著者
竹内 実
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

受動喫煙による肺の免疫で重要な肺胞マクロファージの染色体異常への影響について、受動喫煙(タバコ副流煙自動喫煙)設備を作成し、マウスにタバコ副流煙を一定量均一に吸入させたCGH法により染色体異常を検討した。染色体異常は有意に増幅した部位116箇所、欠損した部位169箇所であった。この結果をもとに、変動幅が大きかった上位10箇所のゲノム部位を抽出したところ、有意に増幅したおもなゲノム部位は、chr8のqE1,chrXのqF2,chr6のqG1, chr17のqA3であった。逆に有意に欠損したおもなゲノム部位は、chr3のqE3、chr5のqC3.1、chr13のqB3、chr16のqB3であった。
著者
植松 茂男
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学教職研究紀要 (ISSN:18839509)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.19-42,44, 2011-03
被引用文献数
2

本編では、小学校英語活動を特区として既に導入している大阪府寝屋川市内で、それがどのように中学生の英語スキルと情意面に影響を及ぼしているのかを4 年間継続調査する科研費研究の3 年目の中間報告をする。語彙・文法、リーディング、リスニングからなる英語力指標テストとインタビューテストを併用して英語力を測定するとともに、23 項目からなる情意アンケートも併せて実施し、小学校英語活動の長期的効果の検証を試みている。つまり、小学校英語活動の開始学年や履修時間が変われば英語力や情意にどのような影響を及ぼすのかを、中学1 年生、2 年生、3 年生の各学年で毎年調べることによって知ろうとする研究である。最終年度の2010 年度調査(2011 年3 月)を目前にして、これまでの流れと発見をまとめてみた。2009 年度終了時(2010 年3 月)に得られたデータを2007 年、2008 年分と比較分析した結果、小学校英語活動開始学年が下がり、履修時間が増えるにつれて、中学1 年生では全ての英語力指標テストの結果が向上していることがわかった。また、中学2 年生のみで実施しているスピーキングテストに於いては、そのスコアが毎年統計的有意に向上している。一方、情意面では履修時間にかかわる統計的な差は検出できなかった。
著者
伊藤 琴音 吉永 一行
出版者
京都産業大学
雑誌
高等教育フォーラム (ISSN:21862907)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.39-43, 2013-03

法学部准教授、吉永の担当する1年次春学期開講プレップセミナーでは、2012年度に学期を通じて同じ学部の3回生の学生がスチューデントアシスタント(SA)として1年生をサポートするという試みを行った。 法学部では2013年度秋学期よりSAを育成するための演習授業を開講し、2014年度からプレップセミナーにおいて正式にSAを導入することとしている。そこに向けて本稿は、試験的に行われたSA活動について、具体的な内容、また活動を通じて明らかになった課題について記述したものである。
著者
勝矢 淳雄 藤井 健 河野 勝彦 山岸 博 野村 哲郎 遊磨 正秀
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

上賀茂の住民と協働して北大路魯山人生誕地石碑を建立した。反対者への対応の仕方とその波及効果について多くの知見を得た。京都の特産のミズナがスグキナの作物としての成立に関与した可能性が示せた。ナミテントウは、60年前の結果と比べ、日本全土で暖地に適した二紋型の割合が増えていることを明らかにした。台風域内で、風の左右非対称性を明らかにした。近年の河川改修がアユ産卵場を失う可能性のあることを示唆した。
著者
若松 正志 加茂 正典
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、江戸時代に「神祇管領長上」として全国の神社・神職を支配した吉田神社において、その実務を担当し、また大嘗祭・新嘗祭など朝廷祭祀にも直接関与した、鈴鹿家について、現在ご当主のもとに伝来している資料(以下、鈴鹿家文書とする。文書以外に、絵図・モノもある)の整理・目録化を行い、内容を分析・検討することにより、鈴鹿家文書の史料的位置、吉田神社・鈴鹿家が果たした役割を明らかにすることを目的とした。研究代表者の若松は、数名の研究協力者と、鈴鹿家文書のうち、鈴鹿家の「江戸下り」(毎年2〜3月頃江戸に行き将軍に拝謁)関係史料約2000点と、幕末〜明治期の資料約450点について、整理と調査を行った。中性紙封筒への袋詰めは完了したが、目録化は約1000点にとどまり、残りの作業は今後の課題となった。また、鈴鹿家文書の伝来などについて各地に出張調査を行い、およその状況を把握することができた。研究分担者の加茂は、研究協力者の岡田芳幸と共に、鈴鹿家の宮廷祭祀関係資料について、月1回のペースで所蔵者宅を訪れ、一点毎の資料調書作成とデジタルカメラによる撮影、中性紙封筒への整理・保管という基礎作業を行い、全554点の資料調査を終了させ、「鈴鹿家所蔵大嘗祭・新嘗祭資料目録(第一次)」(平成17年8月。A4判126頁)をまとめた。これにより、かつて鳥越憲三郎・有坂隆道・島田竜雄編『大嘗祭史料 鈴鹿家文書』(柏書房、平成2年)において紹介された96点を大きく超える数の学界初見資料の伝襲が確認され、鈴鹿家宮廷祭祀関係資料(大嘗祭・新嘗祭・神嘗祭など)の全貌が初めて明らかになったのである。また、資料調査にもとづく論考も数編発表した。なお、上記の目録作成後、所蔵者の鈴鹿長雄氏から、加茂の本務校である皇學館大学神道博物館へ同家所蔵資料の寄託申し入れをいただき、平成17年12月、鈴鹿家文書が皇學館大学に寄託された。
著者
所 功
出版者
京都産業大学
雑誌
産大法学 (ISSN:02863782)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.32-67, 2006-07
著者
小林 満
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

絶対王政の理論的な正当化が進んだ16~17世紀、カンパネッラはキリスト教的都市国家を目指し、ブルーノも社会改革に触れたが、両者とも自由に哲学することを禁じられ迫害された。『偽金鑑識官』における原子論もガリレオを異端者と判断する原因となったが、異端審問後には、ガリレオは数学的議論として不可分者と無限について論じているものの、有限の人間の知性は無限を理解できないという慎重な態度も見せた。ガリレオ裁判後、イタリアのガリレオ派には、マガロッティのようにリベルタン的テーマにも取り組んだ者もいたが、マルケッティによるルクレティウスの翻訳は、原子論的性格のために出版を許可されなかった。
著者
野崎 京子
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

平成19年『強制収容とアイデンティティ・シフト:日系二世・三世の「日本」と「アメリカ」』を出版した。平成20年、移民の出身地と受け入れ地(国)との比較分析をテーマにブラジルに出張、沖縄等の出自地を捉えてトランスナショナルに位置する「新日系人」やペルー日系人強制収容などを研究、その成果は平成21年10月、カリフォルニア大(バークレイ校)での招待講演「日本と日系:太平洋環の繋がり」に提示した。
著者
武田 史郎
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、応用一般均衡モデルという手法を利用し、地球温暖化対策の分析をおこなった。特に、1) 既存の研究ではあまり考慮されていなかった不完全競争、規模の経済性の要素を応用一般均衡モデルに導入し、不完全競争や規模の経済性が持つ意味を考慮した形で温暖化対策を分析した、2) 国家間の排出権取引はこれまで多くの研究で分析されているが、国際間でのクレジットメカニズムを応用一般均衡モデルで分析できるようにしたという二つが研究の特徴である。
著者
並松 信久
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.69-101, 2019-03-30

宮沢賢治(1896–1933)は農村活動と信仰に根ざした創作活動を行ない,多くの詩や童話を残した。賢治を対象とする数多くの研究業績は,主に作品を通して芸術と宗教について語られている。それと同時に,賢治の履歴や活動から,農業実践や農村活動にも焦点があてられている。農業に関心をもった知識人は数多くいるが,高等教育機関で農学を学び,農業を実践した知識人は賢治だけであった。しかし,賢治の作品と農業との関係は十分に解明されていない。 本稿は,賢治の作品を通して,賢治が当時の農業や農村をどのようにとらえたのかを考察した。賢治の作品は,自然科学の用語が多く使用されていた。さらに人間が主役となる小説は全く書かれていなかった。物語は自然を対象としたものが多く,そこで描かれる人間もまた動植物の装いを帯びていた。この点で賢治の作品には,農業が色濃く反映されていた。本稿では,著名な詩「雨ニモマケズ」の一節をめぐる解釈に基づいて,「農学の有効性」,「農村問題とその対策」,「農村社会での疎外感」の順に考察した。 賢治の農村活動はほとんど成果を残さなかった。活動はうまくいかなかったために,賢治の悩みや挫折は大きなものであった。しかし,それこそが賢治を創作や信仰へと駆り立てる原動力となった。言い換えると,科学技術に代表される近代性と,血縁や地縁に代表される伝統との葛藤が,賢治の作品を生み出す大きな要因となったといえる。