著者
内田 誠也 津田 康民 木村 友昭 山岡 淳 新田 和男 菅野 久信
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.1120-1132, 2011-12-01

目的:肩こりと2種類の圧入式の筋硬度計を用いた肩の筋硬度との関連を調べる.方法:短期的および長期的な筋硬度の変化に関する2種類の実験を行った.短期的な研究では,肩こりを緩和させるリラクセーション法を1時間実施したとき,肩こり(自覚的な痛み,硬さ)の変化と筋硬度の変化との関連を調べた(n=35).長期的な研究では,2005年と2007年の職域健康診断において,肩こり(自覚的な肩こり感,こりやすさ)と肩の筋硬度,自覚的ストレスの変化との関連を調べた(n=149).筋硬度計は,負荷圧が異なる2種類の機器(TDM-na1,PEK-1)を用いた.結果:短期的な研究では,肩の自覚的な痛みや硬さの変化はTDM-na1を用いた筋硬度の変化と有意な相関があることが明らかになった.長期的な研究では,女性の自覚的肩こり感が高く,筋硬度も硬いことがわかった.また,男性においては自覚的肩こり感と両方機器による筋硬度との間に有意な相関があった.女性においては自覚的肩こり感と筋硬度に有意な相関はみられなかったが,2005年から2007年にかけてのストレスの変化とTDM-na1を用いた左肩の筋硬度の変化との間に有意な相関がみられた.結論:肩こりを客観的に評価する方法として,筋硬度計は有効な計測方法である.
著者
上原 聡 並木 正義
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.249-255, 1994-03-01

雑誌掲載版サイトカインのインターロイキン-/(IL-1)の胃機能および胃粘膜防御系に及ぼす作用について,体重約200gのWistar系雄性ラットを用いて多角的な検討を加えた。その結果,IL-1の粘膜保護効果は主として胃分泌と胃固有運動性に対する阻止作用に依ることが示唆された。しかし胃におけるプロスタグランディン系統を含む他の機構がIL-1の抗瘍に貢献しうるということがありうる。すべて,これらの資料は,胃潰瘍が単なる胃の局所性疾患ではなく,脳は言うに及ばず免疫系統さえふくむ全身病であることを示唆している
著者
山宮 裕子 島井 哲志
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.54-63, 2012-01-01

本研究は,摂食障害の要因となるボディイメージの歪みの原因とされる,メディアのメッセージをどれだけ内面化し影響を受けているかを評価するSociocultural Attitudes Towards Appearance Questionnaire-3(SATAQ-3)の12項目の日本語短縮版(SATAQ-3 JS)を作成し,その信頼性・妥当性を,女子学生を対象に検討した.結果から,SATAQ-3 JSは,オリジナル尺度と同様に4因子からなり,また,合計得点と各下位尺度は内的一貫性があり,身体不満足感,やせ願望,ダイエット傾向,社会的比較と高い相関関係にあることから,信頼性と妥当性のある,スクリーニングに適した尺度であることが示された.また,SATAQ-3によって評価することができるボディイメージにかかわる心理社会的諸要因が,日本人女性の食行動の問題においても重要であることが示唆された.
著者
手嶋 秀毅 十川 博
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.157-164, 1989-02-01
被引用文献数
7

In order to clarify the influence of emotional stress on T cells, we examined changes in the ratios of T cell subsets in the stressed mice, the patients with alopecia areata, and the student nurses before taking examinations for the national license. T cell subsets were measured using by flowcytometry and fluorescent monoclonal antibodies. The results are as follows. (1) In the restriction stressed mice, the ratio of T cell subsets are changed in the peripheral blood and the thymic gland. Percentage of suppressor T cells was decreased in the stressed mice and the changes are removed by administration of diazepam before restriction. (2) After administration of the autonomic drugs, adrenalin, acetylcholine, yohinbin and hydrocortisone, the ratios of T cell subsets are changed in the peripheral blood of mice. (3) In the peripheral blood of patients with alopecia areata, the ratio of the helper T cells to suppressor T cells is changed to be high during existance of uncontroled aloperia. But in the improved patients after psychotherapy, the ratio is decreased to the normal level. (4) After the examination stress, the ratio of OKT 8 positive cells is found to be elevated in the peripheral blood significantly. Other somatic parameters responsed to the examination stress.
著者
永田 利彦
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.609-614, 2011-07-01

摂食障害を併存症の観点から,気分スペクトラム障害や強迫スペクトラム障害としてとらえることが提唱されてきた.一方,社交不安障害(social anxiety disorder:SAD)は,併存率の高さの割に注目されてこなかったが,スピーチ恐怖症から全般性社交不安障害へと概念が拡大し,薬物療法の有効性も知られるようになった.通院中の女性摂食障害患者266例を対象に,社交不安障害の併存の有無によって比較した予備的な結果では,91例(34%)が社交不安障害を併存し,ほとんどが全般性社交不安障害で,社交不安障害が摂食障害に先行した.社交不安障害が併存すると自傷や自殺未遂の率が高く,境界性パーソナリティ障害として紹介されることも多かった.薬物療法を行ったのは38%にとどまったが薬物療法と精神療法の組み合わせが46%に有効であった.摂食障害全体を社交不安障害として説明できるわけではないが,1つの治療モデルとして重要である可能性が示された.
著者
加藤 佑佳 中野 明子 山本 愛 岡村 香織 小海 宏之 吉田 麻美 園田 薫 安藤 悦子 岸川 雄介 寺嶋 繁典
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.721-730, 2011-08-01

2型糖尿病者を対象にProblem Areas in Diabetes(PAID)scaleを実施し,フロア効果がある6項目を除いて因子分析を行ったところ単因子構造が確認された.このPAID尺度とProfile of Mood States(POMS),Tokyo University Egogram New version(TEG)との関連を検証した結果,PAID尺度はPOMSの「Tension-Anxiety」「Depression-Dejection」「Fatigue」との有意な関連がある一方,TEGとは関連がみられなかった.よって,PAIDとPOMSを併せて用いることは,糖尿病の負担感と関連する心理的状態をより詳細に把握することができ,各人に応じた心理的援助を提供する際に有効であると考えられる.