著者
鯵坂 学 徳田 剛 中村 圭 加藤 泰子 田中 志敬
出版者
同志社大学
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.1-87, 2010-05

日本の大都市では2000年を画期として、長らく続いた人口の郊外化がおわり、人口が都心部に向かう都心回帰といわれる状況がみられる。その原因は、不況により都心地域の地価が下がり、オフィス需要が減少し、そこに大型のマンションが建てられ、新しい住民の居住が促進されたためである。本研究では、大阪市の都心区における新しい住民と古くから住んでいた住民との関係について、大阪市特有の地域住民組織である「地域振興会」(振興町会や連合振興町会)に焦点をあて、共同調査を行った。結果として、新住民のそれへの参加は少なく、旧住民中心に運営されてきた振興町会の側も新住民への対応に苦慮していること、新旧住民間の交流やコミュニティの形成が課題となっていることが判明した。
著者
青山 謙二郎
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本プロジェクトでは、人間と動物の両方を対象として、「食べ止む」要因について検討した。人間では、食べ物のカロリー量を知らせない場合には、食物のカロリー量は食べ止むことに影響しなかった。ラットでは、食物の現在のカロリー量ではなく、過去のカロリー量に関する経験が食べ止むことに影響した。これらの結果は、「食べ止む」ことの直接の要因は、食物のカロリー量に関する過去の経験であることを示唆している。
著者
福田 智子
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.19-37, 2014-02

『古今和歌六帖』は、約四千五百首の歌を、二十五項目、五百十七題に分類した、我が国初の類題和歌集である。古来、兼明親王や源順が編者に想定されており、貞元・天元年間(九七六〜九八二)頃の成立かと考えられている。作歌の手引き書を意図した歌集であるが、和歌のみならず、『源氏物語』をはじめとする物語などの文学作品にも、少なからぬ影響を与えたと見られる。収載歌には、『万葉集』『古今和歌集』『後撰和歌集』や私家集・歌合など、出典の明らかな歌もある一方、現在では出典未詳と言わざるを得ない歌も多く、それらの歌数は、収載歌の約四分の一を占める。本稿では、それらの出典未詳歌のうち、第六帖の「芹」から「青葛」までの題に配されている歌、九首について注釈を施し、表現のあり方を考察する。なお、底本は、『新編国歌大観』の底本である書陵部蔵桂宮本を用い、江戸期の流布本である寛文九年(一六六九)版本を含めた九本の伝本を視野に入れた本文異同を示す。
著者
末永 國紀
出版者
同志社大学
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.696-659, 2010-01

論説(Article)松居久左衛門家(まついきゅうざえもん)は、江戸後期の近江商人を代表する商家である。本稿の目的は、江戸期から明治期にいたる150年間の松居家の資産蓄積の過程を明らかにすることと、受継いだ資産を10倍に増加させて、松居家に隆盛をもたらした三代目松居遊見(まついゆうけん)の経営理念を考察することである。遊見は、自分のみの富裕を望んだのではなく、商機を郷里の人々と共有しようとした。その考え方は、彼の信仰する仏教の教えに基づくものであった。この遊見の考え方は、自家に富をもたらしただけでなく、商人を目指す多くの後輩を育てることに結果し、地域社会へ貢献するものとなった。Kyuzaemon Matsui's family was a well-known Ohmi merchant family in the late Edo period. This paper aims to clarify the Matsui family's asset accumulation process over the 150 years from the Edo period to the Meiji period, and to examine the business management principles of Yuken Matsui, a third generation family member, who decupled the inherited family wealth and brought prosperity to his family. Yuken not only pursued the family's prosperity but also shared business chances with the local people. His attitude, based on the teachings of Buddhism, brought wealth to his family and contributed to the local society by successfully producing many new merchants.
著者
中山 俊
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.83-108, 2014-02

1887年3月30日,フランスにおいて建造物と美術品の保護にかんする法律が初めて成立した。歴史的,美術的見地から「国民の利益」を有する不動産と動産,いわば歴史的記念物を指定することで,中央政府の許可のない修復工事,譲渡等を抑止することが立法の目的であった。以後,地方の学術団体は,指定するに値する文化遺産を推薦するよう求められた。トゥールーズでは,郷土史家団体のフランス南部考古学協会(SAMF)がそれに対応した。彼らは芸術の町としての過去の栄光を誇り地元の作品を保護するため,トゥールーズ独自の建造物,美術品をも指定しようとした。しかし,とくに動産にかんしては,指定に対する所有者の消極的な態度によりSAMFは情報を十分に収集することができなかった。「国民の利益」にこだわる政府と地方の連携もまた容易ではなかった。それでも,指定された建造物,美術品はSAMFが推薦したものであった。1887年法に基づいて行われた指定事業は,文化遺産を「大きな祖国」の国民芸術として保護するためのものでは必ずしもなかった。郷土史家は指定を通じて,「小さな祖国」に特有の文化遺産の保護に貢献したのである。
著者
今井 仙一
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.56-83, 1960-01-20

論説
著者
濱 真一郎
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.86-119, 1998-02-25

研究ノート
著者
日和 恭世
出版者
同志社大学
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
vol.106, pp.141-155, 2013-09

本稿の目的は,研究法における信頼性や妥当性の意味を問い直し,ソーシャルワーク研究における質的研究のあり方について考察することである。質的研究は信頼性や妥当性が担保されにくいと指摘されることが多いが,この課題を解決するために大きな役割を果たすのがテキストデータ分析ソフトである。膨大なデータを扱う場合,これまで手作業で行っていた部分を自動化することによって,効率的に分析することができる。しかし,テキストマイニングだけではテキストデータの文脈を捉えることができないことから,ソーシャルワーク研究においてテキストデータを分析する際には,量的にも質的にも分析することが必要である。
著者
田中 美里
出版者
同志社大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究では、数値化や記述が困難な人間の感性情報を、人間とコンピュータとの対話を通して明らかにし、意思決定やデザイン設計に応用することを研究目的とする。E-co㎜erceなどに見られる従来の情報推薦はアクセス履歴などに基づくコンテンツ同士の関連度から呈示を行うものである。これに対し、本研究では個人ごとに、そして対象問題ごとに異なる感性モデルから共通するモデル、普遍的なコンセプトと言えるメタモデルを抽出し、応用した新しい推薦技術の確立を目指していることに意義が存在する。これらのモデル抽出を可能とする手法として、対話型遺伝的アルゴリズムに着目している。ユーザの評価と最適化計算を繰り返すことで、ユーザの感性モデルを特徴空間中の景観(ランドスケープ)の形状によって表現する。この対話型遺伝的アルゴリズムを用い、感性のメタモデルを抽出するために、以下の問題を解決していく必要がある。(A)複雑な感性モデルの推定、(B)ユーザの評価の揺らぎの検討、(C)メタモデルの抽出技術の検討である。課題(A)については採用第一年度に、多峰性の感性モデルにおいて複数の最適化を求めるアルゴリズムを開発した。採用第二年度目である本年度は、課題(B)について取り組んだ。対話型最適化手法では、ユーザの主観的な評価値を用いてランドスケープの探索を進めるため、ユーザの評価に揺らぎが生じるとその感性モデルを正しく抽出できなくなる。そこで、ユーザの評価の揺らぎについて検証し、さらにより正確な評価値を得るための一手法として脳活動情報に着目した。ユーザの解候補を評価するときの脳活動を計測し、感性的な評価値との関係を定量化することで、脳活動情報による評価値の算出や補正を行うことを試みた。本研究ではこのためにMRI装置を用いた生体情報の取得と利用について数回の被験者実験を行っている。さらに年度の後半には非常に精度の高いMRI装置を借用し、大規模な被験者実験を行ってユーザの脳活動と嗜好との関連性について調査を進めた。これらの研究の成果については適切な機会に研究発表を行い、外部に公開している。
著者
久保田 展史
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.223-226, 2008-07

研究活動報告(Reasearch and Activity Reports)筆者は青年ボランティア達とともに2003年より定期的に京都府立医科大学病院ならびに京都府こども病院において、入院する児童を励ますための訪問活動を行ってきた。入院している児童は医療関係者や家族以外との接触は皆無で、長期に入院するする児童は成長に必要な刺激もなく、治療の先行きが見えないとよりいっそう不安な日々を送ることとなる。そのような中で青年ボランティア達が中心になって入院する児童を励ます活動を続けている。年に2回コンサートを開き、時には祇園祭を味あわせてあげようと夏祭りを企画、南観音山保存会など一般の方々を巻き込んで活動を続けている。この5年間の活動を振り返り、その実践内容と評価、そして課題を報告する。The present writer have done the visit activity to encourage the hospitalized child with the young person volunteers more regularly than 2003 in the Kyoto Prefectural University of Medicine hospital and the Kyoto Prefecture child hospital. The hospitalized child doesn't have the human contacts other than the doctor, the nurse, and the family. Therefore, the child who does for it to be hospitalized at a long term doesn't have stimulation necessary for growth. And, If they do not see the future of treatment, children and the family spend uneasier every day. Young people are continuing the activity that encourages them for the hospitalized child. Authors are holding the concert for children twice a year. And, authors executed the summer festival for children last year. "Minami-Kannon-yama preservation association" cooperated in this festival. In this report, it introduces the content of the activity of "Give Kids the Dream" of five years, and it reports on the evaluation and the problem in the future.
著者
北坂 真一
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の主な結論は次の通り。第1に、日本の大学のデータを検討し、当局による大学行政を産業組織論の観点から再検討することが有益であることを指摘した。第2に、国立大学81校や私立大学107校のパネルデータを使いトランスログ費用関数をそのコストシェア方程式とともに同時推定することによって、規模や範囲の経済性が存在することを示した。第3に、国立大学のパネルデータを使い確率的フロンティアモデルを推定することにより、その非効率性の存在を明らかにした。第4に、国立大学の集計された時系列データを使い生産関数を推定し、大学教育の技術進歩率が年率0.4%~0.8%程度と低いことを明らかにした。
著者
井ケ田 良治
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.110-174, 1994-03-31

資料
著者
菊田 千春
出版者
同志社大学
雑誌
同志社大学英語英文学研究 (ISSN:02861291)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.61-104, 2006-03

格助詞ガが、明確に主格表示として用いられるようになるのは室町期とされ、それは、日本語が古典語から近代語への転換を示す変化の一つと考えられている。生成文法では、格助詞の種類は統語構造上の生起位置を表すと考えられることが多く、主格ガの確立も構造上の変化を映すとされる。 本稿では、格助詞を句構造のみからは論じられないという立場に立ち、主格ガの確立を、格助詞ガの性質の変化と、日本語の文法システムの変化の両面から捉えることを目指す。LFG、HPSGらの制約に基づく句構造文法の語彙主義の主張にしたがい、主語はそれを統語的に選択する主要部の述語により認可され(=主格という抽象格が付与され)、それについては古典語も近代語も変わりはないと想定する。主格の格助詞ガの確立は、その抽象格がいくつかの表現形で表されていたのが、次第に、助詞ガという形態格に固定化していくことと解釈し、その過程を捉える方法を提案する。具体的には、Kikuta (2003)で提案した、上代日本語の助詞のプロファイルや助詞選択にかかわる制約を拡充し、上代から近代語にかけての変化を、そのプロファイルと制約の優先順位の変化という観点から分析する。主格ガの成立は一見複雑に見えるが、本稿では、卓立性や名詞性などの素性とその制約の順序という視点から分析することで、単純で漸進的な一方向的変化が複合的に起こった結果ととらえられることを示す。The establishment of the particle ga as a nominative case marker in the Muromachi-period is supposed to mark the beginning of Modern Japanese. A theoretical question is whether this directly reflects a drastic change in the syntactic make-up of the language. Researchers in Japanese philology (Kokugo-gaku) have implicitly answered this in the negative for a long time, while generative syntacticians explicitly claim the opposite. Although the generative approach claims to be scientific, and therefore close to the truth, it is still doubtful whether the change in behavior of particle ga directly pertains to structural change. In Old Japanese (OJ), ga is only one of the possible nominative markers; the subject argument can be realized in such forms as ga, no, zero, wa (or mo and other kakari-zyosi), and their distribution is syntactically overlapping. If case markers only indicate the structural position where they occur, as generally assumed by generative syntacticians, all the markers (including zero) in OJ should be syntactically distinguished. However, there appears to be a considerable amount of overlap and optionality in the choice of subject markers. The problem, I believe, is that while ga is a case marker, it is not just a label of a syntactic node, but a morpheme with its own content. Along the lines of Kikuta (2003, 2005), this paper proposes to separate abstract case marking as a type of argument licensing on the one hand, and morphological case marking as a choice of the most adequate phonological/morphological realization of the abstract case on the other. Following the ideas of the lexicalist frameworks HPSG and LFG, I assume that the abstract case marking is done lexically by a head predicate selecting (subcategorizing for) the argument. The abstract case, such as the nominative and accusative, will be realized in some appropriate phonological form. The choice of the appropriate form depends on two major factors: the syntactic-functional profile of each marker and the interaction of constraints affecting the choice. The diachronic change leading to the establishment of ga as nominative marker also results from the interaction of the two factors, both of which have changed over time. The case marker ga becomes by far the best choice to mark the subject argument in Muromachi, when (1) ga becomes compatible with verbal arguments while no retains the nominal character and (2) it becomes more important in Japanese for case to be explicitly marked by appropriate morphological case markers. The proposed analysis has a significant implication in that the apparently complex diachronic change in case marking can be seen as a consequence of interactions of separate, gradual, unidirectional changes in the weight of constraints and slight changes in the profile of case markers. This implication is preferable for the obvious reason that language change within a monolingual community ought to be gradual, and lends support to the approach taken in this paper.