著者
郷間 英世 木下 佐枝美 川越 奈津子 中市 悠 木村 秀生 郷間 安美子
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
no.117, pp.63-71, 2010-09
被引用文献数
2

最近臨床の場でよく見かける発達障害児や「気になる子」の描画は未熟な印象を受けることが多い。そこで幼児の人物画発達を調査し,障害児や「気になる子」の描画特徴について検討した。対象は保育園に在籍する3 ~ 6 歳の554 人の幼児であり,グッドイナフ人物画知能検査行った。描かれた画は描画発達年齢を求め人物画知能(DAM-IQ)を算出した。対象児のうち広汎性発達障害や知的障害など診断名のついている子どもは17 人(3.1 %)で描画発達は遅れており平均DAM-IQ は70.1 で低値であった。診断のない子どものDAM-IQ は平均98.3 で加齢とともに低下した。診断はないが行動や社会性に関して「気になる子」どもは計63 人(11.4%)おり,DAMIQ は平均92.2 とやや低く,成熟した描写と未熟な描写をともに持つアンバランスさを多くの画に認めた。今後その原因や発達の詳細との関連なども検討の必要があると考えられた。We have studied on children's development and have pointed out that present-day children have delay and unbalance in their development. The delay is prominent in drawing. In this study, we investigated the human figure drawing of children with and without disabilities using Goodenough-Drawing-Test (DAM). The subjects were 281 boys and 273 girls at nursery schools. We evaluated the developmental drawing age by scoring 50 items and calculated DAM-IQ. Then we compared the data between children with disabilities and children without disabilities. The number of children with disabilities is 17. The diagnoses of them are pervasive developmental disabilities, intellectual disabilities and so on. The drawing developmental of them is retarded and the average DAM-IQ is 70.1. As for children without disabilities, the average DAM-IQ is 98.3. The number of children "Kininaruko" who have social and behavior problems but have no diagnosis of developmental disabilities is 63(11.4%). The average DAM-IQ of them is 92.7, and in the drawing figures, there are both mature and immature descriptions, which we felt unbalance. There are delay or unbalance on the drawing figures of children with developmental disabilities or Kininaruko. More precise study regarding possible causes and other developmental aspects is needed.
著者
坂口 慶治
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.51-82, 1998-03-31

京都府の北端に位置する丹後地方は,わが国における廃村の先行的,集中的な発生地帯である。本稿では,その地域的な発生機構の解明の中で,とくに自然環境との関連性について考察した。元来,廃村化は集落の生業・規模・立地密度等の文化社会形態に関わる人文現象であるために,自然環境との関連性についても,集落の立地態様を規定した立地受容要因としての側面と,それを介しての立地障害要因としての側面を視野に入れて考察する必要がある。ここでは地形的には中低山性山地ながらも,急斜面によって多数の山地塊に分断されている構造地形的特性が,中小規模の山地集落の,分散立地形態での高い立地密度を生み,それが廃村の多発現象の一要因となった。その結果,各山地塊間では,それぞれの構造地形的特性を反映して,廃村の発生状況に大きな差がみられた。また,地質的には,多種類の地層が錯綜分布し,その独特のモザイク的分布と多彩な接触構造が,自給型集落の高い立地密度を生み,その集落の小規模・多様性が廃村の多発現象の一要因となった。それ故,各山地塊間での廃村の発生状況の差にも,それぞれの地質構成の差異が反映している。さらに,構造地形や地質条件と密接に関連して現われる小地形が,集落の立地態様をより直接的に規定している側面が認められ,廃村化に関わる自然環境の総合的指標として,小地形の分布構成が有用であることが判明した。
著者
石川 誠
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-10, 2006-03-31

本稿はごみ処理の有料化に関して実施した調査の報告である。今回の調査ではごみ処理有料化を導入している100市町村を対象に,ごみ排出量,人口等の経年データを収集するとともに,手数料の金額等の情報も収集した。その結果,有料化導入後のごみ排出量の推移は4つのパターン(減量成功パターン,リバウンドパターン,変化なしパターン,増加パターン)に分類されることがわかった。これらの中ではリバウンドパターンに該当する市町村が多く見られ,有料化導入によるごみの減量効果が長期間持続できていないケースが多かった。このリバウンド現象の発生の主な要因は手数料が安く住民に経済的負担を与えていないことであるため,導入時の適切な手数料の設定と導入後についても手数料水準などの見直しが必要である。
著者
郷間 英世 小谷 裕実 池田 友美 落合 利佳 大谷 多加志 鈴木 万喜子 中市 悠 木村 由里 郷間 安美子 川越 奈津子
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

現代の子どもの発達の様子や問題点を探るため、過去50年間の発達検査の資料の検討、および、保育園幼児の認知発達や社会生活能力の検討を行った。標準化資料の50%通過年齢や項目別の年齢別通過率の検討の結果、1954年から1983年にかけては、子どもの精神発達が促進した時代、1983年から2001年にかけては、発達が遅延してきている時代と考えられた。また、現代の幼児の発達は、認知能力は男女差を認めなかったが、社会生活能力や描画発達は男児で女児より遅れると言う結果が得られ、最近の発達障害や「気になる子」の増加と関連があると考えられた。
著者
天野 知幸
出版者
京都教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

プランゲ文庫に所蔵されている検閲資料やGHQ 占領下に地方で発行されていた新聞・雑誌メディアの記事内容やそれらの表現に対するGHQ/SCAP 検閲の実態を調査・分析することによって、占領下における地方の言論環境、表現・思想の特性、文化・思想の生成のありかた、さらにはGHQ/SCAP 検閲実態の多様性や言論統制の地方への浸透の様子について明らかにした。
著者
佐々木 真理 石川 久美子
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.99-110, 2006-09

パソコンメールと携帯メールで作成された大学生のレポートについて,それぞれの特徴と相違点を定量的分析から固有の特徴を明らかにした。パソコンメールと携帯メールで作成・提出された講義レポート約1,100 件について,ワープロの文章分析機能を用いて文章・文脈を解析した。諸項目の件数や評価得点を用いて分析・考察した。また,それぞれのレポートから抽出した文章について,印象・情意などを把握し比較するため,複数の観察者を募り,感性評価法を用いて文章・文脈について分析・評価を行った。それらの結果,パソコンと携帯電話では固有の機能上の特徴からキー入力操作や推敲に違いが生じ,それが端的さや理解しやすさなど文章・文脈スタイルに影響していることなどが分かった。This paper describes the investigation of peculiarity and a point of difference between students' reports composed by PC and mobile phone using a quantitative analysis method. Sentences and contexts were analyzed using the sentence analysis function of word processing software on about 1,100 students' subject reports composed and submitted by PC and mobile phone. Analysis and consideration were inquired by frequencies of each item and scores. Also, sentences and contexts were analyzed and evaluated using kansei evaluation method by observers to grasp and compare the impressions and the feelings about the extracted sentences from each students' reports. The results of the study showed that the effect of context and sentence style was effected by typing operation and sentence elaboration from functional characteristic between PC-mail and mobile phone-mail
著者
二枝 美津子
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.31-43, 2006-09

英語の句動詞は,動詞と不変化詞が共起して,新しい意味をもつ複合動詞の一部である。句動詞では構成要素である動詞と不変化詞との意味の融合がおこり,新しい意味は各要素の本来の意味から予測可能なものから,予測困難な意味をもつものまで多様である。また,句動詞の多くは多義性をもつ。本論文では,動詞と不変化詞の融合の程度差が意味形成,意味理解に積極的な役割を果たしていること,不変化詞が意味形成に重要な役割を果たしていることを明らかにする。スキーマ的な動きを表す動詞に方向性を示す不変化詞が加わることで,意味の融合が起こりやすく,意味の拡張も行なわれやすいことを示す。また,相当する一語動詞と,その使用場面の比較を通して,句動詞表現が存在する理由を求める。動詞と不変化詞の起源,音韻的特質をも考察に入れると,句動詞は二語から成るが,決して不経済な表現ではなく,ゲルマン的な生き生きとした表現であることを明らかにする。The aim of this paper is to clarify the way to form the meaning of phrasal verbs. The so-called English phrasal verbs belong to multi-word verbs whose constituents are verbs and particles, and function as single verbs in sentences. Verb and particle coalesce to form a semantic unit in which the basic meaning of verbs and particles are coerced by a metaphorical meaning of verbs. The meanings of phrasal verbs are different, from the one we can predict easily to the one we cannot. The degree of coerciveness differs in individual phrasal verbs, which makes the phrasal verbs polysemous. The verbs used in phrasal verbs are action verbs and express simple, schematic actions. And the particles indicate the movement of the action. The combination of these makes them easy to form a new meaning. Most of the verbs and the particles are one-syllable words and that makes them to be pronounced like single words by liaison. Comparing with corresponding one word synonyms, we can know phrasal verbs
著者
本井 幸児 広木 正紀
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.69-98, 1995-03-31

市街地の子ども達が植物的自然に関われる空間として,地域にある寺院の境内を生かすことができないか,を検討することにした。検討に必要な基礎資料を得る目的で,京都市内の寺院について境内の種子植物相を調べた。1993年3月6日から11月19日までに108箇所の寺院境内を調査し,616種類(自生草本159,栽培草本198,木本259)を確認した。1つの境内当たりの平均は42種類(自生草本9,栽培草本7,木本26)であった。
著者
籔根 敏和
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

礼法、受身、投技を教材に伝統的行動原理を学ぶ「発見型柔道学習プログラム」の女子に対する有効性の検討と、抑技プログラムの開発を目的として、高校、大学で研究授業を行った。その結果、女子に対するプログラムの有効性が検証できた。また、投技学習の安全化と効率アップのための教具の開発や、受身プログラムの改良を行い、その有効性を検証した。抑技に関しては、発見型柔道学習の教材としての適性を実験的に検証した。
著者
内田 利広 堀内 詩子
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
no.118, pp.37-52, 2011-03
著者
内田 利広 堀内 詩子
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
no.118, pp.37-52, 2011-03
著者
山本 玲子
出版者
京都教育大学
雑誌
教育実践研究紀要 (ISSN:13464604)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.81-89, 2006-03-31

現在,小学校への英語教育の導入に関しては全国で賛否両論あり,またそのあり方も議論の途上である。京都教育大学附属京都小学校では,全学年において,週1回の担任とALTによる英語授業を実施している。また附属京都中学校と小中一貫教育をすすめる中で小5・小6・中1を中等部と位置づけ,小・中の教諭が連携してカリキュラムの開発・充実に当たっている。今年度より,中学の英語科教員が小5・小6の英語を担当するにあたり,小1から英語に接してきた子どもたちの内面を分析するとともに,学習初期の生徒が第二言語を習得する過程に照らし合わせ,特に子どもの心理面・モチベーションに焦点を当てて考察した。また,公立小・中学校でも徐々に実施されつつある中学校教員が小学校へ出向する形の小中連携についても,附属のケーススタディを基に考察を試みた。
著者
廉隅 楼雄 松良 俊明
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.73-81, 1994-03-31

京都教育大学周辺部におけるツバメの営巣状況と,観月橋アシ原に見られた集団ねぐらの実態について調べた。ツバメの営巣期間は4月から8月上旬までであり,特に5月上旬から6月下旬にかけて盛んな育雛活動が観察された。抱卵から巣立ちまで約34日を要し,巣あたりの巣立ち雛数は約4羽であった。また巣の7割は人家の1階部分の庇につくられ,特にテント屋根の下側がよく利用されていた。ツバメはアシ原において,5月末から10月中旬まで集団でねぐらを形成することが確認されたが,8月下旬のピーク時には約25,000羽がやってきた。ねぐら入りする時の様子は,盛夏前は日没前に集まり出すが,盛夏になると日没以後に集まるというように,季節とともに変化した。アシ原内部のねぐらの位置は,大きく変動することなく,ほぼ一定の場所が利用されていた。
著者
奥村 真紀
出版者
京都教育大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

本研究は、現代の批評動向を踏まえた上で、ブロンテ姉妹の作品の文化史・社会史的位置づけを再検証するために、個々の小説の何がどのように異なる文化の中で受容されてきたかを明らかにすることを目的とした。具体的には19世紀から21世紀にかけてのJane Eyre、Wuthering Heightsの舞台化、映画化、テレビドラマ作品の代表的なものを検証し、学会発表、講演、学会誌への投稿を通じて作品を文化的受容史の中でとらえなおす試みを行った。