著者
山本 健太 金森 明 桐山 勢生 谷川 誠 久永 康宏 豊田 秀徳 多田 俊史 安東 直人 新家 卓郎 坂井 圭介 安田 諭 安藤 祐資 木村 純 曽根 康博 熊田 卓
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.1667-1672, 2013 (Released:2013-08-28)
参考文献数
17

83歳女性.平成10年に胆嚢結石症に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.平成22年11月上腹部痛精査のため入院した.入院時肝胆道系酵素上昇を認め,腹部造影CT検査で拡張した総胆管内に局所的に高いCT値を有する結石を認めた.感染兆候を認めず抗血小板薬内服中のため保存的加療を開始し,第7病日にERCPを施行した.総胆管は拡張し,内部に迷入クリップと考えられる金属陰影を含む結石透了像を認めた.内視鏡的乳頭切開術を施行し,截石した.第9病日合併症なく退院した.本症例は胆嚢摘出時に超音波凝固切開装置を使用しクリップを減らす工夫をしたが胆管結石を生じた.比較的稀な合併症であり文献的考察をふまえて報告する.
著者
後藤 善則 又野 豊 吉光 雅志 高橋 直樹
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.1603-1608, 2015 (Released:2015-08-29)
参考文献数
13

症例は66歳女性.29歳時にバセドウ病と診断されたが通院は中断していた.浮腫,倦怠感,黄疸を認め受診した.血液検査で汎血球減少と大球性貧血を認めビタミンB12低値から悪性貧血と診断した.原因として,ガストリン高値,抗内因子抗体陽性,上部消化管内視鏡検査で胃底腺領域優位の萎縮性変化を認めたことから自己免疫性胃炎を考えた.ビタミンB12を補充し症状は速やかに軽快した.自己免疫性甲状腺疾患に,長期経過して悪性貧血を伴った多腺性自己免疫症候群3B型と思われた.自己免疫性胃炎は胃癌やカルチノイドの合併頻度が高いことから,自己免疫性甲状腺疾患の患者には上部消化管内視鏡検査を勧め,A型胃炎の有無に注意した観察が望ましい.
著者
岡田 裕之
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.1289-1301, 2017 (Released:2017-05-20)
参考文献数
52

2cm以下の胃粘膜下腫瘍(submucosal tumor:SMT)の取り扱い方について既報をreviewし考察した.消化管間葉系細胞腫瘍(gastrointestinal mesenchymal tumor:GIMT)のうち消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)であれば,2cm以下でも稀ながら急速に増大して悪性の経過をたどる例があるので腹腔鏡・内視鏡合同手術(laparoscopic and endoscopy cooperative surgery:LECS)などの方法での切除が必要である.通常内視鏡検査において鉗子等で触ってみて硬いSMTはGIMTの可能性大であり,ガイドライン通りに年に1-2回の経過観察が必要と考える.GIMTの診断はEUSで可能であり一度は施行しておくことが勧められるが,EUS下吸引細胞診(EUS-fine needle aspiration:EUS-FNA)に関しては,経過観察中にEUS上GISTを疑う不均一な内部エコー,辺縁不整,嚢胞変性,高エコースポット等の所見が描出された場合,あるいは経過中にサイズが2cmを超えてくるような症例で,手術適応の判断を要する場合に必要と考える.
著者
岩室 雅也 神崎 洋光 川野 誠司 河原 祥朗 田中 健大 岡田 裕之
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.1428-1434, 2017 (Released:2017-06-20)
参考文献数
16
被引用文献数
2

当院で胃・十二指腸へのランタン沈着症と診断した10症例について,内視鏡所見および臨床背景を後ろ向きに検討した.10例(男性9例,女性1例)の平均年齢は64.3歳(42歳~77歳)であり,全例が慢性腎不全のため血液透析中であった.炭酸ランタンの服用期間は12~86カ月.全例で胃にランタン沈着があり,通常観察にて白色病変として観察された.拡大観察を行った6例では微細顆粒状の白色沈着物がみられた.3例では十二指腸にもランタン沈着があり,いずれも白色の粘膜を呈した.これらの所見がみられた場合には,ランタン沈着症として経過を追跡する必要があると考えられた.
著者
西村 智子 石川 剛 内藤 裕二
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.1236-1249, 2016 (Released:2016-07-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1

超高齢化社会を迎え嚥下機能障害が大きな臨床課題である中,平成26年の診療報酬改定で胃瘻造設(PEG;Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)に関連して嚥下機能評価が保険算定されるようになり,消化器内視鏡医には嚥下内視鏡(VE;Videoendoscopic examination of swallowing)への関与が期待されている.本稿では喉頭内視鏡を用いた効果的なVEの実践的方法について述べる.消化器内視鏡医の役割を明確にし,手技習得のための研修体制の整備を進め,より多くの摂食嚥下機能障害症例をサポートできる充実した体制を確立する必要がある.
著者
村島 直哉
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.3171-3175, 2010 (Released:2011-03-03)
参考文献数
6
被引用文献数
1

胃静脈瘤の治療方法は種類が多く,各施設の対応は現在一定ではない.しかし,内視鏡医の立場で治療アルゴリズムを立てておくことは,緊急治療の多い本疾患では必要である.胃静脈瘤出血を疑ったら,輸液などの内科的治療と家族本人への説明と同意を得た後,内視鏡的治療を選択する.シアノアクリレート(CA)を用いた内視鏡的硬化療法は,胃静脈瘤の緊急止血法の第一選択である.CAはリピオドールと約70% 混合溶液を直接胃静脈瘤に穿刺注入する.出血部位を充てんするだけでなく,周囲の静脈瘤内にも薬液が満たされるように配慮する.異時的に硬化療法やB-RTO(バルーン下逆行性経静脈的塞栓術)を追加して,完全消失を試みる.Hassab手術は若年者で考慮する.併存する肝機能異常の原因や門脈全体の血行路異常を調査しておく.肝癌合併も必ず調査する.
著者
谷田 恵美子 和泉 元喜 山田 英司 澤邉 文 細野 邦広 光永 眞人 阿部 剛 白濱 圭吾 金崎 章 阿部 光文
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.348-354, 2009 (Released:2012-07-17)
参考文献数
20
被引用文献数
4

非切除胃で早期胃癌を合併したgastritis cystica profunda(GCP)2例に対し,内視鏡的粘膜下層剥離術を施行した.粘膜層に癌組織,粘膜下層にGCPを広く認めた.いずれも癌細胞の粘膜下層への直接浸潤は認めず,1例のみがGCP内の腺管上皮細胞を置換しながら進展していた.この例のGCPはKi-67とp53が陰性で,以前の報告と異なっていた.超音波内視鏡は術前のGCPの検出に有用であった.GCP合併早期胃癌の治療方針は,さらに症例を集めての検討を要する.
著者
平賀 裕子 渡邉 千之
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.296-312, 2022 (Released:2022-03-22)
参考文献数
13

大腸EMRは外来で日常的に施行されている内視鏡手術であり,粘膜内(Tis)癌の治療にも有用である.EMRはESDに比べ,時間も費用も通電ダメージも患者にやさしいが,スネアリング時に正常粘膜が全周性に含まれたかどうかの確認と切除深度のコントロールが難しいという欠点がある.その手軽さ故に一度に多数の病変のEMRをすることも多いが,この欠点を踏まえて,一つ一つの病変に対して,スネア切除直後に潰瘍底と潰瘍辺縁の観察をしなければならない.まず潰瘍底の状態を見て,穿孔や出血・露出血管の有無を確認し,次に潰瘍辺縁を残存病変がないか拡大観察で確認することが有用で,わかりにくい時は画像強調や色素撒布も用いる.特に分割EMRの場合には辺縁のみならず分割の継ぎ目も丁寧に観察し,病変の遺残を認めた場合や疑わしい場合は追加治療を行う.後出血リスクのある潰瘍に対してはクリップ閉鎖などの後出血予防が必要であり,通常のクリップ閉鎖が困難な場合も種々の内視鏡的縫縮術が選択可能である.大腸EMR前だけでなく後にも十分な観察と必要な処置を加えることが,外来での安全で堅実な内視鏡治療を行うために必要である.
著者
大川 清孝 上田 渉 青木 哲哉 大庭 宏子 宮野 正人 小野 洋嗣 中内 脩介 山口 誓子 倉井 修
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.981-990, 2018 (Released:2018-04-20)
参考文献数
16
被引用文献数
2

【背景・目的】他疾患との内視鏡的鑑別診断を行うために,カンピロバクター腸炎とサルモネラ腸炎の内視鏡像の特徴を明らかにすることは意義があると考えられる.【方法】7年間に当院で経験した両疾患について,臨床像,罹患部位,内視鏡像を後方視的に検討し比較した.内視鏡像を検討できたのはカンピロバクター腸炎43例とサルモネラ腸炎7例であった.【結果】両疾患の臨床像は類似しており差はなかった.罹患部位は下行結腸~直腸についてはカンピロバクター腸炎で有意に高率であった.大腸の内視鏡所見は,両疾患とも粘膜内出血と浮腫が特徴であった.大腸の潰瘍出現率はサルモネラ腸炎が29%で有意に高かった.回盲弁の潰瘍出現率はカンピロバクター腸炎が45%で有意に高かった.【結論】両疾患における大腸内視鏡像の特徴は粘膜内出血と浮腫であり,両疾患の鑑別には回盲弁の潰瘍の有無と大腸の潰瘍の有無が有用である.
著者
阿座上 聖史 名本 真章 畑 佳孝 向井 康二 富田 洋介 本田 邦臣 伊原 栄吉 井原 裕二 三澤 正 田辺 嘉高 豊島 里志
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 = Gastroenterological endoscopy (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.1288-1294, 2011-04-20
参考文献数
18

症例は63歳,女性.大腸内視鏡で直腸Rbに径10mmの粘膜下腫瘍を認めた.内視鏡的に粘膜切開し腫瘍を露出させた上で直視下生検を施行した.病理組織学的にGISTと診断し,外科手術にて摘出し得た.直腸原発のGISTは比較的予後が悪いとされ,進行した場合には術後QOLの低下を招くため,早期診断が望まれるが,粘膜切開による直視下生検は非常に有用な手段であると考えられた.
著者
丹羽 寛文
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 = Gastroenterological endoscopy (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.1957-1978, 2011-08-20

本論文ではファイバースコープの初期頃までに消化管内視鏡の分野で活躍された先覚者と呼ぶに相応しい九州の方々を取り上げてみた.九州の方々としては,(1)九州に本籍がある,(2)九州に生まれた,(3)九州で育った,(4)九州内の学校で学んだ,(5)九州内の医育機関に勤務された方としたが,早く九州を離れた方も含めた.<BR>硬性食道鏡では九大の久保猪之吉の活動が目立ち,硬性胃鏡の時代には同じく九大の三宅 速,宮城 順による本邦最初の報告がある.軟性胃鏡に関しては長崎医大赴任前に中谷が報告している.その後の日本の消化管内視鏡は事実上胃カメラから始まったが,九州内では昭和32年6月第4回胃カメラ研究会に於ける柚木らの報告ならびに同日の第4回消化器病学会九州地方会での佐藤の報告をもって嚆矢とする.<BR>第1回胃カメラ学会は昭和34年6月に開催されたが,この会では熊本大学外科,鹿児島大学佐藤内科,九州厚生年金病院内科からの発表があった.さらに親学会結成前に胃カメラ学会九州支部が設けられ,それ以前には同好会も作られている.<BR>第2回胃カメラ学会総会での九州からの発表者は,やはり大学の方ばかりで,発表者はいずれもその後九州内で指導的立場に立たれた方々ばかりであった.その後地方会も作られた.<BR>学会は昭和36年に日本内視鏡学会へと発展したが,九州地区からの発表はやはり大学が主体で,一般病院からは九州厚生年金病院,鹿児島市立病院に限られていた.<BR>旧制大学は昭和29年に最終卒業生を出したが,内視鏡で活躍された方々は,この年を挟んだ前後数年間の卒業生の方々を主体にしていた.これらの方々は真に先覚者と言える方々であって,それらの活動を詳述した.
著者
小熊 潤也 小澤 壯治
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.1280, 2018 (Released:2018-06-20)
参考文献数
3

【目的】食道アカラシアに対する治療法として,経口内視鏡的筋層切開術(peroral endoscopic myotomy;POEM)と腹腔鏡下筋層切開術(laparoscopic Heller myotomy;LHM)の治療成績を比較することを目的とした検討である.【背景】約20年にわたり食道アカラシアに対する治療法の第一選択はLHMであったが,2010年にPOEMが初めて報告され,それ以降は広く行われるようになった.しかしPOEMの長期成績はいまだ不明で,両者のランダム化比較試験も行われていない.【方法】食道アカラシアに対する治療法としてのLHMおよびPOEMに関する論文をMedlineより検索した.主な評価項目は,嚥下障害の改善と術後の胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease;GERD)である.【結果】LHMに関する53論文(5,834例)とPOEMに関する21論文(1,958例)を対象とした.経過観察期間の中央値は有意にLHMの報告で長かった(41.4カ月 vs. 16.2カ月,p<0.0001).治療後12カ月での通過障害の改善割合はPOEMで93.5%,LHMで91.0%(p=0.001),治療後24カ月ではPOEMで92.7%,LHMで90.0%(p=0.001)であった.POEMを施行した症例は術後のGERD症状(OR=1.69, 95%CI:1.33-2.14,p<0.0001),びらん性食道炎(OR=9.31,95%CI:4.71-18.85,p<0.0001),pHモニタリング上の胃食道逆流(OR=4.30,95%CI:2.96-6.27,p<0.0001)の頻度が有意に高かった.平均在院日数はLHM群よりPOEM群で1.03日長かった(p=0.04).【結論】今回の検討により,嚥下障害の改善という短期成績の結果はPOEMの方が良好であるが,一方で術後逆流の頻度が非常に高いことが示唆された.
著者
林 繁和 荒川 明 加納 潤一 加賀 克宏 宮田 章弘 渡辺 吉博 塚本 純久 小池 光正
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.2434-2438_1, 1991

症例は71歳,男性,海外渡航歴なし.1982年9月より粘血便出現,翌年1月潰瘍性大腸炎と診断され,保存的治療で症状軽快,1984年11月直腸びらん部の生検よりアメーバ原虫が検出された.メトロニダゾール投与で症状は完全に消失,内視鏡的にも治癒が確認された.以後1985年8月及び1986年4月の大腸内視鏡検査で異常なかったが,1990年7月再び粘血便出現,大腸内視鏡検査で直腸,S状結腸,横行結腸にびらん,小潰瘍を認め,生検でアメーバ原虫を検出,前回と同様メトロニダゾール投与で治癒した.内視鏡で治癒確認後のアメーバ赤痢の再発は極めてまれであるが再発機序としてアメーバ原虫の(1)腸管内潜伏(2)再感染が考えられた.
著者
左高 真理雄 原田 元 岡崎 幸紀 竹本 忠良 飯田 洋三 榊 信広 小田原 満 永富 裕二 斉藤 満 後藤 一紀 竹内 一憲 多田 正弘
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.739-744_1, 1982

胃Xanthomaの発生機序をうかがうため,その背景粘膜との関係に注目し,内視鏡的コンゴーレッド法,メチレンブルー染色法および直視下生検を行ない,内視鏡学的,組織学的に胃Xanthomaの発生胃粘膜について検討した. その結果,Xanthomaは萎縮性胃炎の高度な胃に多く存在するが,萎縮性胃炎の比較的軽度と思われる胃粘膜にも少数ながら存在した.さらに,コンゴーレッド変色帯内にも75個中4個(5.4%)存在した.この4個の胃底腺領域のXanthomaを検討すると,Xanthoma上皮および周囲粘膜に組織学的にも軽度ないし中等度の萎縮性変化が認められ,胃底腺領域内といえども萎縮性胃炎を発生母地としていることも示唆された.また,Xantho-ma上皮および近接粘膜は腸上皮化生がみられないか,軽度である例が多く,Xanthomaの発生には腸上皮化生は関係しないと考えた.
著者
植田 健治 望月 眞 篠原 靖 杉本 勝俊 阿部 公紀 田畑 美帆 片上 利生 宮岡 正明 寿美 哲生 葦沢 龍人
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.1526-1532, 2005

症例は54歳,女性.右下腹部痛と血便を主訴に当科を受診した.大腸内視鏡検査で回腸終末部に10mm大の粘膜下腫瘍様隆起が認められ,生検でカルチノイド腫瘍と診断された.腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行したところ,深達度はsmで筋層浸潤はなく,腫瘍径は小さかったが,回結腸動脈根部のリンパ節に転移が認められた.本症例は大腸内視鏡検査時に回腸終末部への挿入を実施したために発見された病変であり,可能な限り回腸終末部への観察が重要と考えられる.
著者
山本 博徳 緒方 晴彦 松本 主之 大宮 直木 大塚 和朗 渡辺 憲治 矢野 智則 松井 敏幸 樋口 和秀 中村 哲也 藤本 一眞
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.2685-2720, 2015 (Released:2015-12-25)
参考文献数
282
被引用文献数
13

カプセル内視鏡・バルーン内視鏡の開発・普及により,小腸領域においても内視鏡が疾患の診断・治療に重要な役割を果たすようになった.小腸内視鏡の適応として最も頻度が高いのは,いわゆる原因不明の消化管出血(obscure gastrointestinal bleeding:OGIB)である.その他には小腸狭窄,腫瘍,炎症性腸疾患などにおいて小腸内視鏡の有用性が確認されている.小腸内視鏡の有用性が認識された今,臨床現場で安全かつ効率的に使用し,最大限の効果を得るためには一定の指針が必要となる.そこで,日本消化器内視鏡学会では,日本消化器病学会,日本消化管学会,日本カプセル内視鏡学会の協力を得て,現時点で得られるだけのエビデンスに基づく「小腸内視鏡診療ガイドライン」を作成した.しかし,まだ比較的新しい内視鏡手技であり,エビデンスが不十分な部分に関しては専門家のコンセンサスに基づき推奨度を決定した.本ガイドラインは小腸疾患診療のガイドラインとしての疾患中心のまとめではなく,小腸内視鏡というモダリティを中心としたガイドラインとして作成し,小腸内視鏡としては臨床現場の実情に即して小腸カプセル内視鏡とバルーン内視鏡に絞り,指針を作成した.