著者
江頭 洋祐
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.283-289, 2007-04-01

東洋医学/漢方診療は検査技術のない時代に中国や日本で発達した医療体系である.そこでは患者との対話を中心として診療方針が決定されていた.最近,現代医学のあまりにも自然科学的なEBM(evidence based medicine)への偏りに対して改めてNBM(narrative based medicine: ナラティブ・アプローチ)の重要性が提唱されている.昔の中国医学の古典(素問,他)を検討してみると,NBMとしての診療記録が数多く発見される.具体的には素問にある移精変気法の記述や,戦国時代の名医文摯が斎の国王を怒らせて治癒せしめたとの記録などがある.日本でも江戸時代後期の和田東郭や,現代の漢方のエキスパートである大塚敬節らも,NBMとしての診療を実践しているいくつかの診療録がある.この研究を通じて,東洋医学/漢方診療こそ昔からNBM的アプローチによって心身医学的診療を実践していたことが確認できた.
著者
大隈 紘子
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.195-201, 2005-03-01

わが国では近年社会的ひきこもりが増加し問題になっている.大分県精神保健福祉センターでは,2002年から「社会的引きこもり対策推進事業」を3ヵ年計画で進めている.2002年度の大分県の「ひきこもり」実態調査の結果,社会的ひきこもり件数は211名であった.このうち,30歳以上のひきこもり者が31%あり,「高年齢化したひきこもり者」が相当数いることを明らかにした.また,ひきこもり継続年数が5〜9年の者が約30%,さらに,ひきこもり継続年数が10年以上の者が約20%あり,「長期化するひきこもり者」が多数いることが判明した.本稿では2症例のひきこもり者の症例報告をした.この治療経験から,対人関係の問題を補う支援の必要性と,どんな職に向いているのかがわからない悩みには具体的な職業相談や就労支援が効果的であることがわかった.これらの悩みは現代の青年やフリーターにも共通する悩みであり,現在は青年から大人になるのが困難な時代であると感じた.
著者
境 泉洋 中村 光 植田 健太 坂野 雄二
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.865-873, 2007-10-01

目的: ひきこもり状態にある人の活動範囲に影響を与える要因を明らかにすることを目的とした.対象・方法: ひきこもり状態にある人の家族473名を対象にひきこもり状態にある人の活動範囲とひきこもり行動チェックリストに回答を求めた.結果: (1)活動範囲をカテゴリカル主成分分析によって「対人交流のある場所」と「利用自由な場所」に分類したところ,「利用自由な場所」への外出頻度が高かった.(2)1日あたりの外出時間が長く抑うつが強いほど「対人交流のある場所」への外出が多い.(3)1カ月あたりの外出日数が多いほど「利用自由な場所」への外出が多く,家族回避行動が強いほど「利用自由な場所」への外出が少ない.(4)攻撃的行動が多いほど1カ月あたりの外出日数が多く,生活が不規則であるほど1カ月あたりの外出日数が少ない.結論: ひきこもり状態にある人と家族の関係や攻撃行動に焦点を当てた介入によって,ひきこもり状態にある入の利用自由な場所への外出が促進される可能性が示唆された.
著者
秦 多恵子 川畑 篤史 伊藤 栄次 喜多 富太郎
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.651-658, 1989-12-01
被引用文献数
1

自律神経失調症の1モデル動物であるSARTストレスマウスでは, 血小板数減少, 骨髄巨核球数増加および出血時間の延長が既に報告されている。今回はこれらの現象について, SARTストレスとは異なったタイプのストレスを負荷した動物との比較の観点から, さらに詳細な検討を行った。1)ラットにおいても, マウスの場合と同様, SARTストレスによる血小板数減少は認められた。2)2日間の寒冷ストレス負荷によって血小板数の増加がみられたが, 1時間負荷および5日間の負荷では無変化であった。急性の拘束水浸ストレスマウスでは血小板数減少が認められた。電気ショックおよび拘束ストレスを急性的に負荷すると血小板数の増加が認められたが, 慢性的に負荷すると急性時の変化は消失していた。3)骨髄巨核数はSARTストレス以外のストレスによっては変化しなかった。4)拘束水浸ストレスによる血小板数の減少はストレス負荷中止3時間後には完全に回復していたが, SARTストレスによるそれは中止後5日経過してもなお認められた。5)SARTストレスにより出血時間は2倍以上に延長したが, 拘束水浸ストレスによっては約35%の延長が認められたのみであった。6-Hydroxydopamineにより体表面血流量の増加を来したマウスでは, 約50%の出血時間延長が認められた。以上の成績より, 自律神経失調症を伴ったSARTストレス動物における血小板数減少は, このストレスの1つの特徴であると考えられる。また, SARTストレスによる出血時間の延長には血小板数減少のほか, 血流量の増加も関与している可能性が示唆される。
著者
田山 淳
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1033-1041, 2008-12-01

近年,日本の中学校における長期欠席児童数は,10万人を超える事態になっている.不登校の改善や予防的措置を行うためには,彼らのパーソナリティをより詳しく知る必要がある.本研究では,登校行動とパーソナリティの関連を探るため,中学生37名(男子20名,女子17名)に対して,標準化された2つの質問紙とともに,簡便な投影法であるバウムテストを実施した.質問紙の結果から,登校行動不良児は,学級での居場所がなく,進路意識が低いことがわかった.バウムテストの結果では,登校行動不良児が描いたバウムは,筆圧が弱く,樹冠が角張っていることが明らかになった.このような不登校傾向児のバウムテストの特徴は,抑うつ感,不適応感,保守傾向,神経過敏などを示す可能性が示唆されている.結論として,中学生における不登校傾向とバウムテストのいくつかの特徴との関連が明らかになった.
著者
坂口 幸弘 恒藤 暁 柏木 哲夫 高山 圭子 田村 恵子 池永 昌之
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.697-703, 2004-09-01
参考文献数
14

全国規模の実態調査を行い,ホスピス・緩和ケア病棟における遺族ケアの提供体制の現状を明らかこした.87施設から回答が得られ,回収率は90%であった.87%の施設が遺族ケアのニーズはあると認識し,84%の施設がすべての遺族を遺族ケアの対象と想定していた. 44%の施設では遺族ケアは勤務外で,手当は特になかった.30%の施設では遺族ケアのための教育を行っていなかった.1施設のみが,明文化された基準に基づくリスク評価を行っていた.56%の施設は専門家との連携を取つていなかった.半数以上の施設が,遺族ケア実施上の諸問題として,不十分な教育,組織体制の不備,時間の不足,人材の不足を経験していた.