著者
城 仁士 近藤 徳彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.418-423, 1995-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
8
被引用文献数
1

This study was designed to estimate the effect of computer game on responses in the autonomic nervous system in children by using power spectral analysis of heart rate (HR) variability. We used two different games that contained a battled, excited game (S) and a relieved, mild game (M). The results obtained were as follows: 1) HR in S during game tended to be higher than tnat in M. An index of sympathetic nervous system (SNS) during game was higher than during recovery in S, but showed an opposite change in M. Therefore, S might induce stress response during game while M might do it after game. 2) HR during individual mode in S tended to be higher than during mode in playing against other player. 3) HR, SNS and an index of parasympathetic nervous system (PNS) at 10th min. after game were similar to rest-level in both games. 4) There was positive, significant correlation between level of game master and PNS (y=0.091x+4.111, r=0.765, p<0.05). The results suggested that the responses in the autonomic nervous system in children during game were influenced by the type of game and the level of master.
著者
西田 順一 大友 智
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.285-297, 2010 (Released:2012-03-07)
参考文献数
30
被引用文献数
10 2

運動・身体活動の実施により, 生理的・社会的恩恵と同様に心理的恩恵が得られることが示されている。本研究では, 学校教員の運動・身体活動実施程度および学校ストレス経験がメンタルヘルスにどの程度影響を及ぼすかどうかについて, 個人的特性を考慮した上で検討した。管理職を除いた常勤の小・中学校教員を対象にメンタルヘルス, 運動・身体活動, そしてストレス経験の質問紙調査を実施し, 255名の有効回答を分析対象とした。個人的特性の違いから分析した結果, 女性に比べ男性のメンタルヘルスが良好であることが示された。従って性差を考慮し, メンタルヘルスヘの影響を構造方程式モデリングにより分析した結果, 男女共に「運動・身体活動」は「生きがい度」に有意な正の影響を及ぼし、「ストレス]度に有意な負の影響を及ぼすことが示された。「運動・身体活動」は, 男性では「運動・スポーツ」が影響を及ぼしていたが, 女性ではこれに加え「時間の管理」が影響を及ぼしていた。また, 男女共に「ストレス経験」が「運動・身体活動」を介しメンタルヘルスに影響するという過程は示されず, 運動・身体活動の実施によるメンタルヘルスヘの直接的影響のみが示された。
著者
田中 瑛津子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.117-130, 2022-06-30 (Released:2022-07-12)
参考文献数
28
被引用文献数
2

理科教育において,学習内容と日常場面における現象との結びつきを認識させ,深い理解や興味を育むことは,重要な課題である。本研究では,中学生を対象とした実験授業において,授業冒頭で日常場面における発展的な問題を達成目標課題として提示し,講義後にその問題にグループで協同的に取り組ませることが,生徒の理解や興味に与える影響について検討した。日常場面の問題を取り扱うことの効果を検証するため,実験場面を題材とした問題を扱う「実験的問題群」と,問題の構造自体は同じだが問題の文脈を日常場面に当てはめた問題を扱う「日常的問題群」の2つの群を設定し,比較した。結果,「日常的問題群」の方が,問題提示後の一時的な興味や,授業後および1ヶ月後における日常関連型興味(理科の学習内容と身近な現象が関連づいていることに基づく興味)が高いことが示された。また,講義後および協同後のテスト正解率には群間差が見られなかったものの,「日常的問題群」においてのみ,協同的問題解決を通じて正解率に有意な伸びが見られた。
著者
星野 喜久三
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.14-20,62, 1969-10-15 (Released:2013-02-19)
参考文献数
13

自然の美的場面を描写した短文にたいする意味の把握を通じて, 美的情操を発達的に跡附けることが本研究の目的である。その結果の要約と結論は次の通りである。1. 感情表現章において学年間の差は有意である。性差は有意でない。男女とも中IIIから高Iへ, 女子において高IIIから大学へ増加量が顕著である。表現のヴアライテイーは漸進的に豊富になってくるようであるが, 高I から高IIへの発達が著しいようである。女子は男子より表現の多様性に富んでいるらしい。2. 場面 (1)(牛が憩っている春の牧場),(7)(月の光に明るく照された夜の花園),(2)(急流をさかのぼる鯉, 青空に泳ぐ鯉のぼり),(5)(庭の片隅に咲いている小さな花) に表現量が多く, これらに各々含まれる“のどかな”,“美しい”,“勇しい”,“かわいらしい”の表現は他の表現より著しく多く出現する。これらの場面及び表現は低学年でもかなりの量をもち, その後の発達は急激なもの, 漸進的なもの, 恒常的なものに分れる。これにたいし, 場面 (4)(薄墨で書き流された竹の絵) の表現量は少く, とくに (10)(床の間におかれた相馬焼の陶器) の表現量は目立って少く, 両者の場面に含まれる“淡白な”,“素朴な”,“渋い”,“奥ゆかしい”,“おごそかな”,“高貴な”,“古風な”等の主に日本的美的感情の出現量は僅少であり, 発達的にかなりおくれて (高II, 高III) 出現する。3. 場面 (9)(コツプの水にさされた一輪の菊),(5),(6)(朝日を浴びて目を醒ました店先の人形) において女子が男子より多いようであるが, それらに各々含まれる“静かな”,“かわいらしい”,“にぎやかな”の表現が女子に多いようである。これらの表現は低学年でもかなり多く出現している。これにたいし,(13)(急傾斜を滑行するスキー),(2) のような場面では男子が女子よりも多く,(13) に含まれる爽快なは男子に圧倒的に多い。4.“恐しい”,“無気味な”等の否定的感情は学年が進むにつれて減少する。(3),(10),(12)(山奥の木立に囲まれた寺院) に多い。Hurlock (6) は, 青年期後期へ入ると十分な知的発達によつて抽象的なものの価値を見出すことができるようになり, ここに美的情操の発達をみるといつているが, 本研究のような, 文章表現に含まれる美的価値の意味を理解することでは, 児童期では極めて困難であり, 青年期へ入つてから, とくに中期, 後期における著しい上昇を伴って, 発達していくことが認められる。
著者
村石 幸正 豊田 秀樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.395-402, 1998-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
32
被引用文献数
1

古典的テストモデルを考慮に入れた遺伝因子分析により学力の因子構造を調べるため, 100組の一卵性双生児と25組の二卵性双生児と703人の一般児の標準学力テストのデータを分析した。この際, 豊田・村石 (1998) の方法を用い, 一般児のデータを因子の共分散構造を安定させるために利用した。遺伝的影響・共有環境・非共有環境は, それぞれ国語の学力の分散を0.0%, 64.5%, 2.9%, 社会の学力の分散を 52.3%, 17.0%, 4.7%, 数学の学力の分散を0.0%, 47.7%, 10.4%, 理科の学力の分散を56.1%, 0.0%, 13.3%説明しており, 教科によって学力の構造が大きく異なることが示された。また, 古典的テスト理論によるモデルの比較の結果, 同族モデルが最もよくデータの性質を説明しており, 信頼性係数を計算する際,τ等価測定を仮定するα係数の無批判的使用に疑問を呈した。
著者
千葉 堯
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.82-90,125, 1965-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
7

The purposes of this study were (a) to consider Jean Piaget's theory on conservation (especially conservation of liquid and weight), and (b) to analyse the role or meaning of nonconservation.Hypotheses: (1) Even if the child does not exhibit conservation in Piaget's classic experiments, we cannot say that he has no conservation.(If we admit, as Piaget, that the child cannot acquire conservation without logical multiplication or conceptual coordination, we must reject our hypothesis.)2) Because of perceptual and (other conditions inhibiting the child from exhibiting conservation, the child who has acquired conservation cannot exhibit conservation if conditions change.Procedure: Our Subjects were 71 primary school pupils (6-9 years old).1) Piaget's classic ex (periments of conservation2) Conservation of liquid by usin g screened beakers: Two standard _beakers are partly filled so that the child judges them to contain equal amounts of water.Another beaker which is hidden by a screen except for the top is introduced.The Experimenter pours from a standard beaker into the screened one.Then the child is asked which has more to drink, or do they have the same amount.(3) Quantification of liquid: Two beakers, A and B (A is wider than B) are partly filled, and two empty beakers (one is identical with B and the other is smaller than A and B in both height and width) are introduced.The child is asked,“Which has more to drink, A or B?”, and informed,“If you want to use these empty beakers, you may use them.”Results: (a) In comparison with the classic experiment, there is a striking increase in correct equality judgment in the screened experiment.(b) Without a concept of conservation, it is impossible for the child to quantify liquid.(c) The child justifies his correct judgment not by logical multiplication but by noting that “You only poured it” or “Its the same water.” (d) When the child acquires conservation and his concept of conservation is f ixed to some extent, he exhibits nonconservation.Judging from out results, we cannot explain result (a) and (d) by Piaget's theory.The child discovers essential causality by falling into nonconservation. In this way, he generalizes and develops his concept of conservation, and in this sense, the role of nonconservation is very important for the development of concept of conservation.
著者
西林 克彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.365-372, 1991-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
7

In order to examine affirmative and negative processes in the function of the complexity of the cognitive structure, in experiment I college students were presented place names on CRTs and were asked whether they had been to such places. In experiment II tasks identifying place names were added. Affirmative RTs were relatively constant with distant and close places. Negative RTs, however, were fast with distant places where the cognitive structure was hierarchically simple and slow with close places where the cognitive structure was complex. Results confirmed that fast negative responses with distant places were made by stopping further inspection when negative superordinates of the places were retrieved. Negative processes with near by places took time to search in comparison to peripheral places, because studied places had stored no information to negate with them.
著者
植阪 友理 植竹 温香 柴 里実
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.175-191, 2021-03-30 (Released:2021-11-16)
参考文献数
30

近年,「子どもの貧困」の問題が脚光をあびるようになり,社会的関心も高まっている。その一方で,貧困をテーマとした論文が『教育心理学研究』に掲載されたことはなく,学会としてこの問題に正面から取り組んできたとは言い難い。一方,他領域,他学会等では,課題はあるものの活発な議論や活動が行われつつある。本稿では,日本における貧困家庭の子どもの支援について,研究知見や官民の取り組みを概観するとともに,そこでの課題を乗り越えるため,著者が生活保護受給者世帯を支援するNPOと連携し,数年にわたって行ってきた学習支援の実践を取り上げる。この実践は,認知心理学を生かして学習者の自立を目指す「認知カウンセリング」の知見を活用しようとする試みである。目に見えて大きな成果が得られているとは言い難いが,確実に変化は見られている。この実践を記述することを通じて,心理学的発想や「認知カウンセリング」の知見は貧困家庭の子どもの支援においてなぜ受け入れられにくいのかという原因を考察するとともに,心理学に基づく支援が活用されるためには,支援者にどう学んでもらうことが効果的なのかを実践を踏まえて提案した。
著者
河崎 美保 白水 始
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.13-26, 2011-03-30 (Released:2011-09-07)
参考文献数
25
被引用文献数
5 2

本研究では, 算数授業において発表された複数の解法を, 各自がそれでなぜ答えが求まるかを説明することによる学習促進効果を検討した。小学5年生を対象に算数文章題の授業を行い, 実験1では, 解法提示後に聞き手の児童に説明を求める条件と単に評価を行う条件, および, 非規範解法と規範解法という複数解法を提示するIF条件と規範解法のみを提示するFF条件とを組み合わせ, IF-説明条件, FF-説明条件, IF-評価条件, FF-評価条件の4条件を比較した。授業前後のテスト結果より, 規範解法の意味を高い割合で記述できるようになった児童がIF-説明条件では有意に多く, FF-説明条件では有意に少なかった。評価条件には複数解法提示の効果が見られなかった。実験2では, 説明活動をペアで行うIF条件とFF条件を検討し, 転移課題に複数解法提示の効果が見られた。この結果から複数解法提示は, 各自が内的に説明を考える活動と考えた結果を外化してペアで話し合う活動という内外相互作用の二要素を伴うときに最も学習促進効果を持つことが示唆された。説明活動が複数解法の対比を促し, 規範解法の重要な構成要素の把握を容易にするメカニズムをプロセスデータから考察した。