著者
福田 泉 小林 量作
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.261-266, 2008-08-20
被引用文献数
3

足把持筋力は立位姿勢の制御,高齢者の転倒リスク要因として注目されている。本研究の目的は若年健常者を対象に足把持筋力トレーニングの効果を検証することである。対象は運動器疾患のない若年健常者24名(男性10名,女性14名,平均年齢21.8±1.0)で,身長,体重,体脂肪率,足把持筋力,10m全力歩行,ファンクショナル・リーチ,最大1歩幅,閉眼片脚立位保持時間,等尺性膝伸展筋力を計測した。さらに年齢,性別,足把持筋力,10m全力歩行速度についてマッチングしたペアを組んだのち,無作為に介入群と対照群の二群に割り付けた。介入群は週に3回の足把持筋力トレーニングを行い,対照群には何も実施しなかった。6週後に両群について再計測を行った。その結果,トレーニング開始後3週目より,介入群の足把持筋力対体重比,10m全力歩行速度,歩幅について有意な変化がみられた。これらの知見から運動器障害に対する足把持筋力の検査とトレーニングの有用性が期待できる。
著者
河戸 誠司 江口 瑠美 千住 秀明 濱出 茂治
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.F0187-F0187, 2008

【目的】<BR> 電気刺激による筋力増強法は,健常者や様々な疾患にその効果を示している。近年,前田らによって考案されたHybrid法は,目的筋とは対側の拮抗筋に電気刺激を与え,その筋活動を運動抵抗として行う方法であり,従来とは異なる方法である。一方,遠心性収縮は高い筋張力が得られるため筋力増強に適している。本研究の目的は,電気刺激を目的筋である大腿四頭筋に与え,拮抗筋を求心性収縮させることで生じる遠心性収縮を利用した筋力増強法の効果について検討することである。<BR>【方法】<BR> 対象は,本研究に対して同意が得られた健常成人20名(男性11名,女性9名)とした。電気刺激には低周波治療器(パルスキュアー・プロ)を使用し,電極は非利き側の内側広筋,大腿直筋,外側広筋に貼付した。周波数は20Hz,通電・休止時間ともに10秒間の間歇通電法を用い,20分間/回,週3回,4週間とした。本法の筋力増強法は,電気刺激を大腿四頭筋に与えて膝関節を他動的に伸展させた後,随意的に屈曲させることで生じる遠心性収縮を利用した方法である(電気的遠心性筋力トレーニング:以下,EEMT)。測定項目は大腿四頭筋力および大腿周囲径(膝蓋骨上縁5.0/10.0/15.0cm),皮膚血流量,皮膚温度をトレーニング前および2,4週間後に測定した。統計処理は経時的変化を一元配置分散分析によって検定し,有意差を認めた場合はBonferroni法を用いて多重比較検定を行った。有意水準は5%未満(p<0.05)とした。<BR>【結果】<BR> 大腿四頭筋力はトレーニング前の188.3±72.0Nから2週間後に231.5±70.4N(22.9%),4週間後に271.7±73.2N(44.3%)へ有意な増加(p<0.001)を認めた。大腿周囲径は測定部位に関わらず4週間後に有意な増加(p<0.001)を認めた。皮膚血流量および皮膚温度は,どの部位においても経時的変化は認められなかった。<BR>【考察】<BR> 健常者を対象とした大腿四頭筋の筋力増強法は,電気刺激のみではトレーニング期間が4~6週間で最大筋力が約11~15%, Hybrid法では6週間で19~33%の増加率であったと報告されている。EEMTは先行研究と比較して,より短期間に効果を認め増加率も大きかった。電気刺激は速筋線維から興奮し,低頻度刺激は遅筋線維を賦活するとされており,遠心性収縮は速筋線維が優先的に動員され筋肥大しやすいという特徴がある。EEMT は目的筋に電気刺激と遠心性収縮を組み合わせて筋力トレーニングすることにより大腿周囲径も有意に増加し,効果的な筋力増強法と考えられた。また,筋力トレーニングや低周波電気刺激により循環動態を経時的な改善をみとめるとの報告もあるが,本研究の皮膚温度および血流量は大腿表面の変化を捉えているに過ぎず,今後はより詳細な検討が必要と考えられた。
著者
佐々木 誠 山上 弘義 白鳥 常男
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.17-23, 2000-01-31
被引用文献数
2

本研究の目的は, 下り勾配トレッドミル歩行の呼吸循環器障害患者への臨床応用の可能性の有無を考察することである。若年健常女性27名を対象に, 下り勾配トレッドミル歩行の運動負荷について, 上り勾配トレッドミル歩行のそれとの対比を含めて酸素搬送系の各指標および自覚的運動強度(RPE)から検討するために, 上り勾配と下り勾配でのトレッドミル運動負荷試験を実施した。運動負荷試験プロトコールは勾配0%から±15%まで7段階に2分毎にそれぞれ正負に漸増するものである。上り勾配では全指標が勾配漸増に伴って増加したのに対して, 下り勾配では酸素摂取量(V^^・O_2/kg)は-7%まで漸減した後-10%を境に増加傾向を示したが, 全値とも平地歩行より低値であった。酸素脈(O_2 pulse)もV^^・O_2/kgと同様の推移であったが, 心拍数(HR)は平地よりも僅かに低値のまま不変であり, 二重積(RPP)は平地歩行と同値で推移した。また, 分時換気量(V^^・_E)は-10%を最小とするV^^・O_2/kgと近似した推移を示したが, これは一回換気量(V_T)の漸減が理由と考えられ, 呼吸数(RR)は上り勾配と同様に漸増し続けた。更に, RPEは上り勾配ほど急峻ではないものの漸増した。以上より, 下り勾配歩行は酸素需要量が少ないにもかかわらず, 心筋酸素需要は減少せず浅く速い呼吸がもたらされ, 設定運動強度以上に"きつい運動"と感じられる特性があり, 呼吸循環器障害患者への臨床応用に否定的な要素が多かった。しかしながら, トレナビリティー, 慣れの効果, 筋収縮や歩行形態の相違による末梢効果や応用歩行への適応効果が期待される可能性が残されており, 更なる検討が必要と考えられた。
著者
宮城島 一史 対馬 栄輝 石田 和宏 佐藤 栄修 百町 貴彦 柳橋 寧 安倍 雄一郎
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.291-296, 2018 (Released:2018-10-20)
参考文献数
25
被引用文献数
1

【目的】本研究の目的は,腰部疾患手術後の遺残下肢症状に対する入院中の電気療法の継続効果を検討することである。【方法】対象は,腰椎後方手術後に下肢症状が遺残した50 例とし,症状部位に10 分間電気療法を実施した。入院中に電気療法を継続した例(電気継続群),電気療法の継続を中止した例(電気中止群)の2 群に分類し,下肢症状のVAS を調査した。【結果】電気継続群は39 例,電気中止群は11 例であった。電気継続群のVAS(術前→初回電気療法前→退院時)は70 →40 →14 mm であり,各時期で有意差を認めた。電気中止群のVAS は63 →45 →41 mm であり,初回電気療法前から退院時で有意差を認めなかった。多重ロジスティック回帰分析の結果,退院時のVAS(オッズ比:1.04)が選択された。【結論】腰部疾患手術後の遺残下肢症状に対し,入院中に電気療法を継続した群は,退院時の症状の回復が良好であった。
著者
松田 雅弘 新田 收 古谷 槇子 楠本 泰士 小山 貴之
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.248-255, 2018 (Released:2018-08-20)
参考文献数
18
被引用文献数
2

【目的】発達障害児はコミュニケーションと学習の障害以外にも,運動協調性や筋緊張の低下が指摘され,幼少期の感覚入力問題は運動協調性の低下の原因のひとつだと考えられる。本研究は幼児の運動の協調性と感覚との関連性の一端を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は定型発達の幼児39 名(平均年齢5.0 歳)とした。対象の保護者に対して,過去から現在の感覚と運動に関するアンケートを実施した。運動の協調性はボールの投球,捕球,蹴る動作の25 項目,80 点満点の評価を行った。5,6 歳児へのアンケート結果で,特に感覚の問題が多かった項目で「はい」と「いいえ」と回答した群に分けて比較した。【結果】「砂場で遊ぶことを嫌がることがあった。手足に砂がつくことを嫌がった」の項目で,「はい」と回答した群で有意に運動の協調性の総合点が低かった。【結論】過去から現在で表在感覚の一部に問題を示す児童は,児童期に運動の協調性が低い傾向がみられた。
著者
白石 涼 佐藤 圭祐 千知岩 伸匡 吉田 貞夫 尾川 貴洋
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.572-578, 2021

<p>【目的】大腿骨近位部骨折患者を対象に,腹部Computed Tomography(CT)の大腰筋面積で推定した骨格筋量と機能的予後の関連を調査した。【方法】回復期病棟に入院した113 名を骨格筋量減少群と対照群に分け,患者背景,機能的予後を比較した。Functional Independence Measure(以下,FIM)利得を目的変数とした重回帰分析を行い,骨格筋量との関連性を検討した。【結果】平均年齢は83.5 ± 8.3 歳,男性35 名,女性78 名であった。骨格筋量減少群は56 名だった。骨格筋量減少群は対照群に比べ,高齢で,痩せており,入院時認知FIM,退院時FIM 合計,FIM 利得が有意に低かった。多変量解析で,骨格筋量減少とFIM 利得に有意な関連を認めた。【結論】大腿骨近位部骨折患者における大腰筋面積で推定した骨格筋量減少は,機能的予後不良と関連することが示唆された。</p>
著者
清水 忍 沼田 憲治 前田 真治
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.187-191, 2001-05-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
14

手指の系列運動課題における学習転移を指標として,運動プログラミングの左右半球優位性について検討した。対象は右利き健常大学生34名とし,ランダムに3群(右手練習群,左手練習群,コントロール群)に分けた。運動課題は一側手で出来るだけ速く第II-IV-III-V指の順にボタンスイッチを押させる系列運動課題とした。右手練習群は右手のみ,左手練習群は左手のみで30分間の練習を行った。コントロール群はこの間一切の練習を行わなかった。この練習前後で,各被検者とも両側手について本課題を遂行するのに要する時間(遂行時間)を測定し,3群間で比較した。練習前の遂行時間の成績には3群間で差はなかった。練習後,右手の遂行時間は左右両側手の練習効果を受けて短縮し,左手は左手練習の練習効果のみを受けた。このことから,左半球は両側手の運動学習に関与するのに対し,右半球は主に左手の運動学習に関与すると考えられ,運動のプログラミングにおいて左半球が優位である可能性が示唆された。
著者
大寺 祥佑 金沢 星慶 金沢 奈津子 木内 隆裕 中山 健夫
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11025, (Released:2015-11-30)
参考文献数
28

【目的】本研究の目的は理学療法診療ガイドライン第1版の質を評価し,今後の改訂に向けて検討すべき課題を提示することである。【方法】AGREE II を用いて4人の理学療法士が独立にガイドラインを評価し,各ガイドラインの質の最終評価について合意を形成した。【結果】16件のガイドラインが評価の対象となった。領域別スコアの中央値(範囲:最小値~最大値)は,「対象と目的」54%(32~65%),「利害関係者の参加」38%(32~51%),「作成の厳密さ」35%(32~51%),「提示の明確さ」31%(26~47%),「適用可能性」9%(6~17%),「編集の独立性」19%(17~19%)であった。重要な推奨の明示に関する評価は,7段階リッカートスケールで中央値が3.0点(2.5~3.5点)であった。【結論】今後の改訂では,推奨の明確な提示や臨床における適用方法,利益相反の明示に留意するべきである。
著者
藤井 智 畠中 泰司 中石 睦 秋山 江里
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.64-68, 1992-01-10

在宅重度障害者を対象に, 浴室の改造やリハビリテーション機器の利用等を指導した92例について, 入浴形態, 介助の状況, 改造内容, 機器の利用状況等を調査・検討した。結果は, 1)リハ機器導入と手すり設置等の簡単な改造を合わせて行ったものが多かった。2)介助者数や入浴形態を大きく変えることはできなかった。3)手すりに掴まったり, 安定した坐位を基本姿勢とすることで, 介助量を減らし, より容易に, 安全に入浴できるようになった。4)ほぼ全例に, 介助方法などの実地指導を繰り返し行った。環境・経済的問題や家族の受け入れ等の問題から, 簡単な改造にとどまる例が多かった。しかし, リハ機器導入とともに,入浴方法の実地指導を行うことで, 介助量を軽減することができ, 新しい環境にあわせた指導の重要性が示唆された。