 中村 健
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.121-130, 1998-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
14
被引用文献数
4

本研究では, 教師312名とカウンセラー121名を対象に, 次に挙げる (1)~(4) の項目に基づき制度に対する両者の意識や意見を尋ねた。(1) 双方が教師・スクールカウンセラーに期待する役割,(2) スクールカウンセラーに必要と考える条件,(3) 制度への関心,(4) 制度導入に伴う変化の予測である。また, カウンセラーについては, 学校経験 (教職歴) の有無により二分し (経験あり群・経験なし群), 教師群を含む3群間で比較検討を行った。その結果, 教師群では双方の専門性をいくぶん折衷した役割を期待するのに対し, 経験なし群は両者の専門性を強調した関わりを良しとし, 経験あり群は教師・スクールカウンセラーどちらにも積極的な関わりを期待していた。またスクールカウンセラーに求める条件としては, 双方ともに専門性を最優先していたが, 3群間の比較より, 教師群は「教職経験」についても相対的に重視していることがわかった。また制度への関心や期待度は, 経験あり群が最も高く, ついで経験なし群で, 教師群は制度に対する関心も低く情報量も少ないことが示唆された。今後の見通しについては, 積極的に評価した経験あり群に対し, 教師群では生徒指導上の不安を, 経験なし群は教師集団との関係において少々の不安を感じていることが示唆された。
著者
五十嵐 哲也
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.64-76, 2011-03-30 (Released:2011-09-07)
参考文献数
43
被引用文献数
9 4

本研究は, 中学進学に伴って変化した不登校傾向に対し, どのような学校生活スキルが関与しているのかという点を検討した。383名に対し, 小学6年と中学1年の時点で調査が実施され, 以下の結果が得られた。1)小学校段階では, 学習に関連するスキル不足があらゆる不登校傾向の増大と関連していた。また, 「休養を望む不登校傾向」はコミュニケーションスキル, 「遊びを望む不登校傾向」は集団活動や健康関連のスキルが関与していた。2)中学校段階では, 学習, 健康維持, コミュニケーションのスキルがほぼ全ての不登校傾向と関連していた。3)中学進学に伴う変化については, 中学校での学習や健康維持のスキルが全般的に関与していた。また, 「別室登校を希望する不登校傾向」増加には, 集団活動スキルの関与が特徴的であった。「遊び・非行に関連する不登校傾向」が増加した者は中学校での進路決定スキル, 「精神・身体症状を伴う不登校傾向」が増加した者は中学校でのコミュニケーションスキルの低さが特徴的であった。「在宅を希望する不登校傾向」が増加した者は, 中学校段階でのあらゆる学校生活スキルの低さが認められた。
著者
茂垣 まどか
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.344-355, 2005-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本論の目的は, 現代青年の自我理想型・超自我型人格の精神的健康の違いについて量的・質的に検討することである。研究1: 大学生 (554名, 平均19.68歳) を対象に質問紙調査を行い, 自我理想型・超自我型人格尺度 (EI-SES; 第1因子「志向性」, 第2因子「べきの専制」[以下「べき」]) と違和感尺度 (現在の自分自身に対する違和感) を作成し, 両尺度の信頼性を確認した。精神的健康の指標 (違和感: 逆転自尊心, 充実感) との相関分析では,「志向性」は正の相関を示し,「べき」はおおむね負の相関を示した。またEI型 (「志向性」高かっ「べき」低) とSE型 (「志向性」高かっ「べき」高) とを比較すると, 精神的健康の指標はEI型がSE型より高かった。研究2: EI-SESの下位尺度得点の高低を基準に面接調査を依頼したところ, 16名の協力を得た。「志向性」および「べき」の日常場面における様相と, 理想がかなわない葛藤場面での反応について面接した。その結果, 尺度の妥当性が確認された。また, 同じく「志向性」が高いEI型とSE型人格の間には, 精神的健康という側面で違い (EI型>SE型) が見られることが示された。