著者
宮原 晃義 谷口 慎 森地 敏樹
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.184-188, 1999-08-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
11
被引用文献数
2

食肉の比熱は,水分,脂肪およびそれ以外の成分に影響される.示差走査熱量計を用いて,ゼラチン,寒天,脂肪酸および食肉(牛肉,豚肉,鶏肉)の比熱を0~100°Cの温度範囲で測定した.水分の影響をみると,酸化アルミナでCP=0.04x+0.50(Cp:30°Cでの比熱,X:水分%)の関係があった.ゼラチンと寒天を用いて比較すると,乾燥品の比熱(10~100°Cの範囲の平均値)はそれぞれ1.49,1.37kJ/kg•Kであり,水分92%を加えるとそれぞれ3.53,3.46 kJ/kg•Kとなり,ほぼ同程度の影響が確認された.ウシ,ブタ,ニワトリの脂肪の主成分であるC16:0, C18:0, C18:1, C18:2脂肪酸の比熱は融解潜熱により,融点付近で高くなった.また4者の等量混合物では5°Cと60°C付近の比熱がやや高い値を示した.牛肉,豚肉,鶏肉の10~100°Cの範囲の比熱を比較すると,赤肉では畜種による差はほとんど認められず,温度上昇に伴って,約0.5kJ/kg•Kの直線的な温度依存性が見いだされた.ウシ,ブタ,ニワトリの脂肪の比熱は,いずれも融点付近で高い値を示した.そのため,脂肪含量の高い試料ほど畜種による比熱の差が明瞭になり,牛肉と豚肉では35°C付近で比熱の上昇が認められた.
著者
佐藤 衆介
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.978-982, 1992-09-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
7
被引用文献数
2
著者
吉子 裕二 楠原 征治 石田 一夫
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.123-130, 1987-02-25 (Released:2010-11-26)
参考文献数
21

軟卵産生鶏の大腿骨における骨髄骨の組織学的態度を卵が子宮部に存在する時期について調べ, 正常卵産生鶏の骨髄骨と比較検討した.軟卵産生鶏の骨髄骨は正常卵産生鶏に比べ, 骨髄腔内に過度に形成されていた. これらの骨髄骨は幅が厚く, 基質には不規則に轡曲した層板構造が観察され, 基質内部に埋没する骨小腔の一部は拡張し, 空胞化していた.軟卵産生鶏における骨髄骨の基質組成は, 組織化学的観察によると, 正常卵産生鶏とは逆にコラーゲン線維が多く, 酸性粘液多糖類は少なかった. また, コンタクトミクロラジオグラフィによると, これ骨髄骨は高度に石灰化していた.軟卵産生鶏の骨髄骨表面に出現する破骨細胞は正常卵産生鶏に比べ, 数が少なくまた萎縮したものが多かった. これらの破骨細胞は酸性ホスファターゼおよびコハク酸脱水素酵素活性が弱い傾向を示した.これらのことから, 軟卵産生鶏の骨髄骨では卵殻形成に必要なカルシウムの放出が不活発であることがうかがわれた.
著者
加藤 大樹 高橋 絢子 松本 大和 笹崎 晋史 高橋 絢子 松本 大和 野村 こう 高橋 幸水 天野 卓 山本 義雄 並河 鷹夫 万年 英之
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.149-155, 2013-05-25
参考文献数
17

バングラデシュ在来ヤギ53個体とフィリピン在来ヤギ30個体におけるmtDNA D-loop HVI領域の塩基配列を決定し,DNAデータバンクにあるアジア在来ヤギの情報を加え,A,Bハプログループの起源について考察を行った.バングラデシュとフィリピン在来ヤギではそれぞれ25および5ハプロタイプに分類され,AおよびBハプログループから構成されていた.両国の在来ヤギのBハプログループにおける塩基置換率は,それぞれ0.0009と0.0006であり,極めて低い多様性を示した.また家畜化起源を推測するため,中東からの地理的距離と塩基置換率の相関を調べた.Aハプログループにおける順位相関係数は<I>r</I>=-0.7200であり有意な負の相関を示した(<I>p</I>=0.0469).一方,Bハプログループにおいては有意な相関を得られなかった(<I>p</I>=0.7782).この結果は,ヤギのAハプログループの起源が中東である仮説を支持していたが,Bハプログループの起源に関しては不明確であった.
著者
中橋 良信 丸山 新 関 晋司 日高 智 口田 圭吾
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.441-446, 2007-11-25 (Released:2008-05-25)
参考文献数
11
被引用文献数
8 3

画像解析によりロース芯内脂肪交雑の断面部位による変化について調査するために,黒毛和種去勢牛12頭のロース芯をスライスし,画像解析を行った.第6~7胸椎から第10~11胸椎までを2 cm間隔でスライスし,12枚のスライス肉を得た(リブロース).また,第10~11胸椎から23~28枚のスライス肉を得た(サーロイン).ミラー型枝肉撮影装置を用いて各スライスの高精細デジタル画像を得た.画像解析ソフト(Beef Analyzer II)により,各スライスにおけるロース芯面積,脂肪面積割合,小ザシ数,小ザシ指数,全体あらさ指数,最大あらさ指数,慣性主軸短径長径比,ロース芯複雑度の8形質を求めた.また,第6~7切開面,サーロインの第1面,ロース芯終端面それぞれの画像解析形質と,全スライス平均との相関係数を求め,どの面がロース芯をより代表するか調査した.ロース芯の形状はリブロースからサーロインに進むにつれて細長くなった.脂肪面積割合は尾側に向かうにつれリブロースでは減少し,サーロインでは増加した.脂肪交雑のあらさは尾側に向かうにつれあらくなった.最大あらさ指数が高くなる特定の部位は存在せず,大きな粒子は突発的に発生することが示唆された.第6~7切開面と全スライス平均との相関係数は脂肪面積割合を除く形質でr=0.15~0.61の範囲にあった.それに対しサーロインの第1面と全スライス平均とのそれは,最大あらさ指数を除く形質でr=0.68~0.92の範囲にあった.個体によって第6~7切開面のロース芯における脂肪交雑の状態と,サーロインにおけるそれに差が存在する場合が確認されたため,詳細に肉質を調査する場合,第10~11胸椎の切開面の脂肪交雑の状態を追加情報とする必要性が示唆された.
著者
田先 威和夫 茗荷 澄
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.153-158, 1964-06-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
4

黄色とうもろこしを54%含む産卵用配合飼料と,とうもろこしの全量または半量をマイロに置換した飼料を用いて産卵鶏を飼育し,体重,斃死,産卵率,卵重,飼料要求率および卵黄色について調査した.その結果,体重,斃死の状況および卵重については両飼料間に差異はみとめられなかつた.産卵率および産卵に対する飼料要求率においても,統計上明らかな差異は求められなかつたが,全期間を通じてマイロはとうもろこしに劣るように観察された.しかも,とうもろこし飼料をマイロ飼料に変更することにより産卵率は低下し,逆にマイロ飼料をとうもろこし飼料に置換することにより産卵率が向上することから,実用上とうもろこしはマイロよりも優れた産卵用穀物飼料であると考えられる.なおマイロの産卵率を底下させる原因がさらに明らかにされれば,マイロの産卵用飼料に利用される可能性や,とうもろこしに代替し得る量的比率の決定も明らかにされよう.マイロ飼料を与えた鶏の卵黄は,黄色とうもろこし飼料を与えたものよりも黄色度が淡いことが観察された.これはアルファルファミールや, β-apo-8'-carotenoicacid ethylester (β-caroteneの一誘導体)の添加により改善されるが,しかし黄色とうもろこし給与時の卵黄色に完全に復することはなく,卵黄着色効果に対する黄色とうもろこしの優秀性が確認された.

2 0 0 0 OA 畜産経営学

著者
松岡 忠一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2-4, pp.39-40, 1954 (Released:2008-03-10)
参考文献数
8
著者
蔡 義民 増田 信義 藤田 泰仁 河本 英憲 安藤 貞
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.536-541, 2001-10-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1 14

低未利用飼料資源を有効に利用するため,容易に流通できるポリドラムサイロを用い,食品産業廃棄物である茶飲料残渣の飼料調製•貯蔵技術を検討した.茶飲料生産工場から排出された緑茶飲料残渣には乳酸菌は検出されず,好気性細菌および酵母が高い菌数で分布していた.茶飲料残渣に含まれるグルコースなどの可溶性炭水化物(WSC)がきわめて少ないため,飼料作物のようなサイレージ発酵が出来なかった.飼料作物から分離された乳酸菌株Lactobacillus plantarum FG1または市販乳酸菌剤Lactobacillus rhamnosus SN1とAcremonium属菌由来のアクレモニウムセルラーゼを添加して茶飲料残渣サイレージを調製した.乳酸菌とセルラーゼを添加した茶飲料残渣サイレージはpH値が低く,乳酸含量が高い良質なものが調製され,125日間の貯蔵中に変敗しなかった.また,茶飲料残渣サイレージにはタンパク質,機能性成分であるカテキン類,カロチンおよびビタミンEなどが豊富に含まれた.
著者
渡辺 晴彦 宮崎 昭 川島 良治
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.706-712, 1975-12-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
18

肥育牛に尿素を含む飼料を与えたとき,尿石症の発生が少ない傾向のあることが観察されている.そこで尿石症に対する尿素の作用を確かめるために,めん羊を用いて尿素給与時の水分代謝と尿中ミネラル濃度を検討した.めん羊6頭を2区(だいずたん白質区と尿素区)に分け,予備期14日間,試験期10日間よりなる2期について,ラテン方格法による試験を行った.試験期間中には飲水量,尿量,糞中水分量,尿のpH,尿の浸透圧,血液のヘマトクリット値,尿中のCa, MgおよびP濃度を測定し,その結果を分散分析した.その結果,試験の時期間に有意差(P〈.01)を認めたが,尿素給与の影響のみを調べたところ,代謝体重当たりの尿量は尿素給与時に31%増加し(P〈.05),飲水量は17%増加した.一方,糞中水分量,尿の浸透圧,血液のヘマトクリット値,尿のpH,尿中のCaおよびP濃度には尿素給与による影響はみられなかった.しかし尿中のMg濃度は尿素給与時にやや低かった.そのため,尿素の給与は飲水量と尿量を増加させることによって尿石症の発生を予防するのではないかと思われた.なお,本試験ではめん羊の代謝体重当たりの飲水量と尿量との間には,r=0.931という高い正の相関を認めた.
著者
広岡 博之
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.1-13, 2023-02-25 (Released:2023-03-29)
参考文献数
104

本総説では,主として食用にコオロギ,飼料用にアメリカミズアブの幼虫,機能性成分を期待してシロアリについて幅広い視点からこれまでの関連研究を概観し,今後の課題について検討した.コオロギとアメリカミズアブの幼虫の生産は,家畜生産と比べて飼料効率が高く,温室効果ガスの排出量が低いものの,飼育環境の温度調整のためエネルギーの利用性において劣ることが報告されている.昆虫の家畜化,機能性,ウェルフェアや生命倫理,消費者の受容性についても先行研究を紹介した.コオロギやアメリカミズアブの大量生産のための育種改良には,家畜やそのモデル動物としての昆虫の育種改良に関する研究蓄積が,また飼育管理には家畜の飼養標準策定のための研究手法が役に立つと考えられた.一方,シロアリについては,飼育環境下での増産に成功し,さらに人の健康に関連する機能性成分が発見できれば,その利用価値は大いに高まると期待できる.
著者
額爾敦 巴雅爾 西田 武弘 松山 裕城 細田 謙次 塩谷 繁
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.295-301, 2005 (Released:2006-08-16)
参考文献数
27
被引用文献数
10 5

混合飼料(TMR)中の緑茶飲料製造残渣サイレージ(TGS)配合割合の違いが泌乳牛の飼料摂取量,ルーメン発酵および乳生産に及ぼす影響を調べた.ホルスタイン種泌乳牛4頭を用い,TMR中TGSを乾物比で0,5,10および15%配合とするTGS0,TGS5,TGS10およびTGS15の4区を設け,4×4ラテン方格法による飼養試験を実施した.乾物摂取量は,TGS0に比べTGS5で変化がなかったものの,TGS10で減少する傾向にあり,TGS15で有意に減少した(P<0.05).乳量は,TGS0とTGS5に比べTGS15で有意に低下した(P<0.01).乳タンパク質率と乳脂率は,4区間に差はなかったが,乳糖率は,TGS15で有意に低かった(P<0.05).ルーメン内容液のpHおよび総VFA濃度に区間差はなかったが,プロピオン酸のモル比率はTGS15で,アンモニア態窒素濃度はTGS10とTGS15でそれぞれ有意に低かった(P<0.05).以上の結果から,TGSは,乳量30kg程度の泌乳牛用TMRの素材として利用でき,乾物比5%程度の配合であれば乳量,乳成分に影響しないと考えられた.
著者
松山 裕城 堀口 健一 高橋 敏能 萱場 猛夫 石田 元彦 西田 武弘 細田 謙次 朴 雄烈
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.395-404, 2004 (Released:2006-07-26)
参考文献数
37
被引用文献数
2 2

第一胃刺激用具(RF)の投与およびサイレージ調製したビール粕の給与が,圧ペン大麦主体の濃厚飼料多給与条件下の去勢牛から発生するメタンに及ぼす影響について検討した.供試動物は,ホルスタイン種去勢雄牛4頭(平均体重698kg),給与飼料は,チモシー乾草(TH),ビール粕サイレージ(BS),圧ペン大麦および大豆粕を用いた.給与量は,代謝エネルギー換算で維持要求量とした.処理は,TH配合の飼料とBS配合の飼料のRF無投与処理,それぞれの飼料給与時にRFを1頭あたり3個ずつ,経口的に第一胃へ投与したRF投与処理の合計4処理とした.その結果は,以下の通りであった.1)乾物の消化率は,BS配合の飼料給与時がTH配合の飼料給与時に比べて有意に低く(P<0.01),RFを投与することでは有意に高くなった(P<0.05).2)一日可消化有機物1kg摂取量あたりのメタン発生量は,飼料間に差がなかったが,RFの投与では有意に減少した(P<0.01).3)第一胃内容液のpHは,いずれの処理においても差がなかった.プロトゾア数は,飼料間に差がなかったが,RFの投与では有意に減少した(P<0.05).4)液相部と固相部の第一胃通過速度は,RFを投与すると有意に高まった(P<0.05).これらの結果から,圧ペン大麦主体の濃厚飼料多給与条件下の去勢牛から発生するメタンは,BS配合の飼料を給与しても影響がなかったが,RFを投与すると消化率を低下させることなく,メタン発生量を抑制することが可能であった.
著者
岡野 彰 島田 和宏 居在家 義昭 大石 孝雄
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.458-464, 1984-07-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

昭和13年から57年までの45年間に農林水産省中国農業試験場畜産部で飼養されていた黒毛和種雌牛221頭の計1167回の妊娠例について,初産年齢と各産次別の繁殖性を調べ,あわせて生涯にわたる生産性について検討した.分娩後の発情回帰日数および空胎日数はそれぞれ平均67.7日および125.5日であった.全産次を通してみた平均分娩間隔は,417.5日であった.流産と死産の発生は,ほとんどの妊娠回次に認められ,その発生率は5.3%であった.流産と死産後の発情回帰日数は平均47.9日,また空胎日数は平均132.8日であり,発情回帰日数については,正常分娩後の日数に比べて有意に短かった.初産および最終産年齢は,それぞれ平均2.53および8.15歳であり,平均生涯産子数は5.4頭であった、しかし,初産年齢が2.01~3.00歳の雌牛は,2.00歳以下および3.01歳以上の雌牛に比べ,生涯産子数が多く,繁殖供用年数の長い傾向が認められた.調査対象雌牛の最高産次は,15産であったが,5産後までに51%,8産後までに83%の雌牛が死亡するか淘汰された.淘汰された調査対象雌牛のうち76%はなんらかの繁殖障害が原因であった.以上のことから,黒毛和種雌牛の適切な繁殖供用開始月齢はおよそ15~20ヵ月齢であり,一方淘汰とその年齢を考えあわせると,雌牛の繁殖供用限界は,7~8産を得る9~10歳が目安であると考えられた.
著者
入江 正和
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.1-16, 2021-02-25 (Released:2021-04-03)
参考文献数
146
被引用文献数
9 3

和牛では脂肪交雑の改良が進み,脂肪質が注目されようになり,食味に対する研究も進んできたためとりまとめた.和牛脂肪はオレイン酸など一価不飽和脂肪酸含量が高く,融点が低い.脂肪質評価法ではわが国の食肉市場において非破壊で迅速な携帯型近赤外光ファイバ法の応用が進み,和牛の育種改良や銘柄化に応用されている.官能検査では和牛やWagyu肉は,多汁性,やわらかさ,風味の全ての食味性で優れ,消費者の嗜好性も高い.脂肪融点の低さは,舌触りの良さと多汁性の高さに関係する.遊離したオレイン酸,リノール酸は舌に脂肪味を感じさせる第六の呈味物質として注目され,甘味,うま味も刺激する.多価不飽和脂肪酸は酸化臭の原因になる一方で,遊離一価不飽和脂肪酸と共に,甘い香りのラクトンや脂っぽい香りのアルデヒド等の前駆物質となる.以上から和牛肉で脂肪質は,食感,多汁性,風味のすべての食味性に影響する重要な形質である.
著者
長嶋 比呂志
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.63-64, 2010-02-25 (Released:2010-08-25)
参考文献数
9

クローン動物および動物クローニング技術は,医学研究や医療技術の開発に革新的な進歩をもたらすことができる.特に近年,大型動物であるブタを用いたトランスレーショナル・リサーチ(橋渡し研究)の必要性が認識されるようになったことを背景として,拒絶反応のない臓器・組織移植系(syngeneic移植系)の創出,病態モデル動物の作出,異種移植臓器ドナーブタの開発,さらに動物工場による有用タンパク・細胞・組織の生産など,クローンブタの医学研究・医療への応用が活発に進められている.
著者
鳥居 伸一郎 松井 徹
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.131-138, 2011-05-25 (Released:2011-11-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

日本国内の290戸の黒毛和種繁殖農場において妊娠末期の繁殖雌牛に給与されていた飼料の,マンガン・鉄・コバルト・銅・亜鉛・モリブデンの含量を測定した.日本飼養標準で示される要求量の適正値を下回る飼料を与えていた農場の割合は,銅で53.4%,亜鉛で14.1%であり,銅では北海道が九州沖縄に対して,亜鉛では北海道が東北および九州沖縄に対して,有意に割合が高かった.鉄含量が摂取許容限界を超えた飼料が,4.1%の農場でみられた.調査農場の平均分娩間隔と,飼料の元素含量との関連を検討した.北海道は東北と九州沖縄のいずれに対しても有意に分娩間隔が短かった.北海道,東北,九州沖縄の地方別に行った単回帰分析で,有意な回帰が認められたのは,九州沖縄のマンガン・鉄・銅であり,回帰直線の傾きはいずれも負の値であった.すなわち,九州沖縄では,マンガン・鉄・銅のいずれかの含量が高い飼料を与えている農場で分娩間隔が短いことが示された.北海道と東北では,いずれの元素の飼料中含量も平均分娩間隔との間に有意な回帰が認められなかった.
著者
長坂 侑里 中堀 祐香 阿部 隼人 中川 智史 山口 諭 馬場 俊見 川上 純平 山崎 武志 萩谷 功一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.5-13, 2022-02-25 (Released:2022-03-25)
参考文献数
21

本研究はタイストール(TS,126,492頭),フリーストール(FS,88,851頭)および放牧主体(GZ,3,989頭)において,ホルスタイン雌牛の体型形質と在群期間(HL)の関係を調査した.データは1993から2008年の間に初産分娩した雌牛の体型審査記録から初産次の体型6形質(肢蹄得率,胸の幅,鋭角性,乳房の懸垂,乳房の深さ,前乳頭の配置)であった.各飼養形態において,体型形質におけるHLの最小二乗平均値(LSMHL)を比較した.FSとTSの肢蹄得率が高いほどLSMHLは高かったが,GZの肢蹄得率が79以下のとき,LSMHLは一定の値を示した.すべての飼養形態において,乳房が浅いときおよび乳頭が中央に位置するとき,LSMHLは高かった.FSおよびTSにおけるLSMHLは,多くの形質で近似したが,GZにおいて低い肢蹄得率でHLに大きな影響を与えない点が他と異なった.
著者
中村 南美子 冨永 輝 石井 大介 松元 里志 稲留 陽尉 塩谷 克典 赤井 克己 大島 一郎 中西 良孝 髙山 耕二
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.343-349, 2021-08-25 (Released:2021-10-08)
参考文献数
32

3色覚であるヒトの色覚異常(2色覚)のうち,Protanopia(P),Deuteranopia(D)およびTritanopia(T)型の場合にはそれぞれ赤と青緑,赤紫と緑および青と緑の色が識別困難とされる.本研究では生理学的に2色覚とされるニホンジカ(Cervus nippon;以下,シカ)がこれらを識別可能か否かについてオペラント条件付けにより検証した.シカ2頭(推定3歳:オス・メス各1頭)を試験に用いた.1セッションを20試行とし,正刺激として提示した色パネルの選択率80%以上(χ2検定,P<0.01)が3セッション連続でみられた場合,シカは2つの色を識別可能と判定した.オスは18,5および3セッション目,メスは12,14および4セッション目でそれぞれの色の組み合わせを識別できた.以上より,供試したシカはP, DおよびT型のヒトで区別し難い色の組み合わせをすべて識別可能であり,行動学的手法によって導き出されたシカの色識別能力はヒトの2色覚と一致しないことが示された.
著者
宮地 慎 小林 良次 野中 和久
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.161-167, 2010-05-25 (Released:2010-11-25)
参考文献数
19

乳牛の胎盤摂取が泌乳初期の採食量,乳生産量,採食行動に与える影響および胎盤の第一胃内分解特性を明らかにするため,経産牛を10頭供試し,分娩後に胎盤を摂取させる区(PF区)と無摂取区(NF区)に分け,分娩前1週から分娩後4週まで採食量,採食行動,乳生産量,血液性状を測定した.また,胎盤の第一胃内分解率については第一胃カニューレ装着去勢牛を供試しin situ法で測定した.採食量,体重,乳量および乳成分は処理間で差はなかった.分娩後7日間のミール回数はPF区がNF区より多く,分娩後10日間のミールサイズはPF区がNF区より小さく,継続時間は短かった.分娩後2週以降ではミールパラメータに処理間で差はなかった.血中総ケトン体および遊離脂肪酸濃度は分娩後5日間でPF区がNF区より低かった.また胎盤の第一胃内乾物分解率は5日間で70.9%に達するが,それ以降は増加しなかった.以上より,分娩後に胎盤を摂取した乳牛の泌乳初期の採食量,乳生産量は無摂取の乳牛と同様に増加することが示唆された.
著者
山中 麻帆 浅野 桂吾 林 英明 河井 重幸 平山 琢二
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.91, no.4, pp.375-379, 2020-11-25 (Released:2020-12-12)
参考文献数
23
被引用文献数
1 2

本研究では,ウシに市販海藻飼料を給与した場合の糞中IgA, VFA濃度および糞便性状について調査し,腸管免疫賦活活性に与える影響について検討した.試験には黒毛和種の経産牛4頭を用い,海藻飼料を給与する区(海藻区)および給与しない区(対照区)に2頭ずつ分け,給与I期(10日間),休止期(13日間),給与II期(10日間)の3期からなる2×2のクロスオーバー法で実施した.糞中IgA濃度の変化量は,海藻区が対照区に比べ有意に増加した(P<0.05).一方,糞pH値および糞中VFA濃度は両区ともに正常範囲内で推移し,海藻飼料の給与の有無で差は認められなかった.また,糞中VFA濃度と糞中IgA濃度との間にも相関は認められなかった.以上から,ウシへの市販海藻飼料の添加給与は,腸内微生物叢には影響しないものの,腸管免疫を活性化させることが示唆された.