著者
菊池 聡 金田 茂裕 守 一雄
出版者
信州大学人文学部
雑誌
人文科学論集人間情報学科編
巻号頁・発行日
vol.41, pp.105-115, 2007-03-15

Ninety-five undergraduates belonging to four different hobby groups took two different types of attitudinal assessment measures towards "Otaku" concept ; an implicit measure recently developed by Mori (2006) and two explicit measures developed by Kikuchi (2000). The results showed that these three measures were inter correlated and the implicit measure failed to discriminate the four groups, but most Otaku-cultured group showed a slight positive attitude towards Otaku-concepts. Being Otaku was once strongly associated with negative image among the Japanese students. However, the present results showed the Otaku image has become neutral in both implicit and explicit measures.
著者
菊池聡 石川幹人#
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第57回総会
巻号頁・発行日
2015-08-07

科学的な主張の外観がありながら,実際には適切な科学的な方法論が適用されていない誤った主張や言説は,疑似科学やニセ科学と呼ばれる。日本では血液型性格学やマイナスイオンなどがその代表とされる。疑似科学信奉は,迷信や占い信奉などと並んで,超常信念(paranormal belief)の一つと位置付けられる。こうした超常信念は,しばしば科学的知識や合理的思考の欠如と関連づけられるが,一方で合理的・適応的な役割も担うことも指摘されている(菊池,2012)。 疑似科学が一般社会もたらす深刻な問題の一つとして,疑似科学にもとづく一部の補完代替医療や健康法などが無批判に信用され,健康被害が引き起こされることがある。こうした健康法・健康食品の利用は,高齢者にとって強い関心事といえるが,石川(2009)の調査では,新聞に掲載される疑似科学的広告の9割以上が健康食品を扱っているという現状がある。 高齢者の超常信念は青少年と異なる特徴を持つことは松井(2001)や菊池(2013)などで示されているが,心理学領域での超常信念の研究は,合理的思考と対比される文脈で,青少年を対象として行われることが多かった。そこで,本調査では,現実に,科学的に根拠の無い(効果の疑わしい)医療や健康法のユーザーとなりうる高齢者を対象として,科学的な立場からの批判が受け入れられにくい背景要因について検討を行った。方法調査協力者 シルバー人材センター登録者で会員研修会に参加した585名に調査用紙への回答を依頼し,郵送法で回収した。有効回答者,267名。年齢は61歳から88歳まで。平均71.5歳(SD=4.9)。質問紙・日常生活での健康への態度 健康状態や,健康法・健康診断への取り組み,メディアを通した健康情報の収集などについて尋ねた。11項目5件法。・疑似科学的言説への態度 「マイナスイオンを使った器具で健康状態が改善できる」など,疑似科学的主張や,健康食品の効能,科学的気象予測など計7種類の主張に対して,それぞれ「信頼できる↔信頼できない」「興味がある↔興味がない」「科学的↔非科学的」の各5件法。信頼性の評定を疑似科学信念得点とした。・科学的懐疑への態度 『自分が愛用している健康食品や健康法に対し科学的な根拠がはっきりしないのではないか,という意見を聞かされた』場面を想定させ,そこで取る態度について尋ねた。「根拠を知ろうとする」「感情的に反発する」「自分の実感を信用する」など7項目5件法。・その他,迷信への態度や科学への態度など。結果 疑似科学的主張への信頼度(肯定率)を,菊池(2013)の同県内高校生データと比較すると,血液型(高齢者肯定率25%)はほぼ同等だが,マイナスイオン(15%)や地震雲(27%)の肯定率は半分程度であった。また,疑似科学の信頼性評定は科学性評価と.r=65~.75の相関があり,高齢者はこれらを迷信としてではなく科学性をもとに信頼度を評価していることが示された。 「科学的懐疑への態度」項目を因子分析によって「情報探索」「感情的反発」「失望」「無関心」の4尺度とし,日常の健康への態度や疑似科学信念との関連を重回帰分析によって求めた(Table.1)。その結果「情報探索」は,「日常的健康情報収集」「性別(男性)」と有意な関連があった。一方,「反発」「失望」「無関心」といったネガティブな態度は,すべて「疑似科学信念」と正の関連性が示された。その他の健康への態度や,迷信態度,年齢などとの関連性は見られなかった。考察 科学的立場からの懐疑論や疑似科学批判は,しばしば科学的根拠の乏しさや不十分さを批判するパターンを蹈襲する。しかし,高齢者はある種の科学性にもとづいた理性的判断のもとで疑似科学信念に至るがゆえに,批判的な指摘に対して,判断の誤りを指摘されたようにとらえ,ネガティブな反応をする傾向があると推測できる。これは有効な科学コミュニケーションのあり方や現代社会の問題としての疑似科学を考える上で重要な示唆となりうるものである。
著者
山本 輝太郎 石川 幹人 菊池 聡
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 42 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.341-342, 2018 (Released:2019-06-14)
参考文献数
4

本研究では,疑似科学に関するオンライン上での議論を手がかりとして,それらの中で「誤った論法=誤謬」がどのように見られるかについて分析した。分析の結果,オンライン上のコメントでは 意味の曖昧さや多義性につけ込み,受け手(閲覧者)に対して先入観を与えるタイプの誤謬が 多く見られた。本報告では,分析結果とともに誤謬を見抜く取り組みの必要性について論じる。
著者
菊池 聡 金田 茂裕 守 一雄
出版者
信州大学人文学部
雑誌
人文科学論集 人間情報学科編 (ISSN:13422782)
巻号頁・発行日
no.41, pp.105-115, 2007-03

Ninety-five undergraduates belonging to four different hobby groups took two different types of attitudinal assessment measures towards "Otaku" concept ; an implicit measure recently developed by Mori (2006) and two explicit measures developed by Kikuchi (2000). The results showed that these three measures were inter correlated and the implicit measure failed to discriminate the four groups, but most Otaku-cultured group showed a slight positive attitude towards Otaku-concepts. Being Otaku was once strongly associated with negative image among the Japanese students. However, the present results showed the Otaku image has become neutral in both implicit and explicit measures.
著者
菊池 聡
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.684-687, 2001-11-20 (Released:2017-07-11)

疑似科学とは, 現代科学で未知の対象を扱っているから「疑似」科学なのではない。その理由は, 主に実証的な科学に要求される考え方のいくつかが不十分であったり, 欠落していることにある。そして, この科学の思考法を含む領域横断的なクリティカルシンキングの態度と技術が科学教育の大きな目標となりうる。さらに疑似科学を考えるとき, その動機と理論, 確率論的科学と決定論的科学を分けて考える必要のあることも指摘した。最後に宏観異常現象による地震予知をとりあげ, 疑似科学と科学の問題を具体例で考察した。
著者
菊池 聡
出版者
地域ブランド研究会事務局
雑誌
地域ブランド研究
巻号頁・発行日
vol.4, pp.47-78, 2008-12-31

90年代終盤以降、 「秋葉原」は「おたく」の聖地として、急激に変貌を遂げてきた。この「秋葉原」という地域ブランドの確立は、日本の文化・経済状況の変化がもたらした「おたく」ステレオタイプの変容と拡散に、深い関連があると考えられる。本論文では「おたく」ステレオタイプと「秋葉原」の関連を明らかにするために、大学生(N-368)に対して調査を行い、 1998年の調査と比較した。その結果、ネガティブな「おたく」ステレオタイプが、ややポジティブな方向へ変化してきたことを明らかにした。また「おたく」概念についての自由記述の分析から、 98年の段階ではほとんど見られなかった、 「秋葉原」という表現が、特有のファッションや趣味と結びついて多く出現していることを見いだした。これらをもとに、日本を代表する地域ブランドとなった「秋葉原」の特徴を考察した。
著者
菊池 聡
出版者
地域ブランド研究会事務局
雑誌
地域ブランド研究 (ISSN:18812155)
巻号頁・発行日
no.4, pp.47-78, 2008-12
被引用文献数
1

90年代終盤以降、 「秋葉原」は「おたく」の聖地として、急激に変貌を遂げてきた。この「秋葉原」という地域ブランドの確立は、日本の文化・経済状況の変化がもたらした「おたく」ステレオタイプの変容と拡散に、深い関連があると考えられる。本論文では「おたく」ステレオタイプと「秋葉原」の関連を明らかにするために、大学生(N-368)に対して調査を行い、 1998年の調査と比較した。その結果、ネガティブな「おたく」ステレオタイプが、ややポジティブな方向へ変化してきたことを明らかにした。また「おたく」概念についての自由記述の分析から、 98年の段階ではほとんど見られなかった、 「秋葉原」という表現が、特有のファッションや趣味と結びついて多く出現していることを見いだした。これらをもとに、日本を代表する地域ブランドとなった「秋葉原」の特徴を考察した。Since the end of the 1990s, Akihabara has been radically changed and made into a sanctuary for otakus, establishing "Akihabara" as a placebrand.This is apparently related to the diffusion and transformation of otaku stereotypes caused by cultural and economical changes in Japan.In this study, the questionnaire was first administered to 368 undergraduate students, in order to examine the relationship between the transformation and the diffusion of otaku stereotypes. The data of its research also revealed the relationship between otaku stereotypes and Akihara as a place-brand, then these analyses were compared with the data of the precedent one (Kikuchi, 2000). One of the things this study reveals is that last ten years the negative image of otaku stereotypes has been decreased. Another important change is observed in the analysis of the answerers' free comments on otaku stereotypes. In the new research, the word, Akihabara is frequently used to talk about typical otaku fashions or hobbies though such tendency was not recognized in the 1998 research. Considering these changes, this study further discusses the characteristics of Akihabara as a representative place-brand in Japan.
著者
菊池 聡
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.286-292, 2018 (Released:2019-01-08)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

一般市民が災害リスクを正しく認識して適切な対処行動をとることができるか, という点は, 災害にかかわる心理学の重要なテーマのひとつである。特に, 発災時に迫り来る危険を適切に判断できず, 避難や対策が遅れて大被害につながる例は多く知られている。人の思考や判断過程における認知情報処理を扱う心理学の諸研究からは, 緊急時にこうした不適切な意思決定を引き起こす認知バイアスが数多く指摘されている。本稿ではリスク認知心理学の観点から, 正常性バイアスをはじめとした災害時の認知バイアスの性質について概観した。その上で, 防災減災のための施策においては, こうした認知バイアスの特性を考慮した計画立案とリスクリテラシーの向上が重要であることを提言した。
著者
菊池 聡 佐藤 広英
出版者
信州大学人文学部
雑誌
信州大学人文科学論集 = Shinshu studies in humanities (ISSN:24238910)
巻号頁・発行日
no.7, pp.71-86, 2020-03

In order to examine relationships between Twitter use and pseudoscientific beliefs, we conducted two online surveys of individuals in a wide age range and received 2,879 answers. The analysis of these answers suggested that Twitter use and pseudoscientific beliefs are closely related to each other but that their interaction varies according to Twitter viewing frequency and purposes, the kind of pseudoscientific beliefs in question, and Twitter user's information-processing style. In general, some of those who use Twitter very often and rely on their intuition tend to believe in a certain kind of pseudoscientific beliefs. In the surveys, we also requested to describe what kind of pseudoscientific beliefs are the most familiar and pseudoscientific beliefs regarding medical and health care are most often named.
著者
石川 幹人 菊池 聡
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

疑似科学を判定するための科学性の10条件を選定し、実際の項目に適用することでその有効性を確立してきた。また、それを応用した科学コミュニケーションサイト(http://www.sciencecomlabo.jp/)を運営し、その有効性を広く公表している。このサイトは運用1年で、訪問者15万人、50万ページビュー、コメント数500件以上を達成して、定評を確立している。この業績により科学技術社会論学会の実践賞を受賞した。
著者
菊池 聡
出版者
北陸心理学会
雑誌
心理学の諸領域 (ISSN:2186764X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.55-58, 2022-12-01 (Released:2023-03-20)
参考文献数
12
著者
菊池 聡
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PC-145, 2021 (Released:2022-03-30)

超常信奉の成立についての解釈として「理解の及ばない事象に遭遇した時,熟慮して時間をかけて科学的に解明するよりも,現代の科学を超えた超常原理によって,手っ取り早く納得できる意味づけを見いだす」という言説が,一般にしばしば見られる。これは超常信奉が直観的処理スタイルや曖昧さへの不寛容などの非熟慮的・非自制的な認知特性と関連するという報告と符合する。その点で,超常信奉は,短期的な解決を受け入れて,将来の解決の価値を低く見つもる時間割引(time discounting)と関連することが予想される。一方で欧米の研究では,宗教的信仰心の特徴として即時的な報酬を断ち切って未来の価値を待つ能力も指摘されている。本研究では,大学生108名を対象として異時点間での報酬選択による時間割引課題を実施し,超常信奉および疑似科学信奉尺度,批判的的思考尺度の関連性を分析した。重回帰分析の結果,疑似科学信奉態度とスピリチュアル信奉態度は時間割引率と正の関連性があり,信奉者が将来の価値をより割り引くことが明らかとなった。これは不可解な現象の解釈におけるセルフコントロールの弱さが超常原理の受容と関連すると解釈できる
著者
菊池 聡
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PC-119, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

科学的な主張のように見えながら正当な科学としての要件を欠く疑似科学的は,医療・健康・教育・環境など幅広い領域でしばしば社会的な問題を引き起こしている。こうした中には,疑似科学ユーザーが,さまざまな「善意から」,よかれと思って使用や推奨を行い,批判を受け入れない態度が多く見られる(菊池,2012)。こうした無自覚の善意が,正当な科学知識の欠如と結びついて疑似科学を促進するという一般的な言説を検証するため,疑似科学信奉と,愛他的向社会的行動や科学リテラシーの関連について検討した。大学生325人(男171,女154)人に対して,疑似科学信奉尺度(超常・日常),超常信奉尺度,向社会的行動尺度,科学技術基礎リテラシー知識テストなどを実施した。その結果,性別や専攻を統制しても,疑似科学(超常)信奉は向社会的行動と正の関係が認められた。ただし,科学知識レベルと交互作用は見られなかった。また,一般的な超常信奉と向社会的行動の関連が見られ,疑似科学信奉においても超常的なスピリチュアルな要素が向社会行動に影響する可能性が推測された。