著者
岡本 祐子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.132-143, 1994-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
59

This paper contains a review together with some considerations concerning studies on life-span developmental psychology, centering around the studies on adult development. Recently, adult life is regarded as a period of development with the changes of life-cycle and life styles. However, the history of the studies of adult development is comparatively short.Mainly, Epigenetic Scheme by Erikson (1950) built a theoretical base for the study on adult development, and empirical studies on adult development have been rapidly increasing since 1970's, for example, Levinson(1978), Gould (1978), and Vaillant (1977). The following points are suggested by the above mentioned studies:(1) there is a common developmental process in adult life.(2) It is also observed that there are some critical periods in psychological development such as middle age crisis and late adult transition. On the other hand, the developmental studies on adult identity is gradually increasing from 1980. The above studies reveal some important view points proving psychological changes in adulthood in its totality.
著者
池田 幸恭
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.11-31, 2021-03-30 (Released:2021-11-16)
参考文献数
150
被引用文献数
2

本稿の目的は,2019年7月―2020年6月までの1年間に国内で刊行された国内学会誌5誌と2020年9月にオンラインで開催された日本教育心理学会第62回総会で発表された青年期から成人期,老年期までの発表を概観し,その現状と課題を明らかにすることである。中学生,高校生,大学生他,青年期の複数時期,成人期以降,多世代の発達時期について,自己,対人関係,学習,キャリア発達,生活という5つの研究領域に関する観点から分類し,研究内容の概要と動向をまとめた。分析の結果,青年期以降の発達研究は,高校生の研究は少ないが,研究対象の発達時期,領域,方法は多様であり,生涯発達に関する知見が着実に蓄積されていると考えられた。研究対象の偏り,研究方法の発展,研究成果の理解という問題について,オープンサイエンスに基づくデータの共有,マクロレベルとミクロレベルの多水準の時間単位の接続,発達観の明示に伴う科学コミュニケーションの必要性と可能性を論じた。これらの展開をとおして,発達研究が一人ひとりの多様な発達の理解に貢献することが期待できる。
著者
及川 恵 坂本 真士
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.106-119, 2007-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
28
被引用文献数
13 9

本研究では, 認知行動療法の理論に基づき, 抑うつ予防を目的とした心理教育プログラムを考案し, その効果を検討した。プログラムでは, 大学の心理学関連の講義時間を活用し, 計7回の介入授業を実施した。プログラムの効果を検討するため, プログラム実施前後に, 介入群と統制群に対して, 抑うつに関連する思考や情動にうまく対処することができるという確信, すなわち抑うつ対処の自己効力感と複数の適応指標からなる質問紙を実施した。まず, 各授業終了時の感想シートの検討から, 授業内容はよく理解され, 興味関心を持って臨める内容であったと思われる。次に, 抑うつ対処の自己効力感を従属変数とし, 群と時期を独立変数とする二要因分散分析を行った。その結果, 交互作用が有意であり, 介入群は統制群に比べ, プログラム実施後に効力感が増加していることが示された。下位目標ごとの検討においても概ね同様の結果が得られ, 本プログラムの有効性が示唆された。なお, プログラムの間接的な効果を把握するため, 自己効力感と適応指標の変化量の相関を検討した結果, 介入群において自己効力感の増加が現状満足感の増加と関連することが示唆された。
著者
上地 広昭 竹中 晃二 鈴木 英樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.288-297, 2003-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
24
被引用文献数
7 4

本研究の目的は, 子ども用身体活動行動変容段階尺度および子ども用身体活動の恩恵・負担尺度を開発し, その尺度を用いて子どもにおける身体活動の行動変容段階と意思決定バランスの関係を検討することである。研究Iでは, 小学4-6年生男子201名および女子200名を対象に, 子ども用身体活動行動変容段階尺度を開発し, その信頼性および妥当性を検討した。その結果, 子ども用身体活動行動変容段階尺度は, 高い信頼性および妥当性を示した。研究IIにおいて, 小学4-6年生男子213名および女子205名を対象に調査を行った。因子分析の結果, 子ども用身体活動の恩恵・負担尺度は9項目2因子構造 (「身体活動の恩恵」因子および「身体活動の負担」因子) であることが明らかになった。また, 子ども用身体活動の恩恵・負担尺度の信頼性および妥当性が確認された。研究IIIにおいては, 小学4-6年生男子202名および女子201名を対象に, 子どもにおける身体活動の行動変容段階と意思決定バランスの関係を検討した。分散分析を行った結果, 身体活動の恩恵・負担尺度得点について, 身体活動の行動変容段階の主効果が認められた。不活動な子ども (無関心ステージ) は, 他の子どもに比べ, 身体活動の恩恵に対する知覚が弱く, 負担を強く知覚していた。標準得点を用いて, 身体活動の恩恵と負担の知覚の交差点 (恩恵の知覚が負担の知覚を上回るポイント) を検討した結果, 男子では「実行ステージ」, 女子では「維持ステージ」において認められた。本研究の結果から, 子どもにおける身体活動の行動変容段階と意思決定バランスの関係の一部が示された。
著者
福田 由紀
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.348-354, 1991-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
19
被引用文献数
1

The purpose of this study was to investigate the developmental relationship between the image operation in three-mountain task and mental rotation task in terms of ability of a point-of-view operating. Subjects were 17 first graders, 18 third graders, 13 fifth graders and 31 university students. Subjects were asked to solve both three-mountain task and mental rotation task. The results showed a different shape of developmental performances in both tasks. In a three-mountain task, first and third graders could not perform satisfactorily, whereas in a mental rotation task, they could make good scores. Moreover, both patterns of errors and RT according to the rotated angles were also proved different between tasks.
著者
南 憲治
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.152-161, 1978-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
29

本研究の第1の目的は, 幼児が新しい性役割行動をモデルの観察によって習得する際のモデルの効果について, モデルの示範行動 (視覚的手がかり) とモデルが発する言語的手がかりの2つの面から実験的に検討することであった。第2の目的は, 性役割の習得の程度に関してどのような性差がみられるかを明らかにすることにあった。被験児は, 幼稚園児で年長児群, 男児55名 (平均6才0か月), 女児55名 (5才11か月), 年少児群, 男児57名 (5才0か月), 女児37名 (5才0か月) からなる。実験群の幼児は, モデルが中性玩具で遊んだり, あるいは, 中性玩具に対して「男の玩具」, 「女の玩具」といった言語的手がかりを与えるのをVTRで観察した後, 中性玩具で自由に遊ばされ, その行動が観察された (5分間)。結果の分析は, モデルが玩具で遊んでいるのを観察するという視覚的手がかりとモデルが発する言語的手がかりが, 幼児の玩具遊びにどのように影響するかについてなされた。主な結果は, 次の通りである。(1) モデルの示範行動 (視覚的手がかり) に言語的手がかりがつけ加えられると, 新しい性役割行動を習得する上で効果が大きかった。特に, 言語的手がかりの重要性が示された。(2) 年少児より年長児の方が, 性役割行動を習得する上でモデルの観察効果が大きく, また, より分化した性役割行動を示す。(3) 表面的なレベルでは, 女児より男児の方がより分化した性役割行動を示すが, より内面化された性役割に関しては, 女児の方がより安定していることが示唆された。
著者
中村 雅子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.76-85, 2003-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16
被引用文献数
10 3

本研究では, 青年の環境意識や環境配慮行動の形成に及ぼす母親の言動の影響を, 母親と子どもから独立に回答を得て, 両者のデータをマッチングさせることにより検討した。分析対象者はオンライン機器による調査で回答を得た, 中学生から独身社会人までの男女およびその母親の273組である。環境意識尺度・環境配慮行動尺度を目的とする重回帰分析, および13の環境配慮行動のそれぞれの実行の有無を目的としたロジスティック回帰分析の結果, 以下のことが明らかになった。1) 子どもの環境意識尺度に対して説明変数として母親の環境意識尺度の効果が有意だった。2) 環境配慮行動尺度に対して母親の環境配慮行動, とくに実践とともに家族にも協力要請を行った場合の効果が有意だった。3) いずれの場合も母親変数の投入で重回帰分析の説明力が大きく改善された。4) 個別の環境配慮行動を目的変数とするロジスティック回帰分析では, 13項目のうち10項目について母親の環境配慮行動の実践-要請の変数が最も有効な説明変数であった。以上のことから, 環境意識形成および具体的な行動場面での母親の影響の重要性が確認された。また発達段階別に見ると, 子どもが中学・高校生の年齢段階よりも大学生等・社会人の年齢段階の方が母親関連の変数の影響が大きかった。