著者
新井 紀子 影浦 峡 菅原 真悟 松崎 拓也 犬塚 美輪 尾崎 幸謙 登藤 直弥 藤田 彬
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

科目や分野によらない汎用的な読解力を短時間かつ高い精度で推定するリーディングスキルテストについて引き続き研究開発を続けている。リーディングスキルテストβ版については、そのアイデア等を論文や口頭発表、書籍等で公開した上で、一般社団法人「教育のための科学研究所」に移転し、リーディングスキルテストとして社会実装された。令和元年度末までで(リーディングスキルテストβ版と合わせて)のべ20万人以上が本テストを受検した。これまでの知見を2冊の書籍として出版した。少ないサンプルで問題の難易度を推定する方法や、より少ない問題数で高い精度で汎用的読解力を推定する方法等について、テスト理論の観点から尾崎・登藤らが検討を行った。板橋区および戸田市と連携し、汎用的読解力を児童・生徒に身に着けさせるための授業や学習支援についての検討を行っている。特に板橋区においては、「読み解く力の育成」として、板橋第一中学校に入学する小学校を含めた「学びのエリア」を指定し、その中で、学年進行に応じて、どのような汎用的読解力をどのような授業や支援で身に着けさせるかについての検討を行っている。板橋区と連携して行った研究授業および研究会は計5回である。加えて、検定教科書に関する計量国語学的観点からの分析を進め、小学校と中学校の教科書において記述方法にこれまで発見されていなかった量的なギャップがあることを発見し、査読付き論文および国際会議プロシーディングスで発表した。
著者
山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.73-112, 1995-03-31
被引用文献数
1

ワープロが普及し、常時活用する者が増えるとともに、かな漢字変換などのわずらわしさを嫌って、「直接」入力法に関する関心が高まっている。本稿ではかつて筆者たちが行なった2ストローク入力法についての、約10年まえの紹介の自後経過をまず報告し、次いで当時から問題であった、技能習熟訓練を普及させる努力の現状と、特に小中学生からの習熟に欠かせない、人間工学的に配慮された小型キーボードの開発の必要性について述べる。最後に、変換入力法における文字使いをもっと知能的に改善する方略と、ローマ字入力におけるつづり方の統一について考察する。なお付録として、アメリカ合衆国ミネソタ州における、キーボードの使い過ぎによって起こったとする手の異常に対して起こされた損害賠償請求裁判の経過の速報と評価をつけてある。
著者
佐藤 健 市瀬 龍太郎 宮尾 祐介 狩野 芳伸
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

計画の当初において、手動によってPROLEGにより短答式問題を解けることを確認した。しかし、そこで作った、自然言語文から得られる述語とPROLEGの述語をつなぐ橋渡しルールについては、問題適用範囲が狭く、新しい問題に対応できないことが分かった。そこで、橋渡しルールとは別の手法を検討したが、うまくいかなかったため、自然言語で書かれた短答式問題に対して、述語の質問を行い、その述語の変数に対応する値を答えるという質問応答システムを使うことを考案し、初期的な実験を行った結果、ある程度の値の代入を得られることが分かったが実用性にはまだ検討が必要であることがわかった。
著者
北本 朝展 西村 陽子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

1. デジタル史料批判の基盤構築:Digital Critique Platform (DCP)の構築を進めた。今年度は、シルクロード遺跡の基礎情報を入力するためのメタデータスキーマを設計し、それを入力するためのウェブインタフェースを構築した。次にDCPの全体的な設計および既存ツールとの連携については、最終年度での改良と完成に向けて課題を明確化した。2. デジタル史料批判の実践:シルクロード探検隊が過去に撮影した古写真の保存状況について、ベルリンやロンドンのミュージアムを訪問して現地調査し、これらの活用について担当者とのディスカッションを行うとともに、担当者が来日した際には東京でも打ち合わせを行った。さらに中国においてもシルクロード探検史料の整理を行い、現地に保存されている実物の史料も合わせ、シルクロード探検報告書の地図の内容を分析した。この成果は、シルクロード探検に関する複数の史料の参照関係を解明するための足掛かりとなるものである。3. デジタル史料批判の拡大:モバイルアプリ「メモリーグラフ」はバージョンアップを繰り返しながら機能を充実させ、主要な機能を完成させることができた。また学術的な利用に加えて市民科学としての利用についても、京都や長崎などで事例を積み重ねた。一方、非文字史料の史料批判については、日本古典籍を対象に研究を進め、IIIF Curation Viewerのキュレーション機能も活用した画像分析を進めた。最後に、京都大学東南アジア地域研究研究所と連携した「華北交通アーカイブ」については、数万枚に及ぶ古写真のキャプション入力をほぼ終了し、最終年度での公開に向けた作業が進行中である。
著者
山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.261-318, 1991-12-25

われわれは主として漢字かな混じり文を使いなれているために, 自分が漢字に対して持っている先入主を基にした, 科学的裏付けのない議論をもって, 文字に関する普辺的真理と信じていることがかなりある。本稿においては, 言語学, 心理物理学, 認知科学, 脳科学などの観点から, 講演形式を用いて, 文字に関するそうした種々の主張を一つ一つ解明してゆく。
著者
山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.33-71, 1997-03

現在世界的な規模で進行しつつある、社会の情報化と国際化に伴い、日本語とその表記法とは、いま新たな問題に直面している。すなわち、言語学的には世界でもっともやさしい部類に属する日本語が、世界でもっとも複雑な表記法を用いているが故に、外にはなかなか国際的に受け入れられず、内には情報化の出発点となる機械可読化、すなわち入力が複雑で非能率、かつストレスの多い作業となることである。本稿では、長期的な課題として、いかにして日本語の表記を国際化するかについて、また短期的な課題として、いかにして現在の表記法のままの文章を能率よく、かつ楽に入力するかについて、考察する。
著者
北本 朝展 筆保 弘徳
出版者
国立情報学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

台風は気象学的にも社会的にも重要な現象であるが、その勢力や構造に関する分析はこれまで専門家の人手による方法に頼ってきた。そこで本研究は、台風に関する大規模衛星画像データセットに機械学習(特に深層学習)を適用することで、ビッグデータという視点から台風を分析する新しい手法を提案する。取り組んだテーマは「台風階級の分類」「台風中心気圧の回帰」「台風から温帯低気圧の遷移」「時系列モデルへの拡張」の4つである。特に「台風から温帯低気圧への遷移」に関しては、深層学習ベースの新指標「温低遷移指数」を提案して気象庁ベストトラックと比較したところ、気象庁のタイミングが平均して半日ほど遅いとの結果を得た。
著者
山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.249-290, 1994-03-28

アルファベットによってことばを表記している国ぐにでは、表記法の問題は前世紀の終りごろまでにだいたい片付いているが、日本では今にいたっても、ときどきまだ大きな変化が起こっている。そしてそのほとんどが、実は漢字の借用に始まる、おおよそ1500年にも及ぶ問題の細部の表明である。 本稿ではこの漢字の問題を、主権在民の情報化社会の立場に立って、日本語の側から展望した論説である。
著者
中村 太一 土肥 拓生
出版者
国立情報学研究所
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本研究は,アジャイル開発のチームメンバ,プロダクトオーナーおよびファシリテーター に求められるマネジメントスキルを修得するため,開発プロセスにおいて実行されるプラクティスを疑似体験するロールプレイ演習システムを開発する.具体的には、(1) アジャイル開発プロセスで生み出す価値の量をシミュレーションにより算出するため,システムダイナミックスモデルと待ち行列ネットワークモデルを組み合わせたアジャイル開発プロセスモデルを構築し,(2) アジャイル開発で生み出される価値の量を定量的に算出するために、アジャイル開発プロセスにてより多くの価値を生み出すために実行されるプラクティスと開発プロセスの生産性を低下させる要因の関係を定式化し,(3) 正統的周辺参加の学習論に基づき,開発業務という文脈の中で学習者がアジャイル開発のマネジメント知識の定着を図るロールプレイ演習シナリオを開発する.2107年10月,PMI(Project Management Institute)からPMBOK; Guide Sixth Edition とAgile Practice Guideが刊行され,顧客の要求が確定している下で費用とリリース時期を遵守するマネジメントと顧客が求める価値を繰り返し提供し続けるアジャイル開発のマネジメントの関係が記述されているが、二つのマネジメントの使い分けについて確定した知見はない.このような状況に鑑み、本研究の成果を実装したロールプレイ演習で、学習者個々人が開発実務においてアジャイル開発と伝統的な開発のマネジメントを使い分ける能力を涵養できる学習環境を提供する意義は大きい.
著者
北本 朝展 小野 欽司
出版者
国立情報学研究所
雑誌
NII journal (ISSN:13459996)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.7-22, 2000-12-20
被引用文献数
2

本論文の目的は、気象学的知識と情報学的アプローチとを融合した台風雲パターンの時系列解析法を提案し、台風解析における熟練者の解析作業支援や、大量の台風画像からの知識発見などを実現することにある。そのための基礎となるデータセットとして、本論文では20,000 枚規模の台風画像コレクションを構築する。ここで台風画像とは、台風のベストトラックに記録された台風中心が地図投影画像中心に一致するように、台風周辺領域を衛星受信画像から切り出したものである。このようなラグランジュ的表現によって、台風雲システム全体の動きから台風雲パターンに固有の動きを分離できる。次に本論文では、台風雲パターンに特徴的な楕円形状を表現するための手法として、変形楕円を用いた形状分解手法を提案する。この結果を用いて台風の日変化の解析という台風解析の問題に取り組んだところ、本論文で提案する手法は、気象学的知見と一致するような、気象学的に意味のある情報を抽出することができた。
著者
山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.199-247, 1994-03-28

発話およびそれから派生した文章を含めた聴覚的言語のほかに、最近ではコンピュータ・グラフィクスの急激な進歩に伴って、ほとんどがまだ片こと的なものではあるが、画像に訴える視覚的言語という概念が注目されている。本稿では人間科学の立場に立って、この両者を比較し、かつ実は手話などを含む視覚的言語のほうが、言語としてはずっと古い起源を持ち、それだけに人間にとっては楽で自然なコミュニケーションの媒体である可能性を探る。
著者
西澤 正己 柿沼 澄男 孫 媛 矢野 正晴
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.179-196, 1999-03
被引用文献数
1

なぜ米国は情報技術/情報科学の多くの面で世界をリードすることができたのか。そのなぞを解き明かすことは、我が国が情報技術/情報科学において優位性を確保するための必須条件となる。そのためには、米国と日本との比較研究をすることにより、その違いを明らかにすることが重要であると考え、本稿では、人的資源、研究費、論文数等の情報科学研究を取り巻く実態を比較研究した。その結果、日米両国の情報科学研究について以下の点が明らかになった。 (1)大学院生数及び研究者数では、日米の人口比を考慮すると、大学院生の数については日米ほぼ同じ水準にあるが、研究者の数については日本の研究者数は米国の半分以下の水準である。 (2)研究費では、中央政府による大学への研究助成金の比較を行った。日本政府が大学へ助成している金額は、GDP比を考慮すると米国の約5分の1である。 (3)論文数の比較では、米国Institute for Scientific Information(ISI)社が作成した文献抄録データベースScience Citation Index(SCI)を用いて分析を行った。その結果、「情報システム」、「ハードウェア/アーキテクチャー」、「理論/方法論」の分野では、日本の研究は相対的に盛んであるが、「ソフトウェア/グラフィクス/プログラミング」の分野は相対的に盛んでない。
出版者
国立情報学研究所
巻号頁・発行日
vol.平成19年度, 2009-03-18