著者
角 奈那子 片浦 聡司 田川 武弘
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.387-395, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
12

【目的】腰痛既往を有する一流男子競泳選手の蹴伸び姿勢における体幹アライメントの特徴を明らかにすること。【方法】男子選手の腰痛群9 名,非腰痛群15 名を対象とし,立位と陸上で再現した蹴伸びの2 条件で,体幹アライメントを評価し,柔軟性の指標と併せて比較した。【結果】蹴伸び条件において,腰痛群は非腰痛群と比較し,腰椎前彎角,骨盤前傾角,上胴後傾角,上胴伸展角が有意に大きいことが示された。一方,立位条件で2 群間の差は認められなかった。また,蹴伸び姿勢における下位胸郭の柔軟性は腰痛群で有意に低く,股関節や肩甲帯の柔軟性には差が認められなかった。【結論】腰痛群は,蹴伸び姿勢において過度な腰椎前彎を呈しやすく,その原因として下位胸郭の柔軟性低下が関係していることが示唆された。また競技レベルの高い一流選手であっても,特に腰痛既往のある者では, 蹴伸び姿勢において腰椎前彎を制御しにくくなる実態が示された。
著者
吉川 昌太 木下 篤 船間 汐莉 松木 明好
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12018, (Released:2021-06-29)
参考文献数
34

【目的】小脳性運動失調を伴う脳卒中患者2症例に対して,体重免荷トレッドミル歩行練習(以下,BWSTT)を実施し,その効果を検討した。【方法】対象は小脳性運動失調を伴う亜急性期脳卒中患者の50 歳代の女性と60 歳代の男性とした。ABA 型のシングルケースデザインを用い,それぞれ期間を10 日間ずつ設定した。A 期には四肢と体幹の協調性練習,立位でのバランス練習や平地での歩行練習を受けた。B 期にはA 期の理学療法に加えBWSTT を実施した。評価項目は最大歩行速度,歩幅,歩行率,TUG,SARA,BBS,FACT,FAC とした。【結果】2 症例ともに最大歩行速度はA1 期と比べ,B 期において有意な向上を認めた。しかし,2 症例ともにB 期ではA1 期に比べSARA(歩行,立位,踵すね試験)やBBS の変化は乏しかった。【結論】小脳性運動失調を伴う脳卒中患者におけるBWSTT は歩行能力の向上に影響を及ぼす可能性が示された。
著者
本宮 丈嗣 山本 澄子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.11-18, 2016 (Released:2017-02-20)
参考文献数
18

【目的】初心者・高齢者向けのディフェンシブ・スタイルのノルディック・ウォーキング(以下,NW)が高齢者の歩行に与える影響について検討する。【方法】杖なしで自立歩行可能な高齢者28 名を対象とし,通常歩行とディフェンシブ・スタイルのNW を三次元動作分析装置・床反力計を用いて計測した。【結果】通常歩行とNW を比較した結果,荷重応答期の床反力鉛直方向成分は,有意差を認めなかった。歩隔・体幹側屈振幅・身体重心左右移動振幅は,NW で有意に減少した。歩隔と身体重心左右移動振幅との間に,正の有意な相関が認められた。【結論】ディフェンシブ・スタイルのNW は,前額面上において安定性の高い歩行であることが示唆された。
著者
星文彦 山中 雅智 高橋 光彦 高橋 正明 福田 修 和田 龍彦
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.43-48, 1992
被引用文献数
16

椅子からの立ち上がり動作の運動学的解析を行い, 各筋群の機能的役割を考察した。計測方法:ビデオ, 床反力計, 表面筋電図, 及び殿部の離床を記録するためのマットスイッチ(自作)を用いて椅子からの立ち上がり動作を記録した。またビデオ, 床反力計, 表面筋電図は自作のトリガー発信器を用い同期記録した。分析結果:床反力は, 動作開始直後下降, その後急上昇し, 姿勢及び重心位置の変化を忠実に反映していると思われた。またその時の筋活動から立ち上がり動作開始時に体幹を前傾させることと重心位置を前下方へ移動させる原動力となっている筋群として縫工筋, 大腿直筋さらに前脛骨筋が重要な役割を果たしていると考えられた。
著者
那須田 依子 丸谷 守保 青木 重陽
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.B1584-B1584, 2008

【はじめに】若年重度外傷性脳損傷患者に対して、身体機能回復に重点をおいた時期と在宅・復学準備に重点をおいた時期に担当し、若干の知見を得たので報告する。<BR>【症例】受傷時年齢16歳、女性。2006年8月26日交通事故にて受傷、JCSIII-200。瀰漫性軸策損傷、左後頭骨骨折、左肺挫傷の診断で保存的加療、18日後覚醒し10月24日当院転入院となった。右片麻痺、失調、高次脳機能障害、嚥下・構音障害、複視。MRIでは左側頭葉・脳梁膨大部・脳幹・左小脳脚に多発性に微小な異常信号が見られた。<BR>【経過】初回入院時は、ADL全介助、車いす坐位保持困難であり、感情失禁があり、流涎多量で経鼻経管栄養、ベッド上排泄で、FIM34点であった。理学療法では体幹の筋活動促通、頭頸部と体幹の分節的コントロールを獲得するために寝返り・起き上がり・座位練習を施行し、抗重力筋活動促通のために立位バランス・介助歩行などを施行した。3ヶ月後には端座位近位監視、車いす駆動自立、感情失禁の増強がみられ、流涎なく刻み食経口摂取可能、トイレ排泄でFIM64点となり、他院へリハビリテーション継続目的で転院となった。<BR>他院転院から3ヶ月半後当院へ再入院となり、再入院時は、端座位自立、立位軽介助、感情失禁は軽減しており、常食経口摂取可能、トイレ動作軽介助で、WAIS-III全検査IQ85点、FIM70点であった。動作の安定性向上、立位・歩行能力向上を目的に理学療法を施行した。また、合わせて家屋改修、屋内用車いす作成と電動車いす駆動評価、高校訪問調査と高校教員との会議などの社会環境調整を実施した。3ヵ月後には立ち上がり・立位近位監視、移乗・歩行軽介助、電動車いす操作自立、トイレ動作見守りで、FIM80点となり退院、在宅へ移行した。<BR>2007年9月、受傷から1年経過して復学となった。<BR>【考察】若年の外傷性脳損傷患者の機能改善は長期にわたるという報告があり、本症例も同様に身体機能の著しい改善が長期に見られた。退院後も機能改善していくことが予想されるため、継続したリハビリテーションが必要といえる。<BR>本症例は座位保持困難な重症例であったが、受傷から一年後に復学することが可能となった。復学には学校の理解が必要不可欠であり、病院スタッフが学校訪問し直接的に介入したことと、今後も病院の関わりが得られるという安心感を学校側が得られたことが、復学を円滑に進める一助となったと考えられた。重度の身体障害や高次脳機能障害に対する理解の不足は、社会復帰の阻害因子となる。社会との連携は、円滑な社会復帰の重要な因子となると考えられる。<BR>若年外傷性脳損傷患者は受傷後の長い人生の中で、身体機能も社会環境も様々に変化する。本症例も復学が最終目標ではなく、今後もライフステージに合わせた長期的支援が必要と考えている。<BR>
著者
熊井 明美 岡田 善雄 山口 綾子 伊橋 光二
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.152-154, 1992-03-10

変形性膝関節症は膝周囲に筋硬結を生じている事が多い。19名の変形性膝関節症患者を対象に, 筋硬結に対し, ホットパック, 超音波, マッサージによる3方法の比較実験を行った。効果判定は痛みの強さ, 筋硬結の程度, 歩行スピードの3項目で, 治療前後に評価を行った。その結果を, 痛みの強さと筋硬結の程度はKruskal-Wallis検定を用い, 歩行スピードはt検定を用いて統計処理を行った。痛みは超音波, マッサージの順で改善がみられ, 筋硬結の程度はマッサージ, 超音波の順に改善がみられた。又, 最も客観的な評価である歩行スピードにおいては, マッサージのみに改善がみられた。変形性関節症の治療において, 筋硬結にも目を向ける事が重要であり, その方法として, 直接的機械的刺激である徒手マッサージは有効な方法であると考えられる。
著者
大西 秀明 八木 了 大山 峰生 松木 儀浩 伊橋 光二 半田 康延 池田 知純
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.226-230, 1999-07-31

本研究の目的は, 健常者を対象にして歩行中および立位保持中に膝窩筋筋電図を導出し, その機能を明らかにすることであった。対象は健常男性10名であり, 課題動作は自然歩行および膝関節0度, 30度, 60度および90度屈曲位での立位保持であった。筋電図の導出にはワイヤー電極を使用し, 電気刺激を行うことにより電極が膝窩筋内に入っていることを確認した。各動作時に得られた筋電図は全波整流したのち移動平均処理を行い平滑化し, 最大等尺性下腿内旋運動時に得られた筋電図をもとに正規化した。歩行中の膝窩筋筋活動は, 立脚初期, 立脚後期および遊脚後期に強い活動を示した。特に立脚期9.3%時点では膝窩筋の筋活動は最も強く, 下腿最大内旋運動時の72.2±14.8%を示した。また, 立位保持中における膝窩筋の筋活動は膝関節屈曲角度の増加に伴い増加した。これらの結果から, 膝窩筋は, 歩行時には遊脚後期から立脚初期にかけては膝関節過伸展を防御し, 立脚後期から遊脚初期にかけては膝関節の屈曲運動に関与することが推察された。また, 立位保持時には脛骨の前方移動を防ぐように活動していると考えられた。
著者
西守 隆 伊藤 章
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.318-323, 2006-10-20
被引用文献数
3

本研究の目的は,歩行・走行時の骨盤と体幹の回旋角度を測定し,移動速度との関係や位相性変化を検討することである。大学陸上競技部の男子短距離選手6名を対象とした。移動速度条件として,歩行は1.3,1.9m/sの2条件,走行は2.5,4.5,6.5m/s及び最高速度の4条件とした。全試技を3台のハイスピードカメラを用いて撮影した。得られた座標値から骨盤回旋角度と体幹回旋角度を求めた。得られた骨盤回旋角度と体幹回旋角度について,時系列データとして相互相関分析を行ったあと,位相性の違いを算出した。その結果,歩行では移動速度の増加と共に骨盤回旋運動の振幅は直線的に増大した。走行では2次曲線の傾向を示し,2.5m/sから6.5m/s付近まで増加したが,それ以上の速度では逆に減少した。骨盤回旋と体幹回旋との関係は,歩行では互いに逆方向に回旋していたのに対し,走行では移動速度の増加とともに同方向への回旋運動に変化した。これは移動速度が向上するに従い,歩行周期における骨盤回旋運動の位相が変化し,体幹回旋運動の動きの方向に近づいていくことを示している。
著者
宮川哲夫
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.208-216, 1988
被引用文献数
3

近年, 呼吸不全の病態形成に関与する呼吸筋疲労や, 呼吸筋の特性も除々に解明されつつある。そこで, 最近のトピックスについて, 1. 呼吸筋の運動学, 2. 呼吸筋の力学的特性, 3. 呼吸筋の収縮特性, 4. 呼吸筋力・耐久力の評価, 5. 呼吸筋疲労, 6. 呼吸筋トレーニング, 1)筋力トレーニング, 2)耐久力トレーニング, (1)過換気法, (2)吸気抵抗負荷法, (3)運動療法について述べた。呼吸筋も四肢筋と同じような特性を持ち, 四肢筋同様, 強化することができる。その強化方法も四肢筋の強化方法に準じて行われる。例えば, 筋力を目的に強化するためには, 高張力, 低頻度の刺激がよく, 耐久力を強化するためには低張力・高頻度の刺激強度が適している。しかし, その方法については十分に確立されていないのが現状であり, 至的負荷強度を確立するためには, 今後, 系統的な研究が望まれるところである。
著者
佐藤 麻知子 佐竹 將宏 塩谷 隆信 菅原 慶勇 高橋 仁美 佐藤 一洋 河谷 正仁
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.37-42, 2002-04-20
被引用文献数
1

呼吸筋トレーニングの効果的な負荷圧に関する臨床研究は非常に少ない。本研究の目的は,呼気筋および吸気筋トレーニングの効果的な負荷圧を検討することである。健康な短大生36名(男性15名,女性21名;平均年齢±SD:21.4±2.7歳)を対象にした。呼吸筋力測定のみを行う対照群と最大呼気口腔内圧の20%および40%で呼気筋トレーニングを行う群(20%呼気筋トレーニング群,40%呼気筋トレーニング群),最大吸気口腔内圧の20%および40%で吸気筋トレーニングを行う群(20%吸気筋トレーニング群,40%吸気筋トレーニング群)の5群で検討を行った。各トレーニング群ではそれぞれの負荷圧でThreshold^<TM>を用い,1日2回15分ずつトレーニングを4週間継続させ,トレーニング前,1,2,3,4週後に呼吸機能,呼吸筋力を測定した。その結果,呼気筋トレーニングでは,20%呼気筋トレーニング群および40%呼気筋トレーニング群において2週間後から有意に呼気筋力が増加した。吸気筋トレーニングでは,20%吸気筋トレーニング群および40%吸気筋トレーニング群ともに3週間後から有意に吸気筋力が増加した。以上の結果は,呼気筋,吸気筋トレーニングともに,それぞれの20%最大口腔内圧が,健常若年者に対する呼吸筋トレーニングの効果的な負荷圧として十分であることを示唆している。
著者
大川 卓也 小堀 岳史 赤澤 昭一
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.D1255, 2008

【はじめに】糖尿病治療において運動療法は、食事療法、薬物療法とともに糖尿病治療において最も根本的なものであり、中でも有酸素運動が効果的であるといわれている。当医療法人は、近接するクリニック内にメディカルフィットネスを開設、糖尿病教育入院患者に対し、フィットネスフロアにて運動療法を開始している。その中で、若干の知見を得たので報告する。<BR><BR>【方法および対象】平成19年2月から同年10月までに当院にて糖尿病教育入院となった患者のうち、主治医が積極的運動療法可能と判断し、自転車エルゴメーター(コンビ社製、AEROBIKE 75XIIME)を用いた心肺運動負荷試験(ミナト医科学社製、AE300S)を実施し、AT値を基にメディカルフィットネスにて運動療法を行った者45名(男性23名、女性22名)を対象とした。全員、重篤な認知症、整形疾患や片麻痺などを有しておらず、ADLは自立。平均年齢59.0±12.1歳、入院期間17.4±8.9日、入院前HbA1c値9.6±1.8%、入院直後における食前食後の6ポイントの平均血糖値は239±95mg/dl。心肺運動負荷試験の結果、AT値9.1±2.1ml/min/kg、AT-HR98.6±13.1bpmであった。フィットネスでは理学療法士監視下にてストレッチ、マシンを使用した筋力トレーニングと10~30分自転車エルゴメーターを行った、利用回数7.3±5.0回、1回の利用時間は53±15分であった。<BR><BR>【結果】入院直後と退院直前の血糖値ならびに入院前HbA1c値と退院後HbA1c値の比較では、それぞれ後者が有意に低い結果を示した。AT値は日本循環器学会が発表した60歳台の標準値16.5ml/min/kgの約55%であり、有意に低い結果を示した。AT-HRと予測最大心拍数の50%での心拍数(119±8bpm)を比較すると後者が有意に高い結果を示した。また、AT-HRは予測最大心拍数の約29%という結果であり、なかでも40%以下の者が全体の86%を占めた。フィットネスでの運動中や運動後も重篤な低血糖発作は出現していなかった。<BR><BR>【考察】心肺運動負荷試験の結果から糖尿病患者は健常人に比べ運動耐容能が有意に低いとの結果がでた。そのため、特に運動導入時は、安易に計算のみで設定した目標心拍数では過負荷になる可能性があり、ATレベルでの運動開始が安全であると考える。今後は、退院後の経過観察を行いながら、より良い運動指導が行えるようにしたい。<BR><BR>
著者
綾部 仁士 山内 康太 石村 博史 海塚 安郎
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【目的】中等度から高度侵襲の外科術後においては、早期に異化亢進が起こり、体重が減少する。そこで術後の身体機能を速やかに回復させるためには異化を最小限に抑止し、同化を促進することが重要である。今回、腹部大動脈瘤切除・再建術と肝切除術後患者において、早期経口摂取と疼痛管理下による早期離床と運動療法が、体重減少と術後在院日数に与える影響について検討した。<BR>【方法】平成17年1月から平成19年4月の間に十分な疼痛管理の下、周術期理学療法を実施し、早期に経口摂取を開始した群(以下:理学療法実施群)38名(再建術22名、肝切除術16名)と平成14、15年度に周術期理学療法を実施せず、かつ早期から経口摂取に努めなかった群(以下:非実施群)39名(再建術25名、肝切除術14名)を対象とした。再建術、肝切除術ともに理学療法実施群における離床は、術後1日目より開始し、術後4~5日目には運動療法を開始した。非実施群の離床は看護師によって個別に行われた。そこで再建術、肝切除術の各群間で(1)経口開始時期、(2)術後2週目での体重減少率、(3)術後在院日数を比較検討した。理学療法実施群においては、術後身体機能の回復度を6分間歩行試験で評価した。また患者背景因子と手術関連事項については両手術群間で差を認めなかった。<BR>【結果】(1)再建術は、理学療法実施群で1.9±0.9日、非実施群で5.9±2.6日、肝切除術は、理学療法実施群で2.0±0.8日、非実施群で3.3±1.0日となり両手術とも理学療法実施群で有意な短縮を認めた。(2)再建術は、理学療法実施群で3.4%、非実施群で5.0%となり非実施群で体重が減少する傾向を認めた。肝切除術は、理学療法実施群で3.4%、非実施群で4.5%となり、両群間で有意な差を認めなかった。(3)再建術は、理学療法実施群で17.4±5.3日、非実施群で25.8±9.5日となり理学療法実施群で有意な短縮を認めた。肝切除術は、理学療法実施群で18.2±5.0日、非実施群で21.0±5.9日となり理学療法実施群で短縮する傾向を認めた。再建術の術後身体機能は退院時で91.1%、肝切除術は97.4%まで回復した。<BR>【考察】再建術では、早期離床と運動療法が、腸蠕動回復を促し、早期経口摂取に寄与したと考えられた。また早期経口栄養と運動療法が、異化亢進を抑止し、同時に同化を促進することで体重減少を最小限に防止できたと考えられた。その結果が身体機能を速やかに回復させ、在院日数を短縮させたと考えられた。肝切除術では、体重減少からは早期経口摂取と運動療法の効果を評価することが困難である。それは切除後の肝機能低下による水分・電解質の貯留による体重変化が起こる可能性が考えられる。よって体重は代謝のパラメーターとして重要であるが、手術臓器によっては評価に注意が必要であると思われる。<BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR>