著者
宮井 輝幸 秋山 正行 中川 稔 矢野 陽一郎 池田 三知男 市橋 信夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.591-594, 2012-11-15 (Released:2012-12-31)
参考文献数
16
被引用文献数
1

コーヒー,紅茶および緑茶の各種試料に,Bacillus属細菌(B. cereus, B. subtilis, B. coagulans) 芽胞を接種し,85℃30分間(食品衛生法におけるpH 4.6以上の清涼飲料水の殺菌基準) 加熱処理した後,その試料の保存中における生育挙動を調べた.コーヒー,紅茶試料では,牛乳を添加した場合,B. cereusとB. subtilisの菌数の増加がみられたが,牛乳を添加していないコーヒー,紅茶および緑茶の各種試料(pH調整の有無;コーヒーの焙煎度;紅茶の抽出温度;コーヒー,紅茶への砂糖添加) では,Bacillus属3菌種の菌数の減少がみられた.これらのことより,85℃30分間の加熱殺菌条件で製造した牛乳無添加の各種飲料中にBacillus属3菌種が生残していたとしても,コーヒー,紅茶および緑茶の抗菌性により商業的な無菌性が保証される可能性が示唆された.
著者
百瀬 晶子 池羽田 晶文 上平 安紘 三浦 理代
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.538-544, 2016-11-15 (Released:2016-12-23)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

(1)日本食の主食である米飯との組合せにより,GIを低下させるような副菜の検討を行った.副菜である検査食品は植物性食品5種類(こまつな,キャベツ,トマト,だいず,ながいも)を供試し,全てにおいて平均GIは100以下となった.特にながいもの検査食では,基準食に比べ摂取開始2時間の最高血糖値,血糖上昇曲線下面積(IAUC)共に顕著に低値を示した.これについて,ながいもの粘性物質マンナンが胃からの排出を遅延させ,食後血糖上昇抑制に関与したものと推察された. (2)検査食品中の成分とGI低下との関連を検討するため,総ポリフェノール量と食物繊維量を分析した.これらの成分含量とGIとの間に有意な相関は認められず,検査食品中のその他の成分や糖質構成による影響が複合的に作用したものと考えられた. (3) GI測定に応用可能な非侵襲血糖測定法の確立を目指し,負荷試験中のSMBGと近赤外スペクトルの相関について検討した.血糖値変化量と吸光度変化量の相関係数が0.6以上となる波長は約95%の負荷試験において確認された.波長は負荷試験ごとに変動するものの,単回帰分析により算出した推定血糖変化量から求めたIAUC およびGIは,SMBGによる血糖実測値に基づく結果を良く再現していた.
著者
小幡 明雄 松浦 勝
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.768-773, 1997-11-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
26
被引用文献数
2 1

大豆磨砕時に起こる豆乳の色調変化について調べた.(1) 大豆の磨砕温度の上昇に伴って豆乳のL値,b値は減少し,a値は上昇した.これらの変化は豆乳中の過酸化物価の変化と相関していた.(2) リポキシゲナーゼの関与を調べるために,リポキシゲナーゼ欠失大豆を用いて同じ条件で磨砕したところ,磨砕温度が上昇しても色調の変化はほとんどなく,リポキシゲナーゼが色調の変化を起こす原因酵素であることがわかった.(3) リポキシゲナーゼにより退色する黄色成分について調べた.豆乳のb値を反映しているこの黄色色素は,限外濾過による挙動から,水溶性低分子成分であることがわかった.酵素反応前後の差スペクトルから,420nm付近の吸光度の減少が観察された.HPLCを用いて420nmで分析したところ,多くの成分が酵素反応後に消失していた.その中のメインピークの吸収スペクトルは415nmに吸収極大を有しており,カロチノイド系色素の吸収スペクトルとは異なっていた.
著者
舩津 保浩 西村 由紀子 石下 真人 上馬塲 和夫 西尾 由紀夫 寺島 晃也 真船 直樹
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.367-372, 2008-08-15 (Released:2008-09-30)
参考文献数
26
被引用文献数
1 3

豆乳や豆腐の副産物として排出される「おから」の有効活用を目的として,おからをケーキに利用した製品(「おからケーキ」)の一般成分,血糖値上昇抑制効果および官能的特性について従来の小麦を利用した製品(「対照ケーキ」)のそれらと比較検討を行った.その結果を下記に示す.(1)「おからケーキ」と「対照ケーキ」の一般成分を調査したところ,食物繊維量,とくに不溶性食物繊維量が前者は後者よりも多い点に特徴がみられ,糖質量やエネルギー値でも前者が後者よりも低かった.(2)実用面を考慮した「おからケーキ」と「対照ケーキ」の100g同量摂取試験の結果,前者の食後15分,30分,45分および120分の血糖値は後者のそれらに比べて有意に低い値を示した.(3)「おからケーキ」と「対照ケーキ」の50g糖質摂取試験を実施したところ,前者は食後30分の血糖値を有意に抑制した.また,両者のGIを比較したところ,前者のGIは後者のそれより39.1%低い値であった.(4)「おからケーキ」と「対照ケーキ」の官能評価を実施したところ,外観,香り,大豆臭および甘味については両者に有意差はみられなかった.しかし,食感,飲み込みやすさおよび全体味では前者が後者より有意に好ましく,受容性でも高い傾向が認められた.以上の結果より,「おからケーキ」は,食後の血糖上昇しにくい食品であり,嗜好面でも「対照ケーキ」に比べて大きな違いがみられないことから,糖尿病予防食の一つとして利用可能であることが明らかとなった.
著者
山本 万里 佐野 満昭 松田 奈帆美 宮瀬 敏男 川本 恵子 鈴木 直子 吉村 昌恭 立花 宏文 袴田 勝弘
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.64-68, 2001-01-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
12
被引用文献数
24 26

本縞では,茶葉中の抗アレルギー作用が期待されるカテキンであるエピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル)ガレート(EGCG3”Me)含量の品種,摘採期,製造法による変動を検討した.EGCG3”Meは,品種別では,'べにほまれ'およびその後代である'べにふうき','べにふじ'に多く含まれ,二番茶以降に増加することがわかった.また,製造法では,緑茶(不発酵茶),包種茶(軽発酵茶)では大きな差異はなかったが,紅茶(発酵茶)にすると消失した.これらにより,EGCG3”Meを活用するためには,'べにほまれ','べにふうき','べにふじ'の二番茶以降の茶葉を使用し,緑茶もしくは包種茶に製造する必要があることが示唆された.
著者
内田 あゆみ 陶 慧 荻原 淳 松藤 寛 太田 惠教 櫻井 英敏
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.549-558, 2008-11-15
参考文献数
23
被引用文献数
3 4

イヌリン含量の高いジャンボリーキの生理学的機能を調べるため,ストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病ラットの血糖値および血液生化学的指標とアセトアミノフェン(AAP)投与により発生する肝障害に対するジャンボリーキの凍結乾燥粉末(イヌリン含量60%)(PSII)の影響を検討した.最初の実験ではPSIIをラットのSTZ(60mg/kgbw)処理の1週間後から,2週間投与した.糖負荷試験は7日目と14日目に行った.血液の生化学的指標は14日目に測定した.2番目の実験では2週間,PSIIを投与した後にAAP(500mg/kgbw)を投与し肝障害を発生させた.投与24時間後に肝障害の指標である血中ASTとALTの活性を測定し,また摘出した肝臓の病理組織学的検査を実施した.<BR>最初の実験の糖負荷試験において,1日あたり8.3g/kg(イヌリンとして5.0g/kg)のPSIIの投与により食後血糖値の上昇は抑制されることが確認された.血液の生化学的指標において,総コレステロールとトリグリセリドはSTZ処理により上昇したが,PSIIの投与によりSTZ無処理の値以下に低下した.またASTとALTの活性に低下傾向が観察された.第二の実験において,ASTとALTの活性は低下し,肝臓の壊死と空腔は抑制され,PSIIの肝障害保護作用が確認された.
著者
田中 常雄 田中 彰
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.129-133, 1998-02-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
18
被引用文献数
5 12

ハスカップの成分分析を行った.その特徴は以下のとおりである.(1) 他の果実類に比べて,カルシウム,鉄,ビタミンC,α-トコフェロール及び食物繊維の含量が多かった.(2) ビタミンCは凍結貯蔵中は安定で,少なくとも1年間は減少することはなかった.しかし,収穫年によるビタミンC含量に変動がみられた.(3) 有機酸の主成分はクエン酸で,高い含量を示した.(4) 糖度は有機酸に比べて低く,糖酸比も低かった.(5) 千歳8号は他の系統(品種)に比べて,水分,有機酸及び食物繊維が少なく,糖度は高かった.(6) 乾物換算値による成分間の相関を求め,灰分とカリウムおよびマグネシウム間の正相関などが認められた.
著者
中村 道子 佐藤 薫 小泉 詔一 河内 公恵 西谷 紹明 中島 一郎
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-6, 1995-01-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
13
被引用文献数
8 12

WPI溶液を予め加熱処理し,室温で塩化ナトリウムを添加することによりゲル化する現象について検討し,以下のことが明らかとなった.(1) 80℃ 30分加熱処理した10% (w/w) WPI溶液に塩化ナトリウムを0.3-1.2% (w/w)添加すると,20℃において溶液は粘度の上昇をともないながら徐々にゲル化した.塩化ナトリウムの濃度が高くなるにしたがい粘度上昇は速く進み,ゲル化時間は短くなる傾向を示した.さらに,WPI溶液の加熱処理温度,塩化ナトリウムの濃度が高くなるにしたがい,ゲル強度は高くなることがわかった.(2) 電子顕微鏡観察の結果,WPI溶液を加熱処理することによりやや太く短い線状の可溶性凝集体が形成されることを確認した.さらに塩化ナトリウムの添加により,可溶性凝集体同士の会合が始まり,高分子化してゲルに至ることがわかった.塩化ナトリウム添加により得られたゲルは,GDL添加による酸性ゲルとよく似た網目状構造を呈していることがわかった.また,ゲルの網目状構造を形成している凝集体の太さは,塩化ナトリウム添加により得られたゲルの方がGDL添加による酸性ゲルよりもややランダムな構造をとることがわかった.

1 0 0 0 OA 細胞壁多糖類

著者
西沢 隆
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.515, 2008-10-15 (Released:2008-11-30)
参考文献数
1
被引用文献数
1 1

細胞壁は動物細胞以外の細胞生物に見られる細胞外マトリックスである.植物にはセルロース,ヘミセルロース,ペクチン質が,真菌類の多くにはキチンが,細菌類ではペプチドグリカンが含まれる.1)セルロース(cellulose)(C6H10O5)nで表される植物細胞壁の骨格となる多糖で,グルコースがβ-(1→4)結合により直鎖状に連結した高分子である.植物細胞壁では,数十本程度のセルロース分子が束状になった微繊維(ミクロフィブリル ; microfibril)と呼ばれる構造を取る(図1).さらに,微繊維同士はロープ状に会合し,マクロフィブリル(macrofibril)と呼ばれる構造を作り,細胞壁の強度を高めている.セルロースは地球上に最も多く存在する炭水化物で,「繊維素」と呼ばれることもある.2)ヘミセルロース(hemicellulose)ヘミセルロースはセルロース微繊維間を架橋結合できる架橋性多糖(cross-linking glycan)の総称であり,セルロース微繊維間をつなぐことにより網目状構造を作り,細胞壁のマトリックス強度を維持する(図2).“ヘミセルロース”は,多糖の構造と関係なく,細胞壁からアルカリ性水溶液で抽出される多糖の総称を指す言葉であり,実態が分かり難い.現在では,“ヘミセルロース”という総称名ではなく,キシログルカン(多くの植物の一次細胞壁に存在する)やグルコマンナン(コンニャクイモの貯蔵性多糖)など,それぞれの多糖の構造名で呼ばれることが多い.3)ペクチン(pectin)ペクチンは果物などに多く含まれる多糖で,植物組織中では一次細胞壁だけでなく中葉(ミドルラメラ ; middle lamella)にも存在し,隣接する細胞同士を結び付けている.ペクチンは主に負に荷電したガラクツロン酸(galacturonic acid)がα-(1→4)結合した鎖状分子(ポリガラクツロン酸)を基本とする.ガラクツロン酸のカルボキシル基が部分的にメチルエステル化され,メトキシル基(R-OCH3)を含むものをペクチニン酸(pectinic acid),メトキシル基を含まないものをペクチン酸(pectic acid)と呼ぶ.植物細胞壁中では,通常ガラクツロナン分子に部分的にラムノースが結合したラムノガラクツロナン(rhamnogalacturonan)を主鎖に,ガラクトースやアラビノースなどの中性糖を側鎖に持つ分枝性多糖として存在する.ガラクツロナン分子同士は,カルシウムイオンが介在することによるイオン結合により構造を強化することができる.4)キチン(chitin)真菌類の他,節足動物や軟体動物にも含まれる.キチンはβ-(1→4)ポリ-N-アセチルグルコサミンで,しばしばポリグルコースとβ-(1→3)結合している.5)ペプチドグリカン(peptidoglycan)ムレイン(murein)とも呼ばれる.短いペプチドによって多糖鎖が架橋することにより網状の分子を作り,細胞壁の強度を維持している.
著者
柚木崎 千鶴子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.549, 2009-10-15 (Released:2009-12-08)
参考文献数
6

1. フリーラジカルがんや動脈硬化,心臓病などの生活習慣病や老化促進に,活性酸素種による生体組織の酸化が密接に関与していることが明らかとなりつつある.活性酸素種は,酸素を含む反応性の高い化合物の総称であり,ラジカルと非ラジカルがある.脂質関連物質を含む広義の意味においての活性酸素のうち,前者としては,反応性の高いものからヒドロキシラジカル(・ OH),アルコキシラジカル(LO・ ),ペルオキシラジカル(LOO・ ),ヒドロペルオキシラジカル(HOO・ ),一酸化窒素(NO・ ),二酸化窒素(NO2・ ),スーパーオキシドアニオン(O-2・ )などがある.後者の非ラジカルグループには一重項酸素(1O2),オゾン(O3),過酸化水素(H2O2),脂質ヒドロペルオキシド(LOOH)などがある1).一般に電子は2個で対をなしている状態で,原子軌道あるいは分子軌道に安定に収容されているが,対にならずに一つだけ軌道に存在する場合(不対電子)がある.これがフリーラジカルできわめて反応性が高い.酸素分子は不対電子が2個存在するのでビラジカルと言われている.体内に取り込まれた酸素は4電子還元を受けて水になる.その過程で1電子還元によりO-2・ ,2電子還元によってH2O2,3電子還元によって・OHが生成する.さらに生体内で発生したフリーラジカルは,高度不飽和脂肪酸のラジカル反応に関与し,脂質ヒドロキシペルオキシド(LOOH)を生じる2).2. ラジカル消去能これらの活性酸素種は,生体防御において積極的に利用される反面,一方では,高い反応性を有するために,生体内たんぱく質,脂質やDNAなどの生体成分を酸化して,たんぱく質の変性,脂質の過酸化,遺伝子の損傷を引き起こし,種々の疾病の発症に関与していると考えられている.このような酸化傷害から自己を防御するために,生体内では,H2O2はカタラーゼにより不活性化され,LOOHはグルタチオンペルオキシダーゼにより分解され,O-2・ はスーパーオキシドディスムターゼにより不均化されることが知られている3).このような生体内防御機構の他に,活性酸素種はアスコルビン酸,トコフェロール,カロテノイド,種々のポリフェノール類等によって消去されることから,植物由来抗酸化成分が,活性酸素が関与する種々の疾患の予防に有効ではないかと期待されている.抗酸化成分の作用メカニズムの一つとしてラジカル阻止があげられる.この過程は,以下のような段階を経るものと考えられている4).1) ラジカル補足段階 : フリーラジカルに抗酸化物質が水素原子を与え,抗酸化物質がもとのフリーラジカルよりも反応性の低い安定フリーラジカルを形成する段階.2) ラジカル終結段階 : 安定フリーラジカルが非ラジカル化合物となりラジカルが消去する段階.3. 分析法ラジカル消去能を含む抗酸化能をin vitroで測定する方法は,HAT(hydrogen atom transfer水素原子供与)反応,あるいはET(electron transfer電子供与)反応の2つのタイプに大別される.HAT反応に基づく測定法では,ORAC(oxygen radical absorbance capacity)法,TRAP(total radical trapping antioxidant parameter)法が,ET反応に基づく測定法では,DPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)法,TEAC(Trolox equivalence antioxidant capacity)法などが代表的である5).このうちORAC法の公定法化がAOU(Antioxidant Unit)研究会により検討されているが,DPPH法は,非常に簡便な方法であるため抗酸化活性を有する作物のスクリーニングに広く用いられてきた.筆者らもDPPH法により,種々の宮崎県産農産物の可食部,非可食部150試料の抗酸化活性を測定した結果,茎葉利用カンショ(すいおう)葉,サトイモ(泉南中野早生)果皮,マンゴー(アーウィン)果皮,茶(やぶきた)葉,シソ科ハーブ類のブラックペパーミント,スペアミント,スィートバジル,レモンバーム,ローズマリー,ステビアの葉およびブルーベリー葉が高いラジカル消去能を示した6).
著者
渡辺 敏郎 川田 あゆみ 井上 美保 石原 伸治 辻 啓介
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.415-418, 2007-09-15
参考文献数
13
被引用文献数
2 3

カキドオシ抽出物が本態性高血圧自然発症ラット(SHR)への血圧上昇抑制に対してどのような影響を及ぼすかを検討した.カキドオシ全草から熱水抽出することで収率20%のカキドオシ抽出物を得た.この抽出物には灰分が多く含まれ,特にカリウム(K)含量が高かった.カキドオシ抽出物を飼料中へ5%添加し,28日間SHRに自由摂取させると,試験14日後から対照群に比べて有意に血圧の上昇を抑制した.24時間尿を採尿し,ナトリウム(Na)およびK排泄率を算出したところ,カキドオシ抽出物を摂取することでNaおよびK排泄率ともに有意に増加した.これはカキドオシ抽出物に含まれるKの摂取によりSHRのNa排泄効果を促したことで,血圧上昇抑制作用を示したものと考えられた.
著者
石原 伸治 川田 あゆみ 井上 美保 渡辺 敏郎 辻 啓介
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.412-414, 2007-09-15
参考文献数
8
被引用文献数
2

正常ラットにおけるカキドオシ抽出物の経口糖負荷試験では,ショ糖負荷30分後から60分後にかけての血糖値で,カキドオシ抽出物群は対照群と比べて有意(<I>p</I><0.01)な上昇抑制効果を示した.また,ストレプトゾトシン糖尿病ラットにおける経口糖負荷試験では,ショ糖負荷60分後から90分後にかけての血糖値で,カキドオシ抽出物群は対照群と比べて有意(<I>p</I><0.05)な上昇抑制効果を示した.さらに,カキドオシ抽出物を固相抽出カラムでシリカゲル担体吸着画分と非吸着画分に分けたところ,非吸着画分に血糖値上昇抑制作用が認められた.
著者
松村 康生
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.271-289, 2019-08-15 (Released:2019-09-12)
参考文献数
35
被引用文献数
1

Food emulsions are thermodynamically unstable systems due to destabilization processes such as flocculation, creaming and coalescence. Thus, the maintenance of kinetic stability is critically important to obtain high-quality commercial products. Our group has been studying the adsorption behavior and interaction at the interface of several components in oil-in-water emulsions, particularly, the two major components, i.e., proteins and low-molecular weight surfactants (emulsifiers) to understand the factors governing quality of food emulsions. In this review, I show the main results of our studies on food emulsions over the past 30 years. The topics are as follows: 1) the interaction of proteins and emulsifiers, particularly the displacement of proteins from the interface by emulsifiers; 2) Fat crystallization as a cause of partial coalescence of oil droplets; 3) Emulsion formation and stabilization by adsorption of fine particles; 4) Rapid evaluation of long-term stability of emulsions.
著者
丸 勇史 大西 淳 山口 信也 小田 泰雄 掛樋 一晃 太田 泰弘
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.146-149, 2001-02-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
7
被引用文献数
4 6

We examined an estrogen-like activity in the pomegranate (Punica granatum) juice. The juice or its methanol eluate from C18 cartridge competed with 17β-estradiol for estrogen receptor (ER) binding and also stimulated proliferation of human ER-positive cell (MCF-7) in vitro. Furthermore, they effectively increased uterine weight in the ovariectomized rat. On the basis of these data, we concluded that the pomegranate juice contained estrogen-like compounds.
著者
後藤 昌弘 橋本 和弘 山田 喜八
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.50-54, 1995-01-15
参考文献数
5
被引用文献数
4 10

フランスから導入された新しい調理法である真空調理についてその特性を明らかにするため,野菜,果実,肉類などを用いて調理を行い,従来の調理法(普通調理)とアスコルビン酸残存率,テクスチャー,食味のちがいなどを比較した.<BR>1)野菜類では真空調理は普通調理に比べ,アスコルビン酸の流出が少なかった.また,キウイのフルーツソースでは,緑色が保たれた.<BR>2) 肉類の調理では歩どまりがよく,軟らかく仕上がった.<BR>3)香ばしさを出したり,生臭さをなくしたりする必要のある料理は官能検査の評価が低く,適さなかった.<BR>4)肉じゃがや果実のコンポートのように調味液をしみ込ませる料理では官能検査の評価が非常に高く,最も適していると思われた.
著者
星 幸子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.292-297, 2020

<p>The superiority of domestic fruits, seaberry, <i>Hippophae rhamnoides </i>L., which was launched in 2005 in domestic commercial cultivation, was verified by analyzing component data and oil component data etc. and comparing with foreign seaberries.</p>
著者
NEGISHI Osamu NEGISHI Yukiko
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
Food science and technology research (ISSN:13446606)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.176-180, 1999-05-01
参考文献数
15
被引用文献数
3 13

Abilities of 31 kinds of raw fruits, 33 kinds of raw vegetables, and 2 kinds of raw mushrooms to remove the odor of methylmercaptan were examined. Apple, pear, loquat, peach, plum, prune, apricot, cherry, grape, lettuce, chicory, udo, perilla, peppermint, basil, burdock, potato, eggplant, and mushroom (<i>Agaricus bisporus</i>) showed high deodorizing activity. Highest activities were obtained with burdock and unripe fruits (apple and pear). These green foods are believed to contain large amounts of both polyphenolic compounds and their specific polyphenol oxidases, by which oxidation reaction causes addition reaction of the resulting quinone radicals with SH-compounds such as methylmercaptan. The sequential reactions can be called enzymatic deodorization. Sensory examination or measurement with an odor sensor indicated that eating apple, unripe pear and prune significantly removed bad breath caused by eating garlic. The enzymatic deodorization method has great potential for eliminating bad odors from the environment including bad breath.
著者
原田 修 桑田 実 山本 統平
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.261-265, 2007-06-15 (Released:2007-10-04)
参考文献数
13
被引用文献数
3 8

開発した高圧熱水抽出装置を用いてイワシ鱗からゼラチンの抽出を行い,ゼラチンの抽出挙動および抽出ゼラチンの性状について検討した.本方法による抽出では抽出管のフィルターに目詰まりは認められず安定した抽出を水だけで行うことができた.抽出管出口温度が温度領域143-153℃以上において加水分解反応が顕著になり,抽出管入口温度225℃ 8分間(抽出管出口温度156-202℃)の抽出でほとんどのイワシ鱗コラーゲンが溶出することが分かった.抽出物中のタンパク質はほぼゼラチンであり,数パーセントのアパタイトと考えられる灰分が含まれていた.またアミノ酸の顕著な熱分解は認められなかった.抽出されたゼラチンの分子量はGPC曲線のピーク地点で443kDa付近から6.5kDa付近となっており,抽出温度が高くなるほど低くなった.入口温度225℃で400-1000mLの画分では,分子量分布の狭いペプチド領域のゼラチンが得られた.
著者
増田 亮一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.218-219, 2017

<p>大豆を磨砕し水に分散させた豆乳は最近,いわゆる "豆乳" とは違った加工素材としての利用が発展している.2015年大会の研究小集会大豆部会では,豆乳ベースの素材開発の背景となる大豆成分の分離技術の原理とその応用を扱った.長年,豆腐凝固過程の解明に取り組まれてきた小野先生には,豆腐用と飲用では豆乳の加熱処理条件が異なり,豆乳コロイド分散系の凝集に関わるタンパク質,オイルボディや共存する凝固剤や各種成分の働きに相違が生じる現象を解説して頂いた.次いで,食品工学的な観点から豆乳を解明し,脂質·油滴に着目されている藤井先生には,豆乳コロイド分散系の構造と凝集過程の挙動の解説,さらに豆乳中の安定なオイルボディをプロテアーゼと加熱処理によって変性させるとクリーム様素材となる実例を示して頂いた.</p>
著者
村田 容常
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1-12, 2020-01-15 (Released:2020-01-27)
参考文献数
100
被引用文献数
2 2

Food chemistry studies on enzymatic browning and the Maillard reaction were reviewed. Enzymatic browning can broadly be categorized into immediate and delayed types. We investigated the mechanisms and regulation of enzymatic browning of apple as an example of the immediate type, and browning of lettuce and mung bean sprout as the delayed type. The Maillard reaction is the major cause of non-enzymatic browning. However, melanoidins, which are the major brown pigments formed by the reaction, are large, heterogenous, high-molecular-weight compounds with chemical structures that are difficult to elucidate. We therefore focused on the low-molecular-weight pigments formed by the Maillard reaction. We identified various novel pigments in model systems and foods based on instrumental analyses.