著者
原口 智和
出版者
佐賀大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

作物生産において水と養分は不可欠な要素であるが,水資源は逼迫し,かつ肥料による水環境の汚染が問題となっている.このような現状に鑑み,灌漑水と肥料の有効利用に資するため,必要最小限の灌漑水と肥料による作物栽培技術を確立すること目的として本研究を行った.作物が必要とする水および養分の量を,1個体あるいは数個体程度の小さなグループ毎に判断し,それらに必要な分のみを与えれば,圃場全体における灌漑水量および施肥量を最小限に抑えることが可能と考える.ここでは,作物生長を妨げない程度(必要最小限)の水分や養分が土壌中に存在しているかどうかを,作物の近赤外線画像から判定することを試みた.実験では,ビニールハウス内において,ワグネルポットにプロッコリおよびキュウリを栽培し,6種のバンドパスフィルター(550,650,680,750,780,800nm)を取り付けたデジタルカメラで葉および個体を撮影してその画像を解析した.土壌水分および養分の異なる条件で栽培した作物体について全体を撮影し,輝度(各波長光線の反射率)の分布と土壌水分・養分欠損との関係を調べた.その結果,葉が全方向に広がっているブロッコリについては,葉による蒸散量(抵抗)の違いは微小であり,また,「近赤外領域(780,800nm)の画像において,土壌水分の欠損によって輝度(対象領域内平均値)が増加する」ことが,個体全体を対象とした解析によって示された.一方,キュウリについては,葉の枚数が少ないため,葉の位置によって蒸散量(抵抗)や光の反射率の差が大きく,個葉を対象とした撮影・解析がふさわしいことが明らかとなった.
著者
岩永 忠康 白武 義治 諸泉 俊介 宮崎 卓朗 西島 博樹 柳 純
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

日本の小売業の経営は現在では大きく変化している。流通外資もその変化を促進している要因の一つである。日本では近年、流通外資の参入が活発化しているが、しかし近隣のアジア諸国ではより早い時期から流通外資が参入していた。これを研究することが日本での流通外資の展開方向を予測するうえで重要であると思われる。台湾での聞き取り調査では、中国と同様に欧米系の小売企業が好調な業績を残していることがわかった。また一方で日本国内とは逆に日系の小売企業が好調であることも明らかとなった。しかしいわゆる欧米系の流通外資と日系の小売企業はでは異なるところが多く、成功の要因は同じではない。現地化と標準化という点でみれば一般に日系の小売企業は標準化を強く指向しており、日本国内での店舗運営やコンセプトを多く台湾に持ち込んでいる。また欧米系の小売企業は取扱商品については現地化を進めており、店舗運営も現地のスタッフに依存することも多く見られる。日系小売企業で低価格業態を持ち込んではいる企業は少なく、またその成功・不成功も現時点では見極められない。しかし欧米系の小売企業は低価格を武器に現地資本の小売企業と直接的な競争を繰り広げている。この違いは母国での競争力の源泉が低価格にあるかどうかということに由来すると思われる点では中国での調査と同様である。つまり日系小売企業は低価格業態ではない形で標準化を基本に進出を果たしていることは確実であり、欧米系小売企業は現地消費者の低価格指向に対応する形で現地化を進めているのである。しかし日本の消費者の嗜好は台湾と比較すると必ずしも低価格のみに向かっているとはいえない。低価格業態の参入が地域の流通構造に与える影響はその意味では限定的で、流通外資の経営不振がそのことを物語っている。
著者
品川 優
出版者
佐賀大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,統計資料および農村調査を通じて,韓国で企業・団体がマウル(集落)と交流し農業・農村の支援活動をおこなう1社1村運動の実践実態とそこでの成果,および問題・課題について明らかにした。2008 年までに1社1村運動は7,309件おこなわれ,全体の経済効果は290億ウォンに及ぶ。こうした一定の成果をあげているが,民間企業が1社1村運動に参加しやすい環境づくりやマウルサイドの意識改革などの問題も抱えていた。
著者
木林 和彦
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では熱中症における脳神経障害に着目し,熱中症の脳内病態を形態学と分子生物学の両方の観点から捉え,熱中症患者の救命に寄与することを目的とする.また,熱中症に特異的な形態学的・生化学的変化を明らかし,法医鑑定の実務への貢献も目的としている.飲酒酌酊は熱中症の一要因であるので,本研究では,熱中症の形態的変化を捉えるために,熱中症とアルコール投与を組み合わせた実験系を検討した.マウスを熱中症マウス,エタノールを腹腔内投与(2g/kg)した熱中症マウス,エタノールを腹腔内投与したマウス及び食塩水を腹腔内投与したマウスの4群に分け,各群5匹とした.熱中症マウスとエタノールを腹腔内投与した熱中症マウスを全身麻酔し,40℃のインキュベータ中に45分間置いて直腸温を42℃とし,続けて37℃のインキュベータ中に15分間置いて直腸温を40℃以上とした.各群のマウスについて,血圧,直腸温度,血液ガス分圧,血液電解質及び血糖を経時的に測定した.各群のマウスを全身麻酔し,リン酸緩衝化パラホルムアルデヒドで灌流固定した.脳組織について多種類の一次抗体を用いたホールマウント免疫組織化学,通常の免疫組織化学,TUNEL法によるアポトーシスの検出を行って脳内細胞の変化の有無を調べた.熱中症マウスは,直腸温が40.6±0.2℃であり,代謝性アシドーシスと呼吸性アルカローシスとなった.エタノール投与した熱中症マウスは,直腸温が41.2±0.2℃であり,代謝性アシドーシスと呼吸不全となった.熱中症マウスは,脳の扁桃体中心核に神経細胞の活性化を示すc-fos陽性神経細胞が増加した.エタノール投与した熱中症マウスは,扁桃体中心核のc-fos陽性神経細胞がさらに増加した.本研究により,熱中症では脳の扁桃体中心核が活性化されることが判明した.また,エタノールは熱中症による扁桃体中心核の活性化を増強することも判った.扁桃体中心核には発熱を促進する役割があり,その活性化は熱中症における高体温と致死の機序に関与していると考えられた.扁桃体中心核の活性化は熱中症の剖検診断での指標となる可能性が示唆された.
著者
北川 慶子 斎場 三十四
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は平成11年度-12年度の2年間の研究であるが、平成11年度においては、佐賀県下における特別養護老人ホーム(特養)と老人保健施設(老健)の要介護高齢者に対し、施設での生活水準と長期ケアへの適応を捉えるために、身体機能(FIM)、QOL(SF-36),生活満足度調査(LSQ)を実施し、施設生活の再評価を行った。特養では、FIMとSF-36の相関は見られず、身体機能は低いがSF-36の値は高く、それはさらに老健よりも高く、生活面を重視したケアが中心の特養の要介護高齢者が身体機能の回復を重視し、家庭復帰を目指す老健よりも適応度が高いという傾向が見られた。平成12年度における研究の重点は、平成12年4月1日から施行された介護保険法に注目し、介護保険施行後再認定の時期(10月)にversion upした調査を特養、老健で実施し、施設における生活水準とと適応について分析することであった。生活水準のLSQの生活部分は「特別養護老人ホーム・老人保健施設のサービス評価基準」に準拠しているため、介護保険前後の両施設における高齢者の調査結果を比較分析することによって生活水準の評価を行うことができた。平成12年の調査では、FIMによる身体機能は特養と老健の格差が縮まり、SF-36によるQOL評価では老健で高得点化傾向が見られた。施設への適応度は、介護保険以前においては特養が高く老健が低いと評価されたが本調査によって、介護保険施行後はそれぞれの特異な差が一段と縮小していくのではないかと推測することができる。それは、老健が長期ケア型にシフトし、長期ケアについては特養との差異が見られなくなりつつあることが大きな要素である。特養のみならず両施設共に、Helsonの「適応レベル説(adoption level theory)」がより顕著に現れてくるのではないかと考えられる。本調査においても適応レベル説が適用できる初期的段階が窺われ、要介護高齢者の施設における長期ケアへの適応は、SF-36、FIMで測定した身体機能以外の要因が強く働いているといるということが分かった。すなわち、HRQOLを規定する要因としてSF-36、FIMの結果はあまり影響を与えず、期間と生活環境がHRQOLを変化させ、従って適応レベルが健康期、要介護期さらに年齢生活環境によって変化してきているものであることが本研究により明らかにされた。生活水準の主要な規定要因は、意思の表明とその受容の程度であり、それは、施設ケアを受ける期間の長短との密接な関連があることも本研究により得られた成果である。
著者
宮脇 博巳
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

遺伝子資源として,現在生物多様性は重要視され,かつて役に立たないと考えられていた生物にも注目されるようになった.しかし,皮肉にも急速に地球上から,不自然な形つまり,人間の活動により急速に絶滅が進んでいる.かつて,汚染源近くでの環境変化についての研究は多くなされたが,近年では人里の地衣類にも急速に異変が現れてきた.しかし,定量的な調査はなく,個々の研究者の体験的な発言が中心であった.今回の奨励金により1983年頃まではLecanora muralisの生存が確認された11箇所のうち,鳥取県若狭町と広島市旧広島大学キャンパス理学部一号館の屋上だけであった.そのうち,活力の指標とされる生殖器官である子器が確認されたのは後者だけであった.広島市以外は,近くに汚染源がなかった.一方,1945年の原爆投下にも耐えた広島大大学旧理学部1号館に大量のサンプルが採集されたのは,予想外であった.赤レンガ上ではなく,赤レンガを埋める戦前のセメントに限って生育している点は興味が持たれた.一方,共生菌の胞子発芽様式も研究した.基礎的なデータを蓄積し,分類群ごとに発芽様式に共通性があることが判明した.推察の段階であるが,この約20年間の間に大陸からの酸性雨等の影響により全国的に人里の地衣類であるLecanora muralisの生育が減少した.一方,旧式のセメントの上は,pHなど何らかの原因で共生菌の発芽を助長している仮説を得るまでにとどまった.
著者
岩本 諭
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

商品購入に併せて提供されるポイントは、EU・ドイツの競争法では「景品」として扱われ、ポイント提供は、「抱き合わせ取引」に該当する。2010年の欧州裁判所判決は、ポイント提供型抱き合わせを「公正競争・取引」の観点から原則自由とした。「自由競争」の観点からはポイント提供型抱き合わせが市場に与える競争制限効果が問題となる。日本では景表法の景品規制、独禁法の不公正な取引方法(一般指定9項)の規制枠組が考えられる。また、ポイントサービスの会計ルールを定める予定の国際会計基準の動向が注視される。
著者
安田 加代子 古賀 明美 佐藤 和子 檜垣 靖樹 山地 洋子 黒木 智子 川上 千普美
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

虚血性心疾患患者の自己管理行動の継続支援として、携帯型の測定機器(ライフコーダEX)を用いた身体活動に伴う心負荷の程度等を調査した。対象者の多くが軽度の運動(Mets≦3)であり、1日あたりの歩数の平均は6764.5±3521.0歩、運動量の平均は161.5±100.9kcalであった。息苦しさや動悸などの自覚症状のあった人ほど軽い運動であることが多く、基礎疾患に虚血性心疾患がない人よりも、虚血性心疾患を有する患者のほうが1日あたりの歩数が多かった(P<0.05)。自覚症状の出現頻度とQOLには有意な関連性を認めなかった。
著者
兒玉 浩明 長田 聡史
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

好中球活性化ペプチドの二量体アナログの開発を目的に、受容体の2つのサブタイプに選択的なアゴニスト及びアンタゴニストの二量体を合成した。合成した二量体アゴニストは、2つのペプチド間の距離が短いほど高い生物活性を示した。また、ヘテロ膜貫通ペプチドとして、3つのFPR サブタイプの第4 膜貫通ドメインをヘテロに架橋した。好中球の活性酸素放出能で評価したところ、活性酸素産生をプライミングすることを見いだした。
著者
平川 奈緒美 森本 正敏 垣内 好信 笹栗 智子 石川 亜佐子 杳川 嘉彦 鳥飼 亜利寿 十時 忠秀
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

複合性局所疼痛症候群(CRPS)患者における交感神経機能の関与特にα2アドレナリン受容体の関与について
著者
室 雅巳 庄野 秀明 庄野 真由美
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

(1).正期単胎妊娠の胎児心拍数基線における周期性を明らかにする目的で、合併症のない37〜39週の正常妊娠9症例を対象に3日間の連続胎児心拍数(FHR)収録を行った。得られたFHRデータから10分間の区画毎に胎児心拍数基線(FHRB)を同定、各症例毎に最大エントロピー法によって得られたピークスペクトルからFHRBの時系列データに内在するリズムの周期を抽出し、あてはめ曲線を描出した。得られた曲線の日内変動最低点および最高点を示す時刻を各症例毎に求め各々の分布について検討した。その結果、正常正期妊娠におけるFHRBの日内変動は約24時間と約12時間の周期のリズムをベースに持ち、更に各個体の状況や環境因子に伴う種々のリズムが複合され、その表現型が形成されていると考えられた。(2).双胎間の胎児基準心拍数(BFHR)の日内変動位相の同期性と位相差を解析し、一絨毛膜二羊膜性双胎(MD)と二絨毛膜二羊膜性双胎(DD)の特徴を抽出する目的で、妊娠35〜37週の双胎妊娠15例(MD7例、DD8例)に対して24時間双胎心拍数同時収録を施行。収録したデータから症例毎に各々の双胎のBFHRを5分毎に同定し1時間毎の平均値を算出、各胎児のBFHRの日内変動の有無を検定した(ANOVA)。各症例で双胎間のBFHR日内変動位相差を求めるために第1子のBFHR日内変動に対して第2子の日内変動位相を-3〜+3時間の間で1時間づつ移動させた場合の両者間の相関係数をそれぞれ算出。最大Rを示す位相差を症例毎に求め、膜性による特徴を比較した。その結果全ての双胎両児のBFHRに有意な日内変動を認めた(p<0.01)。双胎BFHR間に全症例で有意な相関が認められ、MD、DDの平均最大Rの間に有意差は認められなかった。DDでは8例全てでBFHR日内変動の位相が完全に同期していた。一方、MDでは7例中3例でBFHR日内変動位相は同期していたが3例で第2子が1時間先進、1例で第1子が3時間先進しており日内変動に位相差を示す症例が認められた。以上より双胎間のBFHR日内変動はMD、DD共に高い相関を示すが、DDでは完全に位相が同期しているのに対してMDでは位相差が認められる症例が存在する。MDでは胎盤内血管吻合等による双胎間の循環動態の差異から胎児日内変動に関連する母体因子の移行に不均衡が生じる可能性があると考えられた。
著者
宮崎 義之
出版者
佐賀大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

サイトカインは免疫制御を司り、自己免疫疾患やアレルギー性疾患の病態形成においても重要な役割を果たす。「WSX-1」は、インターロイキンー12受容体(IL-12R)ファミリーに属し、IL-27Rとして機能することが示されている。我々は、IL-27/IL-27R(WSX-1)が、「Th1分化の誘導」もしくは「炎症応答の抑制」と言う2つの異なる免疫制御に関わることを明らかにしており、本研究課題では、アレルギー性疾患の病態形成における役割を解析した。平成17年度は、気管支喘息や遅延型過敏反応などのモデル試験で、IL-27Rがそれらアレルギー性疾患の抑制に関わることを明らかにした。そこで平成18年度は、アレルギー性鼻炎についてさらに検討を進めた。WSX-1欠損マウスでは、抗原特異的lgEの血中レベルおよび頸部リンパ節のTh2サイトカイン産生に更新を認め、全身的所見についてはIL-27Rが抑制的に作用することが示唆された。しかし、抗原暴露に伴う鼻症状(くしゃみや鼻擦り行動)や鼻咽頭関連リンパ組織(NALT)紬胞のサイトカイン産生などの局所応答はWSX-1欠損により軽減され、IL-27/IL-27Rが喘息と鼻炎で異なる病態制御を担うことが明らかとなった(ケモカイン藤生への影響など、機構解析を進めている)。また、喘息治療におけるIL-27の有効性を検証するために、IL-27を高発現するTgマウス(C57BL/6系)を用いてモデル試験を行ったが、喘息の症状が弱く、改善効果の判定が困難であった。現在、喘息モデルで汎用されるBALB/c系への戻し交配を行っている。さらに、IL-27Rによる炎症抑制機構を明らかにするために、炎症誘導に関わるIL-17について並行して解析を行う中で、IL-17がTrypanosoma cruzi原虫感染に対する効率的防御に働くことを明らかにした。
著者
今井 康貴 永田 修一 豊田 和隆
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,高い精度を有する,渦法による浮体構造物の非線形波浪中挙動解析法の開発を目的に,自由表面下で振動する2次元没水平板の問題に,Random-Wal k法およびCore-Spreading法に基づく渦法計算を適用し,平板に作用する流体力について検討を行った.その結果,Core-Spreading法および物体近傍での渦層モデルを用いることで,これまでの波浪問題に適用されてきたRandom-Walk法に基づく手法より実験結果と近い結果が得られた.
著者
宮本 比呂志
出版者
佐賀大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

今年度は歯性感染症患者10例の排膿を用い、遺伝子法と培養法で検出菌の比較を行った。唾液の菌叢解析には、基礎疾患がなく口腔内に疾患のない健常者10名の唾液を用いた。歯性感染症患者の排膿は、滅菌スワプもしくは穿刺吸引で膿汁を採取した。培養法には4種の培地(羊血液寒天,BTB,チョコレート寒天,ブルセラ半流動)を使用し、37℃,好気および嫌気条件で培養した。一方、遺伝子法は試料からDNAを抽出し,16S ribosomal RNA遺伝子の一部(約580b p)をPCR法で増幅した。得られたPCR産物を大腸菌にクローニングした後,塩基配列を決定した。決定した配列はBLASTを用いて相同性検索を行い,菌種を同定した。健常者の唾液はすべての被験者においてStreptococcus属が最も多く検出された。優占菌は、個人差はあるもののStreptococcus属,Neisseria属,Actinomyces属,Granulicatella属,Gemella属,Prevotella属であった。排膿では、培養法と遺伝子法とで検出菌が一致したのは10症例中1症例のみであった。培養法では10症例中4症例において起炎菌が同定できなかったが、遺伝子法ではすべての症例において起炎菌が推測できた。遺伝子法は、従来の培養法では検出困難とされるVBN菌も含めた試料中の細菌叢を網羅的にかつ短時間で検出可能であった。本研究で開発した方法が、口腔内という常在菌が多数存在する中から起炎菌を同定する際に有効であり、口腔常在菌の変動解析に十分使用できることが確認された。生活習慣病のリスクアセスメントツールが確立できた。
著者
渡辺 義明 只木 進一 渡辺 健次 江藤 博文 大谷 誠
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、佐賀大学で開発しキャンパス全域で運用しているネットワーク利用者認証システムOpengateを基に、改良を行った。1.IPアドレスに基づいてネットワークの開放と閉鎖を行っているため、IPv6通信に対応するには、利用端末のIPv4とIPv6との両アドレスを検知する必要があったが、これを実現する仕組みを工夫してIPv4/IPv6両対応とした。2.利便性と安定性の向上のために数多くの改訂を行った。例えば、XML形式の設定ファイルで統一的に制御できるようにした。また特別な設定を必要とする利用者に対する別設定ができるようにした。さらに汎用な及びセキュアな認証プロトコルも利用できるようにした。3.従来は利用終了の即時検知を実現するためにJavaAppletを利用していた。しかしJavaVMが標準実装から外れるようになったため、JavaScriptがAjax処理を繰り返してサーバとの間にTCPコネクションを維持する方式を考案し実装した。4.Java Servlet環境を利用してOpengateと同様な基本機能を実装した。結果として充分に代替できるシステムとなりうることが分かった。実運用システムの実現は今後の課題である。5.開発システムをオープンソースプログラムとして公開した。また導入利用者や開発協力者の利便性を図るため、プロジェクトをSourceForge.netに登録した。国内外に導入事例が広がっている。
著者
Menzel Barbara
出版者
佐賀大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02867567)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.131-141, 1996-09
著者
森 善宣
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

米国、中国、ロシアで公開された資料を丹念に収集した結果、朝鮮戦争(1950年6月)の開戦に至る経緯と開戦後の韓国と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)での政治・経済・社会的な変化を把握する上で、大別して5点に要約できる研究成果を挙げることができた。1.朝鮮の解放(45年8月)から南北分断体制の樹立(48年8〜9月)を経て朝鮮戦争に至る経緯を米ソ両国の朝鮮政策との関係で再整理する中で、北朝鮮による開戦の試図は当時の首相だった金日成が朝鮮共産主義運動の主導権を喪失したのを挽回しようとするところにあった点を明らかにできた。2.朝鮮戦争の開戦経緯と開戦後に起きた金日成による朝鮮労働党内の粛清とを連続的かつ論理整合的に説明できる北朝鮮内の内部矛盾の展開という仮説が正しいことを確認できた。朝鮮統一の戦略と朝鮮労働党内の権力闘争が結び付いた金日成と副首相兼外相の朴憲永との暗闘が矛盾の根源だった。3.朝鮮戦争の渦中から「対立の相互依存」構造と研究代表者が呼ぶ朝鮮分断の状態がどのように形成されたのかを実証的に明らかにできた。同族殺し合う戦争を経る中で南北朝鮮の国内に冷戦の論理を取り入れ、国内の政敵を軍事境界線の向こうの敵と同一視することで権力維持を図るようになった。4.これらの研究成果を得るために行った資料調査の中で、米国ならびに中国から公開されている資料をほぼ漏らすことなく収集でき、またロシア資料の所在と公開状況を把握できた。米国立記録保管所(National Archives II in College Park City)、北京の中国共産党直属の梢案館、モスクワに散在する記録保管所である。5.中国に亡命中の元文化宣伝副相だった金鋼氏など北朝鮮の比較的に高位の人物にインタヴューすると共に、彼らの所持する希少な資料を入手する約束を取り付けた。同時に世界各国にいる朝鮮戦争研究者との接触を通じて、今後の情報収集に道筋をつけることにも成功した。
著者
高島 千鶴
出版者
佐賀大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,炭酸水素塩泉,硫黄泉および含マンガン鉱泉で生じる堆積物に焦点を当て,水-鉱物-微生物相互作用についての研究を行った.炭酸塩堆積物(トラバーチン)については流速と堆積物組織と微生物の分布との関係について明らかにした.鉄酸化物については微小電極を用いて堆積物表面でシアノバクテリアの代謝活動を確認し,硫黄泉では硫黄酸化細菌の代謝による水質変化を認識した.さらに,鉱泉中のマンガンの起源を特定し,そこで生じるマンガン酸化物の沈殿に微生物の関与を認定した.
著者
松山 郁夫
出版者
佐賀大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

質問紙調査により、特別養護老人ホームの介護職員における認知症高齢者のコミュニケーション等の状態に対する認識を検討した。独自の質問項目からなる質問紙による調査の結果、346人の有効回答について俳徊の有無別に実施した因子分析の結果、「身体」「不適応」「コミュニケーション」「表現」の4因子から構成され、4因子各々の項目は同一であった。また、因子スコアを使用して各因子間の相関係数を算出すると各因子間において相関が認められた。このため、俳徊の有無に関わらず、介護職員は認知症高齢者の状態を「身体」「不適応」「コミュニケーション」「表現」の視点から捉えていると考察した。また、昨年度に引き続き、太田ステージの評価方法であるLDT-R(言語解読能力テスト改訂版)を用いて、89人の認知症高齢者の表象能力を段階別に分類できるのかを検討した。認知症高齢者の表象能力は、LDT-Rによって認知発達の低い順から段階別に分類できたため、太田ステージによる評価は認知症高齢者の表象能力を段階別に示していると推察した。認知症高齢者の表象能力を評価できれば、理解できるコミュニケーション方法を見出すことが可能になり、援助者との間にコミュニケーションが成立し、認知症高齢者の安定した生活につながると考えた。さらに、認知症の進行で表象能力や言語能力が低下し、物事への興味・関心が薄れることも考慮して、表象能力の段階が低いものには視覚的手がかりがあるパズル、高いものにはカルタを使ったレクリエーションを行った。各々集中して一定時間取り組むことができ、介護職員や利用者とのコミュニケーションをとることが増えたため、意欲的な生活につながっていると推察した。