著者
三小田 亜希子 高橋 健二 松岡 孝
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.143-151, 2016-04-25 (Released:2016-05-31)
参考文献数
23
被引用文献数
1 2

目的:高齢者に新規発症した1型糖尿病の報告が増加している.高齢発症1型糖尿病の臨床的特徴を明らかにすることを目的に,1型糖尿病の自験新規発症例において,1型糖尿病の臨床的特徴を65歳以上とそれ未満の発症年齢群に分けて分析した.方法:【分析I】2000年7月から2013年6月までの間に当科へ入院した65歳以上で新規発症(病歴1年未満)した糖尿病199名(65~92歳)を対象に糖尿病の病型,すなわち1型(1A/1B)・2型・膵性(悪性/良性)・その他の糖尿病,の頻度を調査した.さらに全例を75歳未満と以上で分けた群間比較を行った.【分析II】同じ期間に当科へ入院した全年齢域での新規発症1型糖尿病118名のうち,未成年例,緩徐進行1型糖尿病,劇症1型糖尿病,データ欠損例を除外した85名(20~92歳)を対象に,発症様式・BMI・ほか臨床背景・C-peptide(CPR)値・膵島関連自己抗体・HLA DR抗原を,65歳未満(n=71)と65歳以上(n=14)の2群間で,さらに後者を75歳未満と以上で分けた2群間(各n=7)で群間比較した.結果:【分析I】199名の糖尿病の病型は,1型糖尿病(1A/1B,n=12/4),2型糖尿病(n=155),膵性糖尿病(悪性/良性,n=16/6),その他の糖尿病(n=6)に分かれ,1型糖尿病は全体の8.0%(16/199),65歳~75未満で6.5%(9/139),75歳以上で11.6%(7/60)を占めた.【分析II】65歳未満と以上の2群間で,臨床背景,CPR値に差はなく,GAD抗体,ICAおよびIA-2抗体の頻度にも有意差はなかった.75歳未満と以上で分けた2群間でも各指標に差はなかったが,IA-2抗体の陽性率は65歳未満群48.5%(32/66),65歳以上群35.7%(5/14),75歳以上群では57.1%(4/7)の頻度を示した.HLA DR4/DR9抗原の保有率に2群間で差はなかった.結論:高齢者において1型糖尿病新規発症はまれではなく,IA-2抗体測定は高齢1型糖尿病の診断に寄与する.
著者
大内 尉義 鳥羽 研二
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.469-471, 2000-06-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

高齢者の機能評価分類によるケアが生命予後や機能予後を改善するという報告においても, 痴呆や重症者の除外がされている. 本研究の目的は, 複数疾患を併せ持つ後期高齢者全体を評価する手法の開発である. 東大病院, 老人保健施設, 療養型病床群, 在宅看護症例を対象に老年症候群という自他覚症候の加齢変化を調査した. 老年症候群は, 加齢変化のないもの, 65歳以上から漸増するもの, 後期高齢者に著増するものの3群に分かれた. この分類を Geriatric Scale と名付け, Age Norm を再考した. 在宅, 施設介護では後期高齢者に著増する, うつ, 尿失禁, 低栄養, 椎体骨折など一群の症候群が多く, 自宅復帰の阻害要因であった.
著者
舩越 拓
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.126-131, 2020-04-25 (Released:2020-05-29)
参考文献数
16

・高齢者であっても致死的疾患の除外が最優先となることは変わらない・高齢者の腹痛は症状やバイタル変化がでにくい
著者
池松 秀之
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.547-549, 2010 (Released:2011-02-03)
参考文献数
7
被引用文献数
1
著者
森島 淳之 満田 憲昭 名倉 潤 紙野 晃人 里 直行 三木 哲郎 荻原 俊男
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.817-821, 1995
被引用文献数
1

Werner 症候群 (WRN) は, 常染色体性劣性の遺伝性早老症であり, 原因遺伝子座位は第8染色体短腕に存在することが知られているが, 原因遺伝子そのものは未だ単離同定されていない. 本邦での有病率は約20万人に1人で, 発症頻度が白人集団に比べて高い疾患の一つである. 今回, 甲状腺乳頭状腺癌と骨髄異形成症候群を合併し, 39歳にて死亡した患者の3人の同胞 (当患者を含めて2人が発症) と, イトコ婚である両親に対して遺伝子解析を行った.<br>WRN領域に存在する4種のマイクロサテライト多型, D8S360, D8S1055, D8S339, ANK1を用いて遺伝子型を決定し, ハプロタイプを作成した. 患者の同胞のうち長女と次女の2人は, 臨床診断では健常者である. 長女は正常のハプロタイプを受け継いでいたが, 次女はWRN変異遺伝子をもつハプロタイプを受け継いでいた. しかし, この2人は臨床的に異常はなかった. この結果は, WRNが劣性遺伝であることを裏付けた.<br>本症候群の発症機序は, 未だ不明であるが, 老化の機序を探る手立てとして有力視されており, 将来単離同定されるであろうWRN遺伝子の機能を解明すれば, 老化機序解明の糸口になると考えられる.
著者
三村 將 藤田 佳男
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.191-196, 2018

<p>安全な自動車運転を行っていくためには,「認知,予測,判断,又は操作」の領域が十分に保たれていることが必要である.運転安全性の評価には,神経心理学的検査,運転シミュレータ,同乗者による評価,実車による評価を適宜組み合わせていく.認知機能領域に関しては,注意機能と視空間認知機能を中心に,一般的知能,記憶,遂行機能,聴覚―言語機能,感情コントロールといった領域を評価する.</p>
著者
篠原 恒樹
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.142-146, 1978-03-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
10
著者
髙栁 宏史
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.254-259, 2019
被引用文献数
1

<p>高齢者は多疾患罹患の傾向があるため複数の医療機関を受診していることは少なくない.それに伴い高齢者医療の現場では適切な連携を行いながら個別性を担保したケアの実践が求められている.今後,AIの開発と利活用を進めるためには倫理的・法的・社会的課題の解決と,AIの利活用による健康への影響の慎重な議論が必要である.その前提の上で,現在の医療現場の複雑な課題解決につながるAI開発と利活用に期待する.</p>
著者
松井 豊 松井 育子 日下部 典生 松村 暢子 高橋 栄男 森本 茂人 荻原 俊男
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.748-754, 1997-09-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
13
被引用文献数
3 1

非ステロイド性抗炎症薬 (Nonsteroidal anti-inflammatory drugs: NSAIDs) が原因と考えられる大腸潰瘍による突然の下血を呈した5症例を経験した. 5例はいずれも老年者であり, 腰背痛, 関節痛に対してNSAIDsが投与されていた. また4例は糖尿病を合併していた. いずれも, NSAIDs投与6日以降より食欲不振を呈し, その後, 下痢症状を呈するが, 重度のものではなく, 自他覚症状とも強くなかった. 血便, 下血は下痢症状出現時から1~17日後に生じた. 緊急大腸内視鏡検査の所見は, 脾彎曲部を中心に, 5例中1例は粘膜びらん, 4例は潰瘍を呈し, 出血を伴っていた. また, 緊急胃十二指腸内視鏡検査は, いずれも出血を伴う急性胃粘膜病変を呈していた. いずれも原因薬剤の中止, 絶食, 中心静脈栄養, 輸血などの処置にて比較的速やかに治癒した.
著者
大浦 武彦 中條 俊夫 岡田 晋吾 大村 健二 足立 香代子 大石 正平
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.377-383, 2013 (Released:2013-08-23)
参考文献数
6
被引用文献数
2 2

目的:褥瘡の治癒過程に大きな影響を与える看護・介護・治療の要因を統一し,栄養介入が栄養状態と褥瘡治癒に及ぼす効果を多施設共同ランダム化割付並行群間比較試験で検討した.方法:ステージIII~IV(NPUAP分類)の褥瘡が仙骨,尾骨,大転子,踵のいずれかにあり,経管栄養を必要とする低栄養患者を対象とした.対照群は研究登録時と同じ,または基礎エネルギー消費量(BEE)×活動係数1.1×ストレス係数1.1~1.3とし,介入群はBEE×1.1×1.3~1.5を目標投与エネルギー量とした.研究期間は12週間とした.栄養剤はラコール®配合経腸用液に統一し,体圧分散マットレスの種類,体位変換の方法,治療用薬剤,創傷ドレッシング材を規定した.評価は褥瘡サイズ(長径×短径)および栄養状態(身体指標および臨床検査値)の推移,有害事象で行った.目標症例数はそれぞれ30症例以上とした.結果:体重あたりの1日平均投与エネルギー量は対照群29.1±4.9 kcal/kg(mean±SD)(n=29),介入群37.9±6.5 kcal/kg(n=21)であった.褥瘡サイズは栄養介入の有無と観察週数の交互作用に有意差(P<0.001)が認められた.栄養状態は体重,腹囲,Cu(P<0.001),腸骨棘上部皮下脂肪厚(P<0.01),大腿囲,Prealbumin(P<0.05)に対し,有意差が認められた.本研究に起因する有害事象の発現率に有意差は認められなかった(P=0.360).また,主成分分析および共分散構造分析により,介入群は特に褥瘡サイズの減少および腹囲,腸骨棘上部皮下脂肪厚の改善速度が顕著であり,栄養介入が褥瘡サイズの減少とこれらの身体指標に直接的な影響をもたらすことが検出された.結論:積極的なエネルギー投与を行うことにより,通常の栄養管理と比較して栄養状態がより改善し,かつ褥瘡の治癒が促進された.また,栄養介入は褥瘡サイズの減少に直接的な影響を及ぼすことが検出された.
著者
米山 武義
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.476-477, 2001-07-25
参考文献数
5
被引用文献数
12 8

近年, 誤嚥性肺炎の治療と予防に対する新しい戦略が構築されつつあるが, その中で口腔ケアがにわかに注目されている. われわれは数年にわたる口腔ケアと誤嚥性肺炎発症に関する介入研究から口腔ケアが誤嚥性肺炎を予防しうる可能性をつかんだ. 本ワークショップでは, これを裏付ける2つの研究を取り上げ, その内容を紹介する.<br>特別養護老人ホーム入所者を対象に, 5カ月にわたり歯科医師と歯科衛生士による専門的口腔ケアを受けた高齢者 (口腔ケア群, 7名) と, 同時期入所者自身によって口腔清掃を行った, 高齢者 (対照群, 8名) にわけ, 両グループの咽頭における総細菌数, 連鎖球菌数および黄色ブドウ球菌を含むブドウ球菌数がどのように変動するかについて検討した. その結果, 長期間専門的口腔ケアを継続した5カ月後の口腔ケア群と対照群を比較すると対照群に比べて口腔ケア群の総細菌数および連鎖球菌数は共にt検定により統計学的有意差 (p<0.01) をもって減少した. さらに口腔ケア群では, 急性呼吸器感染症の主たる起因菌の一つであるブドウ球菌が, 3カ月後より検出限界以下に減少した.<br>一方, 全国11カ所の特別養護老人ホーム入所者366名を対象として, 肺炎発症に関する介入研究を行った. 各施設毎, 無作為に従来通りの口腔ケアのみにとどめる群 (対照群) と看護婦もしくは介護職による毎食後の歯磨きと1%ポピドンヨードによる含嗽, さらに週に1回の歯科医師もしくは歯科衛生士によるブラッシングを行う口腔ケア群に分類した. そして2年間にわたって37.8℃以上の発熱日数および肺炎罹患者数を追跡調査した. その結果, 口腔ケア群は対照群に比較し, 発熱日数および肺炎罹患者数とも統計的に有意の差をもって抑制された.
著者
船曳 康子 北 徹 石井 賢二 日下 茂 袴田 康弘 若月 芳雄 村上 元庸 横出 正之 久米 典昭 堀内 久徳
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.274-278, 1999
被引用文献数
10

症例は83歳男性. 1996年12月末より徐々に喀痰, 咳嗽, 全身倦怠感, 食欲低下みられ当院受診. 肺炎と診断され1997年1月7日入院となった. 入院時血圧70/48mmHg, PaO2 55.5mmHg, CRP20mg/dl, ラ音聴取, 黄色膿性痰みられ, 抗生剤を開始した, 血清抗体価の上昇より (入院時4倍→2週後128倍), インフルエンザA感染症の合併と診断した. 発熱, 呼吸困難は抗生剤治療に抵抗性であった. 血中よりアスペルギルス抗原を検出し (2+), 抗真菌剤治療により抗原は (1+) と改善したが, 2月20日, 喀血をきたし永眠された, アスペルギルス症は免疫不全患者が罹るとされているが, 本例では入院後数日間白血球数が低下しており, インフルエンザによる一時的免疫力低下がアスペルギルス症の発症に関与したと考えられた. また高齢者のインフルエンザ感染症の合併症の重篤さが示唆された.
著者
飯島 勝矢
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.228-234, 2021-04-25 (Released:2021-05-27)
参考文献数
4
被引用文献数
3

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の問題は,確かに高齢者において重症化しやすく,結果的に残念ながら命を落とした方々も少なくない.しかし,新たな感染症の課題を新たに示しているだけではなく,流行前から持ち合わせていた様々な地域課題や社会課題をより早期に見える化したのであろう.ポストコロナ社会を見据え,個々の国民に何を伝え,さらに新たな地域社会づくりにどう反映させるのか,ここは大きな分岐点になるだろう.この課題は,ポストコロナ時代において,人のQOLのあり方はどう変わっていくべきかを意味している.ワクチンや治療薬の確立と同時に,真の人間中心社会に向けて,「我々の忘れてはならない原点」と「次世代の新しい地域コミュニティ像(新たなデジタル社会含む)」の両方を実現しながら,人と人との心を近づけ,絆を感じ,豊かな社会にむけた新たな価値を全世代に創造してくれることを期待したい.
著者
長谷川 嘉哉 久保田 進子 稲垣 俊明 品川 長夫
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.201-204, 2001-03-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
10
被引用文献数
4 8

音楽療法は, 老年医学を含めた様々な領域で研究使用されている. しかし音楽療法の科学的メカニズムは, あまり検討されておらず, より客観的な指標が必要とされている. そこで, 音楽療法前後のNK細胞の活性および量, T細胞およびB細胞量, 内分泌学的検討を行った. これらは音楽療法前後1時間で検討した. 対象は特別養護老人ホームの入所者19名 (男性6名, 女性13名, 平均年齢78.6歳) とした. 対象者の基礎疾患は, アルツハイマー型老年痴呆9名, 脳血管障害後遺症7名, パーキンソン病3名であった.NK細胞活性は音楽療法の1時間後で統計学的に有意な上昇を認めた. 音楽療法1時間前後で総リンパ球数に有意な変化は認めなかったが, リンパ球のサブセットのNK細胞比率は, 統計学的に有意な上昇を認めた. T細胞およびB細胞量の比率に変化は認めなかった. 内分泌検査では音楽療法前後のアドレナリンの変化は統計学的に有意な上昇を示した. ノルアドレナリン, コルチゾール, ACTHは有意な変化を示さなかった.肉体的侵襲の低い音楽療法で, 運動と同様にNK細胞の活性および量のいずれも上昇したことは極めて有益なことであると考えられた. これらの変化が臨床的にいかなる影響があるか明らかではないが, 音楽療法のさらなる可能性を示唆するものであった.
著者
加藤 丈陽 川本 龍一 楠木 智
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.176-179, 2011 (Released:2011-07-15)
参考文献数
8
被引用文献数
2 3

Howship-Romberg徴候を坐骨神経痛として見過され,イレウスを発症し診断された右閉鎖孔ヘルニアの一例を報告する.症例は88歳女性で3年前より右大腿部痛があり,整形外科にて坐骨神経痛と診断されていた.2009年7月食欲不振を主訴に入院.翌日右大腿部痛の増強及び下腹部痛が出現したため腹部超音波検査を行ったところkey board signを認めた.イレウスと診断,イレウス管を挿入し減圧をしたところ改善した.イレウス管抜去後右大腿部痛が再出現.また,大腿径に左右差が見られたためヘルニアを疑い造影CTを行ったところ恥骨筋と閉鎖筋に挟まれた領域に腸管の嵌頓所見を認め手術適応と判断した.開腹してみると回腸末端から約15 cm口側の回腸が右閉鎖孔に嵌頓しており嵌頓腸管を切除した.術後イレウス症状,右大腿部痛は消失した.原因不明の右大腿部痛やイレウス症状が高齢者にみられた時は,閉鎖孔ヘルニアを念頭に置くべきである.
著者
高橋 孝
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.72-75, 2013

災害時高齢者医療の初期対応と救急搬送基準に関するガイドライン作成に関する研究班が確立し,災害時高齢者医療マニュアルとして医療従事者用と一般救護者用が準備された.避難者&hArr;救護者&hArr;巡回医療従事者&hArr;医療避難所へと連携した対応を行うために,一般救護者用の重要性を想定した.同マニュアルは(1)避難所での高齢者の重要な疾患の特徴と予防法・(2)高齢者急性疾患の症候・(3)高齢者で注意を要する症状で構成され,救護者が理解できるよう記載されている.東日本大震災後,試作版の両マニュアルが日本老年医学会のサイトより得られるよう同研究班は手配した.一般救護者用マニュアルは冊子体としても作成し,同学会員や日本医師会より派遣された医師を通じて被災地へ配布された.この活動状況や一般救護者用マニュアルを英文論文として海外へ発信し,次なる災害へ向けた資料として国際的に活用して頂きたい.<br>