著者
鹿内 信善
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.207-216, 1976-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
18

本研究は, 次の仮説の検証を目的とする。創造性の高いものは, 複雑性・新奇性を有する刺激によって認知的コンフリクトが喚起されている事態での知識獲得において有利であろう。また, Getzels-Jackson現象は, このような事態での知識獲得において生起するであろう。これらの仮説を検証するために, コンフリクト (C) 条件・非コンフリクト (NC) 条件の2つの条件が操作された。各条件での手続概要は以下である。C条件: (1) 事前テスト (直前実施)(2) 被検者は, ある新奇な現象を生起させることが可能か否かの予想をする。ついで, この新奇な現象が呈示される。これらの手続により, 複雑性・新奇性による認知的コンフリクトの喚起が期待される。 (3) 被検者は, この現象の生起理由をのべた, 認知的コンフリクト低減情報を呈示される。(4) 事後テスト (直後実施)(5) 把持テスト (1週間後実施)。NC条件: この条件はC条件と主に次の2点で異なる。第1に予想手続がない。第2に現象の生起理由をのべた情報のあとで当該現象が呈示される。これらの手続は, 複雑性と新奇性を減ずるためにとられる。仮説を支持する結果は, 題材として用いた現象を生起させる操作とその理由説明をもとめる記述式のテストにおいて主として得られた。これらの結果は, 創造性の高いものは照合的 (複雑・新奇) 刺激に対して接近傾向を有しているためであると考えられる。
著者
中村 涼
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.85-91, 1996-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
12

The present study investigated whether giving reality information and the category names of the to-be-learned materials affect incorporating of the materials into subject's preexisting knowledge. Forty university students were instructed that they were to learn real facts, while 43 university students were instructed that they were to learn rtificial facts. Actually, the subjects in both groups learned unfamilliar real facts. Half of the materials consisted of category names with two attributes, and the remaining half consisted of three attributes. Immediately following the learning phase, the subjects received a recall test, a recognition test, and a matching test. They were given the tests again after 1-week interval. The results indicated that giving real information and/or providing category names facilitated the learning of the materials. These results were discussed in terms of incorporation process of new information into preexisting knowledge.
著者
伊藤 貴昭
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.237-251, 2009
被引用文献数
3 7

学習者に言語化を促すと学習効果が促進されることがある。本稿では, そのような学習方略として言語化を活用することの効果を検討するため, 関連する3つの研究アプローチ(自己説明研究, Tutoring研究, 協同学習研究)を取り上げ, その理論と問題点を概観した。その結果, (1) 自己説明研究では言語化の目的が不明確であるため, 方法論の多様性という問題を抱えており, (2) Tutoring研究では, 知識陳述の言語化に留まってしまう学習者の存在が指摘され, (3) 協同学習研究では言語化の効果ではなく認知的葛藤の源泉としての他者の存在を指摘していること, の3点が明らかとなった。これらの問題を解決するため, 本稿ではTutoring研究において指摘された知識構築の言語化を取り上げ, 認知的葛藤を設定することで, 関連する研究アプローチを統合するモデル(目標達成モデル)を提案した。このモデルによって, これまでの研究によって拡散した理論を一定の方向へと収束可能となることが示唆された。
著者
東 清和
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.156-164, 1997-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
72
被引用文献数
3 1

本論文は, かつては性差が認められるとされた視空間能力, 数学的能力, 言語能力および攻撃性に関するメタ分析, および性差が認められないとされた原因帰属, 被影響性, 非言語的コミュニケーション, 援助行動, 自尊感情, 不安, 主張性などのメタ分析の概観を試みたものである。加えて, 1970年代以降の日本における性差・性役割に関する学会誌論文での研究動向を紹介した。
著者
中間 玲子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.374-386, 2013
被引用文献数
3

本研究は, 恩恵享受的自己感との比較を通して, 自尊感情と心理的健康との関連を再考することを目的とした。恩恵享受的自己感とは自己の周りの環境や関係性に対する肯定的感情から付随的に経験されるであろう自己への肯定的感情である。心理的健康としては幸福感および主体性の側面をとりあげた。大学生306名を対象とした質問紙調査(研究1)において、幸福感・内的統制感は自尊感情・恩恵享受的自己感の両方と有意な関係にあることが示され、自尊感情と共に恩恵享受的自己感も心理的健康に関連する重要な概念であると考えられた。大学生173名を対象としたネット調査(研究2)の結果からもその見解は支持された。また、女性は男性よりも自尊感情の得点が低いが恩恵享受的自己感の得点は男性よりも高いこと(研究1)、相互協調性は自尊感情とは負の関係にあるが恩恵享受的自己感とは正の関係にあること(研究2)から、恩恵享受的自己感は、性役割や文化的価値による抑制を受けない自己への肯定的感情であると考えられた。一方、自律性・人生の目的意識との関連(研究1)から、他者との対立を凌駕するような強い主体性とは自尊感情のみが関連することが明らかとなった。
著者
小野瀬 雅人
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.100-107, 1995-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Two experiments were conducted to investigate the relations between handwriting mode (tracing and copying) and handwriting pressure-velocity. In experiment I, kindergartners (N=20) and undergraduate students (N=20) were required to write a Kanji five times in each mode employing handwriting pressure device (TAKEI KIKI co. make). In experiment II, undergraduate students (N=20) were required to write a Hangul character (Korean), unfamiliar character to subjects, using the same procedure. The results showed that there was a significant difference in handwriting pressure-velocity between kindergartner and undergraduate groups with regard to the handwriting mode. Discussed on the basis of the model of information processing on handwriting behavior (Schmidt, 1982; Stelmach, 1982), the results of two experiments suggested that the tracing mode made the burden too heavy for the response execution stage in that model as compared with copying mode. It was concluded that handwriting in tracing mode was a more difficult task than the copying mode for kindergartners.
著者
江村 理奈 岡安 孝弘
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.339-350, 2003-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
23
被引用文献数
14 8

本研究では, 中学校1年生を対象に学級を単位とした集団社会的スキル教育を行い, 社会的スキルの促進と主観的適応状態 (ストレス反応, 学校ストレッサー, ソーシャルサポート, 孤独感, 不登校傾向) が改善されるかどうかを検討した。期間は, 約半年で総合的学習の時間を利用して8セッション実施された。標的スキルは, a) 自己紹介, b) 仲間の誘い方, c) あたたかい言葉かけ, d) 協力の求め方, e) お互いを大切にする, f) 上手な断り方, 9) 気持ちのコントロールの7つであった。介入前・中・後の社会的スキル尺度総得点に基づくクラスター分析を行った結果, 下降群, 低得点上昇群, 高維持群, 高得点上昇群の4つのタイプに分類できた。各群の介入前・中・後・フォローアップにおける主観的適応状態について比較したところ, 低得点上昇群の孤独感が減少し, 友人サポートが上昇していた。一方, 下降群は, 不機嫌・怒りが上昇していた。以上の結果より, 中学校における集団社会的スキル教育は社会的スキルを促進し, 主観的適応状態を改善することに一定の効果をもつことが示唆された。
著者
中西 良文 大道 一弘 梅本 貴豊
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.199-211, 2018-09-30 (Released:2018-11-02)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究では,Pintrich, Marx, & Boyle (1993) で言及されている,自己効力感の2つの側面,すなわち,知識の正確性に対する自己効力感と知識再構築に対する自己効力感が,概念変化とどのように関連しているか検討した。概念変化を促すための教授ストラテジーとして,既有の概念に対峙する情報から提示する対決型ストラテジーと,合致する情報から提示する懐柔型ストラテジーを取り上げた。大学生・短期大学生135名を対象にいずれかの教授ストラテジーを用いて家畜概念の変化を促す教材を用いた検討を行った。その結果,まず2つの側面の自己効力感を測定する尺度が作成された。続いて,2つの教授ストラテジーと2つの側面の自己効力感によって家畜概念の判断の正答にどのような影響が見られるか検討したところ,対決型の教授ストラテジーによって概念変化がより促されている様子が見られたとともに,対決型の教授ストラテジーの場合において,知識再構築に対する自己効力感の得点が高く,知識の正確性に対する自己効力感の得点が低い場合により正答が導かれるという交互作用が見出された。そして,いずれの教授ストラテジーも,教授前から後にかけて,2つの側面の自己効力感を高めることが見出された。
著者
宮崎 清孝
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.112-124, 1980-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
81
被引用文献数
2 2