著者
伊藤 美紀子 坂上 元祥 加藤 陽二 田中 更沙
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

透析患者では低栄養によるサルコペニア・フレイルの発症率が高い。その要因として高リン血症による心血管疾患を予防するためのリン摂取制限がある。リン摂取制限はたんぱく質の摂取不足につながる。マグネシウムは石灰化を抑制する。そのためマグネシウムの摂取は透析患者の血管石灰化と低栄養を抑制できる可能性がある。本研究では動物モデルを用いて、食事中のリン/マグネシウム比が血管石灰化と筋肉量に与える影響を明らかにする。さらに透析患者の食事調査を行い、リン/マグネシウム比と低栄養との関連を解析する。これらの研究結果にもとづいて栄養療法を開発する。
著者
永井 成美 坂根 直樹
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

「働き方改革」により柔軟な働き方が広まりつつあるが、社会のインフラを支える24時間シフト制の職種は一定数存在する。体内時計とのズレにより生じるシフトワーカーの疾病や傷害を予防し、生産性と社会秩序を維持するためにも時間栄養学に基づく「食べ方改革」が望まれる。本研究では、1)食べる時刻(朝・昼・夕・夜間)や活動・睡眠時間帯を考慮した「食べ方改革レシピ」と「食べ方改革ルール」を開発し、2)夜間勤務のある事業所での介入研究により効果を検証する。最終目的は、一億総活躍社会をめざす「働き方改革」の中で勤務時間の変更が難しい夜間・シフト勤務者の健康を「食」で下支えし、活力ある社会の実現に貢献することである。
著者
木之下 博 仁科 勇太 松本 直浩
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

酸化グラフェンを低摩擦・低摩耗添加剤として用いるために,加熱あるいは分散剤を用いて酸化グラフェンを還元して潤滑油に添加した. 加熱分散では摩擦係数は無添加よりも低いが分散温度に依存せず,摩耗は無添加よりも低く加熱温度が低いほど低くなった.分散剤を用いた分散では摩擦係数は無添加よりも低いが分散剤濃度に依存せず,摩耗は分散剤濃度が低い時,無添加より小さくなり,摩擦実験を-10℃で行った時に,既存の潤滑添加剤と同等の摩耗低減効果を示した.このように低温においても高い潤滑性がみられたさらに,ZnDTPとの併用で摩擦が非常に低くなることが明らかとなった.
著者
根来 誠司 武尾 正弘 加藤 太一郎 竹原 一起 藤井 翼
出版者
兵庫県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

国内外でポリマーの再資源化やモノマーのバイオ生産が重要視されている。Arthrobacter sp. KI72株はナイロンオリゴマー分解酵素NylA/NylB/NylCにより、6-アミノヘキサン酸(Ahx)オリゴマーをAhxまで分解する。Ahxはアミノトランスフェラーゼ(NylD)によりアジピン酸セミアルデヒドに変換され、その後、デヒドロゲナーゼ(NylE)によりアジピン酸へと代謝されること、ⅱ)NylDについては2種、NylEについては20種の類似遺伝子が認められること、ⅲ)NylD1,NylE1を共役させた反応系により、Ahxは約90%の変換率でアジピン酸へ変換されることを明らかにした。
著者
近藤 千明 野並 葉子 森 菊子 魚里 明子
出版者
兵庫県立大学
雑誌
兵庫県立大学看護学部紀要 (ISSN:13498991)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.65-75, 2005-03-15

在宅介護者は、介護のため長時間の外出は難しく、病院や看護相談に行くことが困難な状況にある。また、生活の場で行われる在宅介護は、介護者の生活習慣に少なからず影響すると考えられる。そこで、在宅にいながらでも利用可能な看護相談システムを検討することとした。今回は、在宅介護者に、電子メールを用いた生活習慣病予防のための看護相談を行い、その利用状況と相談内容について事例毎に検討を行うこととした。対象は、訪問看護を受けている在宅介護者3名とし、看護相談の実施期間は、平成15年9月から平成16年1月の4ヶ月とした。その結果、(1)3名の電子メールの利用回数は、5回、14回、12回であり、全員が利用できたが、利用時間帯や回数は個人差があった。電子メールの初心者には、電話窓口を設置したが、利用は1回のみであった。(2)A氏は、在宅介護者の生活習慣病予防のための看護相談であったが、要介護者に関する相談のみの利用であった。(3)B氏は、最初は要介護者に関する相談であったが、研究者が食事の内容や生活を尋ねていくと、介護者自身に関する相談へと変化した。(4)C氏は、最初から介護者自身に関する相談があり、研究期間の後半では、相談以外に楽しかった出来事の報告もあった。在宅介護者への電子メールを用いた看護相談は、要介護者の健康に間する相談と在宅介護者自身の健康に関する相談の両者に対応していく必要性が示唆された。
著者
車井 浩子
出版者
兵庫県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、代理変数を含む回帰モデルにおける推定量の統計的性質と代理変数の質の関係を明らかにし、実証分析へ応用することを目的とした。推定量の理論的分析に関しては、各種縮小推定量を用いて研究を行った。分析結果より、用いる代理変数の質が推定量の統計的性質の評価に影響を与えることが明らかになった。さらに、評価基準である損失関数を考慮すると、用いる損失関数によっても推定量に関する評価が異なることが明らかになった。これら結果より、推定量の統計的性質に着目した場合、代理変数の質が良い場合であってもその代理変数を用いないほうが望ましい場合があり、観測不可能な変数が回帰モデルに含まれる場合には、推定量の評価基準や代理変数の質を考慮した上で推定方法の選択を行うべきであることが明らかになった。これら結果は、論文1にもまとめられている。さらに、今年度はこれら理論分析による結果を考慮した賃金関数の実証分析、および実証分析を行う上でさらに必要となる推定量の理論分析を行っている。実証分析においては、研究対象を大卒男性とし、賃金センサスによるデータを用いている。実証分析を行う際には、得られた推定量の有意性について仮説検定を行う必要がある。しかし、本研究で用いている各種推定量については、その密度関数を理論的に求めることは難しく、仮説検定を行うことが極めて困難である。本研究では、この点にも着目し、推定量の密度関数に関してブートストラップ法を用いた分析を行っている。ブートストラップ法を用いることで、密度関数がわからない推定量についても、有意性の検定を行う際の棄却域を数値計算により求めることが可能であり、本研究や用いている各種推定量をより適切に実証分析に応用することが可能になる。論文1.非対称な損失関数に基づく代理変数の統計的性質、国民経済雑誌2005年
著者
山本 真一郎
出版者
兵庫県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究ではまず、新たな電磁環境対策材料として、金属線配列材を用いた反射・透過制御材設計法を確立し、反射・透過特性を評価した。具体的には、負の等価比誘電率を持つ金属線配列材と誘電体を組み合わせた構成により、バインドパスフィルター、ハイパスフィルターが設計可能であることを示した。さらに、有限長金属線配列材を制御材の一部に取り入れることにより、全透過・全反射周波数を制御できることを確認した。次に、近年注目されているミリ波帯での遮蔽材を評価するため、ミリ波用透過係数測定装置を新たに作製した。種々のミリ波遮蔽材を評価することにより、妥当な結果を得た。
著者
江崎 保男 大迫 義人 佐川 志朗 内藤 和明 三橋 弘宗 細谷 和海 菊地 直樹
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

兵庫県但馬地方のコウノトリ再導入個体群は2015年に、そのサイズが80に達したが、本研究により社会構造がほぼ解明され、但馬地方の環境収容力が約50羽であることがわかった。巣塔の移動や給餌の中止を地域住民の合意のもとに進め、生息適地解析、個体群モデルの活用、核DNAをもちいた家系管理を進めながら、水系の連続性確保に努めた結果、餌動物の現存量増加が確認できたことなど、野生復帰が大いに進展した。また、コウノトリが全国各地に飛んで行き、徳島県では新規ペアが産卵するなど、メタ個体群形成に向かって野生復帰が一気に加速しており、アダプティブ・マネジメントの手法もほぼ確立できた。
著者
石田 弘明
出版者
兵庫県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、ニホンジカの不嗜好性植物が生態系保全に果たす役割とその緑化材料としての有用性について検討すると共に、不嗜好性植物を用いた緑化手法の開発を行うことを目的とした。ニホンジカが高密度に生息する地域で不嗜好性植物の調査を行った結果、様々な種類の不嗜好性植物が緑化材料として有用であることがわかった。また、不嗜好性植物を用いた緑化試験の結果、種子・胞子の播種による緑化は非常に困難であるが、苗の移植による緑化は比較的容易であることが示唆された。
著者
三木 雅道 高田 潤 鈴木 道隆 菊池 丈幸
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

ウッドセラミックス(WCS)は,廃木材を原料とし,フェノール樹脂と複合化して低酸素中での熱処理によって得られる炭素系新素材であり,木質由来の易黒鉛化炭素(多くのマクロ孔を有する)とフェノール樹脂由来の難黒鉛化炭素(ミクロ孔の生成に有効)から構成される複合炭素材料である.ウッドセラミックスの製法には2種類あり,中密度繊維板(MDF)に液状フェノール樹脂を含浸させて後,焼成する「MDF法」と,木粉とフェノール樹脂粉を混合後,室温プレスして後焼成する「粉末法」とがある.本研究は,このウッドセラミックスを有害ガスや水分の吸着材として活用することを目指して,その吸着量の指標となる比表面積を上昇させるには,MDF法がよいのか?木粉法がよいのか?さらに,フェノール樹脂の量は比表面積にどのような影響をおよぼすのか?また,原料に用いる木材の種類はどのようなものがよいのか?を調べるために行なった.得られた成果を列挙すると,以下のようになる.(1)同じフェノール樹脂量の場合,粉末法の方がより高い比表面積を得られることがわかった.すなわち,700℃焼成の場合,フェノール樹脂量を30%と一定にした場合,MDF法では,280m^2・g^<-1>,木粉法では,380m^2^<-1>であった.(2)粉末怯の場合,フェノール樹脂粉の量を増加させるにつれて,比表面積も増大した.ただ,100%フェノール樹脂粉にすると,かえって比表面積は低下した.700℃焼成試料の最高の比表面積は,70%フェノーノレ量の場合で450m^2・g^<-1>であった.(3)原料木材の種類が比表面積におよぼす影響を調べた結果,嵩密度の大きいうばめ樫は比較的低温の600℃ですでに330m^2・g^<-1>を示したが,その後800℃まで昇温してもその値はほとんど変わらなかった.一方,嵩密度の小さい針葉樹(松,杉)や竹,広葉樹のアオダモは,600℃で焼成では200-280m^2^<-1>とうばめ樫より低い値を示すが,700℃焼成では330m^2^<-1>とほぼ同じ値に追いつき,800℃焼成ではうばめ樫を追い越して330-450m^2^<-1>となった.このことから,600℃のような比較的低温焼成で大きな比表面積を得るためには,うばめ樫粉末とフェノール樹脂粉末を用いるのがよく,800℃での焼成ではアオダモや杉,松の粉末とフェノール樹脂の粉末を用いれば,高い比表面積を得ることが出来ると考えられる.