著者
杉山 宏 中西 孝之 大島 靖広 後藤 憲 大洞 昭博
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.20-25, 2009 (Released:2012-07-17)
参考文献数
20

症例は59歳と83歳の女性で,ともに寒天溶液(ゾル)を服用後に嘔気が出現し,当科を受診した.内視鏡検査にて胃内に表面平滑で,くすんだ淡緑色の巨大な異物を認め,寒天胃石と診断した.種々の鉗子による破砕や把持は困難であった.そこで,内視鏡先端に透明フードを装着し寒天胃石内に挿入,フード内に収納した後,吸引をかけながら抜去した.オーバーチューブを併用し,同様の操作を繰り返したところほぼ完全に摘出,除去しえた.

1 0 0 0 OA 虫垂粘液癌

著者
野洲 武司 古志谷 達也 山下 靖英
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.438-439, 2010 (Released:2011-11-07)
参考文献数
3
被引用文献数
1
著者
宮里 賢 名富 久義 城間 裕子 與那嶺 圭輔 西澤 万貴 馬渕 仁志 金城 譲 仲地 紀哉 島尻 博人 豊見山 良作
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.2377-2386, 2018 (Released:2018-11-20)
参考文献数
17

【方法】内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)を施行した総胆管結石性胆管炎の症例で血液培養が採取されていた241例を対象に,菌血症の頻度や起因菌ならびに重症度との関連や菌血症群の特徴について検討した.【結果】対象群の35.2%が菌血症を合併した.菌血症の頻度は胆管炎の重症度に比例し重症例では65%に達した.起因菌はEscherichia ColiやKlebsiella属等のグラム陰性菌が多くを占め,起因菌の中に耐性菌の一種であるextended-spectrum β-lactamase(ESBL)産生菌がみられた.菌血症合併例は非合併例と比較して,高齢で重症度が高く抗菌薬投与期間が長い結果となった.【結論】総胆管結石性胆管炎の重症例では菌血症を合併することが多く,速やかな胆道ドレナージと共に起因菌を想定した強力な抗菌薬治療が重要である.
著者
米田 頼晃 樫田 博史
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.2465-2471, 2022 (Released:2022-12-20)
参考文献数
35

1cm未満の小型大腸ポリープの取り扱いについて解説する.過形成性ポリープ,腺腫,癌の鑑別のためには,画像強調内視鏡や拡大観察が有用であり,特にcold polypectomyでは癌を除外することが重要である.cold polypectomyは後出血が極めて稀であり,穿孔もほぼ皆無であり安全に実施できることが証明され急速に普及している.ただし,微小であっても癌を疑う病変においてはEMRを選択すべきである.人工知能診断を含めた最新機器の活用によって,精密な診断,治療が,より簡便に実施可能となっている.
著者
武田 輝之 宗 祐人 森光 洋介 大津 健聖 岸 昌廣 八坂 太親 辛島 嘉彦 寺部 寛哉 佐々木 英 下河邉 正行
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.2614-2620, 2017 (Released:2017-11-20)
参考文献数
36

症例は74歳,女性.主訴は貧血と黒色便.貧血の原因検索目的に施行した腹部造影CT検査で,空腸に限局性の壁肥厚・周囲のリンパ節腫脹を認めた.経口的ダブルバルーン小腸内視鏡検査では,空腸に全周性の潰瘍を認めた.潰瘍辺縁はやや厚みがあり,辺縁は整で,壁伸展も良好であった.潰瘍底には露出血管を伴っており,クリッピングによる止血術を行った.生検病理組織所見よりT細胞性リンパ腫と診断した.小腸部分切除術より得られた切除標本から,腸管症関連T細胞リンパ腫Ⅱ型と診断した.消化管出血を契機に診断しえた腸管症関連T細胞リンパ腫の一例を経験したので報告する.
著者
松原 三郎 伊佐山 浩通 屋嘉比 康治
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.1186-1207, 2018 (Released:2018-06-20)
参考文献数
128
被引用文献数
1

急性胆嚢炎に対する内視鏡治療には,ERCP下に行う経乳頭的アプローチ(ETGBD)とEUSを用いる経消化管的アプローチ(EUS-GBD)がある.ETGBDは胆嚢管を突破するという技術的困難さから成功率は若干低いが,PTGBD不能例に対する代替治療として確立されており,また内瘻化することで胆嚢炎再発に対する長期予防効果も期待されている.EUS-GBDは2007年に始まった新しい方法であるがそのエビデンスの量はETGBDをすでに凌駕している.高い成功率と安全性を有し,長期予後も良好であり,さらに使用するステントによっては結石除去まで行うことが可能である.今後PTGBDに代わる第一選択の治療法となる可能性を秘めている.本稿では,ETGBDおよびEUS-GBDについて,適応,方法,短期成績,長期成績,偶発症,PTGBDとの比較などについて最新のエビデンスに基づき解説する.
著者
糸井 隆夫 良沢 昭銘 潟沼 朗生 岡部 義信 洞口 淳 加藤 博也 土屋 貴愛 藤田 直孝 安田 健治朗 五十嵐 良典 後藤田 卓志 藤本 一眞
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.337-365, 2017 (Released:2017-03-22)
参考文献数
227

日本消化器内視鏡学会は,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として,「EPLBD診療ガイドライン」を作成した.EPLBDは近年普及している総胆管結石に対する治療法の一つである.この分野においてはエビデンスレベルが低いものが多く,専門家のコンセンサスに基づき推奨の強さを決定しなければならないものが多かった.本診療ガイドラインは「EST診療ガイドライン」に準じて,定義と適応,手技,特殊な症例への対処,偶発症,治療成績,術後経過観察の6つの項目に分け,現時点での指針とした.
著者
阪口 昭
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.2317-2322, 2022 (Released:2022-10-20)
参考文献数
10

2019年10月より約2年間,ブータン国立病院(Jigme Dorji Wangchuck National Referral Hospital)にて内視鏡勤務を経験した.コロナ禍と重なる期間ではあったが,上部消化管内視鏡約4,000例,大腸内視鏡約350例,ERCP約140件施行した.ブータンでは,Helicobacter pylori(H. pylori)感染率は70%を超え,若年者の陽性率も高く,悪性疾患のうち,死亡率の第一位は胃癌である.見つかる胃癌の多くは進行胃癌である.現在,国家プロジェクトとして,胃内視鏡検診が行われ,H. pylori除菌と早期胃癌発見に向けて進行中である.今回,発展途上の医療資源の少ない国で,上部消化管・大腸内視鏡やERCPはどのように行われているのかについて報告した.今後一人でも多く発展途上国の医療について関心を寄せる内視鏡医が生まれることを期待する.
著者
村山 洋子 佐野村 珠奈 篠村 恭久 西林 宏之 安永 祐一 筒井 秀作
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.237-249, 2013 (Released:2013-05-21)
参考文献数
30
被引用文献数
1

胃体部の皺襞肥大は,内視鏡検査や胃X線検査時にしばしば観察される.その大多数はHelicobacter pylori(H. pylori)感染により惹起される皺襞肥大型胃炎である.その特徴は,胃体部粘膜の腺窩上皮の過形成および高度の炎症を認め,胃酸分泌の低下を伴い,皺襞肥大の程度に従って胃癌のリスクが増加し,特に胃体部に未分化型胃癌が増加することである.H. pylori除菌により,これらの所見は改善し,胃体部の皺襞肥大はほぼ正常化し白濁した粘液の付着の消失を認めることで胃癌が発見しやすくなる.皺襞肥大型胃炎は,H. pylori感染者のなかでも胃癌発症のハイリスク群と考えられる.皺襞肥大型胃炎において,H. pyloriの除菌が胃癌発生の予防につながるかどうかは,今後明らかにする必要がある.
著者
藤原 靖弘 村木 基子 木幡 幸恵 杉森 聖司 山上 博一 谷川 徹也 渡辺 憲治 渡辺 俊雄 富永 和作 荒川 哲男
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.3523-3528, 2011 (Released:2012-01-06)
参考文献数
14
被引用文献数
1

症例は31歳,女性,6年前より嚥下困難・食物のつまり感を自覚し,他院で内視鏡など検査するも異常を指摘されなかった.症状が徐々に増悪するため紹介受診.上部消化管内視鏡検査では食道胃接合部に一致して著明な狭窄を認めたが,明らかな腫瘍や粘膜不整を認めず,超音波内視鏡では主に粘膜層の肥厚を認めた.食道生検にて食道粘膜内に著明な好酸球浸潤とmicroabscess形成を認め,好酸球性食道炎と診断した.フルチカゾン嚥下療法により症状および内視鏡像・組織学的改善を認めた.好酸球性食道炎は本邦では稀な疾患であるが,典型的な症状と特徴的な内視鏡像より食道生検を施行することが早期診断に重要である.
著者
神田 暁博 脇坂 恭加 大槻 晋士 水田 寛郎 伊藤 明彦 辻川 知之
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.1397-1401, 2021 (Released:2021-07-20)

COVID-19感染の流行により,数々の学会が中止や延期,開催方法の変更を余儀なくされている.第104回日本消化器内視鏡学会近畿支部例会は,急遽Web閲覧方式に変更して開催した.発表演題は音声付きのパワーポイントスライドで2020年6月27日から2週間閲覧可能とした.参加は1,000人と過去の通常開催を上回る登録が得られた.アンケートからは自由な時間に閲覧できることや遠方でも参加しやすいなど肯定的な意見が多かった.一方,双方向での質疑応答ができなかったなどの問題も指摘された.今後の日本消化器内視鏡学会支部例会は,Web開催でも参加者が十分に議論に参加できるよう技術的な克服が課題である.
著者
三嶋 孝 奥田 茂 大島 明 宋 桂子 平岡 力
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.21, no.9, pp.1086-1093_1, 1979

早期胃癌を放置した場合どの位の時間でどのような進行癌に発育するかを知ることは重要なことであり,従来retrospective studyを中心に検討されてきた.しかしこの方法は初期変化が癌であるとの組織学的裏付けを欠いているためあくまで推定の域をでないといわざるを得ない.本研究は生検で癌と診断され,レ線,内視鏡で早期と推定されながら何らかの理由で6ヵ月以上経過が追跡された症例を収集し,早期胃癌から進行癌への発育進展をprospectiveに検討したもので次の結果を得た.(1)早期から進行への進展に要する時間をKaplan,Meierの方法で算出したところ36ヵ月を要することが推定された.(2)早期から進行への進展に伴う病型変化として次のコースを確認できた.(1)IIc ul(-)→Borr.II.(2)IIc ul(+)→Borr.III.(3)IIc+III→Borr.III.(4)III+IIc→Borr.III.(5)IIa→Borr.II.(6)I.IIc ul(-)→Borr.I
著者
田中 俊多 松岡 里紗 三浦 翔 印藤 直彦 藤田 光一 松井 佐織 阿南 隆洋 渡辺 明彦 菅原 淳 向井 秀一
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.2514-2520, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
13

症例は70歳代の女性.間質性肺炎で通院加療中に炎症反応亢進を認めたため施行したPET/CTで上行結腸と左腎に集積を認めた.大腸内視鏡検査で,盲腸から上行結腸に直径5-7mm大の黄白色調の扁平隆起性病変の集簇を認めた.また上行結腸に10mm大のⅠsp様の隆起性病変を認めた.生検病理組織学的所見で腎・大腸いずれも,細胞質に顆粒状から類円形のPAS染色陽性像を認め,M-G小体(Michaelis-Gutmann body)と考えマラコプラキアと診断した.マラコプラキアは稀な慢性炎症性疾患で,病理学的に大型のマクロファージの集簇と,その細胞内にカルシウムや鉄の沈着を伴った層状同心円構造を有する封入体(M-G小体)を認めることを特徴とする.膀胱等の尿路系が好発部位であり消化管における報告例は少ない.今回われわれは,腎及び大腸に発生したマラコプラキアの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
丹羽 寛文
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.3241-3260, 2011 (Released:2011-11-30)
参考文献数
18

二重造影法は日本で開発されたと思われているが,二重造影法を最初に開発し報告したのは日本では無い.二重造影法はドイツのFischerが薄いバリウムを使って大正12(1923)年に発表したのが最初で,濃厚なバリウムを使っての大腸の二重造影法は,スエーデンのWelinが昭和28(1953)年に発表している.何れも大腸が対象で大腸ポリープの診断を目的としていた.筆者は若干変更した変法を昭和45年に報告し,その後かなりの症例を経験した.以下Fischer法とWelin法について詳述した.なお筆者は昭和45(1970)年7月にWelin教授をマルモに尋ねたが,すでに彼は定年で退官しており,後任のProf. Boijsenに共同研究者のAndren講師を紹介され,詳細を教わった.Fischer法は薄いバリウムを使っての二重造影法で,バリウムの付着が悪く諸施設で実施されてはいたものの評価は低く,その後忘れ去られた.一方濃厚バリウムを使うWelin法は,良好な二重造影像が得られた.原法ならびに筆者の変法による当時行った実例を提示し,Welin法並びにその変法の特徴,利点を詳述した.筆者が行ったのは,大腸ファイバースコープの開発とほぼ同時期で,両方法の開発発展に相互に良い影響があったと思っている.
著者
根岸 良充 大圃 研
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.1025-1032, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
8

近年の細径内視鏡とその周辺デバイスの進歩は目覚ましいものがある.元来は観察専用の内視鏡と認識されてきたが,状況によっては処置用として従来の内視鏡を超える優位性を擁する場合もある.われわれは1)鎮静剤使用を回避する,2)狭窄によって処置用内視鏡が使用できない,3)咽頭の病変へのアプローチ,の3つの場合において細径内視鏡を処置用として用いている.制約はありつつも,徐々に治療内視鏡としての可能性も持ち始めた細径内視鏡による内視鏡的粘膜下層剝離術の実際について詳述する.
著者
土屋 貴愛 祖父尼 淳 石井 健太郎 向井 俊太郎 糸井 隆夫
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.2388-2396, 2019 (Released:2019-10-21)
参考文献数
12

Lumen apposing metal stent(LAMS)である,Hot AXIOSTM(Boston Scientific社)が被包化壊死(walled-off necrosis:WON)や膵仮性嚢胞に対してEUS-TDを行う際に使用可能となり,WONの内視鏡治療戦略が大きく変化した.これまでのプラスチックステントや金属ステントよりも大口径であるため,より高いドレナージ効果を得ることができ,直接内視鏡を挿入し壊死物質を取り除くネクロセクトミーも容易に行える.また,WONへの適応を取得したデバイスが登場したことにより,安心して治療が行えるようになった.WONがそれほど大きくなく,ほとんどを液体成分が占め,ネクロセクトミーの必要がないと予想される時は,外瘻の経鼻ドレナージチューブか内瘻のプラスチックステント,または内外瘻同時留置を行い,WONが広範に及ぶ場合やネクロセクトミーの施行が予想される場合にはLAMSを留置する.WONの内視鏡治療には致死的な偶発症が起こり得るため,放射線科医や外科医のバックアップ体制を十分整えて行うべきである.
著者
川村 昌司
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.2519-2529, 2018 (Released:2018-12-20)
参考文献数
14

Helicobacter pylori(H. pylori)感染は胃癌などの疾患リスクと関連しており,内視鏡観察時にはH. pylori感染状態に合わせた好発疾患・好発部位に注意する必要がある.内視鏡によるH. pylori感染診断は未感染・現感染・除菌後(自然除菌含む)の3つの状態に特徴的な胃粘膜所見を用いて行い,その局在と頻度は“胃炎の京都分類”にまとめられている.H. pylori未感染の診断は胃角までのRAC(regular arrangement of collecting venules)が有用であり,現感染診断はびまん性発赤・内視鏡的萎縮,除菌後診断には地図状発赤などの所見を用いて診断する.一方,内視鏡による感染診断の注意点として,PPI(proton pump inhibitor)などの薬剤により未感染例でもRACが不明瞭化すること,現感染例・除菌後例でも体部の集合細静脈がみられる例があること,びまん性発赤の判定が難しい例があることなどが挙げられる.内視鏡的なH. pylori感染診断は一つの所見にとらわれずに総合的に判断する必要がある.また,H. pylori感染診断のみに注視しすぎて内視鏡本来の目的である病変発見を忘れないように,バランスのとれた内視鏡観察を行う必要がある.