著者
佐久間 七郎
出版者
山口大学
雑誌
山口大學工學部學報
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.99-102, 1951

北陸線の内,米原,富士山間の線路状況を概観し輸送力増強のための改良方針の一般を述べ次いでこの内の米原,敦賀間線路について特にそれが北陸線中の輸送隘路たるの所以を明かにし,この現在線路改良のために米原,敦賀間に別にこれと経過地を異にする新線路を選定してこの新線路建設工事の内,深沢とんねるの掘削施工の状況を詳述してその完成を早くすることの重要性を記るす。北陸線の概観。北陸線は近江,越前,加賀,越中の平野を縫うて走りその間本州中部の脊梁山脈が日本海に向つて突出するところにとんねるを穿つて敷設され各平野を流れる河川は急流多く沿線は積雪量が大きい。そのため大都市はこれら区劃された平地に散在して発達した。沿線の大驛と稱せられるものは米原,敦賀,福井,金澤,高岡,富山である。これらの駅は各略ぼ等しい程度の支線路の分岐点となり且つ相互間の距離は大体相似て50〜70kmの間にある。北陸線は本邦中部地方の裏幹線であつて同時に青森,米原の輸送路の一環をもなしているがしかもこの建設は遠く明治の中期に遡り線路建造物中には今尚往時の煉瓦工作物も残存している。北陸線の内,柳ケ瀬とんねる,山中信號場をはさんで杉津,今庄間及び倶利加羅とんねるの3ケ所は線路勾配急にして20〜25であり,ために列車牽引力,列車單位に及ぼす影響は大きい。現在北陸線の列車密度は福井金沢間,金沢津幡間,田刈屋富山間において大である。今北陸線全長に亘つて輸送力を強化するための線路改良を考へるときは前記とんねる区間の勾配変更をして現在の急勾配を10まで緩にすると共に列車回数の多い区間から始めて線路増設に着手し併せて線路の曲線半徑を大にすること等が差当つての対策である。このうち金沢,津幡間11°6kmの複線工事のみ完成し倶利加羅とんねるの急坂はこれと並んで緩勾配のとんねる掘削にかかつている。田刈屋,富山間は平地ではあるが神通川をはせんで殆ど全区間が大鉄橋架設の要がある。富山,福井,敦賀の諸驛は戰災による損壞が大でしかも戰後乘降人員や取扱貨物は激増したにかかわらず驛設備はこれに伴わず,構内線路延長は不足し驛前廣場は狹隘である。戰災復興を機会に今こそ百年の計を立て根本的の改良工事に着手する要がある。富山驛は客車線群の位置が構内北東隅にあつて列車引上げに不便であり各線群が本線を挾んで散在し貨物授受のために本線を支障することが多い。改良計画としては旅客驛として富山市の都市計画人口20万人,乘降人員一日29000人とし乘降場幅員北陸線10m延長320m2本,高山線8m,延長240m,臨港線延長120mである。客貨の取扱いを分離して貨物駅を新設の富山操車場に接して設け地方鉄道との貨物の授受は富山操車場と稻荷町駅間に連絡線を設けて行なう。駅前広場は表口10500m^2裏口2000m^2を計画する。福井駅は福井操車場の設置されたことによつて北陸線関係の仕訳を廃止したので自駅と京福電鉄との間の貨物授受のみとなつたが構内が曲線中にあるため見透しが惡い。旅客駅としては福井市の將耒人口を15万人とし乘降人員を国鉄線13200人京福電鉄9000人福井鉄道9000人合計31200人とし北陸線及び越美線ホームを延長する。駅前広場は表口10000m^2裏口1800m^2。取扱貨物40万屯は福井操車場に移し新たに操車場と福井駅間に一線を増設してこの間の列車回数のみ計202となる。なほ福井操車場の仕訳能力を1000輛に増強する。敦賀駅は米原駅から47.85kmの位置にあり,小濱福線及び臨港線の連絡点であるがカーブした構内線群を持つて不便なことは大駅中高岡駅に次いでよくない。即ち米原寄りが800m半徑で入り込みこれが旅客乘降場の下り方向の端まで延びているため客扱ひに見通しがよくない。乘降場を増設して上下扱ひを別ける必要がある。上り仕訳線群も曲線中にあつて仕訳作業が圓滑にゆかない。しかもこの地方は一年の内200日以上が降雨雪のため一層作業の困難を増している。仕訳線群現在上リヤード7線有効長1538m下りヤード11線1775mで收容車数370輛操車能力1100輛である。米原,敦賀間の線路は北陸線中最大の輸送隘路であり同時にまた東海道線から北陸線に入つて最初の難所でもある。この区間中の木ノ本,敦賀間25.4kmは柳ケ瀬とんねるを挾んで勾配25の線路が延長7kmに及び補機運転運転区間である。柳ケ瀬とんねるは米原起点34.09kmから35.442kmに至る延長1352mのとんねるであるがその建設が古いためにとんねるの断面が狹小で広幅貨物の通過は一部制限をうけ且つ附近は冬期間積雪多量のために大きな保守費を要する。勾配は雁ケ谷から刀根に向つて25の下りでありこのとんねるの列車通過に要する時間は上りの場合4分を費するがこの間,煤煙熱気は運転機関室や客車内に流入し又列車通過後においても暫時とんねる内に充満残留して保線掛の作業に支障を及ぼし軌條枕木に與える損害も小さくない。列車通過時の排煙不充分に因する運転事故は重
著者
関口 靖広
出版者
山口大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は,「学びの共同体」に基づく学校改革において,数学教育研究がどのように貢献しうるのかを,改革に取り組む中学校での観察とインタビューによる質的研究で探究した。研究成果として,「学びの共同体」に基づく学校改革においては,伝統的な一斉授業や問題解決型授業からの転換が必要となることがわかった。これまでの数学教育研究の知見を活用しながらも,新しい学びの在り方に基づいた数学教育研究が必要である。
著者
瀬崎 譲廣
出版者
山口大学
巻号頁・発行日
2014

博士(学術)
著者
佐野 晴夫
出版者
山口大学
雑誌
山口大学独仏文学 (ISSN:03876918)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-20, 2001
被引用文献数
1
著者
古荘 真敬
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

初年度以来、我々は、"言語主体としての<私>もまた動物的生命との連続を欠いては生成しえない"という原始的事実の意味を明らかにし、そのことによって、"人間存在と動物存在との絶対的断絶"を語るハイデガー的思考の枠組みを流動化することを目指してきた。昨年度、日本現象学会編『現象学年報20』に発表した論文において、我々は、こうした問題意識のもと、後期ハイデガー哲学におけるラチオ(ratio=理由)概念の批判に学びつつ考察を展開し、いわゆる「理由の空間」の生成こそは、「ニヒリズム」と「Gestell」の結実を準備し、「戯れ」としての本来的「自然」の概念を切り捨てて、我々の「生」と「死」の意味を空洞化した存在史の展開点であったと推察するに至った。今年度、我々は、上記のラチオ概念の批判を承けつつ、1936年から38年に成立した『哲学への寄与論稿』におけるハイデガーのロゴス論の帰趨を検討することを試み、そこにおいて「存在者トシテノ存在者on he onを一者henとするギリシア的な解釈」(GA65,459)へと向けられた彼の批判が、畢竟、いわゆる「共同体」概念を脱構築することを狙うものとして了解しうることを見出した。ギリシア的に根源的なロゴス概念の基底を掘り崩しつつ、彼が狙っていたのは、別言すれば、「我々」という表象を繋ぎとめている「一ニシテ共通ノ世界」(ヘラクレイトス断片89)を、むしろ本質的に「各自的」で「固有ナモノidion」へと一旦散乱させ、その錯綜的多様体の力動性のうちに「存在」の要求を反復させることであったと解釈される。ハイデガー自身の意図を超えて、この洞察を拡張すれば、それはまた、人間的生(bios)と動物的生命(zoe)の差異が再流動化するさなかにおいて、我々の意味の秩序と自然の秩序との差異の根源が反復され、ある「底無しの没根拠Abgrund」としての「時間」の根源が闡明されることを意味している。『山口大学哲学研究』第13号に発表した拙論「時の過ぎ去り-人称的世界の時間的構造の探究のための準備的考察-」において、私は、この最後の時間論的観点を、狭義のハイデガー解釈の枠組みにはとらわれない仕方で、一般的に展開し、「時の過ぎ去りVergehen」の重層的経験のうちに、我々の「生」と「死」の意味あるいは無意味を、照らし出すことを試みた。
著者
李 明輝
出版者
山口大学
雑誌
東亞経濟研究 (ISSN:09116303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.139-175, 2005-01-31
著者
澤 喜司郎
出版者
山口大学
雑誌
山口經濟學雜誌 (ISSN:05131758)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.683-704, 2006-01-31
著者
藤井 克彦
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

近年、環境への配慮から産業廃棄物・排水の排出規制が一段と厳格化しており、これらの適正な処理に多くの企業がコストと手間をかける時代となっている。申請者は高濃度の糖が存在する厳しい条件下で生育できる微生物の探索を行い、幾っかの環境試料から高濃度糖を含む無機塩培養液で良好に生育する酵母を分離した。そこで本研究計画では、分離株の生化学的および生理学的解析を行うとともに、分離株が産業排水の浄化に利用可能かどうかについて検討を行うこととした。本年度は、分離株OK1-3株を用いて食品産業排水を浄化できるか検討した。まずフラスコスケールで分離株の浄化能を検討した。乳業排水(糖分を多く含む氷菓子排水)および水産加工排水(タンパク質を多く含む練製品排水)に無機塩類培地成分を加え、これに分離株を接種して培養した。培養期間中、全有機炭素値を定期的に測定した。検討の結果、分離株は乳業排水培地で増殖し、3日間の培養で全有機炭素値が約30%低下した。次に、分離株を担体に固定化し、固定化担体の排水浄化能を検討した。その結果、9日間の培養で70-80%の有機炭素が無機化されていることがわかった。さらに1.5L規模の排水浄化装置を試作し、これに固定化担体を充填し、排水の連続浄化を試みた。4日間の連続稼動の結果、排水中の有機炭素量は日を追って低下し、最終日には全有機炭素の90%程度が無機化されていた。しかし比較に用いた醸造酵母でも同様の結果が得られ、OKI-3株独自の有用性を見出すには至らなかった。
著者
松野 浩嗣 乾 秀行 呉 靱
出版者
山口大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

2つの異なる言語の同一性判定問題は、世界言語照合の研究の主な問題に一つである。本研究では、言語名類似性と言語分類類似性の2つの尺度を用いてこの判定を行う行うアルゴリズムを提案し、実験により88%の正解率の照合結果を得ることができた。さらに、兄弟情報を考慮することで、この正解率を向上させることができた。この手法のさらなる改良、すなわち、これら2つの尺度のうち、どちらか一方が完全な照合であるときにでも不一致とする問題点を解決するため、さらに2つの基準である、言語情報と兄弟情報による類似性と言語名と分類情報による基準を定め、その効果を実験的に確認した。
著者
小林 信之
出版者
山口大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1991

我々は従来よりAIDS発症のco‐factorとして、TNF(tumor necrosis factor;腫瘍壊死因子)を提唱してきている。本研究において我々は以下の2点を新たに明かにした。その第1点は、TNFによるHIV感染細胞の特異的致死機構が所謂Apoptosisの機構に拠っており、TNFによるHIV複製増強がHIV感染細胞の特異的致死を誘因しているのではないことを明かにしたことである。近年細胞のApoptosisを仲介すると考えられている細胞膜上の糖蛋白Fas坑原遺伝子が分子クロ-ン化され、細胞死の機構がようやく明かにされうる段階に来ており、今後HIV感染相棒の特異的致死機構がこの観点からさらに詳細に検討されていくものと期待される。我々が明かにした第2の点は、HIV転写制御に細胞特異的に関わる因子の存在と、その因子が作用するHIV‐LTRの中のcis‐elementの同定である。我々が新規に見いだしたこのcis‐elementはHIV‐LTRの‐121から‐158に存在し、この領域がヒトT細胞株MOLT‐4でHIVの転写を正に調節していることから我々はこの領域をURE(up‐regulation element)と命名した。この領域は単独にHIV転写を制御する因子ではなく、HIV‐LTR中のエンハンサ-(Enhancer)領域の機能を制御する領域である事が明かとなった。、HIVの転写には必須の領域ではないが、この領域の存在はHIVの転写を最大500倍活性化すること、さらに、この領域の活性が細胞特異的であることも見いだした。今後この領域に働く細胞性因子の検索を行なっていく予定である。
著者
矢野 潤
出版者
山口大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

導電性高分子であるアニリン誘導体高分子,ポリ(N-メチルアニリン)(PNMA)およびポリ(o-フェニレンジアミン)(PoPD),をそれぞれ対応するモノマーを電解重合することにより作製した.PNMAおよびPoPDとも安定な膜として電極基板上に得られた.これらの重合膜を被覆した電極を用いて溶存する有機化合物のサイクリックボルタンモグラムを測定したところ,ビタミンCやいくつかのキノン類のサイクリックボルタンモグラムの酸化・還元ピーク電位は電極反応が起こりやすい方向に移行し,重合膜の電極触媒作用が観測された.PNMA膜の電極触媒作用の電極過程や速度論的パラメタを調べるため,PNMA膜を回転円板電極(RDE)上に被覆してRDEボルタンメトリを行った.PNMA膜の膜厚,溶存種の濃度などを変えてRDEボルタンモグラムを測定し,AlberyとHillmanの理論をもとに解析した.その結果,(1)溶存する有機化合物は主にPNMA膜中のレドックス活性サイトにより酸化・還元されること,(2)その電荷移動の速度定数は6.4×10^3Ms^<-1>であったこと,(3)電極触媒反応の全電極反応速度定数は0.015cm s^<-1>であったこと,などが明かとなった.他方,PoPD膜についても同等の検討を行った結果,(1)〜(3)とほぼ同様の結果が得られた.したがってこうした電極触媒作用を高めるには,重合膜のレドックス活性の増加を図ることが重要であるという知見が得られた.PoPDは他の多くの導電性分子と異なり,いくつかの有機溶媒に溶解した.そこでこのことを利用してPoPDの分子構造が決定できた.得られた分子構造と導電性や電極触媒活性の関連についても有為な結果が得られた.
著者
田淵 太一
出版者
山口大学
雑誌
山口經濟學雜誌 (ISSN:05131758)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.717-736, 2003-07-31

This paper will argue that deflation nowadays is essentially a global phenomenon, which is attributed to structural changes of the world economy, and so the conventional explanations of deflation and policy advices based on the neo-classical macroeconomics are fallacious. To illustrate this with historical events, we will examine what is called the "Great Depression" in Britain 1873-1896. We confirm W.Arthur Lewis's conclusion that the proximate cause of the fluctuation in prices in that period and after was changes in the growth rate of agricultural supplies. And we will briefly discuss J.M.Keynes's analysis in A Treatise on Money, which suggested that profit deflation had developed in the 1890s.
著者
権 純哲
出版者
山口大学
雑誌
山口大学哲学研究 (ISSN:0919357X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1_a-40 _a, 1994

本稿は、茶山の体制構想を、彼の儒教古典解釈との関連で検討しようとするも。である。茶山思想の評価をめぐるさまざまな問題点を踏まえながら、特に王朝体制自体をどう見るべきかという問題、あるいは王朝体制を支えていた儒教思想をどう理解すべきかという問題を念頭に置き、論を進めていきたい。分析の対象としては、主に『経世遺表』の「序官」と「下官修制」を用いた。 『経世遺表』の改革構想は主に『周礼』に思想的根拠を求めたものであるが、まず、『礼』に執着せざるをえなかったことの歴史的経違や思想的背景を追跡し、茶山の儒教古典研究の現実的かつ実践的性格を明らかにすることにつとめた。次に、朝鮮王朝の基本法典である『経国大典』と茶山当時の支配体制が窺える『大典通編』の権力機構の編成を比較・検討することによって、体制の特徴及び問題点を幾つか整理し、茶山の体制構想を、機構の整備、官階の整備、軍制の整備という三つの政治的課題から考察した。 機構の整備においては、『書経』の〈三公一三孤一六官〉に思想的根拠を求めながら、〈議政府一六曹〉体制の強化が図られたことに注目した。六曹に属する衙門の数的均衡を成し遂げる際には、衙門の移動・統合・新設などが行なわれたわけであるが、その理論的根拠として、あるときは『周礼』などの儒教古典が引用され、また、あるときは『経国大典』の規定をそのまま存続させていることを解明し、そこから茶山経学の方法的性格を窺うことができた。 官階の整備においては、古典の〈三公一三少一卿一大夫一士〉という序列の体制に思想的根拠を求め、『経国大典』の「正・従九品」制度の簡略化がなされている。ここでは、まず、大夫ではないはずの三公が「大匡輔国崇禄大夫」と称されているように、改革構想自体とその古典の根拠との矛盾が指摘できた。また、大夫と士を厳格に区別すべきであるという茶山の主張は、文・武のバランスのとれた人事を目指すものである一方、動揺しつつあった身分制の問題を、体制強化の方向へ吸収しようとするものであったことも明らかにされた。 軍制の整備においては、備辺司の中枢府への統合、議政府の時任大臣と六曹判書の中枢府職の兼任禁止を通じて、軍務機関としての中枢府の正常化と最高機関としての議政府の復権が推進されていたこと。「無卒之将」と「無将之卒」を再組織することによって軍の組織と指揮系統の立て直しが図られていたこと。主力部隊である三営の兵卒数の縮小と屯田設置を通じて国家財政の再建が図られていたことに注目した。
著者
澤 喜司郎
出版者
山口大学
雑誌
山口經濟學雜誌 (ISSN:05131758)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.541-561, 2005-09-30
著者
井内 良仁
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

短寿命の昆虫種の中にあって「寿命と生殖のトレードオフ」を打ち破り, 10年以上の超長寿命と多産を可能にしたヤマトシロアリの生存戦略について,抗酸化システムに注目した解析を行った。その結果ヤマトシロアリは他種の昆虫に比べて非常に優れた抗酸化システムを有しており,特に長寿の生殖虫では抗酸化酵素そして酸化傷害修復酵素がその長寿命と高い生殖能に積極的に働いていることが示唆された。
著者
伊藤 斌
出版者
山口大学
雑誌
山口大学哲学研究 (ISSN:0919357X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.29-62, 1992

快楽は善なのか、それとも思慮のほうが人間にとってよいものなのか。我々の人生にとっては、快楽も思慮も両方あったほうがよい。快楽と思慮との混合した生がよりよい。では、その混合の生をよきものにしているのは快楽なのかそれとも思慮なのか。快楽と思慮の各々を分析して二等賞争いの決着をつけねばならない。第I章、快楽の分類、第II章、思慮の分類、第III章、両者の比較及び判定。 第I章 快楽は一つかそれとも幾つかのものに分けられるのか。快楽を考える時、快楽を与えるものとの関係を無視できない。その対象との関係によって、快楽には真なる快楽と単なる快楽の区別が立てられることになる。思いなしに伴う快は、思いなし自身に真偽の区別が語られるので、それに伴う快にも真偽が語られうる。また、苦痛がなくなることを快と思い違えることもある。かくて、真なる快、偽なる快、苦痛と混じりあった快と、純粋な快など、快楽の間に分類が可能となる。 第II章 思慮についてはそれと同族の知識によって分類が行われる。永遠に変らない神的対象にかかわる知識もあれば、感覚的事物を対象とする知識もある。それらの間には当然、真実さの段階が認められるがしかし、快楽の場合とは異なって、偽なる知識というものはありえない。感覚的事物を対象とする知識も、我々が感覚の世界に生きている以上、必要なものとなる。 第III章 快楽、思慮ともに様々に分類されたが、そのうちのどれを混ぜればよき生が出来るか。両者ともその全部を混合することは危険。ではどれを入れるか。よき生のよさに貢献するものを選ぶのだからというので、善の三つの姿、適度、美、真実性をとり出し、その各々によって快楽と思慮の各分類を吟味する。その結果をもとにして、よき生のよさに貢献するものをランク付けすると、快楽のほんの一部のみがようやく第五位にひっかかる程度である。快楽と思慮がその位を争った善とは何か。この対話篇で語られる限りでは、感覚の世界、実在の世界を秩序づけ、それらをしてよきものたらしめるもの、すなわち原因であり、逆に、我々の生はそのような生を可能な限り写しとっていく限りにおいてよきものとなるのであり、知性と思慮はそのことを行うことを本来の使命とする。
著者
芳原 達也 荻野 景規 小林 春男
出版者
山口大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

現在、地下水及び河川汚染で社会的問題となっているトリハロメタンジクロロホルム,)クロロブロモメタン,クロロジブロモメタン,ブロモホルム等)およびトリクロロエチレン,1,1,1ートリクロロエタンおよびテトラクロロエチレン等々の有機塩素系溶剤は、脱脂洗浄、樹脂溶解、塗脂溶解、塗料のシンナ-、リ-ムバ-、冷媒、ドライクリ-ニング等の目的で広範囲に使用されており、その使用量も非常に多い。毒性としては、中枢神経系に対する抑制作用、三叉神経、末梢神経障害、肝臓障害、腎臓障害、心臓血管系障害など多くが報告されている。また近年は環境汚染物質としてフロン等とともに、西暦2000年までに使用禁止物質として世界的に規制されつつある。しかし、これらの物質の生体内吸収、排泄、代謝などに関する生体内動態については解明されていない部分が非常に多い。そこでこれらの有機塩素系溶剤の中で、最も普遍的に用いられているトリクロロエチレンの着眼して、この溶剤の生体内動態および代謝について麻酔犬を使用し実験的に詳細に検討し、以下の結論を得た。まず、トリクロロエチレン(TRI)の腸管からの吸収を観察するために、私たちは麻酔犬での閉塞性腸管吸収システムを開発し、手術犬で腸管の3部位(空腸、回腸および大腸)に、それぞれ3濃度(0.1,0.25,0.5%)のTRIを投与し、TRIとその代謝産物である、遊離型トリクロロエタノ-ル、トリクロロ酢酸、抱合型トリクロロエタノ-ル血液、尿、胆汁および残留液で測定した。投与後2時間で、投与量の85〜90%のTRIが、すべての部位で吸収された。さらに、これらの部位間での吸収率には差は認められなかった。次に、尿および胆汁から投与後2時間で排泄された、未変化体およびその代謝産物の割合は、すべての群で吸収量に対し、非常に低い値であった。
著者
藤原 貞雄
出版者
山口大学
雑誌
山口經濟學雜誌 (ISSN:05131758)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.525-551, 2004-03-31

変わらなければ死んでしまいますよ。我々はいま大きな問題を抱えている。これからどう立ち直るのか。新しい血と考え方を入れてもらって,活用させてもらうのです。生き返るのは我々の力であり,努力です。(塙義一日産自動車社長(当時),『日経ビジネス』1999年4月5日号)私は白紙の紙一枚もって日産にやって来ただけなのです。計画など何もありませんでした。私自身の経験と,私の感性と,やる気と決意を持ってきただけです。計画は私が日産にやって来てから,日産の人々と作成していったのです。だからこそ,計画は迅速に実行されたのです。…彼ら自身の計画だからです(カルロス・ゴーン日産自動車代表取締役(当時),『一橋ビジネスレビュー』2001年冬季号)