著者
河崎 哲嗣
出版者
京都教育大学
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.75, pp.9-13, 2004-03-05

本校はスーパーサイエンスハイスクール(以後SSHと記す)に認定され、今年度で2年目を迎えている。3年間の数学カリキュラムの内容を数学IA,学校設定科目(「解析」,「代諏幾可」,「確率統計」,「現代数学研究」,「応用数学I」,「応用数学II」)とし、単元を組み替えた構成での指導を実施している。また独自の教科内容・教材づくりを進めているが、今回の報告では「代数幾可」(第2学年次)について、1学期に実施した内容(空間ベクトノレ「空間図形への応用」)について実践報告をする。
著者
宇津井 惠正
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大學紀要. A, 人文・社会 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.61-74, 1996-03

19世紀初頭におけるゲーテの詩的形象の世界と技術時代の始まりとの関連を論じた。この視点から,とくにカメラ・オプスクーラとラテルナ・マーギカとの関連をテーマとした。The theme is the relations between Goethe's poetic images and the beginning of the technical era in the early nineteenth century,with emphasis on the observation of his relations to camera obscura and laterna magica.
著者
加藤 元和
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要. A, 人文・社会 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.57-70, 1992-09

(承前)今回は第1次世界大戦前におけるドイツスポーツ・体育と青少年教育との関連について,特に社会におけるスポーツ・体育に視点を据えて追究する。そのために以下の5点に追究点をおいて明示的認識に至る。1)ドイツツルナ一連盟について2)スポーツ運動の発展とスポーツをめぐる論争について3)青少年ドイツ団について4)ドイツ青少年・民族シュピール促進中央委員会について5)シエンケンドルフの青少年教育論について This study clarifies some problems of the German Youth Education and the Social Physical Education or Sports before the First World War. The following points were investigated. 1) "Die Deutsche Turnerschaft"2) Development of sports and Controversy about sports 3) "Jungdeutschland-Bund"4) "Zentralausschuss zur Forderung der Jugend-und Volksspiele" 5 ) Schenkendorff's Theory of the Youth Education
著者
中村 義一
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要. A, 人文・社会 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.243-261, 1997-03

ターナーの晩年の始まりは1836年であると,時に考えられることがある。それは,彼のもっともよく知られた作品,例えば『戦艦テメレール号』のような作品の幾つかを生み出した,60歳代の新しい時期の始まりでもあった。他方,ターナーの晩年は1831年のような早い時期からとみられる場合がある。それは二つの補足書を次の年に付けた,6月10日付の彼の最初の遺言書作成の年である。そしてそれはまた,この画家の周知のマーゲイトでの二重生活が始まった時期でもある。われわれは老いた芸術家の晩年につくられた作品のスタイルは,ついに衰え始めた彼の健康のように,質的に衰弱すると考えがちである。しかし晩年の芸術家の芸術は,かならずLも肉体的衰えに左右されるものとはかぎらない。最晩年のターナーの作品に関して,このような事柄を,本論は考察するものである。It is sometimes considered that 1836 marked the commencement of Turner's late period and it has also been suggested this new era in his sixties opened with the production of some of his most popular works, for example, 'The Fighting Temeraire'. On the other hand, it has been suggested his late period can be dated as early as 1831; the year of his first will dated 10 June which was amended by two codicils in 1832. It was at this time the artist began his famed double life at Margate. We are apt to think that the style of an aged artist's work,produced in his later years, declines in quality as his health at last began to fall. It is, however, arguable that the art produced by an artist in his later years is not always affected by any physical condition due to ill health. In this paper I would like to consider these matters as it relates to the last works by Turner.
著者
武島 良成
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:21873011)
巻号頁・発行日
no.129, pp.15-29, 2016-09

本稿は,沖縄県読谷村を1つの「戦争遺跡」と捉え,1945年4月1日の同村北西部の軍と住民の様子を掘り下げるものである。その際,アメリカ軍の様子を掴むために,「米海兵隊太平洋戦争記録」の各種レポートを活用する。これらのレポートには,連隊・大隊のものが含まれており,かなり細かなレベルで隊の動きを追うことができる。また,『読谷村史』の編纂過程でつくられた調査ファイルも使う。それらを,既知の諸情報と突き合わせ,この日の読谷村北西部の様相を深めていく。
著者
加茂 直樹
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要. A, 人文・社会 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.201-212, 1997-03

有名な著書『自由論』(1859年)において,J・S・ミルは行為の自由についての自由主義的原則を定式化し,「文明社会の成員に対し,本人の意志に反して,正当に権力を行使しうるのは,他人に対する危害の防止を目的とする場合だけである」と述べる。20世紀の自由主義者の多くも,これを個人の行為を規制するための,唯一ではないにしても基本的な原則として受け入れ,伝統的に不道徳とみなされてきた個人の行動の多くについて,その自由化あるいは非犯罪化を支持した。これに対して,保守派の論客たちは,社会の道徳と基本的制度の保護は法の重要な役割であると主張した。この論争は自由主義者側に有利に展開したように思われた。しかし,性,医療,社会福祉,環境などの新しい課題が次々に提起されるにつれて,自由主義の理論そのものが根本的な変容を強いられることになった。この過程の簡明な概観が本論文の主要な目的である。In his famous book On Liberty(1859), J.S.Mill formulates a liberalistic principle on the freedom of action, and says "That the only purpose for which power can be rightfully exercised over any member of a civilised community, against his will, is to prevent harm to others". Many of the 20th century liberalists, accepting this as the fundamental, if not the only, principle for restricting acts of individuals, gave support to liberalizing or decriminalizing many behaviours which had been traditionally regarded as immoral. Against this, conservative theorists maintained that protection of the morality and essential institutions of the society is an important role of law. This controversy seemed to develop to the advantage of the liberalist's side. But as new problems, such as sex, medicine, social welfare, and environment, were posed one after another, the liberalistic theory itself has been forced to suffer radical change. To make a brief survey of this process is the main purpose of this paper.
著者
武島 良成
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
vol.119, pp.49-70, 2011-09

This paper is a consideration, evidenced through the intersection issue of the Eizan Electric Railway and the Kyoto City Tram, of the Kyoto City urban development initiative within the application of city planning laws. Backed by the Ministry of Railways and the Kyoto Prefectural government, the Eizan Electric Railway commenced work to extend itself to Sanjo Street in 1928. Opposed, however, to its intersection with it tramway, after the change of government to the Minsei Party, Kyoto City brought the Ministry of Home Affairs to its side, and had the work abandoned. Kyoto City further attempted a resolution to the city-planning No.1 route intersection issue, but the Eizan Electric Railway would not co-operate. The Ministry of Home Affairs and the Ministry of Railways as well were not proactive in intervening on the issue, and the route was closed five years after its completion.本稿は、叡山電鉄と京都市電の交差問題を通して、都市計画法準用下の京都における、町づくりの主導権について考察するものである。叡山電鉄は、鉄道省や京都府に後押しされて、1928年に三条への延長工事を始めた。だが、京都市は市電と交差するために抵抗し、民政党への政権交代後には、内務省を味方にして工事を断念させた。さらに京都市は、都市計画第1号線との交差問題を解決しようとしたが、叡山電鉄は応じなかった。内務省と鉄道省も、解決に向けて積極的に介入したわけではなく、この道路は完成後も5年以上にわたり封鎖されたままになった。
著者
札埜 和男
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
no.122, pp.111-123, 2013-03

国語科での法教育授業として裁判員裁判の判決文を教材に使い,市民にわかりやすい文章になっているかを,高校生の視点から書き直す作業を通じて検証した。判決文を「論理性」「表現力」「わかりやすさ(明確さ)」の点から5 段階評価し法曹三者をゲストに招き公開授業を行った。当日までに陪審員に関する評論,裁判員裁判の広報映画鑑賞,簡単な模擬裁判を実施した。国語として養う力は作文力・読解力・語彙力・言語感覚・文章力である。最も生徒の評価が分かれたのが「表現力」である。なぜならここには「品位(品格)」が項目としてあったからである。「公の文章」と「わかりやすい文章」をどう捉えるかが授業の大きな柱であった。また法律用語ではなく専門家が使う「日常語」やその特殊な使い方に, 法特有の意味やルールが付与されていることが明らかになった。ことばに焦点を当てた法教育は, 市民と専門家の間にある「溝」を埋める働きがあるといえる。
著者
関川 千尋 田中 利絵
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大學紀要. B, 自然科学 (ISSN:00236101)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.51-68, 1995-03

The objectivc of this study was to clarify how bicycles should be used in urban areas. For this purpose,illegal bicycle parking was observed near 82 stations in the south Kyoto area and found to occur frequently. Surveys were handed out to bicycle users at three representative stations (Kintetsu Mukaijima Station,Keihan Demachi Yanagi Station and Keihan Rokujizo Station). Of 1720 questionnaires handed out, 246 were returned,for a response rate of 14.3%. Based on the results of the survey,a solution to the problem as well as guidelines for bicycle use were examined. As a result,(1) near the 82 train stations in the south Kyoto area,60,308 bicycles were observed and 28.8% of the total (17,358) were parked illegally. (2) Bicycle users who were surveyed felt that illegal parking of bicycles is inexcusable in other people,but allowable if they themselves were the ones who were doing it. (3) Solutions to the illegal bicycle parking problem,such as improvement of ethics through education and fines,establishment of a comprehensive rational management policy,including such measures as total regulation of bicycles used inside the city,and a rental system,were considered.この研究では,都市における適切な自転車利用のあり方を探ることを目的としている。目的達成のため,現在南京都地区(82駅)周辺に頻発している迷惑駐輪の実情を把握すると共に,典型的な3駅(近鉄向島駅,京阪出町柳駅,京阪六地蔵駅)の自転車利用者へのアンケート調査を通して,その解消方向・および適切な自転車利用のあり方を検討した。調査票配布数1720票,回収数246票,回収率14.3%であった。その結果,(1)南京都地区の82駅周辺で,60,308台の駐輪が観察され,その28.8%(17,358台)が迷惑駐輪であった。(2)調査対象の自転車利用者は,迷惑駐輪を「他人には許さないが自分の行動規範の中では許す」という駐輪意識を持っていた。(3)この迷惑駐輪をなくす方向として、「教育や罰金によりモラルの向上を図る」,「都市で利用できる自転車の総量規制をし, レンタル制等を含む合理的な管理体制を確立する」などの方向が考察された。
著者
梶原 裕二 細川 友秀 梁川 正 広木 正紀
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.121-131, 1999-03-31

環境問題は現代社会の中でも重要な課題で,その深刻な影響を考えると早急に対策を講じる必要がある。今日では問題がより複雑化,広域化し,企業ばかりでなく,生活者も主要な汚染者となっている。児童や生徒は次世代の生活者であることから,教育を通して幼少の頃から環境問題に関心をもつように啓蒙することは,長い目でみれば問題を解決する上でよい対処法と思われる。環境を考える基本的な意識として「循環」がある。我々自身を含め,食物連鎖を通した生物圏での循環,窒素・リン化合物の循環,エネルギーや二酸化炭素の地球規模での循環,紙や鉄資源の生産・消費活動での循環のように,多くの環境問題は循環抜きには考えられない。ところが,循環は実体が目に見えないために理解しづらい難点がある。その点,紙や瓶など資源ゴミのリサイクル運動は,実際の効果に加え,循環を認識するとても良い教材と考えられる。学校においても,できるだけ循環を視野に入れたリサイクルを実践したい。以前から行われていたリサイクルの一つとして,生ゴミや糞尿など有機廃棄物の堆肥化がある。化学肥料が十分に発達していない頃,農家では家畜の糞尿から作った堆肥が広く用いられていた。現在でも,比較的土地に余裕のある農家や畜産農家は堆肥を利用している。台所から出る生ゴミに関しては,堆肥化することで可燃ゴミを減らすという面から各自治体で注目を浴びている。その際も,生活者が生ゴミを分別収集することが前提条件となり,生活者の環境意識の向上が不可欠である。さて,今の子供達は生ゴミや家畜の糞尿など,有機廃棄物に潜在的な価値があることを知っているのだろうか。現代の便利な文明の中で成長している子供達は,ゴミ袋に入れさえすれば生ゴミはいつのまにか清掃車が運んでくれるし,下水の発達により,糞尿の行方は見えにくくなり,かえって有機廃棄物の問題を考える機会がなくなった。都市部に住む大半の子供達にとっては,農家における堆肥化の経験は皆無と思われる。そのため,特に糞尿の場合は,単に臭く,汚いものだけという固定観念が出来上がっている恐れがある。家畜の糞尿が肥料として使用できることは実感として捉えにくいであろう。このような状況において,台所の生ゴミや家畜の糞尿など有機廃棄物を堆肥として利用することは,生物圏の循環を実感する環境教育のプログラムになると思われる。京都教育大学の生物,生命系のいくつかの研究室では,実験用にハツカネズミを多用している。その際,比較的多量の糞尿が混じった木材クズが生じるが,焼却処分にせず,圃場の一角に貯め,腐熟させ堆肥として用いている。それを肥料として施した部分としない部分を作ったところ,施肥の効果が歴然として現れた。日常の動物の世話と糞尿の堆肥化を通して,堆肥が植物の生育にとても効果があることを再認識する機会であった。この事例が環境を考える上で必要な「循環」を認識させる教材として利用できると考えられた。
著者
榊原 禎宏
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.101-114, 2008-09

本稿は,学校組織構造をめぐる従来の議論が,上と下,縦と横という隠喩のモデルに依拠し「上意下達」「同僚性の阻害」等の素朴なイメージから抜け出せないために,職務,職位,スタッフの関係を双方向から問うように進まなかったことを明らかにした。そして,学校において職務対象の分割が困難であり,また職務遂行を取り巻く環境の不確実性が高いことから,経営過程においては業務ではなくスタッフこそが動くべき変数であることを論じた。さいごに,こうした学校組織構造をより喩えうるモデルとして「中心-周辺型」モデルを挙げ,上下ではなく円環のネットワークとして学校における仕事の分割と集約,個業と協働を捉えることができるのではないかと仮提示を行った。The purpose of this paper is to rediscuss the characteristics of the organisational structure of schools, from the point of view of the metaphor which we have used of a "flat organisation", that is so to say a "lid of a pan" or "pyramid organisation" for a long time. Through an examination of difficulty for division of school work and uncertainty of circumstances around school, we could comprehend that not school work, but school staff should move in school performance. As a tentative conclusion it is proposed that school organisations should be described by a "centre-fringe" model in one metaphor.
著者
松村 千鶴 浅田 昇平 榊原 禎宏
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
vol.117, pp.73-81, 2010-09

日本の教員の学校間等異動は,教育委員会の行政=経営活動として専ら捉えられる。その眼目は,①全県的な教育水準の維持向上,②各学校の課題への対応,③個人への報奨等処遇,と理解できるが,人的な公教育資源の長期的開発という観点からする,校長に至る異動については,経験的知見をほとんど越えていない。 本稿はこうした問題設定から,事例自治体での教諭の最終年度から学校長への登用年度までの個人の軌跡を辿ることを通じて,人事行政がいかなる教育資源の「適正さ」を担保しているかについて基礎的作業を行った。その結果,自治体内のローカル・ルールの存在,とりわけ教育行政機関での勤務の点で顕著なことを見出した。今後,各学校の時期ごとのプロフィールとの対応関係のほか,他の事例での追試が課題である。Personnel placement (rotation, reshuffling, promotion) policy for Japanese teaching staff is based entirely on the premise that Board of Education administration is a managerial activity. The core ingredients of this are: 1) cross-prefectural maintenance and improvement in levels public of education; 2) an individual school approach to school subjects; and 3) while it is understandable that compensation, etc. is on a per person, individual basis, the transfer to position of Principal, viewed from long-term development of a human public education resource, it does not go beyond experiential knowledge. This study, upon laying out the issue, conducted, from local government case studies focusing on individual career promotions to Principal, a base inquiry into whether personnel administration appropriately supports all educational resources. Results reveal the existence of local rules in local area governments and striking points in the workings of the educational administrative body. Further investigation, to look into corresponding relationships with such things as individual school time scheduling profiles will follow from this work.
著者
関川 千尋
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大學紀要. B, 自然科学 (ISSN:00236101)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.35-50, 1995-03

The purpose of this study was to determine the"housing expense"portion of"necessary living expenses"of the urban home-owning working class,and to clarify the characteristics of this spending behavior. A functional relation Y=f(xi,zj) was postulated between "housing expense (Y) "and the various factors that are assumed to play a role in the conscious decision to spend,and multiple regression analysis was performed. xi represents socio-economic factors pertaining to income,household and housing,and zj represents expenditure factors related to household finance. In this study,xi was regarded as a control variable and,in particular,the analysis of its relationship to zj was taken into consideration. We found that this social class,in spite of belonging to the more highly paid strata of the working class,had a heavy burden of land and housing loan repayment. Because of this,members of this group reduced expenditure for secondary wants,such as education,entertainment,and"other expenditures."Moreover,it was found that expenditures for necessities and seminecessities for daily living were in conflict with"housing expense"expenditure.本研究では,都市居住持家勤労者階層の「住生活を営むために必要な費用」を,当階層の「住居費」と定め,その支出行動の特性を明らかにすることを目的としている。上記目的達成のため「住居費(Y)」 と,その支出の意思決定に関与すると考えられる諸要因との間に, Y = f(xi,zj) の関数関係を仮定し,重回帰分析を行った。xiは,社会経済的要因(所得・世帯・住宅関連)で,zjは,家計費支出要因である。当報では,xiを制御変数と見做し,特にzjとの関係の分析に留意した。この結果,当階層は,勤労者としては高所得層に属するにも係わらず,土地・住宅の借金返済負担が大きく,そのため,教養・娯楽費や"他の消費支出"など,不急の財への支出が切り捨てられ,さらに,日常生活をする上での必需財・準必需財への支出が「住居費」支出と競合関係になっていることが明らかにされた。
著者
森山 卓郎 鍋島 惠美 斎藤 真由美 村田 眞里子 櫨山 ゆかり 小川 陽子 高野 史朗 光村 智香子 田中 琢也
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
vol.115, pp.27-45, 2009-09

葛藤場面の写真から事態をどう見取るか,そしてどのような対応をするのかを学生(教育実習未経験),保護者,幼稚園の教員,保育園の保育士,において調べた。その結果,「可能性のある事態」,「最も可能性の高い事態」としても,幼稚園の教員は「事故」と考える割合が低く,学生は高かった。ここから,学生は事態をどう見るかの観点が獲得できていないと言える。次に,対応についても調査したが,「見守る」という対応をとったのは幼稚園の教員に有意に多く,学生に有意に少かった。同じ場面に対しても学生と幼稚園教員とでは対応が違うと言える。子どもが「仲よく」という発言をしていたという仲裁の場合は,「そうだね,仲良くしようね」といった介入は幼稚園の教員には有意に少なく,保護者に有意に多かった。以上から,幼稚園教員には直接的な介入を少し控えて,子どもたちの自立的な発達を促す傾向が読み取れる。こうした様々な「見方」を意識化することは教育実習での学びをより深くするためにも有益だと思われる。Using questionnaires, we studied how students, parents, kindergarten and nursery school teachers judged a situation in a photo showing conflict between 9 children. We found that students tended to judge the scene as an accident, while kindergarten teachers did not. From a management point of view, kindergarten teachers tended to "monitor the situation," while students did not. In case in which a child tried to mediate other children's conflicts, parents agreed with and enforced the mediation, while kindergarten teachers did not. Generally speaking, kindergarten teachers try to refrain from intervening with the intent of nurturing children's self-management.
著者
細川 友秀
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.85-95, 2000-03-31
被引用文献数
1

大学の主要な役割は学生教育と各専門分野の研究である。しかし,現在の社会では,これらに加えて地域社会に向けて開かれた大学としての役割が求められ,社会人向けの公開講座の開講や児童・生徒向けの野外講座・科学講座の開講,インターネットによるさまざまな情報発信など多くの企画がなされている。我々の研究室でもこのような要求に応えるため,1997年の大学祭(藤陵祭)で研究室の4回生の卒業研究の一部を展示する企画を実行した。この企画の目的は次の3つであった。すなわち,1)主に地域の小中学生対象に,4回生の卒業研究の一部を平易にプレゼンテーションすることで地域社会へのはたらきかけとする,2)この企画を通じて卒業研究生が専門分野の研究内容を理解し,その内容について一般向けのプレゼンテーションと教材化のトレーニングをする,3)大学祭(藤陵祭)を教育大学としての特色あるアカデミックな地域社会との交流の機会として利用しつつ,大学祭への各研究室からの参加を促し,学問的な企画を増して大学祭を充実させる,の3つであった。この卒業研究の展示会場には,地域の小学生とその親を中心として200人以上が来場した。来場者のアンケートの回答のなかには,この企画を積極的に評価する意見が見られ,また,会場での会話の中で,もっとこのような企画を行ってほしいとの要望などもいくつか出された。展示を準備する4回生には,研究の動機,背景,実験結果を分かりやすく説明するように指示した。テーマによっては,現代の文明社会に生活する我々の生活環境と健康との関係に注意を向け,4回生自身への環境教育と小中学生への環境教育につながるように意図して展示の準備をするように簡単に指示した。しかし,多くは4回生の自主性と創意工夫によって,しっかりとしたプレゼンテーションが準備されて実行された。これらのことから,1997年の藤陵祭における展示は上記3つの目的をほぼ達成して成功であった。1997年の結果と反省をふまえて,1998年もその年度の4回生の卒業研究を紹介する展示を藤陵祭で行った。上記3つの目的に加えて,この企画を毎年継続することによって企画の効果の浸透・定着をめざした。1998年の卒業研究のテーマは,「様々な運動がマウスの免疫機能に及ぼす影響」,「緑茶成分の消化管免疫系の機能に及ぼす影響に関する研究」,「残留農薬による免疫系への影響に関する研究」,「内分泌撹乱化学物質の母胎への作用が胎仔の免疫系形成に及ぼす影響」,「ノルアドレナリンによるマウスのマクロファージの機能の制御に関する研究」,「オーラルトレランスの誘導に及ぼすエンドトキシンの影響に関する研究」であり,これらを融合した内容で研究室の院生も加わって,研究の動機,背景,実験結果などを紹介する展示を準備した。特に,免疫系の構成と機能の基本的な内容の説明,アレルギー反応の仕組みと原因の平易な説明,運動とストレスや緑茶の飲用を具体例とした生活習慣と免疫機能の関係についての解説,を展示の柱とした。さらに,残留農薬や内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)が身近な生活環境にあり我々が無意識のうちに摂取する可能性,それらが免疫系の形成過程と免疫機能に影響を及ぼす可能性について分かりやすい説明を準備するように卒業研究生に求めた。展示の準備と実施に際して,これらの課題を達成することで1997年度につづいて卒業研究生自身の環境意識を高め,小中学生の環境教育につながるように意図した。この企画には前年と同様に,地域の小中学生とその親を中心として多数の参加を得ることができた。参加者には簡単なアンケートに答えてもらい,展示の感想,評価,研究室への要望を聞いた。前年同様,親の回答の中にこの企画を積極的に評価する意見がいくつかあり,「この企画を毎年続けてほしい」,「来年も子供を連れてくる」,「来年は子供も連れてくる」などのコメントが見られた。しかし,小中学生の回答は,2,3人を除いてしっかり書いたものがほとんどなく,大学の卒業研究を地域の小中学生向けにやさしくプレゼンテーションするという目的がどの程度達成されたか評価することが困難であった。そのため,アンケートの内容を工夫し記入の説明の仕方をていねいにする必要があることがわかった。全体的には,卒業研究生の自主性と創意工夫によってしっかりプレゼンテーションが準備されて実行されたので,他の2つの目的については達成されたと評価できる。今後の課題としては,小学生,中学生,高校生,社会人のそれぞれに照準を合わせた展示をしっかり準備して,第一の目的を達成することである。また,このような活動の継続により,少しでも生徒の「理科離れ」を改善するのに役立つならば幸いである。
著者
垣内 幸夫
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、明治期に始まり今日まで文楽の舞台に継承されている「彦六系」の芸について、その伝承を支えた文楽三味線奏者・故六世鶴澤寛治(重要無形文化財=人間国宝)の残した芸談『鶴澤寛治の芸道生活と意見』(文部省委託・朝日放送製作/昭和43年1月)の全内容を分析し、「彦六系」の芸の伝承の実態を明らかにする事を目的に行ったものである。鶴澤寛治の実子であり文楽三味線の弟子である八世竹澤団六師(重要無形文化財=人間国宝)とともにこれらの記録テープを聞き、内容の正確な理解に努めた(竹澤団六師も鶴澤寛治と同じく「彦六系」の芸の伝承者である)。その結果、以下の点が明らかとなった。1.六世鶴澤寛治の芸を形成するに至った師匠について指導を受けた「彦六系」の三味線奏者 (1)初世豊澤松太郎(2)三世豊澤団平(3)初世鶴澤道八指導を受けた「文楽系」の三味線奏者 (1)六世豊澤廣助(2)二世鶴澤寛治郎(3)六世鶴澤友次郎指導を受けた大夫 (1)三世竹本大隅太夫(「彦六系」)(2)三世竹本越路太夫(「文楽系」)2.六世鶴澤寛治が継承する「彦六系」の芸の伝承曲について「堀川猿廻しの段」「寺子屋の段」「山科閑居の段」「沼津の段」「岡崎の段」「宿屋の段」「澤市内の段」「新口村の段」「熊谷陣屋の段」「阿古屋琴責の段」「志渡寺の段」等3.六世鶴澤寛治が相三味線を勤めた大夫について(1)三世竹本津太夫(2)七世竹本源太夫(3)五世竹本錣太夫(4)七世豊竹駒太夫(5)四世竹本津大夫
著者
深尾 武史
出版者
京都教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

熱水力学に現れる自由境界問題の研究に向けて, 流体の方程式に様々な制約条件を付加した問題の可解性の結果を得た. また, 変分不等式と発展方程式の関係性を明確にするため時間依存制約付きの抽象発展方程式に対する解の表現定理の結果を得た. 流速の大きさを温度に依存して制約する熱水力学に現れるモデルについて可解性の結果を得た.