著者
広木 正紀 藤田 哲雄
出版者
京都教育大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

「基本的科学概念の獲得」を重視する現行理科のあり方に、生活単元学習時代の特徴である「子ども自身の生活から出発する」という観点をとり入れたシラバスと教材の開発を目指し、小学校レベルに重点を置いた研究を行った。1.指導要領に現れた単元構造についての考え方を、生活単元時代と現行の両時代で比較的に分析した。その結果に基づき、シラバス開発における単元構成の問題点を整理した。2.生活単元時代と現行の小学校理科について、指導要領や教科書の内容を調査し、「今後の小学校理科における基本概念候補」を整理した。3.基本概念候補の各々について、「概念獲得を手助けし得ると判断される活動教材」を扱った文献を集め、整理した。一部については実際に試行し、改善を加えた。4.教材テーマの例として「水」「光」「音」をとりあげ、これらのテーマに関する学習のためにどのような活動(観察・実験など)がとり挙げられているか」という観点から、生活単元時代と現行の場合について指導要領と教科書の内容を分析・比較した。その結果に基づき、「これらのテーマに関するシラバスづくり」における問題点を整理した。5.4の結果に基づき、「水に関する学習教材およびシラバスを構成する学習活動候補」を整理した。6.基本的科学概念のうち「力」「作用の伝達」「物の種類」「物の時間的変化」「裸地の時間的変化」「生物と非生物」「日用品の由来」「物の動きと見え方」「水の循環」などについて、生活体験から概念獲得までのプロセスを構成する活動体験や思考の順序を整理し、活動・思考教材としてモジュール化した。
著者
丹後 弘司 重松 敬一 大竹 博巳 山田 篤史 荒井 徳充 大竹 真一 勝間 典司 加畑 昭和 川口 慎二 黒田 大樹 小磯 深幸 河野 芳文 酒井 淳平 辻 幹雄 槌田 直 中井 保行 二澤 善紀 長谷川 貴之 横 弥直浩 吉田 明史 吉田 淳一
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究グループが作成を進めてきた、理系分野への進学を目指した高校生を対象とし、より広い立場からの高等学校と大学との連携を意識した新しい高等学校数学の実験的教科書・教材を教育現場で使用し、具体的問題を抽出しつつ改善を図る研究を進めた。研究成果としては、教科書紙面、投げ入れ的な実践で教材として用いることができるコラム、授業実践で用いた教材がある。これらの成果は、生徒・授業実践者の感想や授業観察者の評価とともに報告書にまとめ上げた。
著者
湯川 夏子
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

料理活動は、人をいきいきさせ、豊かな人間関係を構築し、自立支援や認知症周辺症状緩和等、高齢者の生活の質(QOL)の向上を期待できる。認知症高齢者でも適切な支援があれば料理活動の継続が可能である。本研究では、このような料理活動を支援する方法論を確立するため、高齢者施設における介入調査およびグループホームにおける料理活動の実態調査を行い、認知症高齢者に適切な支援方法や料理活動の内容を明らかにした。
著者
石川 誠 山野 英嗣 朴 鈴子 豊田 直香 羽田 聡 不動 美里 黒澤 浩美 平林 恵 木村 健 松村 一樹 西澤 明 竹内 晋平 西村 大輔
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

生涯を心豊かに生きるための基盤作りとして,学校と地域の美術・博物館が相互の知見を共有し,知的財産(コレクション)を活用した鑑賞学習を多様に試行して七つの実践モデル(CD-ROM)にまとめた。従来,学校で扱いにくいかった分野にも対象を広げ,映像やワークショップ・プログラム,「書」など,実践に一つの道筋を付けたといえる。また,こどもの鑑賞過程で「見る」と「つくる」の密接な関係が確認され,実践計画の立案に示唆が得られた。この成果を公開討論会で問い,社会的な評価を受けている。
著者
細川 友秀 衣笠 尚子
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.61-70, 2003-03-31
被引用文献数
1

我々の研究室は,地域社会に向けて開かれた大学をめざして教育大学としての特色ある取り組みを模索してきている。その取り組みのひとつとして,1997年の大学祭(藤陵祭)において,研究室の研究内容を地域の人々にプレゼンテーションするという企画をはじめて実施した。以降,この企画を毎年充実させる努力をしつつ6年継続してきた。2002年の企画では,例年のように「卒業研究生は専門分野の研究を理解し,その内容について一般向けのプレゼンテーションと教材化のトレーニングをすること」を主要な目的の一つとして卒業研究に関連した展示を行った。さらにそれに加えて,教材開発を卒論のテーマとする4回生が試作中のアニメーションと様々な食材に繁殖したカビを使って模擬授業を数回実施し,試作のアニメーションと模擬授業に対する実験的評価を得るためにこの機会を利用した。模擬授業は「免疫ことはじめ」というタイトルで小学校高学年から中学生を村象として,高等動物の体を微生物の感染などから守る生体防御機構についてやさしく説明するというテーマで実施された。模擬授業受講者のアンケート回収合計は54名であり,小学1〜3年生8名,小学4〜6年生14名,中学生5名,大学生11名,社会人16名であった。小学高学年から大学生の対象者うち,「理科が大好き」あるいは「理科が好き」と答えた人は,小学高学年57%,中学生40%,大学生82%であり,また,免疫のしくみについて「よく知っている」と答えた人はなく,全員が「知らない」あるいは「少しは知っている」と答えた。このような対象者が模擬授業を受けた後,小学高学年の64%,中学生の80%,大学生の82%がそれぞれ「免疫について興味をもった」と回答した。また,模擬授業の説明について,小学高学年の86%,中学生の全員,大学生の91%が「とても分かりやすい」あるいは「分かりやすい」と回答した。アンケート調査の対象が,マウスを見たりさわったりしようとする人で理科系の研究展示を見ようという人に限定された集団であることや集団が小さいことなどの理由により,アンケートの結果から明確な結論を引き出すことはできないと考える。しかし,模擬授業受講者の反応とアンケート結果は試作教材の内容と授業構成の修正点や改善の方向を考える上で大いに参考になった。2002年度の「マウスといっしょ」全体の企画には,これまでと同様に地域の小中学生とその保護者を中心として多数の人々が参加した。これまでどおり参加者には簡単なアンケートに答えてもらい,展示の感想,評価,研究室への要望を聞いた。アンケート回収分の人数は127人であった。アンケートの回収数が例年の60%程度にとどまったことが注意すべき点である。大学生・社会人の数は昨年とほぼ同じであるのに対し,小学生〜高校生の回答者が減少していることが特徴であった。ただし,今年の小中学生の参加者は過年度からのリピーターや期間中のリピーターが目立った。このことは展示そのものは参加者にとってもう一度行ってみたいと考えさせる魅力があることを示している。新規の参加者を呼び込む努力が足りなかったと考え,この点を来年の課題とする。今後もこの企画を継続することで経験を積むとともに,大学を地域に開放し大学と地域社会との結びつきを強めるための特色ある活動としていくことをめざす。
著者
中川 宣子
出版者
京都教育大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、自閉症児における自己思考の表現を支援するためのデジタルテキストを開発することであった。そこでまず、特別支援教育に携わる現場教師3名により、対象生徒5名の興味・関心について、日々の授業を通してアセスメントした。次に、ここで得られた情報に基づいて、デジタルテキストで使用するテーマを協議した。協議の結果、生徒が実際に活動を行った単元・題材(宿泊学習、運動会、学校祭…など)10項目を本デジタルテキストのテーマとして選択した。続いてこれらのテーマに関連する写真やイラストを収集し、その中から各テーマ毎に5種類の素材を選択した。各素材を、Micro-soft社:power-pointによって編集し、1テーマにつき写真(イラスト)5枚、計10テーマ、計50種類の教材によって、「視覚デジタルテキスト」とした。「視覚デジタルテキスト」の実施は、週1回70分間の「国語」の授業の中で行った。生徒はまず、本時のテーマを聞き、デジタルテキストを活用して自己の思考をパソコン上に打ち込むという学習設定と、同テーマのもとで手書き(或いは口頭)表現するという学習を設定し、それぞれの学習設定における表現語彙数の比較によって、「視覚デジタルテキスト」の学習効果を評価した。結果、5名中4名の生徒に「視覚デジタルテキスト」を活用した場合の方が表現語彙数が増加するという結果が得られた。中でもA児は、1テーマにつき、手書き・口頭による表現語彙数が、最小1語〜最大5語であったのに対し、デジタルテキスト活用の場合には、最小5語〜最大15語という増加が見られた。他の生徒も同様に、1語〜7語の増加が見られた。また彼らに共通した学習態度として、「視覚デジタルテキスト」活用時の方が、学習に取り組む時間が長く、教材に向かう集中度も高いという姿が見られた。生徒にとって「視覚デジタルテキスト」は、興味・関心の高い教材であるといえ、思考表現の成果のみならず、学習意欲の継続、向上にも効果があると考えられる。今後も、自己表現支援教材の一つとしての「デジタルテキスト」を開発していきたいが、本研究で取り上げた視覚素材と併用して、聴覚素材を取り入れたデジタルテキストの開発に着手する必要があると考えられた。これは、彼らの生活を見直したとき、彼らの触れる情報は、視覚素材のみならず、聴覚素材である機会が多い。自閉症児の特性にあげられる視覚優位を活用した視覚素材と、これに対する聴覚素材との両面をデジタルテキストに取り入れることによって、彼らの生活全般における自己思考表現を支援するための学習教材の充実が考えられる。
著者
松良 俊明 渡辺 守 坂東 忠司
出版者
京都教育大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

休止期間中の学校プールに生息する昆虫(主としてトンボ幼虫)を、理科や環境教育の教材として利用することを目指し、次のような項目について研究を行った。(1)プールに生息するヤゴや他の昆虫の種類構成。(2)優占種となっているヤゴの生活史。(3)なぜその種が優占種となっているかの理由。(4)植物プランクトンはヤゴの餌となる植食性昆虫のエネルギー源である。この植物プランクトンの種類構成と季節的変動を知る。京都市及び三重県津市での2年間の調査と実験の結果、以下のような知見が得られた。(1)京都市の小学校プールには8種のヤゴが確認されたが、最も高密かつ普遍的に見られたのはタイリクアカネ幼虫であった。ヤゴ以外にも、コマツモムシ、ゲンゴロウ類、ミズカマキリ、フタバカゲロウ、ユスリカ類などの幼虫が観察された。一方、津市では17種のヤゴが確認されたが、本来タイリクアカネが分布しないため、替わってシオカラトンボ、ノシメトンボ、ショウジョウトンボのヤゴが優占していた。(2)タイリクアカネは秋に産卵し、卵は晩秋から孵化し始める。ヤゴは春に急速に成長し、5月末から羽化を開始する。(3)タイリクアカネは水に直接産卵するタイプであること、他の種に先駆けて孵化するため、他の種のヤゴは本種の餌となっていることの理由により、タイリクアカネが優占種となっている。(4)プールに優占する植物プランクトンは緑藻のコスマリウム等であり、これらは砂ぼこりや枯葉、あるいは飲水に来た動物によりプールに持ち込まれたと考えられる。
著者
山嵜 泰正
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-13, 1993-03-31

「公害」に対する私の考え方の変遷と環境教育の自覚,その発展・展開プロセスを述べる。水俣への修学旅行。水俣病患者の苦悩,「苦海浄土」を劇にした。戦後日本は高度経済成長でGNPの拡大を目指してきたが,「健康で文化的な生活を営む権利」を保障するはずの日本国憲法が公害でその根幹を虫ばまれている。新しい基本的人権として「環境権」による教育を考えた。公害教育が「義憤」を起こさせる「心を揺さぶる教育」とすれば,環境教育は科学分析の解説かマナー・生き方・道徳・倫理の問題に片寄る。やはり社会的正義感を失ってはならない。現状肯定ではなく,大量生産・大量消費・大量廃棄の社会構造に切り込んで行く厳しい社会批判の視点を忘れてはならない。
著者
広木 正紀 岡本 正志 村上 忠幸
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

探究学習の観点と環境学習の観点から、小中学生の理科学習に重要と考えられる活動を、国内外から発掘・収集するとともに独自にも開発し、各活動をモジュールの形に整えた。それらモジュール群全体を系統的に整理する諸視点を探すと共に、それら視点間の関係を検討した。以上を踏まえ、探究学習の観点と環境学習の観点を2本の柱とした、新しい理科カリキュラムの骨組み案を試作した。
著者
石川 誠
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.本研究で目指した美術鑑賞今後美術教育は,学校を出てから美術とのかかわりがいかに持てるかの視点が求められる。文化的で心豊かな市民社会の構築には,学齢期にこそ美術と身近にかかわる素地を育む鑑賞活動を体験させたい。美術館と学校の異なる豊な知的財産を生かしながら,鑑賞教育の方向を示すことを目的とした。2.研究経過(第3年度/平成17年度)1)鑑賞実践モデルの検証と中間評価から鑑賞実践ガイドの作成へ:平成15-16年度に(財)大原美術館,東京国立近代美術館,京都国立近代美術館と各地域の学校の教職員から成る鑑賞教育研究プロジェクトを組織して鑑賞実践モデルを構想・実践し,シンポジウム(2004年12月,京都国立近代美術館)により社会的評価を受け検証した。これらを教員向けガイドに集約した。2)『美術を身近なものにするために-鑑賞実践ガイド-』(2006)の作成鑑賞活動の実践を促進する標記の教員向けガイド・ブック(「ティーチャーズ・ガイド」)を次の手順で作成した。(1)鑑賞活動プログラムの体系化と一般化 (2)『鑑賞実践ガイド』の編成ガイドの特徴:●美術館作品を正面から取り上げ,教室で鑑賞資料に使える精細な大型図版を掲載し,実践で押さえる主要発問(ディスカッション・ポイント)を例示。●実践事例の提示を簡潔にし,教員の主体的な活動展開を保障。●必要情報を学芸員の経験から具体的に執筆(相談窓口等)。*作品写真と実践例,活動情報を併せて収録。提示資料がない状況を改善し,教室で美術館作品の鑑賞実践を可能にした。本ガイドは,3地区の美術館を中心に配置し,今後,本ガイドで実践した教員の評価を仰ぎ,より柔軟で発展性のある鑑賞活動,自主的に作品選定した実践などの登場を期待する。プロジェクトの成果:美術館と学校の距離が狭まった。実践にあわせ美術館が常設作品の選定に踏み出すなど,両者連携の可能性を示した。シンポジウムで提起された「美術館は変わった。学校も変わって-」は,実践を広める主要なコンセプトといえる。課題:鑑賞活動の質や評価観のさらなる検証と整備。図版使用に関する著作権教育と研究。
著者
井上 文夫
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

肥満児の身体活動量を増加させるため、学校での健康診断、健康教育の授業を利用した介入プログラムを実施し、身体計測値、血清脂質、脈波速度による動脈硬化測定、生活習慣調査をO 市の公立学校で3年間実施した。まず、小児における腹囲値、脈波速度の標準値を得た。介入プログラム実施後、肥満だけでなくやせの頻度も減少した。生活習慣は56%に改善がみられ、改善した例では肥満度、血清脂質、動脈硬化度とも改善する傾向が見られた。生活習慣では、食習慣や運動習慣のみでなく、睡眠習慣の重要性が確認された。肥満予防のための健康教育プログラムの実施は、肥満改善ばかりでなく、生活習慣全体を改善する機会となり、運動能力や学習効果にも良い影響を与えると考えられた。
著者
濱田 麻里 市瀬 智紀 上田 崇仁 金田 智子 河野 俊之 齋藤 ひろみ 徳井 厚子 川口 直巳 橋本 ゆかり
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は,多言語・多文化化する学校に対応できる教員(以下,多文化教員と呼ぶ)を養成する学部教員と現職教員を対象とする教師教育システムを開発するためのアクション・リサーチである。研究では,海外との比較調査,受講者へのアンケート調査等による実践したプログラムの分析を行った。最終成果として,開発されたプログラムの一部を『実践例集』として公開した。