著者
安川 智之
出版者
兵庫県立大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

ネガティブ誘電泳動を利用して様々な細胞のラインパターニングを行った.マウス繊維芽細胞(3T3swiss albino),マウス筋芽細胞(C2C12),ヒト白血病Tリンパ腫細胞(Jurkat),ヒト単球性白血病細胞(THP-1)および神経モデル細胞であるラット褐色細胞腫(PC-12)のパターニングが可能であった.この中で, 3T3およびC2C12細胞について詳細に誘電泳動特性を評価した.印加する交流電圧を変化させ交差周波数の溶媒導電率依存性を調査した.溶媒の導電率を増加させると交差周波数が増加することがわかった.これらの細胞の培地の導電率(2 S/m)の場合には計測に要する全ての周波数領域にてネガティブ誘電泳動が作用することがわかった.溶媒導電率の増加に伴い,パターニングに要する時間も増加した.しかし,パターニングに要する時間は最大で1-2分程度で,十分迅速性を保てた.また,印加電圧に対するパターン形成率および細胞の生存率を調べた.印加電圧の増加に伴い,パターン形成率も増加した.しかし,生存率は,12 Vp-pが最大でそれ以上の電圧を印加すると強い電場ストレスにより細胞が増殖できず死滅することがわかった.最適電圧(12 vp-p)を3-5分間程度印加し続けると細胞は,基板上に付着して配列パターンを保持したまま固定化された.この配列化微粒子上で細胞を培養すると細胞は配列化微粒子上に選択的に付着し成長した.また,直接固体基板上に配列化された細胞のほとんどが,増殖,伸展し,約1日後にはランダムな状態の戻った.このことから,誘電泳動による電場の印加が細胞のバイアビリティーにほとんど影響を及ぼさないことがわかった.4極独立型マイクロバンドアレイ電極を用いると,迅速で簡便な異種細胞の交互ラインパターンの構築が可能であった.ポジティブ誘電泳動を利用し,微粒子や細胞の海島状構造を作製することができた.
著者
片山 貴文
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

災害時に混乱せずに活用できることを目指して、2つの看護記録シートを開発した。このシートを評価したところ、住民の92.7%が、自分の健康状態を伝えることに役立つと回答していた。また、看護職者の94.3%が、緊急に支援が必要な人を、および、96.2%が、継続的に支援が必要な人を、それぞれ把握することに役立つと回答していた。東日本大震災では、日本医師会の災害医療チームが、この看護記録シートを用いて避難所の支援活動を行った例がみられ、実際に被災者支援に役立てることができた。
著者
室山 泰之 山田 彩 遠藤 美香
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

集落などの人為的な環境を利用する複数のニホンザル集団を追跡調査するとともに、その生息環境を環境省植生図などの既存の資料と現地調査から分析することにより、彼らの土地利用と環境選択、個体群パラメータなどを明らかにした。集落を利用するニホンザルにとって、集落に隣接する林は採食や休息などの多様な機能をもつ生息地であること、農作物採食によって出産率の上昇など個体数増加につながる変化が起こることなどを明らかにした。
著者
柏木 敦
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は(1)太平洋戦前期における地方長官会議関係資料の収集・分析を行う、(2)中央と地方との相互作用による政策(徳に教育政策)決定のプロセスを解明する、という2点を主な目的として進めた。その結果3年間の研究により、アジア太平洋戦前・戦後にかけて、のべ112(113)回開催された地方長官会議の関係資料を、帝国憲法体制が発足した1890(明治23)年以降分(およそ96回分)に関して、全体の7割以上にあたる74回分の史料収集ならびに所在確認を行うことが出来た。
著者
柴田 真志 若村 智子 柴田 しおり
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究の主たる目的は、起床時体温低値児童の日常身体活動量、就寝時メラトニン量、体温日内リズムなどの特性について検討することであった。本研究で明らかになった主な結果は、次の通りである。1)朝型夜型得点は、早寝早起きや身体活動量と相関関係が認められた。2)身体活動量が多い歩数高値群の体温日内リズムは、起床時と就寝時に差がなく、昼が有意に高かったが、一方歩数低値群は、起床時が昼および就寝時に比べ低値であった。3)日歩数と就寝時メラトニン量の間には、有意な正の相関関係が認められた。4)日歩数とΔ体温値(起床時体温-就寝時体温)の間には正の相関関係が認められた。したがって、日歩数が高値であるほど、起床時に比べて就寝時の体温が低く、睡眠導入が容易であると推察された。5)起床時体温低値児童の夜間体温変動を観察したところ、一般児童に比べ、夜間最低体温時刻が朝方に後退していることが認められた。6)夏の体温(全対象者の平均値)は、冬に比べて起床時、昼および就寝時ともに高かった。冬の日歩数が夏に比べて8,000歩ほど低下した児童もまた同様な傾向であった。しかしながら、冬の日歩数が夏に比べて増加した上位11名(4,500歩ほど増加)の児童では、冬の起床時体温の低下が抑制され、夏と有意な差は認められなかった。以上のことから、日常身体活動量は、体温の日内リズムに影響を及ぼす可能性が示唆された。低い身体活動量によって、就寝時メラトニン量が低値で、就寝時体温に十分な低下が見られず、夜間最低体温時刻が朝方に後退した結果、起床時体温が低値である可能性が考えられた。
著者
竹田 直樹 八木 健太郎
出版者
兵庫県立大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

平成18年度に引き続き、昨年度のディスカッションを通して見いだされた課題をさらに詳細に検討し、都市におけるアートの変容過程を明らかにするための調査と分析を行った。日本国内におけるアートの存在形態に関する研究については、代表者の竹田が中心となって研究分担者とともに研究を進めた。その結果、わが国のパブリックアートとしては、公共空間に彫刻などの美術作品を設置するという形態を取ることが多いことが明らかになったが、こうした自治体などの彫刻設置事業にも、時代によってその枠組みに違いが生まれたことが見出された。その成果の一部として、こうした枠組みの一つとして彫刻シンポジウム型の彫刻設置事業について、その発生と変遷の過程を明らかにした論文が環境芸術学会誌に掲載され公表されている。また、現在進行しつつあるプロジェクト型のアートについては、各地のプロジェクトの調査にもとづいて一般誌等にその成果が発表されているほか、研究代表者らは実際に制作者としても参加することによってその実態の解明を進めた。一方、海外におけるアートの存在形態に関する研究については、研究分担者の八木を中心となって研究代表者とともに研究を進めた。最も大きな変化があった期間として4特に1980年代のアメリカにおける変化の重要性に着目し、昨年度のパブリックアートの見直し研究の調査に加え、1980年代を中心とするアメリカにおけるパブリックアート政策の枠組みに関する研究を進めた。アートを導入する側と、アートを制作する側の双方の視点から検討することにより、1980年代に起きた大きな変化が、導入する側においては冷戦の終結による政治的な役割の終焉が、制作する側においては美術の自律性に関わる意識の変化が重要な要因となって発生したことを明らかにした。この成果は、環境芸術学会誌に論文として掲載され、公表されている。
著者
神崎 初美 東 ますみ 芦田 信之 那須 靖弘
出版者
兵庫県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

災害支援Ns養成に活かす仕組みとして、1)育成支援システムを構築するため、詳細な学習プログラムを作成した。2)個人評価システムの構築として、プログラム受講効果を受講前と後・半年後(フォローアップ研修時)に評価できる評価表を作成し、自己評価制とした。3)集団教育支援の査定(看護ケアの質の安定性と継続ケアの実現性に関する評価)では、県内病院の卒後院内研修プログラムに「まちの保健室」講義と実習を取り入れ、評価した。4)効果・エビデンスの蓄積は、研修プログラムの評価を行ったことと、東日本大震災時の災害支援Ns派遣実績とその報告で得ることができた。また、東日本大震災被災地での看護の経験知を「災害支援ナース実践マニュアル」として作成し、被災地に持参できるようにした。
著者
豊田 紀章
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

Ar等から形成されたメゾスコピッククラスタービームを用い、ピックアップセルを用いた混合クラスター形成や、荷電状態、クラスターサイズ、照射中雰囲気ガスなどを変化させて有機材料のダメージフリー・ナノ加工を行った。損傷評価には主としてGCIBと真空一貫で接続された光電子分光分析装置を用いた。その結果、低イオン化電子電圧による多価クラスターイオン生成の抑制や、クラスターサイズ制御、水蒸気等の雰囲気ガス制御を行うことにより、低損傷で有機材料の加工が可能であることを示した。
著者
木下 博雄 渡邊 健夫 格内 敏 YASHIRODA Yoko YOSHIDA Yukiko KAMEMURA Kazuo 新部 正人
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、次世代リソグラフィ技術である極端紫外線露光法を2009年までに実用化するために、その課題の一つであるマスク基板の無欠陥化を目標とする。このため、多層膜が形成されたガラス基板上の欠陥を露光光と同一のEUV光で直接観察し、さらにミラウ型の位相差干渉顕微鏡の構築により、サブナノメートル(0,03nm)の微細な表面界面の3次元像の形成を実現させる。当該研究機関において、1)EUV顕微鏡の製作、2)ビームスプリッタの製作技術、3)プログラム欠陥をもつ位相欠陥マスクの製作と評価、を進めた。1)については、形状精度、表面粗さともに、0.3nm以下を満足させるNA0.3、30倍のシュバルツシュルト光学系を入手し、ニュースバルビームライン3に設置した。2)については、厚さ100nm以下のメンブレン構造とせねばならないことから、膜応力の低減、均一化など、さまざまな改良を進めているが、未だに干渉実験に供するものが出来上がっていない。3)のプログラム欠陥に対しては、HOYAの協力を求め、高さ5nm、幅90nm〜500nmの凹凸欠陥をもつガラス基板に多層膜を形成したマスクにて評価を進めた。この結果、凹、凸とも5nmの高さで90nmの幅をもつ立相欠陥の観察に世界で初めて実現できた。本研究課題の位相差型顕微鏡の開発は、ビームスプリッタの製作の困難さから、現時点では実現できなかった。しかしながら、極端紫外線領域での顕微鏡により位相欠陥の観察が可能となり、ほぼ初期目標を満足させることが出来たと考えている。この種の位相欠陥の観察として、ゾーンプレートを用いる方式も米国Berkeley研究所で行われているが、本方式が解像度、観察領域ともに優れている。今後、この成果は、極端紫外線リソグラフィ用のマスク評価として、HOYA、旭硝子、Seleteの国内機関の他、Samsung電子等に解放し、利用研究が進められる。
著者
田路 秀樹 金子 公宥
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

両側性および一側性の肘屈曲運動によるパワー発揮特性を力-速度関係から検討した結果、力-速度、力-パワー関係においても両側性機能低下が認められると共に、最大筋力、最大速度、最大パワーにおいても有意な両側性機能低下が認められた。また、両側性・一側性によるレジスタンス・トレーニングでは、両側トレーニングにより両側運動が、一側トレーニングにより一側運動が増加し、特に筋力の特異的な増加が見られた。
著者
白川 功 稲田 紘 有馬 昌宏 西村 治彦 中野 雅至 東 ますみ 川向 肇 水野 由子
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

感染症の爆発的流行を含む災害時の要援護者支援や迅速かつ正確な住民の安否確認ならびに避難所での避難者の医療・看護・介護などを含む生活支援には、機微情報を含む個人情報の事前登録と状況に応じた個人情報の更新が不可欠となる。本研究では、QRコードと地理情報システムと無線通信技術を活用して、避難経路の安全確保も含め、個人情報保護に配慮した避難支援システムを構築し、避難者のストレス軽減を考慮に入れつつ、医療・健康管理データを記録するシステムのプロトタイプも構築して、防災訓練などでの実証実験で有効性を確認した。
著者
菊地 直樹
出版者
兵庫県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

コウノトリの野生復帰事業が進展する兵庫県但馬地方で、コウノトリの「語り」を聞き取る調査を実施してきた。「語り方」を解析して、自然再生のシンボル種であるコウノトリを語ることによって人と自然の日常的な関係性の多元的な諸相が析出された。これは(1)地域性によるのか、(2)コウノトリという種の特徴によるのか、という問題関心に基づき、愛媛県西予市のコウノトリ、新潟県佐渡市のトキ、北海道釧路市のタンチョウの聞き取り調査を実施した。2006年にコウノトリが飛来した西予市では、人とコウノトリの行動圏が交差しており、コウノトリを通して地域を見直す活動が見られた。昨年度の調査と同様、「地域の鳥」として語られているが、多元的に語られなかった。コウノトリと暮らしてきた歴史性に欠ける地域では、「語り方」が異なっている。給餌人を中心に聞き取りを実施した釧路市では、昨年度と同様に「家の鳥」としてタンチョウが語られる特徴が見られた。作物を荒らす、人や物に危害を加えるという語りもあり、給餌しているタンチョウが畑を荒らすと「ウチのツルがすいません」といった語りも出てくる。釧路湿原に生息地が移動する繁殖期には、人とタンチョウのかかわりは一端切れてしまい、この時期のタンチョウは家族化されることはない。かかわりが冬期に集中するためか、タンチョウを通して人と自然の関係性が語られることや地域を見直す語りもほとんどなかった。このように、給餌活動というかかわりの有無、物理的・精神的距離によって、意味づけが変容する。コウノトリは「地域の鳥」、タンチョウは「家の鳥」という「語り方」に違いは、(1)人間の働きかけ(給餌活動など)と空間の意味という社会学的側面と、(2)鳥の生態から考えることができる。コウノトリは通年、人の日常空間を行動圏とするが、タンチョウは越冬期は給餌され、私有地を行動圏とする。繁殖期は釧路湿原という「公」の空間を行動圏とし、コウノトリに見られた私と公の間にある曖昧な空間をあまり行動圏としない。私と公に分断されたタンチョウと比較すると、コウノトリを「語る」ことは、相対的に人の日常生活と重なる自然を語ることにつながる。自然の象徴という同じ価値が付与された生物でも、生息域や行動の違い、かかわりの歴史性などによって、「語り方」が異なり、表象される自然も異なる。再生すべき自然は、多くの場合、生物によって象徴される。本研究に従えば、どの生物を取り上げるかによって、自然のイメージも異なってくる。自然の再生イメージ像の構築に向けて、どの生物をどのように語るのか、その「語り方」が問われるが、人と生物の行動圏が交差する空間とそこに生息する生物の意味を分析的に論じることが、今後の課題である。環境社会学と生態学を融合した視点が求められる。
著者
三橋 弘宗 内藤 和明 江崎 保男 大迫 義人 池田 啓 池田 啓
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、国内で最後のコウノトリ生息地となった豊岡盆地の生態系の特性を明らかにするため、生態学的方法と博物館学的方法を用いて、データ解析と分析を行った。生態学的な方法として、円山川の河川高水敷きにおける湿地の再創造に関する操作実験や、行動追跡および冬季における利用実態について市民からの情報を集積して解析を行った。その結果、ワンドを再創造した場所では、魚類個体数は2~5倍に増加するほか、円山川流域全体の約40%の種が生息できることが確認できた。また、野外での詳細な行動追跡データの解析結果では、1)水深15cm以下で畦近くの湿田に集中すること、2)季節によってホームレンジが変化し、夏場が最も広く、冬場が狭いこと、3)河川本流では、潮位の変動によって水深が約40cm以下になると集団利用し、絶対的な水深ではなく、潮位の低下に呼応する傾向があった。博物館学的方法では、全国のコウノトリ標本の把握と分布記録の集積を行い、412地点(721記録)を収集し、生息適地モデルによる解析を行った。その結果、海岸近くの低地および河口干潟の存在が立地の好適性に寄与することが分かった。次に、コウノトリ標本の安定同位体による海起源寄与についての分析を行うために、豊岡市河口域および内陸部においてアオサギ類の羽の炭素・窒素・硫黄の安定同位体分析を行った。しかし、これらの結果では、データ分散があまりに大きく、残念ながら評価には至っていない。これらのアプローチを統合する形で、コウノトリが頻繁に利用する地区において、地域住民の参加による小規模な自然再生を実施した結果、簡便な方法でも両生類の生息密度を回復できることを示し、ツーリズムとしての自然再生への参画可能性について検討した。最後に、こうした取り組みについて、人と自然の博物館において、企画展「コウノトリがいる風景」を開催し、市民から提供を受けた写真資料や収集資料の公開、研究成果の発信を行った。
著者
横田 悦雄
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

タバコ培養細胞BY-2において、小胞体輸送に関与していると考えられるミオシンXIのアイソフォームのひとつである、175-kDa重鎖からなる175-kDaミオシンと小胞体との関連性を細胞分画法によって検討した。GFPでラベルされた小胞体(GFP-ER)を発現しているBY-2細胞のプロトプラストを、ダウンスホモジェナイザーによりマイルドに破砕して、遠心法によって分画を行った結果,175-kDaミオシンとGFP-ERのシグナルは、主にミクロゾーム画分と可溶性画分に検出され、両成分の分布は一致していた。さらに可溶性画分とミクロゾーム画分を含む分画をショ糖密度勾配遠心法によって分画したところ、175-kDaミオシンの一部がGFPのシグナルと同じ画分に検出された。これらの結果から、175-kDaミオシンは小胞体に結合して、その輸送を担うミオシンであることが更に強く示唆された。しかし、シャジクモ節間細胞のアクチンケーブルや植物アクチン束化タンパク質であるビリンにより束化させたアクチン束を用いたin vitro運動再構成系において、このような小胞体はアクチン繊維上を動くことはなかった。おもしろいことに、アフリカツメガエル卵細胞から単離した小胞体と同様、BY-2細胞から調製した小胞体にGTPを加えたところ、チューブ状の構造が形成された。このような構造は、細胞表層部で観察される小胞体網目状ネットワークに相当すると思われる。またIn vitroにおける単離小胞体のチューブ形成には、溶液内の流れなどの力が必要であることがわかった。そして細胞内では、このような力はミオシンによって発生していることが示唆された。
著者
森 菊子
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、安定期を維持できている慢性閉塞性肺疾患患者の呼吸器感染に関するセルフマネジメントの状況と、呼吸器感染症状・サインのモニタリング項目を明らかにし、慢性呼吸器疾患患者の呼吸器感染症状のアセスメントツールを検討することを目的とした。まず、1年以上呼吸器感染による急性増悪での入院経験のない慢性閉塞性肺疾患患者7名に、セルフマネジメントの状況について半構成的面接法によりインタビューを行った。その結果、協力者は風邪と思ったら早めに風邪薬を内服し、効かなかった場合は早期に受診する判断をしており、受診のタイミングの判断が重要であると考えられた。また、体温、酸素飽和度などを指標として客観的に自分の身体の変化をとらえたり、平常の範囲を知っていて何かおかしいと感じた時に、症状と数値を照らし合わせて判断しており、客観的に身体の状態を見ていくことが重要と考えられた。この結果をふまえ、慢性閉塞性肺疾患患者9名に、痰、身体の感覚の変化、咳、体温、鼻水、くしゃみ、咽頭痛、酸素飽和度、脈拍、気分・気力、食欲の状態に関する項目について、「0:ない」から「10:非常に多い」で1ヶ月間モニタリングをしてもらった。その結果、9名中6名において、症状・サインの悪化、回復の変化が見られた。症状の悪化が見られた人においては、咳の回数、痰の粘稠度、痰の量、鼻水、くしゃみの悪化が先行し、微熱出現より1日早めあるいは同時に気分の低下、気力の低下、食欲の低下が見られた。黄色痰については、発熱後に見られる傾向があった。以上より、慢性呼吸器疾患患者が早期に自分の状態をアセスメントするためのモニタリング項目として、咳の回数、痰の粘稠度、痰の量、鼻水、くしゃみ、体温、気分の低下、気力の低下、食欲の低下は有効であると考えられた。また、その変化をとらえることで急性増悪予防の対処につなげていくことができると考えられた。
著者
永田 正義 福本 直之 菊池 祐介
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では磁化同軸プラズマガンを用いた磁気ヘリシティ入射法により、プラズマ中に駆動される高速イオン流の特性について各種流速計測法(マッハプローブやイオンドップラー分光法等)を用いて調べながら、電子流体だけでなく、イオンの流れが強く関与する高ベータ磁気流体プラズマの自律的磁場構造形成について解明を行い、2磁気流体緩和物理について理解を深めた
著者
秋山 弘之 山口 富美夫
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

(1) 屋久島の蘚苔類相については, 新種2種を含む, 蘚類44科160属, 355種1亜種18変種2品種, 苔類37科87属304種2亜種2変種, ツノゴケ類1科5属6種が屋久島から報告されていることを確認した.我々の調査手法により, 68年ぶりに生育を確認されたフウチョウゴケに代表されるように, 多数の絶滅危惧植物の屋久島における分布状況が把握された. その一方, 20年前には豊富に産していた葉上着生苔類の減少が著しいことが明らかと成った.(2) 屋久島における蘚苔類の種多様性は, 淀川小屋周辺の林内にあることがわかった. 一方, 屋久島低地亜熱帯林から報告されている種については, 今回の調査でも確認することができない種が少なくなく, この地域での保全活動が緊急であることが示された.(3) 屋久島産ケゼニゴケには, 2倍体と3倍体の集団があり, それぞれ低地と高地にすみわけを行っていた.また, 屋久島3倍体は本州の3倍体集団に較べ, 琉球地域の2倍体集団に遺伝的により近いことがわかった.
著者
加藤 太一郎
出版者
兵庫県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

「光る虫」といえば「ホタル」とすぐに連想できるほど、我々にとってホタルは身近で、かつ心が惹きつけられる存在である。このようにホタルルシフェラーゼといえば発光反応を触媒する酵素だと思われがちであるが、実は立体選択的なチオエステル化という、もう一つの触媒活性があることを発見した。例えば構造中に1つの不斉点を有するケトプロフェンを基質とした場合、ヘイケボタル由来ルシフェラーゼはR体を優先的にチオエステル体へと変換する。本研究では、本酵素がどのように基質の不斉を識別しているのかを明らかにするために、ホタルルシフェラーゼを用いたチオエステル化反応の詳細な機構解析やMDシミュレーション、および結晶構造解析を試み、その理由の一端を明らかにすることができた。
著者
勝原 裕美子
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.研究目的:看護管理者が直面する倫理課題を明らかにし、それらの倫理課題にどの程度対処しているのかを明らかにすること。2.研究方法:全国のランダムに選択した500病院を対象とし、同意の得られた140(28%)病院の看護師長総勢1039人を対象に全国調査を実施。472名(46%)から回答が得られた。質問紙は6分野(患者の療養環壌、職員の労働環境、サービスの質、人間関係、臨床教育、専門職としてのモラル)、39項目からなり、それぞれA「自分の管理する病棟で生じる頻度」、B「自分の管理する部署で生じた時の師長としての対応の程度」、C「対応しても不満足が残る程度」、D「自分の勤める病院内で見聞きする程度」の4側面を4段階のライカートスケールにてきくという構成である。3.研究結果:1)対象者の内訳は、女性450名、男性22名。平均年齢48.5才。師長の平均経験年数は8.8年であった。2)セクションAで平均点の高かったのは、1位から順に「人的資源が不足している」「仕事がどのように評価されているのかが不透明である」「サービス残業が行われている」であり、いずれも職員の労働環境に関するものが上位であった。逆に平均点の低い順は、「職員の間で暴力行為がある」「患者から内緒にして欲しいと頼まれた内容を、患者への配慮なしに他言する」「患者・家族から暴力行為がある」であった。3)セクションA, B, C, Dごとに平均点の高い順に並び替え、順位相関を検定したところ、AとC, AとDには非常に高い相関がみられた。また、AとB、BとCには逆相関がみられた。このことより、師長が自分の管理する部署でよく起きていると認知している倫理課題は病院でもよく起きていると認知しており、そのことにできるだけ対処しようとしているが、対処しても不満が残っているということが明らかになった。
著者
池野 英利
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究ではマルチモーダルな刺激に対するミツバチの飛行行動について実験を進め、その行動の機序となる脳・神経機構の数理モデル構築を目指した。まず、聴覚、視覚、嗅覚刺激を対象に、風洞内での自由飛行、微小トルク計に固定したフライトシミュレータという異なる飛行状態での行動を観測する新たな実験プロトコルを開発した。フライトシミュレータを用いた飛行実験においては、前方に提示した図形の形状と色では刺激提示の位置普遍性に違いがあることを示した。また、前方からの聴覚刺激に対しては、音の強度、周波数だけでなく、リズムに対して趣向性を持つことを示した。嗅覚刺激に対する反応はフライトシミュレータにおいては明確には観測されなかったが、風洞を用いた自由飛行においては匂い刺激の存在する領域とない領域の境界付近において、飛行方向を急激に変える行動が見られた。この行動変容は、学習した場所付近を探索する飛行行動と記憶した刺激に定位する行動の切り替えが、このタイミングで生じている可能性を示唆するものであった。飛行軌跡を詳細に解析した結果、この急激な方向変化は脳における行動のスイッチングを反映しており、飛行行動を制御する2つのプロセスの存在が示唆された。この2つのプロセスの切換えタイミングによる個体行動のバラエティは、環境変化への適用性を高める役割を果たしている可能性を示唆するものである。