著者
小出 敦
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
no.42, pp.87-96, 2010-03

1.はじめに2.検索条件と検索の対象3.検索結果4.各時間詞が指す時間の範囲5.学習者のための時間詞と時刻表現の表
著者
正躰 朝香
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 社会科学系列 (ISSN:02879719)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.71-85, 2018-03

国際関係論におけるアイデンティティ概念を概観した上で,地域統合とアイデンティティの関係性,特にヨーロッパ統合の深化においてアイデンティティの構築や強化が果たす役割を考察する。経済統合から政治統合へと射程を広げるにつれて,EUにおけるアイデンティティについての施策は,文化的多様性の尊重と同時に,共通のヨーロッパ文化を意識させることが「ヨーロッパ・アイデンティティ」を醸成するものとされ,統合への支持を高めるための政治プロジェクトとして進められてきた。 しかし,ユーロ危機,移民・難民の大量流入,英の離脱決定という困難な状況下,EUへの不満や極右勢力の躍進が著しい。現状で必要とされるのは,EUという地域統合体への帰属がもたらす恩恵の確認と,そのための義務や負荷を負うことへの意思の共有としての「EUアイデンティティ」の強化である。
著者
西岡 美樹
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
no.33, pp.74-98, 2005-03

本稿は,ヒンディー語の名詞句を取り上げ,その中の日本語の格助詞「の」に相当するヒンディー語の属格後置詞'kā'についての用法を分析し,その二重機能性を日本語の「の」と対照しながら明らかにするものである。1.はじめに2.ヒンディー語における名詞句の諸類型 A.名詞 + 名詞 B.名詞 + 属格後置詞/属格代名詞 + 名詞 C.形容詞 + 名詞 D.分詞 + 名詞 E.名詞 + 'vālā' + 名詞 F.斜格名詞句 + 名詞 G.関係詞節 H.同格詞節3.属格後置詞を伴う名詞句の構造と分析 (1)名詞 + 属格後置詞/属格代名詞 + 普通名詞 (2)名詞 + 属格後置詞/属格代名詞 + 動詞派生名詞 (3)名詞 + 属格後置詞/属格代名詞 + 斜格名詞句 + 動詞派生名詞 (4)斜格名詞句 + 属格後置詞 + 名詞 (5)動詞的名詞(不定詞)+ 属格後置詞 + 名詞 (6)独立属格4.属格後置詞'kā'の担う文法機能5.おわりに
著者
井尻 香代子
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.315-331, 2012-03

本稿では,国際ハイクにおいて日本の俳句の主要な要素の一つである季語が,どのように受容されて来たのかを取り上げ,アルゼンチンのスペイン語ハイクの作品分類をベースに考察し た。まず,日本の俳諧の連歌において季語がどのように理解され,発句に用いられたのかについて,芭蕉のことばに着目して検証した。次に,近代俳句における季語観の変化を,無季容認派と有季定型のホトトギス派の両者について概観した。その上で,アルゼンチン・ハイクの季語および通年の語の分類を行い,作品における機能を分析した。その結果,アルゼンチン・ハイクにおける季語および通年のトピックの用法は,近代俳句における季語ではなく,事象の変化に着目する俳諧の季語のそれに近いことが明らかになった。現在の国際ハイクの詩学は,西欧詩がロマン主義と前衛派によって詩的言語の変革を経験した際に受容した,日本の俳諧の連歌の季語観に連なっているのである。
著者
松平 千秋
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学国際言語科学研究所所報 (ISSN:03891739)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.5-18, 1986-03
著者
藤野 敦子
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 = Acta humanistica et scientifica Universitatis Sangio Kyotiensis (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
no.52, pp.37-73, 2019-03

本稿の目的は,若年者が不安定な非正規雇用に就いた場合,家族形成つまり出生意欲にどのような影響があるのかを社会・雇用システムの異なる国際間で比較分析することである。 まず,著者が2008年に日本において,2010年にフランスにおいて実施したインタビュー調査の質的データを大谷尚氏の開発したSteps for Coding and Theorization(SCAT)法によって分析し,そこから仮説を生成する。次に同時期に著者が日本,フランスで実施したアンケート調査の量的データを用いて,仮説を検証する。クロスセクションデータであるため,内生性を考慮しつつ,推定する。このように本稿では,質的・量的データの双方を使用する混合研究法という比較的新しい手法を用いて,これまで,ほとんどされてこなかった国際比較分析を実施する。 量的分析の結果からは,日本の非正規雇用者は男女ともに出生意欲を低めている一方で,フランスでは,非正規雇用のうち有期限雇用フルタイムの男性は,出生意欲が高い可能性が見られるとともに非正規女性に関しては関連性が見受けられず,仮説の通りとなった。 ここから日本において,若年雇用の非正規化は少子化の要因である一方でフランスではそうではない可能性が導かれるが,同時にフランスの制度をヒントに日本でも社会・雇用システムを変革すれば出生の意思決定が変えられることも示唆されている。さらに,本稿の結果からは「非正規・正規の処遇格差の縮小」,「2人以上の子どもがいる世帯への持続的な経済支援」,「育児休業の取得しにくい非正規雇用者への優先的な公的保育サービスの提供の促進」に取り組むべきことが提案される。
著者
高原 秀介
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集 社会科学系列 (ISSN:02879719)
巻号頁・発行日
no.26, pp.157-170, 2009-03

1.「民主化の推進」(1)ラテンアメリカから始動した「民主化の推進」(2)安全保障の観点から重視された「民主化の推進」2.「反帝国主義」(1)世紀転換期のアメリカとウィルソン(2)ウィルソンと「反帝国主義」3.「民族自決主義」(1)「14ヵ条」に見られる「民族自決主義」の真意(2)ウィルソンの「民族自決主義」のあいまいさ4.「単独行動主義」(1)ウィルソン外交に見られる「単独行動主義」おわりに
著者
坂田 吉雄
出版者
京都産業大学
雑誌
産大法学 (ISSN:02863782)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.p146-150, 1980-09
著者
並松 信久
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 社会科学系列 (ISSN:02879719)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.111-127, 2005-03

昭和初期の農業政策に関する研究業績は数多くあるが、官僚の政策意図に関する研究は少ない。本稿では、官僚のなかでも昭和初期の農業政策において活躍し、現在の農業政策に通ずる基盤形成に貢献した石黒忠篤を取り上げる。石黒は農業政策の遂行にあたって二宮尊徳から影響を受けている。石黒は二宮の思想を体現して、戦前期から農村経済更生を強く主張する。戦前期において自力更生が叫ばれていた状況のなかで、農民がどのようにして自活できるのかを模索し続けてきたといえる。自力更生は報徳思想に通ずる側面をもっている。 戦前期には、高橋是清も自力更生を主張する。高橋の自力更生論と実際の財政政策には矛盾があるようにみえるが、問題は高橋が農村窮乏の原因をどのように考えているかにある。高橋は農村窮乏の原因を精神的教養や知識の停滞に求めているが、それ以上の認識はない。したがって、農村救済事業はその目的を達成することが難しく、高橋が期待する自力更生は、観念的な精神作興を求めることになってしまう。 一方、石黒の考え方は高橋と正反対ともいえる。つまり、農業政策の担当者は農業を最もよく理解している人々ではないので、農業に対して最善の政策はできない。したがって政策担当者は、この限界を認識すべきであり、農業の改善には農民の主体性こそが必要であるという。このような認識のもとで、戦前・戦中・戦後を通じて石黒は経済更生ないし自力更生を訴える。そして、この主張の核には、一貫して報徳思想が入り込んでいるが、それは農業政策の限界を指摘したものでもある。
著者
青木 正博
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.153-180, 2013-03

ロシア語のу нас в университете“私たちの大学で”の構文(「у +生格の構文」)とв нашем университете“私たちの大学で”の構文(「生格の構文」)の選択に影響を与える要因 について調べるために,文学作品や会話の教科書の例とインフォーマント調査の回答を分析し た結果,以下のような要因が見つかった。 A)「у +生格の構文」が選択される傾向がある要因: 1)会話の部分 2)場所を表す固有名詞 3)指示代名詞が場所を表す名詞を修飾 B)「生格の構文」が選択される傾向がある要因: 1)性質形容詞が場所を表す名詞を修飾 「動詞が表す動作」,「活動体性の階層」,「関係形容詞が場所を表す名詞を修飾」,「「場 所の所有構文」がテーマ(あるいはレーマ)の部分に入る」という項目は2 つの構文の選 択に影響を与える要因とは認められなかった。 実際の使用においては,「場所の所有構文」は上に挙げた要因の影響を受けずに使われ ことが多く,2 つの構文がともに使われる文脈がかなりの割合で存在すると考えられる。
著者
高橋 純一
出版者
京都産業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

セイヨウミツバチの帰化による在来種ニホンミツバチの影響を調査した。野外での観察実験と人工授精法による種間交雑実験を行ったところ、交雑女王蜂は繁殖様式を雌性単為生殖へと変化していた。両種が生息している地域では、ニホンミツバチの遺伝的多様度は低かった。これらの結果から、ニホンミツバチは種間交雑により単為生殖を行うようになり、遺伝的多様性の低下の原因となっている可能性が示唆された。
著者
三好 準之助
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.1-28, 2013-03

1.『日本語の和らげ表現 ―語用論的試論―』の構成 1.1.第1 章「言語の和らげ表現」について 1.2.第2 章「日本とは?」について 1.3.第3 章「日本語の和らげ表現」について2.日本語の和らげ表現手段について 2.1.ぼんやり型 2.2.遠回り型 2.3.隠れみの型3.拙著の説明原理の検証 3.1.ポライトネス関連の研究について 3.1.1.ポライトネスの普遍性について 3.1.2.発話の姿勢について 3.1.3.発話行動の協調について 3.2.社会構造の特徴と和らげ表現 3.2.1.中根理論について 3.2.2.相手中心主義の解釈 3.2.3.ウチとソトについて 3.3.日本語のポライトネス研究について 3.3.1.配慮表現について 3.3.2.和らげ表現に関連した研究のいくつか 3.3.3.言語行動と和らげ表現4.和らげ表現研究の今後
著者
並松 信久
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
no.46, pp.79-112, 2013-03

比嘉春潮(1883-1977,以下は比嘉)は明治期から昭和期にわたって活動した,沖縄史に関 する研究者である。研究者としてのみでなく,社会主義運動家としても,エスペラント語の普 及者としても知られている。比嘉は沖縄師範学校卒業後,小学校教諭となり校長にもなる。そ して小学校校長を辞したのち,新聞記者,さらに沖縄県吏となっている。1910(明治43)年 の伊波普猷(1876-1947,以下は伊波)との出会いによって,沖縄史に関心をもつ。1923(大 正12)年に上京して出版社の編集者となり,柳田国男(1875-1962,以下は柳田)のもとで民 俗学に関心をもつ。その一方で社会主義運動との関係をもち続ける。 上京後,民俗学を通じて沖縄研究を深めていく。しかし比嘉の場合,民俗学の視点からの 沖縄研究だけではなく,社会主義運動との関連から,社会経済史の視点からの研究も多く みられる。その業績は戦後に数多く出される。この沖縄研究にあたって比嘉は自らを「イン フォーマント」(informant)と語る。しかしながら『比嘉春潮全集』全5 巻(沖縄タイムス社, 1971-1973 年)というぼう大な研究業績から,比嘉が単なるインフォーマントであったとは考 えにくい。これまで比嘉に関する研究成果が出されているものの,多くの先行研究では,伊波 や柳田からの「影響」とされることによって,比嘉のインフォーマントとしての役割と,研究 者としての活動とが,つながりのないものになっている。 本稿ではこの比嘉の活動期を大まかに,(1)脱沖縄の意識と沖縄回帰の二重の矛盾のなかで キリスト教からトルストイズムに傾倒していった時期,(2)1910(明治43)年の伊波との出 会いをきっかけとする沖縄史への関心を深めた時期,(3)社会主義運動の先駆者となった時期, (4)柳田との交流をきっかけに民俗学研究に取り組んだ時期,(5)戦後になって数多くの著作 を発表した時期などに分けた。そしてこれらの活動期にしたがって,比嘉というインフォーマ ントの存在が,沖縄研究にとって重要な役割を果たしたことを明らかにした。比嘉は沖縄固有 の文化や方言などの情報や資料を「客観的」に提供することで,沖縄の歴史を伝える研究者と なった。比嘉はインフォーマントとして沖縄の「個性」を表現した研究者であるといえる。