著者
計 宇生 Ji Yusheng
出版者
国立情報学研究所
雑誌
NII journal (ISSN:13459996)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-8, 2001-03-30
被引用文献数
1

様々なサービスを同一の物理ネットワークで提供するような統合サービス網において、ネットワーク資源の有効利用と、サービス品質の保証のためにはネットワークに入るトラヒックに対して一定の規制を行うことが必要である。一方でエンドユーザにとって、ネットワーク側の規制を満たすためにはある程度品質を犠牲にしなければならないという矛盾が生じる。本論文では様々な特性を持つトラヒックに対するトラヒック規制がこれらトラヒックの品質に対する影響について検証する。その結果、シェーピングなどのトラヒック規制によって、指数分布をベースとするトラヒックに対しては一定の遅延を許せば多重化ノードにおけるキュー長を削減することができるが、自己相似性のようなより長い記憶性をもつトラヒックに対してのシェーピングは、理想的な効果が得にくいことが明らかになった。
著者
田代 朋子 佐々木 仁 大江 和彦 木村 優 熊渕 智行
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.231-242, 1995-03-31

医学雑誌に報告される臨床症例を全文データベース化した「臨床症例データベース」を精度良く検索するために医学用語シソーラスを作成した。このシソーラスは従来のシソーラスと異なり文献中に出現する自由語をそのまま収録したものであり、仮に「自由語シソーラス」と呼ぶことにする。本シソーラスにより自由な語から網羅性の高い検索を行うことができる。
著者
廣瀬 弥生
出版者
国立情報学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、専門的知識を一般市民に移転する際に、必要とされる社会システムとはどのようなものであるかに関する考察を目的としている。検討の過程では、一般市民がいかに専門的知識を誤解して受け取ってしまう可能性があるかに関して調査を実施した後、実際に社会システムを構築する際には、どのような点に考慮すべきかに関して検討し、各種学会誌にて、提言を実施した。
著者
益森 治巳 高城 章代 北村 明久 内藤 衛亮
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.75-93, 1996-03-29

学術情報の流通を促進する方策の一つとして、鹿児島大学において1995年前半に、大学紀要の電子入稿について調査した。1995年2月時点で当該年度の出版物として、11部局から29種類の紀要が刊行されており、254論文が掲載されていた。第一著者、複数の論文を執筆した場合は一論文のみの著者として154名が確認できた。全教官の15%に相当する。有効回答は133名(回収率86%)。電子的に執筆していたのは117名(全回答者の88%)。ハードウェア、ソフトウェアは多岐にわたった。入稿の態様は投稿規定に依存しているものの、37名(28%)の著者がプリントとフロッピーによって入稿した。流通に対する意識は未見の事態に対するものとして、過渡的であり、平行出版の必要性が指摘された。投稿規定・手順としての意見も未成熟であり、フオーマットの標準化についての意見は分かれている。投稿規定の整備が必要である。
著者
山田 誠二 小松 孝徳
出版者
国立情報学研究所
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

主に家庭内での利用を想定して設計されたロボットエージェントは,人間との協調作業において,自分の状態を人間に簡潔かつ明確に伝える必要がある.そのようなロボットの態度表出において,ロボットの「外見」と表出される「表現」の関係を実験的に解明することが,本研究の目的であった.この関係に対する我々の仮説は,最も有益で基本的な態度のプリミティブである,正・負・中立のような基本的な態度の表出では,動物や人間に類似した外見と行動による表出は不要で,動物や人間の外見とはかけはなれたエージェントによる,単純かつ直観的でささいな表出(subtleexpressions)の方が効果的であるというものである.この仮説が成り立てば,ある種の態度表出においては,エージェントの外見を動物や人間に近づけるために無駄に多大なコストをかけることなく態度をユーザに理解させることが可能となり,エージェントと人間との自然なインタラクションを効率的かつ容易に実現できる.この仮説を広く一般的に成り立つことを理論的,あるいは実験的に示すのは現実には難しいが,我々は,ロロボットらしい外見のMindStromsが単純なビープ音を表出した場合とより複雑な犬に近い外見のAIBOが体の動きやLEDの点滅を組み合わせた複雑な表出をした場合について,どちらが基本的態度を人間により正確に伝えるかを比較する実験を計画,実行し,その結果その仮説が成り立つことを示した.
著者
龍田 真 照井 一成
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、構成的集合と余帰納的定義をもつ構成的論理を構築し、この論理体系を用いて、余帰納型を用いたプログラムの性質を明らかにし、また、構成的集合と余帰納的定義を用いたプログラム合成システムを試作することであった。次のような3つの研究成果を得た。(1)論理式Aが長D-正規証明をもつならば、Aの長正規証明が唯一であることを証明した。(2)古典二階自然演繹の強正規化可能性の証明に関して、CPS変換を用いた従来の証明が本質的誤っていることを主補題に対する反例をあげて示し、この原因が継続消滅の現象によることを指摘し、オグメンテーションの概念を用いてこの証明を完成させた。例外処理ラムダ計算や値呼びラムダミュー計算など他の類似の体系のCPS変換を用いた強正規化可能性の従来の証明が、継続証明により同様にして本質的に誤っていることを指摘した。(3)構成的二階自然演繹に置換簡約を追加した論理体系の強正規化可能性の簡明な証明を与えた。従来知られている証明は、Prawitzによる証明だけであり、これは記述が不完全であり、また複雑な帰納法を必要とした。原子選言論理のアイデアを用い、構成的二階自然演繹に置換簡約を追加した論理体系が原子選言論理に簡約を保存して翻訳できること、原子選言論理は飽和集合が定義でき飽和集合を用いた強正規化可能性の証明方法が使えることの2つから、新しい簡明な証明を得た。
著者
孫 媛 井上 俊哉
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.193-216, 1995-03-31

1960年代以降、アメリカではテストの公正な利用、テストバイアスが大きな関心を集める問題になっている。その間、差異項目機能(DIF:Differential Item Functioning)の概念が生まれ、いくつものDIF分析法が提案されている。現在、DIF分析は項目バイアスを検出するための統計的道具として、テスト開発過程に欠かせないものとなっている。また、バイアス探索とは別の文脈においてもDIFの概念と分析法が役に立つこともわかってきた。 本稿ではまず、DIFが今日のように盛んに研究されるまでの経緯を概観した後、代表的なDIF分析法を関連する概念とともに展望する。ついで実際のテスト開発過程でDIF分析が適用されている現状を紹介する。最後に日本での研究の可能性を含めて、DIF分析のより広い応用について論じる。
著者
松崎 拓也 増田 勝也
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

構文解析など基本的な言語処理を施した大量のテキストデータを用いて、そこから必要な情報を動的に抽出することで種々の言語処理技術を高精度化することを目指し研究を行った。具体的な成果として、大規模半構造化データベースに対する高速な検索システムを開発し、それを応用した知的テキスト検索システムを実現した。また、大量テキストデータから動的に抽出した統計量を従来の解析モデルに統合する枠組みに関する基礎研究を、構文解析および共参照・照応解析を対象として行い、それぞれについて高精度な解析システムを実現するとともにテキストベースとの統合へ向けての知見を得た。
著者
根本 香絵 EVERITT MarkStanley EVERITT Mark Stanly
出版者
国立情報学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

これまでの研究をもとに、主に超伝導量子ビットと、ダイヤモンドNV中心のアンサンブル系の合成系を解析できるように解析系の拡張を行った。NTTの実験グループと議論を重ねて、ダイヤモンドNV中心のアンサンブルと超伝導量子ビットの相互作用を解析できるよう準備し、実験系をモデル化して数値的に解析を行った。ダイヤモンドNV中心のアンサンブルと超伝導量子ビット間での量子的な相互作用の実証はこれまでに例がなく、理論的な解析が特に重要となった。特にNV中心と量子ビット間の相互作用は大変小さく、そのためアンサンブル中のNV中心の数は巨大になる。このアンサンブルが量子ビットとして機能する条件を理論的に整理した。理論的な議論から数値計算に適する正確なモデルを構築することが重要で、モデルに工夫をするなどして数値計算が行えるよう配慮した。超伝導量子ビットとアンサンブル量子ビット間のコヒーレントな相互作用によって、超伝導量子ビットに励起された単一量子を2体間でやりとりする過程を解析した。さらにダイヤモンドNVセンターの性質や相互作用の解析などを統合して、理論的な議論を進めた結果、これらは実験結果と一致した。この物理過程は、量子メモリーやクラスター状態生成などの量子情報処理のための素子に応用でき、ダイナミクスについての理解は誤り特性の決定に必須である。また、本研究によりダイヤモンドNVセンターの量子的な性質の理解が深まり、今後ダイヤモンドNVセンターを量子情報素子へと応用する場合に重要な知見が得られた。
著者
山田 誠二 小野田 崇 高間 康史 岡部 正幸
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

人間と知的システムが協調しながら問題解決を行う知的インタラクティブシステムの実現のために,ユーザからのフィードバックを最小限に抑えてパフォーマンスを向上させる最少ユーザフィードバックの枠組みの提案し,その様々な要素技術を開発した.最小ユーザフィードバック実現のためには,少ないユーザフィードバックを最大限に利用する技術が必要であるが,より効率的な制約クラスタリングアルゴリズム,類似度判定に適したGUI(Graphical User Interface)の基礎調査研究,人間の能動学習を促進するGUI,独立成分分析による非階層的クラスタリングの初期値決定法などを開発し,その有効性を実験的に検証した.
著者
宮澤 彰 安立 眞理子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
NII journal (ISSN:13459996)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.81-91, 2001-03-30

1996年から2000年にかけて行われた標記プロジェクトの報告。日本の書誌ユーティリティであるNACSIS-CATの海外からの利用の試行プロジェクトとして、1995年にイギリスのプロジェクトについでチューリヒ大学日本学科図書館との接続を行った。キーポイントであるローカルシステムとしては、チューリヒ大学日本学科図書館が、マッキントッシュ上にデータベース管理システム4-th Dimensionを用いて自力開発したシステムを用いた。NACSIS-CAT接続用のソフトウェアにはNACPCを用い、ダウンロードデータからローカルシステムに取り込むシステムを完成させた。試行の開始から、ほぼ定常的使用にいたるまでは約3年を要した。この間の経緯、およびチューリヒ大学日本学科図書館からの中間報告、最終報告を含む。
著者
本位田 真一 深澤 良彰 吉岡 信和 石川 冬樹 鄭 顕志
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

次世代のソフトウェアであるユビキタスサービスの基盤インフラとなる,オープン無線センサーネットワーク構築のためのミドルウェアを研究開発し,公開した.本ミドルウェアを利用することで,長期にわたって安定運用が可能な無線センサーネットワークを構築することが可能となる.
著者
神門 典子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、探索・学習などの「探索的検索(Exploratoly Search)」の過程を支援する多次元ファセット検索のプロトタイプシステムMew(Multi-faceted Exploratoly search system for Web resources)を、メタデータや特定の分類体系を想定しない大規模なコンテンツ集合の検索に適用することである。今年度は、a)探索における利用者の認知過程を調べるとともに、b)あらかじめメタデータが付与されていないコンテンツへのファセット検索を適用するための手法の精緻化、c)画面インタフェースの改善、d)検索エンジンの改良について研究をすすめた。Mewの特徴は、トピック、時間、空間、データの種類などの多次元ディレクトリとコンテンツの内容とベストマッチ検索を組み合わせ、(1)ナビゲートnavigate, (2)ビューview, (3)サーチsearchをシームレスに、繰り返しできることである。ディレクトリをたどる「ナビゲート」は、検索語を思いつかない場合や不慣れな分野の探索を支援する。「ビュー」は検索結果を運ディレクトリのクラスに分類して表示し、検索結果を多側面から分類し、関心の明確化、比較、分析などを支援する。「サーチ」は任意の検索語や文、ディレクトリのクラスラベルをキーとできる。Mewでは、また、検索結果に適応して、下位分類や探索プランに相当する「視点」を、自動表示する。これは、利用者に1)検索ニーズの具体化、分析視点や追加検索語の提案、想定外の関係への「気づき」を促し、2)探索の指針など探索を導くメタ認知を与える。たとえば、食べ物なら、料理法、季節、産地や入手法、栄養など ; 旅行を計画するなら、行き先、気候、見所、費用、飛行機・列車、ホテル予約など ; ビジネス戦略を考えるなら、シード、市場ニーズ、コスト、他社競合、利益予測など、というように各トピックに応じたサブカテゴリが「視点」として提示され、検索結果を整理したり、探索すべき方向を示唆する。認知実験では、利用者がこのような視点を想起できるかどうかがExpertiseと深くかかわっていることが示唆された。
著者
孫 媛 根岸 正光 宮澤 彰 大山 敬三 西澤 正己
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

産官学の研究連携に関して,企業が先導役を果たすNational Systems of Innovation(NSI)モデルに代わり,Triple Helix(三重螺旋)モデルが国際的に注目されるようになっている。本研究は,産官学問の連携活動を反映すると考えられる産官学の共著論文データに注目し,その分析を通してTriple Helix的連携の浸透の実態を実証的に明らかにすることを目的とする。まず,日本の学会誌論文を対象とした「引用文献索引データベース」(CJP)を用いて,名寄せ,所属機関の同定およびセクター分類方法の検討等を行った上で,日本の研究ネットワークの実態分析を試みた。とくに,産学連携関係からみた各大学の特徴・類似度,大学に対する企業の研究依存度,産学連携が盛んな上位大学および企業の個別性を重点的に分析した。和文論文の共著分析として初めての研究であり,今後の研究可能性を示す役割も果たしたと考える。つぎに,米国の引用索引データベース(NCRJ)を用いて,国際・国内雑誌への投稿論文に基づく比較・分析を行った。その結果,企業と大学の協力関係は対等とはいえず,大学側から見たときの企業の役割の重要さは,企業側から大学を見るときのそれに及ばないことが判明した。1995年前後を境として大学が企業との共同研究から離れる様相も明らかになった。また,企業の基礎研究離れ,企業にとっての国内学会誌の役割の大きさ,産学連携の取り組みにおける大きな分野差・地域差,産学連携が特定の地域に集中する趨勢が近年一層強まっていることなども明らかになった。これらの成果は国際・国内学会で発表したほか,国際・国内学術雑誌にも投稿し,内外の研究者との意見交換・情報発信を積極的に行った。わが国の科学技術政策を論じるために,本研究のような統計的分析,計量的評価を地道に展開する必要があると考え,これまでの成果を踏まえて,今後さらにさまざまな観点からの研究を継続する予定である。
著者
竜岡 博 山田 尚勇
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
no.8, pp.27-74, 1996-03

日本語のローマ字書きの国定の標準は1937年に布告され、現在の訓令式は1954年にそれを若干修訂したものである。その中から、当座許容されていたヘボン式つづりを削除したものが、国際標準化機構によって1989年に国際標準とされている。そうした国内的、国際的標準の存在にもかかわらず、現在もっともよく使われているのは、英語寄りのヘボン式つづりである。 標準の遵守の、そのように不満足な状況は、明らかに、実施に対する政府機関の無為によるものである。しかしそうした消極的な態度の奥には、訓令式の言語学的基礎に対する理解不足がある。 本稿の主目的は、標準の普及のために、幅広い人びとを対象として、使用の実状と照らし合わせつつ、訓令式つづりの理論的基礎のハイライトを提供するにある。