著者
影浦 峡
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.23-27, 1998-03

言語における「共時性」と「通時性」の概念の基本的な枠組みは、今世紀前半にソシュールによって示唆された。けれども、それ以来、これらの概念を巡っては、様々な解釈が与えられてきた。本稿では、それらの解釈の代表的なものを参照しつつ、具体的・技術的な言語研究を健全なかたちで進めるために必要な、「共時性」と「通時性」という概念の枠組みを、特に専門用語研究のあり方を想定しながら、整理する。
著者
石川 冬樹 河井 理穂子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

法は様々な状況に対応するため曖昧な文言で記述されている.このため,法が定める権利や義務を考慮して組織運営や情報システム構築・運用を行う際には,判例などで後に与えられる具体的な解釈を適切に反映する必要がある.本研究では,組織やシステムが達成すべきゴールの具体化,分析や変更追跡を行う要求工学の考え方を模倣し,法やその解釈のモデル化・分析手法を構築した.この手法により,情報システム開発者など法の専門家ではない人も,既存の法解釈を踏まえ,具体的な要件に関する分析や判断をしたり,新たな判例が現れた際などにその影響範囲や必要な対応を定めることが容易となる.
著者
柴山 盛生
出版者
国立情報学研究所
雑誌
NII journal (ISSN:13459996)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.59-70, 2001-03-30

本稿では、論文の引用度分析に用いられている米国ISIデータベースに収録されている学術雑誌の書誌情報を通して、自然科学との比較を行いながら、学術雑誌発行の国際的状況と分野間の関連性を分析して、人文・社会科学における研究動向を調査した。この結果、人文・社会科学では領域によって国別シェアや発行者の形態など雑誌の発行状況が異なっていることが分かった。また、自然科学との関連性においては、人文科学では結びつきは少ないが、社会科学は比較的結びつきが強いことが明らかになった。さらに、ここでは結果の総括を行い、わが国の人文・社会科学の推進方策、即ち学術雑誌の発行という視点からの「国際化」や「連携」の意味について考察する。
著者
本位田 真一 鄭 顕志 石川 冬樹
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,空間制御ソフトウェアを対象とし,想定外に備えて迅速なソフトウェア進化を実現する分析,設計,検証手法を提案した.具体的には,(1)物理要素の制御に関する要求をゴールモデル上で明示化させるための制御ループ要求パターンをゴールモデル整形プロセス,(2)要求モデル上で明示化した制御ループ要求に対する実現責務を用意にトレース可能とする,制御ループモデルをモジュール単位として扱うソフトウェアアーキテクチャ,(3)制御ループ仕様の誤りを早期に発見可能とするための検証手法を提案した.さらにそれらの成果を統合した開発プロセスを構築し,スマートルーム内の清掃システムを開発し,その効果を評価した.
著者
武田 英明 松村 真宏 相澤 彰子 市瀬 龍太郎 相原 健郎 大向 一輝 Cazabet Remy Putzke Johannes 後藤 孝行 朱 成敏 桂井 麻里衣
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

Web上の創作活動は新しい創作スタイル、すなわち大規模かつ物理的接触のないコミュニティにおいてお互いの創作を利用し合うという互恵的関係によって創発的に制作されている。本課題ではこのようなオンラインコミュニティにおける創作活動を分析してモデル化を行い、その支援を行う仕組みについて研究を行った。ニコニコ動画のデータを収集し、そのデータにおける創作の影響関係について、コミュニケーションモデルによって分析し、特徴を明らかにした。またその影響関係を多様な視点で可視化するシステムを構築した。このほか、twitter, 学術論文、Wikipedia 等における共同的作業についての分析も行った。
著者
阿辺川 武 室田 真男 仁科 喜久子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

学習者作文に含まれるレジスター誤り、特にアカデミック・ライティングにおける不適切な表現を自動的に検出し、誤りを指摘する日本語作文推敲支援システムを開発している。本研究課題では、このシステムを使用した日本語学習者によるレポート形式作文の推敲支援を評価する実験をおこなった。その結果、システムの指摘の精度が不十分なため間違った誤用指摘も多く、正しく誤用を指摘した個所においても見過ごされてしまったこと、および使用後のアンケート結果から、誤用指摘だけでなくどのように訂正したらよいかという指針を含めて表示してほしいといった要望が多数聞かれた。今後これらを参考にしてシステムの利便度を向上させていきたい。
著者
山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.139-197, 1994-03-28

音楽の中の非可聴高周波成分が鑑賞者の快感の一端を担っているというOohashiらによる研究成果を踏まえて、アナログ技術によるLPレコードとディジタル技術によるCDとの二つの音楽メディアをめぐって分かれている評価を含む、オーディオ機器一般の音質評価を、聴覚生理学および大脳科学を中心とした認知科学の見地から、耳の非線形性の影響を中心として考察し、今後の検討課題と、関連した人種的文化的問題などについて述べる。
著者
定兼 邦彦
出版者
国立情報学研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2007

これまで理論的な研究だけが行われてきた簡潔データ構造に対し,現実の計算機で用いる際の問題点を解決した,実際的な簡潔データ構造を開発した.順序木に対しては,既存の簡潔データ構造のサイズを4割削減し,なおかつこれまで実現できなかった多くの演算を行えるようになった.また,文字列検索の簡潔データ構造である圧縮接尾辞配列,圧縮接尾辞木のライブラリを作成した.これにより,110ギガバイトの文書データからの検索を行うためのデータ構造のサイズを680ギガバイトから22ギガバイトに圧縮することができた.
著者
井上 克巳 坂間 千秋
出版者
国立情報学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

時間的に変化する離散系を標準論理プログラムで記述し、その上での帰納推論方式を新たに考案し、状態遷移規則を学習するための方法論を提案する。基本方式として状態間の変位からブーリアンネットワークの状態遷移規則を自動的に学習するLFITを提案し、これをベースに様々な効率化や拡張方式を開発した。効率化にはBDDによる簡約化やトップダウン・アルゴリズムが、拡張には遅延効果・多値ドメイン・確率遷移を有するネットワークと非同期式更新が含まれる。LFITの応用では、遺伝子制御ネットワークやセルオートマトン学習、ロボットの行動規則学習、論理を自動的に学習する論理発見に適用した。
著者
内山 清子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、効率的な検索に利用するシソーラス構築のために、分野における基礎的で必須である専門用語について以下の3点の研究を実施した。 (1)専門用語の専門度(分野基礎性)を示す指標の分析:文書中に出現する専門用語について、分野を理解する上で必須・基礎的なレベルから専門性が高いレベルまでの段階を分野基礎性として客観的な指標について、論文や書籍の文章構造中の出現傾向について分析を行う。 (2)分野基礎性判定手法の検討:分析結果に基づいて、自動的に分野基礎性が高い用語を抽出する方法を検討する。 (3)システムへの応用の検討:分析に基づいて分野基礎性が高い用語判定を利用してシソーラスを構築し、システムへの応用の可能性について議論した。
著者
相澤 彰子 高須 淳宏 深川 大路 高久 雅生 安達 淳
出版者
国立情報学研究所
雑誌
Progress in informatics : PI (ISSN:13498614)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.41-47, 2009-03

本研究では,学術情報に焦点をあて,2 層構造を持つ情報同定システムを提案する.まず,同一の事物や人物を参照する断片化した情報をつなぎあわせる情報同定の考え方について述べ,次に,特に書誌および研究者の同定機能を組み合わせた情報同定システムを提案する.応用例として,共著関係ネットワーク分析結果をあわせて示す.
著者
渡辺 恵子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
Progress in informatics (ISSN:13498614)
巻号頁・発行日
no.2, pp.77-86, 2005-11

本稿では、各大学や学習者のe ラーニングへのニーズに焦点を当てた考察を行う。本稿では、e ラーニングについて次のような類型化を行う。類型I:通信制でe ラーニングを主体として単位又は学位取得が可能。類型II:通学制で一部の授業についてはe ラーニングを主体として単位の取得が可能。類型III:通学制の授業において補助的にe ラーニングを活用。その上で、まず、メディア教育開発センターが公表している利用実態調査に基づいて、類型IIIについては大学側のニーズが比較的高いことを明らかにする。次に、事例分析に基づき、類型I、IIは社会人や外国人学生、専門的な内容を学ぶ学生などのニーズに応えている形態であること、また、全ての類型が教育内容、方法の質の向上に役立つという点で学生のニーズに応えるものであることを明らかにする。多くの大学にニーズがあり、学生のニーズにも応えることになる類型IIIが今後最も進むe ラーニングの形態であることが予測でき、類型I、IIの普及については、潜在的な学習者の発掘がどの程度できるかが鍵であると結論付けられる。
著者
西澤 正己 孫 媛
出版者
国立情報学研究所
雑誌
NII journal (ISSN:13459996)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.51-60, 2003-09-30

新しい研究分野においては,従来の研究分野分類が現実の研究環境に整合しない局面が多く見られる.特に,他の分野との関連を深めながらその領域を広げている情報学では,その傾向が大きい.そこで,情報学分野の研究者約1800 名に対するアンケート調査をおこない,情報学の研究結果がどのような学術誌に投稿されているかを分析した.その結果,情報科学の3 細目分野を比べると,「計算機科学」は欧文学術誌に比較的多く投稿されるのに対して,「情報システム学」は60%以上が和文学術雑誌に投稿されるなど,投稿する資料の種類に大きな差があることが明らかになった.また,研究者が「権威がある」として挙げた論文誌とISI 社のJCR によるインパクトファクター(IF )の関係では,特にIF が高い雑誌のみが選ばれているわけではないことが判った.さらに,採録論文の分野の広がりとIF の間に相関があるものが多く,雑誌の評価をIF によって判断するのは注意が必要であることが判った.
著者
内山 清子 竹内 孔一 吉岡 真治 影浦 峡 小山 照夫
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.49-57, 1999-03
被引用文献数
1

専門分野における複合名詞を分析する時に、複合名詞を構成している語構成要素の情報が必要となってくる。本研究では、語構成要素の文法情報だけでどこまで複合名詞の性質を分析することができるかどうかを見きわめるために、語構成要素を文法情報である品詞相当カテゴリーに分類するための検討を行った。語構成要素においては、従来の文/単語関係で定義された品詞カテゴリーをそのまま適用することは難しい。そこで本研究では、従来の品詞カテゴリーを参照しつつ、新たに語構成用の品詞相当カテゴリーとその定義を設定することを試みた。
著者
武 小萌
出版者
国立情報学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、多様性に富んだ大規模放送映像アーカイブに放送メタデータの階層的構造化を目指し、視覚特徴と放送メタデータの統合に基づいた顔認識・構造化技術高度化を実現した。照明条件、姿勢及び表情による特徴量変動に頑強な顔画像照合法を提案した一方、放送メタデータと映像間の相関関係をもとに、顔認識をネットワークの経路を伴った因果関係の発生確率を定量的に予測する課題に帰着させ、放送メタデータ・ベイジアンネットワークに基づいた新たな顔分類法を実現した。
著者
加藤 弘之
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

副作用のない純粋な関数型言語の分野で開発された、プログラム変換技術の一つである「融合変換」に、副作用を有する言語に適用可能なものに拡張するためのアルゴリズムを与えた。特にデータモデルとしてグラフ構造を対象とした言語を用いる。グラフ構造は、現実世界の実体を直接かつ自然に表現できるデータ構造であるからである。研究代表者が既に開発した木構造を対象とした副作用を有する言語であるXQueryはグラフ構造も扱うことができるため、この言語に対する健全な融合変換を与えた。また、完全性を示すためのスキーマのクラスと問合せ言語のクラスを示した。