2 0 0 0 OA 8.竹林と環境

著者
徳永 陽子 荒木 光
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.99-123, 2007
被引用文献数
1

竹は,非常に用途の広い素材である。しかし,何年か前より,輸入製品や他の素材の製品に押され需要が低迷している。その結果,日本中で竹林め放置が目立ってきた。竹林の荒廃は,里山全体に大きな悪影響をもたらす。竹林の整備は,竹産業だけのためではなく,里山全体の環境の維持のために不可欠なものである。したがって,行政を含め,地域全体の大きな理解と協力の下で,竹林の整備を手抜きすることなく実施し続ける必要がある。そのための6つの課題とその解決方法について論述した。現在需要がないといっても,近い将来,日本に資源不足の事態が襲ってきたときに,竹製品に対する需要が必ず大きく伸びてくる。そのときに竹産業に関する技術が滅びておれば日本にとって大きな損失である。その技術を残していくためにも,日本め竹産業の滅亡は避けなくてはならない。
著者
前川 紘一郎
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.123-129, 2005-03-31

昼間に金星を観測するために,太陽・金星のデータ(赤経・赤緯)に基づき,前もって観測場所での金星南中時刻・南中高度を計算,その時刻にその方向へ望遠鏡を合わせることにより観察する。望遠鏡視野の中にある金星と太陽・地球位置を宇宙空間の中で立体的にとらえ,これらの3天体を俯瞰した視点にたち,それらをひとつの太陽系景観として把握することを試みた。昼間の青空を背景にして金星が視野のなかに光り輝いている姿,特に金星の満ち欠けの状態が見える場合は,満ち欠けの状態に基づいて,太陽・金星・地球が存在する太陽系空間の中にいる人間(観測者)を意識する立場から,空の中にその時の光景を考えることが可能となる。そして太陽系天体としての地球を再認識し,宇宙の中にいる人間という自然観を少しでも実感・深めることが可能と思われる。また自然現象を見ている観測者を,自然の構造の中に含めて(自然と一体となって)理解することにより,人間も自然の一部であるという認識,自然との連帯感が得られることを期待したい。
著者
杉本 厚夫
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

スポーツの世界は実力だけが評価される世界であると一般的には考えられている。しかし、日本では、選手を選ぶとき、あるいは組織をつくるときには、人的ネットワークであるOB会の影響を受ける。つまり、一見メリトクラシー(実力主義)社会のように見えるが、その背景にOB会組織が機能しているのである。また、スポーツ選手としてのメリトクラシーから撤退した人によって、身体的な能力を問われない新たな代替的な場所として、OB組織が存在し、そのなかで、そのスポーツへの関わり方を強め、再びその中での上昇志向をしていこうとする。あるいは、スポーツ関連の協会でのある一定の地位に付けなかった人によって、新たな地位を確保する集団として、OB会がその対象となることもある。つまり、その世界での権力構造から排除されて人によって、作られるOB会組織という点からして、これらは「代替的加熱」というにふさわしいものである。精確に言えば、スポーツ集団の中で形成された階級文化としての年功序列が、OB会組織の基盤であるといっても良い。さらに、経済的な側面から、OB会の援助に依存することから、そこに権力構造が生起しやすい。しかし、欧米では、OB会は日本の大相撲の「タニマチ」と同じように、パトロンとして存在し、サポーターとして、権力関係を構築することはない。プロ野球では、監督コーチにその球団のOBが多いが、米国のそれは、まったく関係がない。メジャーリーグの選手でなくとも、監督コーチとしての専門的な実力が認められるとなれる。その意味で、日本のプロ野球の組織は、OB会の権力構造を有していると言える。しかし、Jリーグは歴史も浅いこともあり、地元密着型を指向していることもあって、あまり偏ったOB組織を持っていない。今後は各種のスポーツ種目団体のOB会の権力構造について研究していく必要がある。
著者
比良 友佳理
出版者
京都教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は著作権侵害の刑事罰・刑事手続が、著作物ユーザーに与える萎縮効果を分析し、表現の自由とのバランスがとれた著作権法の刑事罰のあり方を検討するものである。著作権侵害が刑事事件化されることで、被疑侵害者は強い萎縮効果を受ける。著作権法を表現規制立法であると認識した上で、刑事罰の種類や重さが比例性を満たすものであるかを検討することが必要であることを、欧州の裁判例や学説を参照しながら明らかにした。
著者
井谷 惠子 関 めぐみ 井谷 聡子
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では,批判的教育研究の立場から,権力的マイノリティとしての「体育嫌い」の声に 注目し,負の経験として「体育嫌い」を封印するのではなく,エンパワーメントの可能性を 探り,新たな体育カリキュラムへの示唆を得ることを目的とする.クイア・ペダゴジーや身 体・健康リテラシー,及び先行的な実践について調査を行うとともに,「体育嫌い」を自認 する人々によるグループワークを通して,それまでの経験の振り返りと意識の変容について フォーカスグループ(以下,FGと略す)を設定し検討を進める.
著者
田中 多佳子 梅田 英春 金子 敦子 沖花 彰 尾高 暁子 田中 健次 塚原 康子 筒井 はる香 寺田 吉孝 横井 雅子 岡田 恵美
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

楽器というモノに込められたわざ学、すなわち意匠と具体的変容の過程に着目してさまざまな角度から観察・分析することによって、今まさに音楽に生じつつある西洋対非西洋および伝統文化と現代化のせめぎあいと伝播と変容の具体的諸現象を確認し、可能な限り資料化し公開した。主な研究成果としては、(1)日本の大正琴とその異形たるアジアの楽器群に関する研究、(2)インドのリードオルガンとその異形に関する研究、(3)ヨーロッパの楽器学と楽器制作の現状に関する研究、(4)19世紀末のインド楽器をめぐる東西交流史に関する研究があげられる。
著者
香川 貴志 [チョ] 勁風
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大學紀要. A, 人文・社会 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.83-98, 2000-03

本研究の目的は,近年の京都市における人口の自然動態(出生数から死亡数を減算したもの)と社会動態(転入数から転出数を減算したもの)の地域差を解明し,その要因を考察することにある。研究対象期間は1990年10月から1997年9月までの7年間で,分析スケールは国勢統計区である。自然動態の地域差を概観すれば,旧市街地での人口減少,市街地周辺部での人口増加が指摘できる。社会動態の地域差を概観すれば,住宅開発が顕著な市域南西部,集合住宅の立地が盛んな旧市街地の一部で人口増加が認められる。一方,旧市街地の多くでは社会動態における人口減少が顕著である。また,旧市街地のうち,自然動態と社会動態の双方が増加をきたしているのは,下京区の光徳学区だけである。そこで,光徳学区内でフィールドワークを実施し,土地利用の変化を調べた。その結果,集合住宅だけでなく,3階建の戸建住宅が多く立地していることを知り得た。The purpose of this paper is to elucidate the areal difference about natural change (subtract number of deaths from births) and social change (subtract number of move-outs from move-ins) of the population, and to consider the factors related to recent population change in Kyoto City. The term of this study is seven years, from October 1990 to September 1997, and the analysis was done in the scale of census tract. From the point of view of natural change, the population is decreasing in central Kyoto, and increasing in the outskirts of the city. The purport of the social change is as follows. The area that is increasing in population is distributed in the southwest part of the city and a part of central Kyoto. The former has many house-constructions, and in the latter, there was a lot of establishment of condominiums. On the other hand, in the most part of central Kyoto, the population is decreasing from the point of view of social change. In central Kyoto, it is only in Shimogyo's Kotoku Area that the both natural and social change are increasing. That was why the authors investigated the change of land utilization in the Kotoku Area. In consequence, we looked at not only many condominiums but also many three-storied detached-houses in this area.
著者
神代 健彦
出版者
京都教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、戦後日本の教育研究をリードした教育学者勝田守一(1908-1969)について、彼の主張した教育学説の詳細を明らかにするとともに、現代教育学における勝田教育学の意義を検討することを目的としていた。勝田教育学は、1990年代以降、ポストモダン思想の影響を背景に厳しく批判されてきたが、本研究はその批判に耐えうる勝田教育学の今日的意義について明らかにした。とくに、2018年度より完全実施となった「特別の教科 道徳」について考える上で、勝田守一の教育学が極めて有効な視座を提供することが明らかとなった。
著者
武田 一郎 世古 春香
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
no.134, pp.65-78, 2019-03
著者
中俣 尚己 山内 博之 橋本 直幸 建石 始 小口 悠紀子 小西 円 堀内 仁 森 篤嗣 合田 陽子 加藤 恵梨 澤田 浩子 清水 由貴子 山本 和英
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2018年7月7日に京都教育大学で第1回ミーティングを行い、作業方針を固めた。以下、「新規コーパス構築」「既存コーパス分析」のそれぞれの作業について順番に実績を述べる。新規コーパス構築では、120ペア、240名の調査協力者を集めることにした。関西60ペア、関東60ペアで、さらに性別でも「男男」「男女」「女女」でバランスをとる。その上で、話題選定班の協力の元、『実践日本語教育スタンダード』を元に15の話題を選定し、各5分ずつの談話を録音することにした。調査に先立ち、協力者への説明や、同意の取り方、さらには指示の出し方など細かいプロトコルを定め、共有した。2018年度は120ペアのうち55ペアの録音を完了し、ほぼ半分の録音が完了した。2019年10月に全作業を完了する予定である。既存コーパス分析では、名大会話コーパスの全てのファイルを目で読み、『実践日本語教育スタンダード』をベースに話題の分割を行うことにした。プレ調査の結果、各ファイルにつき3名の作業者を当てることが妥当と判断した。分割のための書式を定め、結果を機械分析班が作成したプログラムで加工し、その後対面ですり合わせ作業を行う。全129ファイルを4分割して作業を進めることにした。現在、分割の作業進捗度は75%程度であり、全体の25%については2019年3月にすり合わせの作業を実施した。なお、代表者は全ファイルの作業をすでに終えている。作業の完了は2019年9月の見込みである。
著者
松良 俊明 坂東 忠司 梶原 裕二
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

「ダンゴムシ-枯葉-微生物」の3者関係に着目し、ダンゴムシが陸上生態系の中で果たしている役割を中学生が十分理解・認識できる3種類の実験を開発した。すなわち、ダンゴムシは新しい枯葉より腐食のすすんだ枯葉を好むことを確かめる実験、ダンゴムシが枯葉を摂食することで微生物による枯葉の分解が促進されることを確かめる実験、またダンゴムシが枯葉を摂食した後に残る糞や食べ残しが植物生産に正に作用することを確かめる実験である。