著者
高橋 征仁
出版者
山口大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、災害時の緊急避難行動にみられるヒューマン・エラーを進化心理学の観点から捉え直すことで、その基本特性および制御方法を解明することを目的とした。東日本大震災にかんする国交省の避難行動調査の2次分析を行ったところ、情報収集や家族保護、職務遂行などの社会的行動が避難行動の遅延要因であることがわかった。また、「田んぼを見に行く」ようなスカウティング行動は、30歳代と60歳代の男性に典型的にみられ、性選択と血縁選択が2重に影響していることが示唆された。
著者
齊藤 諒介 海保 邦夫 高橋 聡
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、大量絶滅時の気候変動を決めるメカニズムと陸海環境応答の解明を目的として、堆積有機分子、水銀分析、1次生産性に係るリンや鉄などの微量元素分析を行う。堆積有機分子の中でもコロネンは、通常の森林火災よりも高温で生成する芳香族炭化水素で、有機物から大規模火山噴火と小惑星衝突により多く生成される。オルドビス紀末大量絶滅についてコロネンの分布を確かめ、大量絶滅の大元の原因を確定する。さらに、寒冷化と同時の大量絶滅と温暖化と同時の大量絶滅を記録した地層中のコロネン含有比からマグマによる加熱温度を推定して気候制御ガス発生比率を推定し、それから気候変動を推定して表面海水温変化値との整合性を検証する。
著者
太田 康晴 田口 昭彦 秋山 優
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

重度の糖尿病をきたすWolfram症候群は、WFS1遺伝子の変異により発症する。我々は、WFS1欠損マウスの膵β細胞において時計遺伝子ネットワークの出力部分の転写因子に異常がある(DBP活性の低下)ことを見出した。DBP活性が膵β細胞特異的に抑制されるような遺伝子改変マウスは顕著なインスリン分泌不全を伴う耐糖能障害を呈していた。正常な膵β細胞は、摂食が始まる時間に備えてインスリンが速やかに分泌されるような準備状態を作るが、DBP活性が抑制されている膵β細胞はこのような準備が出来ないことが示唆された。つまり膵β細胞における体内時計の異常はインスリン分泌不全さらには糖尿病を引き起こす可能性が高い。
著者
野島 順三 市原 清志
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

全身性エリテマトーデス(SLE)患者における動脈血栓塞栓症発症機序の解明を目的に、抗リン脂質抗体が末梢血単核球による組織因子(TF)発現や炎症性サイトカイン産生にどのような影響を及ぼすのか検討した。その結果、抗リン脂質抗体が単球とリンパ球の相互作用によるTF発現やTNF-α、IL-1β、IL-6の産生を増幅させることを確認し、これがSLE患者における動脈血栓塞栓症の重要な病因となることを明らかにした。
著者
中原 豊
出版者
山口大学
雑誌
山口国文 (ISSN:03867447)
巻号頁・発行日
no.5, pp.p13-23, 1982-03
著者
石田 毅 田仲 正弘 水田 義明
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

平成7年度にはAEデータ収録・解析装置を設置するとともにボーリング孔内の1断面に90度の等間隔で4個のAEセンサーを設置できる水圧破破亀裂検出用のAEゾンデを試作した.また,本研究の軸となるAEのP波の到着時間差から亀裂発生方向を決定するための解析手法を理論的に定式化した.平成8年度には,この定式化した手法に基づく数値シミュレーションと室内実験を行い,亀裂方向決定精度に及ぼす種々の要因の分析を行った.まずセンサーの設置断面とAE発生断面の距離を変化させて各センサーへのP波初動到達時間の差を数値計算で求め,これを予想される測定の時間精度と比較することにより,実用的な精度を得るために必要なセンサーとAE発生断面の離間距離の限界を明らかにした.次にボーリング孔を模擬した鉄製の厚肉円筒に試作したゾンデを設置し,円筒の外側から模擬AE信号を与える実験を行い,上述の数値シミュレーションが妥当性を確認した.またAEセンサーの受感方向には指向性があるが、AEセンサーの受感方向を中心に45°以内にAE震源がある場合にはP波初動を明瞭にとらえ得ることを,この実験により明らかにした.平成9年度は,これら成果に基づき(株)日本パブリックが水圧破砕による地圧測定業務のために掘削したボーリング孔を利用して,試作ゾンデを用いた現場実験を行った.この現場実験で得られたデータを整理し,これまでの理論的・実験的研究で得た知見の妥当性を確認した.しかし,実用的な精度で亀裂方向を決定するには,亀裂発生箇所近傍にAEセンサーを設置する必要のあること,一方,現状の仕様のゾンデでも,AE発生頻度の時間変化やAEの周波数の変化から,従来明らかでなかった原位置での水圧破砕亀裂の挙動に関する情報が得られることがわかった.
著者
丹 信介 曽根 涼子
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、異なる運動強度での運動トレーニングが、視床下部室傍核でのCRFとAVPの両者を含有する神経細胞の割合にどのような影響を及ぼすかについて検討を試みた。実験には6週齢のラットを用い、トレーニング群とコントロール群に分けた。トレーニング群のラットは、さらに3群に分け、各群それぞれ、10m/分、20m/分、30m/分の速度でのトレッドミル走を、1日30分、週5回の頻度で、4週間あるいは8週間行わせた。コントロール群のラットは通常のケージで飼育した。30m/分の速度でのトレーニング群の体重当たりの副腎重量は、4及び8週間のいずれのトレーニング期間においても、コントロール群や他のトレーニング群のそれと比較して、有意に(p<0.05)重かった。各トレーニング群及びコントロール群の脳切片を浮遊法によるCRF及びAVP抗体を用いた免疫組織化学的二重染色に供し、視床下部室傍核でのCRF、AVP含有神経細胞の同定を試みた結果、両者を含有する神経細胞数は、各群とも、4及び8週間のいずれのトレーニング期間においても平均数個程度であり、いずれのトレーニング期間においても、各群の間で有意な差は認められなかった。染色法の妥当性については、CRFとAVPの両者を含有する神経細胞数が視床下部室傍核で著しく増加するとされている副腎摘出ラットを用いた染色結果から確認ができている。したがって、走行スピード30m/分、1日30分、週5日、4あるいは8週間の走行トレーニングは、それより低い走行スピードでの同様の走行トレーニングに比べて、副腎重量の増大は生じるが、視床下部室傍核のCRFとAVPの両者を含有する神経細胞の数には影響を及ぼさないことが示唆された。
著者
井上 三朗
出版者
山口大学
雑誌
山口大学独仏文学 (ISSN:03876918)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.a1-a21, 2004-12-24
著者
菅原 一真 山下 裕司 廣瀬 敬信
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

糖尿病は比較的頻度の多い疾患であるが,難聴の進行は患者のQOLを大きく低下させる。糖尿病に伴う難聴については以前からの詳細な形態学的研究が行われているが,難聴を予防する方法は明かでない。本研究では糖化ストレスに曝露された内耳において生成される終末糖化産物(AGEs)に着目して,研究を計画している。2020年度までに,糖尿病モデル動物を用いて,内耳においてAGEsが生成される時期や部位,その条件について検討した。その結果,聴覚障害を生じる前より内耳血管条へのAGEsの生成が観察された。さらに,AGEsの生成と炎症性サイトカイン,酸化ストレスと内耳微小血管の動脈硬化の関係についても検討を行った。AGEsの生成後に組織学的に血管障害が明らかになってきていることから,血管障害の原因としてAGEsの関与が疑われた。更にAGEs阻害物質メトホルミンを用いて,糖尿病に伴う難聴の予防が可能かどうか検討した。2021年度は,メトホルミンの内耳におけるAGEs産生を抑制する機序を明らかにする目的で,in vitroモデルを用いて実験を追加する予定である。
著者
志磨 裕彦 中内 伸光 吉村 浩 牧野 哲 北本 卓也 小宮 克弘 内藤 博夫 菊政 勲 幡谷 泰史
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

多様体M上に平坦接続DとRiemann計量gが与えられて,gがDに関するHesse形式で表せるとき,その組(D,g)をHesse構造といい,Hesse構造が与えられた多様体MをHesse多様体というHesse幾何学とはHesse多様体に関する幾何学のことである.Hesse幾何学は情報幾何学,アファイン微分幾何学,Kahler幾何学等と密接に関連する.甘利と長岡は確率分布族に双対接続という微分幾何学的構造が本来的に備わっていることを発見し,数理情報をこの双対接続の見地から研究するべく情報幾何学を提唱した.双対接続が平坦な場合がHesse構造で,正規分布族や多項分布族など多くの重要な確率分布族が双対平坦接続,すなわちHesse構造を有していることが知られている.また双対接続の概念はアファイン微分幾何学においても非退化アファイン超曲面はめ込みとその余法線はめ込みの組を考えることにより得られていた.更にはHesse多様体の接ベクトル束がKahler多様体になることから,Hesse幾何学はKahler幾何学とも親戚関係にある.本研究ではHesse幾何学をこれら3つの幾何学との関連を踏まえながら総合的に研究した.1.情報幾何学の方法を用いて,新しいHesse計量を構成し,逆に微分幾何学的手法を用いて,新しい確率分布族を構成した.2.Hesse構造のポテンシャルの等位曲面のアファイン微分幾何学を展開し,勾配写像のラプラシアンを考察することにより,アファインBernstein問題の類似が解決した.3.Kahler幾何学との関連でいえば,Kahler幾何学における消滅定理や双対定理に類似する結果が,Hesse幾何学でも成り立つことが示された.4.Hesse構造の自然な拡張であるCodazzi構造が定義できるが,これが定曲率で等質ならばそれは1次元高い等質Hesse構造から導かれることが分った.これらの諸結果は"Geometry of Hessian structures"として,World Scientific社より出版予定である.
著者
為末 隆弘
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では,オープンスペースでスピーチプライバシー・セキュリティを保護するための方法のひとつとして,会話音声をそれとは異なる音でマスクする方法に着目し,無意味な定常雑音を用いてスピーチプライバシー・セキュリティのレベルをコントロールするためのサウンドマスキングシステムについて考察している。スピーチプライバシー・セキュリティに関する心理実験で得られた実測データをもとに,本システムの有効性を確認した。
著者
澤田 昌人
出版者
山口大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

エフェ・ピグミーの夢とその解釈についてこれまでに得られた資料および、文献を検討して、現在までに以下の知見を得ることができた。1.夢に見られるさまざまな事象について、その象徴的な解釈の体系が存在する。それらは主に人の死の予兆とされており、エフェ・ピグミーの深層心理において人の死がしめる意義の大きさを示唆している。2.上記以外に、狩猟の結果の予兆とされる夢が多く、現実に狩猟などをおこなう際の意志決定の判断材料とされている。これはエフェ・ピグミーにおける夢と現実の密接な関係を示している。3.夢には亡くなった故人が登場することが多く、これがエフェ・ピグミーの死生観を裏付ける結果となっている。エフェ・ピグミーは死後もなお、熱帯雨林の奥深く生前と同じ生活様式で暮らし続けるのであるとの考えを持っているのである。つまり、彼らが先祖の生活を今なお墨守する根拠を、夢が与えているのである。4.また夢に現れる故人は、エフェ・ピグミーの文化的な中核である歌を教えてくれるほか、狩猟のための毒矢の製法など、現実の生活を送るためのさまざまな智恵を与えてくれるとされる。3.で述べたこととあわせると、彼らの夢は現実生活の送り方と、さらにその改良の方策までをも指示するのである。5.以上のように、エフェ・ピグミーにおいて夢は、世界観的、宗教的な意義を持つとともに、生者の生活の多くの側面に決定的な影響を与えており、夢は、エフェ・ピグミーの心性を理解するための重要な鍵であることがわかる。これらの知見のいくつかは、世界の狩猟採集民研究においても従来指摘されなかった点であり、その世界観の研究に寄与するであろう。現在上記のテーマについて、論文を執筆中であり、近いうちに発表する予定である。
著者
白石 晃司 大川 恭行
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ヒト精巣組織から次世代シーケンサー(NGS)によるトランスクリプトーム解析を行った。23,616の遺伝子のmRNAについて解析を行ったところ、cell cycle, nucleic acid bindingなどの遺伝子群が高発現の上位を占めた。非閉塞性無精子症症例との比較においてその発現は特にヒストンH3.5などのエピジェネティック関連遺伝子に認められた。また精索静脈瘤症例においてcell cycle関連遺伝子の発現が低下し、精索静脈結紮術の効果と関連することが判明した。NGSによるトランスクリプトーム解析は造精機能障害の病態解明において有用な方法であることが示された。
著者
平野 均 坂元 薫 北村 俊則 苗村 育郎 湊 博昭 岡野 禎治 佐々木 大輔 田名場 美雪
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

【目的】(1)青年期の季節性感情障害(SAD)有病率と罹患者の特徴、ならびに(2)Global Seasonality Score(GSS)規定因子を解明し、治療法の確立を目指す。【対象と方法】(1)平成16〜17年度全国7大学新入生を対象とし、SAD有病率と罹患学生に認められる特徴を調査した。GSS得点13点以上(高GSS群)は全員を、12点以下(低GSS群)は40名から高GSS群数を引いた人数を無作為に抽出して構造化面接を実施した。(2)平成16年度全国8大学新入生を対象とし、GSS・TCI・出身高校所在地平年値日照環境との関係を調査した。【結果】(1)対象学生12,916名中、8,596名が回答に応じた。高GSS群202名中151名と低GSS群118名中110名がSCID-Iを用いた構造化面接に応じ、それぞれ7名と1名がSADと診断された。SAD有病率は0.96%で、罹患率に性差は無かった。また14名が社会恐怖(social phobia ; SP)と診断され、GSSは高得点であった。SAD罹患学生は、高率にSPを合併していた。(2)対象学生10,871名中、GSS・TCI・日照環境情報に不備が無かったのは61443名であった。GSS総点・平均日照時間・同日射量・TCI 7項目を変数として、パス解析を行った。その結果高GSS得点を規定したのは、低い自己指向性と協調性、高い自己超越・新奇追求・損傷回避で、分裂病型人格に該当した。日照環境とには関連は見出されなかった。【考察】構造化面接による今回の大規模調査から、SAD有病率は凡そ1%で性差が無いことが示された。罹患学生にSPが高率に併存すること、GSS得点が特定の人格傾向を反映することは、SAD・SPに共通する生物学的基盤が存在する可能性を示唆している。このことは両疾患の病態と成因を解明する上で、また治療法を確立する上で貴重な所見と考えられる。
著者
鈴木 康夫
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

川崎病 は年々増加傾向にあり合併症に冠動脈障害がある. ビタミンDの生理機能は, 腸管からのカルシウム吸収と骨へのカルシウム取り込みであるが, 免疫抑制作用を有することが報告されている. 川崎病児における血清ビタミンD濃度と治療反応性について検討した. 川崎病100例にガンマグロブリン療法初回奏功群と不応群における症状, 血液検査結果, 血清25 (OH) D濃度を検討した. 奏功群71例, 不応群29例であった. 解析では, 不応群は奏功群に比し, 血清25 (OH) D濃度は低かった. 川崎病患児において血清ビタミンD濃度は, 初回ガンマグロブリン反応性へ関与している可能性がある.