著者
清塚 邦彦
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 人文科学 (ISSN:05134641)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.268-235, 2002-02

This paper is a sketch for the philosophical theory of pictorial representation. After introducing the theme of pictorial representation, I shall divide my arguments into two parts. The first part (sec.2-4) contains a series of critiques against "eliminativist" theories of pictorial representation. By "eliminativism" I mean those theories which do not recognize the factuality of perception peculiar to pictures at face value. I criticize three theories in particular as specimens of eliminativism: Illusion theory, resemblance theory and convention theory (or semiotic theory). In the second part (sec.5-6), I give an outline of an anti-elimitativist theory of pictorial representation. The theory insists on two points, each of which forms, respectively, a "natural" and an "artificial" aspect of the concept of pictorial representation. The first point is that picture perception (perception of images in pictures) is grounded on the twofold operation of the natural abilities of perceptual recognition at a subpersonal level. When we see a picture of a horse, the fact of our looking at the picture triggers, at a sub-personal level, not only the perceptual ability to recognize a plain surface but also the perceptual ability to recognize a horse. As a result, we get a twofold visual experience: what we see is a plain surface of course, but in seeing it, we cannot but have an impression that it is as if we were looking at a horse. This kind of experience is not to be dismissed as mere illusion. It is a natural and normal product of our senses. The second point is that in order that images in pictures get peculiarly representational character, they must be combined with what R.Wollheim called "standard of correctness". When we see a natural object (say, a stump in the woods) that happens to look like a bear, we do not say that it "represents" a bear. It can only be said to "look like" a bear. But when we see a bear in a picture, we not only say it looks like a bear, but also say that it is, or "represents", a bear. And, if someone says that it represents something else, we think that at least either of us must be wrong. Judgements about the representational content of a picture obeys a certain standard which dictates that some judgements are correct and others not. Elucidation of the nature of such standards of correctness forms another essential part of the theory of pictorial representation.
著者
黄木 千尋 赤間 由美 森鍵 祐子 小林 淳子
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 医学 : 山形医学 = Bulletin of the Yamagata University. Medical science : Yamagata medical journal (ISSN:0288030X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.25-35, 2021-02-15

背景】日本人の2人に1人ががんに罹患するといわれている。喫煙は、がんに最も大きく寄与する因子であり、がん患者のたばこ対策は大変重要であるが、がん患者の喫煙の実態や関連要因・社会的ニコチン依存度に関する報告は少ないのが現状である。外来化学療法を受けている患者の喫煙の実態と認識を明らかにすることを目的として、がん患者に対する効果的な禁煙指導、喫煙防止対策を検討した。【方法】対象はA病院において外来化学療法を行う患者のうち認知症や質問紙調査票への記入が困難な患者を除外した257名。調査内容は、基本属性、対象者と家族の喫煙状況(「非喫煙」「過去喫煙」「現在喫煙」とブリンクマン指数(一日喫煙本数×喫煙年数))、喫煙に対する認識(加濃式社会的ニコチン依存度(KTSND)と加熱式タバコに対する認識)、禁煙理由である。本研究は山形大学医学部倫理審査委員会の承認(2019-22)を得て行った。【結果】分析対象は257名、有効回答率100%であった。対象者の喫煙状況は、「非喫煙」106名(41.2%)、「過去喫煙」144名(56.0%)、「現在喫煙」7名(2.7%)であった。同居家族に喫煙者がいる割合は、「非喫煙」19.8%、「過去喫煙」25.0%、「現在喫煙」57.1%であった。「現在喫煙」のブリンクマン指数は「過去喫煙」よりも高く、喫煙による健康への影響を強く受けていることが推察された。KTSND得点は、「非喫煙」よりも「現在喫煙」「過去喫煙」が有意に高く、喫煙経験者は非喫煙経験者よりも社会的ニコチン依存度が高く喫煙を容認していた。「加熱式タバコは禁煙の場で使用してもよいと思う」割合は「現在喫煙」が「非喫煙」「過去喫煙」よりも有意に高い結果であった。また、「加熱式タバコを使う事は健康に対し害が少ないと思う」「加熱式タバコを使うことは禁煙に役立つと思う」者がそれぞれ約30%となり、加熱式タバコに関する正しい知識の普及啓発の必要性が示唆された。【結論】外来化学療法を受けているがん患者について、現在喫煙している患者への禁煙支援は重要な課題であり、家族を含め、過去喫煙者・非喫煙者に対しても喫煙による健康被害の知識の普及・啓発と継続した喫煙状況の把握に基づく禁煙支援の必要性がある。
著者
高橋 大輔 鈴木 隆 加藤 良一
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 教育科学 (ISSN:05134668)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-20, 2010-02

要旨 : 植物性食品の抗菌性を簡便に調べることができる実験教材として、(A)YEB寒天培地又はPYG寒天培地の中央に直径10mmの穴を開け、腐葉土からの2倍希釈の上澄み液を培地表面に0.5ml塗布し、その中央の穴に抗菌性食品を約0.3g入れ、それらをシャーレで24時間培養する方法、(B)YEB寒天培地又はPYG寒天培地の中央に直径10mmの穴を開け、納豆からの5倍希釈の上澄み液を培地表面に0.5ml塗布し、その中央の穴に抗菌性食品を約0.3g入れ、それらをシャーレで24時間培養する方法、及び(C)6枚切り又は8枚切りの食パンの耳の部分を切り落とし、さらに1枚の食パンをほぼ均等に4つの四角形の切片にし、その切片の片面のみ腐葉土からの5倍希釈の濾液に浸し、その切片の中央に約0.3gの抗菌性食品を置き、それらを密封容器で5日間培養する方法の3つが簡便で分かりやすいものとして示された。
著者
清塚 邦彦
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 人文科学 = Bulletin of Yamagata University. Humanities
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.19(302)-50(271), 2003-02-17

In a series of papers, Kendall L. Walton argued that photographs are like mirrors, glasses, telescopes and microscopes, in that they function as ”aids to vision” and that, in this respect, they are sharply contrasted with hand-made pictures, such as drawings and paintings. Walton expressed this point by saying that photographs are ”transparent pictures” while hand-made pictures are not. This I call ”transparency thesis”. This is an elaborated form of a widely held opinion that photographs are intrinsically realistic because of their mechanical origin. In this paper, I examine objections raised against Walton's thesis and argue that the thesis is still a promising hypothesis about the nature of photographs as well as the concept of perception in general.
著者
田沢 一二 阿部 利徳 笹原 健夫
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.395-401, 1997-01

【摘要】一般にアスパラガス(Asparagus officinalis L.)では雄株の方が雌株より生産性が良いことが知られている.このことは同じ雌雄異株植物である山菜のシオデ(Smilax old hami Miq.)でも経験的に認められている.本研究は,雌雄異株植物であるアスパラガスとシオデにおけるアイソザイムパターンの差異を調べ雌雄の判定ができるかどうかの基礎的知見を得ようとしたものである.幼植物の茎葉部から抽出用の緩衝液で粗タンパク質を抽出した後2種類の電気泳動によってタンパク質を分離し,その後それぞれの活性染色を行って差異を調べた.ネティブポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った後に,エステラーゼ,リンゴ酸脱水素酵素,酸性ホスファターゼ,およびグルコース6-リン酸脱水素の活性染色を行った結果,アスパラガスおよびシオデの雌雄間で差異が認められた.等電点電気泳動後に各種酵素の活性染色を行った結果では,エステラーゼおよび酸性ホスファターゼにおいて,雌雄間で差異が認められた.以上のことから,これらアイソザイムは雌雄異株植物であるアスパラガスおよびシオデの雌雄識別の基礎資料になると推察される.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 農学 = Bulletin of the Yamagata University. Agricultural science (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.95-100, 1959-02-28

1) 両卵寄生蜂は1958年現在著者によって,本州,四国及び九州の一部府県にその分布が確認されたにすぎない.しかし,両卵寄生峰の活動,習性から判断して,何れの寄生蜂も新農薬の水田への多量投入以前においては,本州,四国及び九州の水田地帯に広く分布していたものと考えられる.エゾイナゴ Oxya yezoensis SHlRARI の卵にも寄生可能であるが,北海道でのこの種卵塊は採集出来なかったので,この地の分布については将来の調査を必要とする.2) 両卵寄生蜂の敵虫としては,寄生峰の卵,幼虫及び桶を捕食するアオバアリガタハネカクシPaederus fuscipes CURTIS,ベニイボトビムシ Achorutes roseus GERVAISの2種が日本各地の調査で確認されたが,両敵虫とも被寄生寄主卵ばかりでなく,不寄生寄主卵をもそれを包むコルク状物質とともに喰害するので,寄生峰の生物的抵抗としては余り重きをなさないようである(東北地方における被寄生卵塊の被害度は10%以下).第2次寄生峰は発見出来なかった.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 農学 = Bulletin of the Yamagata University. Agricultural science (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.73-79, 1959-02-28

1)両卵寄生峰ともイナゴ(Genus Oxya)の卵にのみ首尾よく寄生し,他のバッタ属卵には全く注意を払わない.これは寄主卵をつつむ卵塊構造の物理,化学的な差異にもとづくもののようである.また,両卵寄生蜂とも寄主卵胚子の発育状態に関係なく寄生するが,イナゴ仔虫脱出直前の寄主卵からは寄生峰の脱出は認められなかった.一方,寄生蜂の脱出した寄主卵においては,寄主胚子の進んだ卵ほど,寄生してから成虫脱出までの所要日数が長引く傾向が認められた.これは寄主匹子の発育にともなって,寄生峰の発育が阻害されるためと推察される.2) 両卵寄生蜂とも地下lcm前後の深さまでは潜土して寄主卵を発見出来る.この場合,寄主卵をつつむ卵塊は明らかに寄生峰の視覚のおよばないところにある.一方,卵塊をいろいろに処理した場合,卵塊を構成するコルク質状物質を取除いた卵粒は真の寄主であるにかかわらず,寄生蜂は全く注意を払わない.この事実は,両卵寄生蜂が寄主卵それ自体に誘引されるのではなく,卵粒をつつむコルク状物質の化学的臭気に誘引されたものと考えられる.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, 1954-11

【緒言】 イナゴRice HopperはイネOryzasativa L.その他の作物害虫として東亜諸地域に広く分布しており、その防除などについてもかなり沢山の報告がある。しかしこの害虫の寄生蜂に関する研究は、応用昆虫学的見地からみて一層興味深いものがある。そしてイナゴ卵に寄生する寄生蜂については、ハネナガイナゴOxya velox F ABRICIUS の卵に寄生するScelio oxya GIRAULT (RAMACHANDRA 1921)やChinese grass hopper、Oxya chinensis THUM.の卵に寄生するScelio pembertoni TIMBERLAKE(PEMBERTON 1932)などの報告がみられるが、本邦においては卵寄生蜂の発生は全く知られず、したがってこの寄生蜂に関する研究は全く行われていない。たまたま1953年8月山形県庄内地方において、この卵寄生蜂が発見され、しかも新種であることが判明したので、筆者は主とじてこれが生態について研究を行っている。ここに現在まで調査した結果の一部を取麗めて報告したいと思う。本稿を草するに当り、絶えず御懇篤なる御指導と御鞭撞をいただく、本学阿部嚢博士に深謝の意を表すると共に、寄生蜂の同定及び文献については東京農工大学石井悌博士、北海道大学渡辺千向博士、農林省農業技術研究所加藤静夫技官にその多くを負い、また東北大学加藤陸奥雄博士、農業技術研究所深谷昌次博士並びに同所の各技官からは数多くの御ー教示をいただいたので、ここに深謝の意を表する。なお年平均気象図作製に当つては、 本学気象研究室から資料をおかりしたのでお礼を申し上けたい。
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 農学 = Bulletin of the Yamagata University. Agricultural science (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.311-317, 1960-03-30

【摘要】 第1報においては卵寄生蜂の新種Scelio sp.として日週活動と温度反応などを報告したが,翌年渡辺博士により数多くの送付標本から形態的に若干の差異ある個体が見出され,ムライクロタマゴバチとツルオカクロタマゴバチの2新種に分けられた.著者はその後種類別に追調査を行い2種の日週活動と温度反応にも著しい差異のないことを第2報【緒言】にのべたが,詳しいデーターは示さなかった.本報は両種を同一日時に,しかも同様環境条件下で調査した結果を示し,第1報と併せ考察したものである.1)両卵寄生蜂の日週活動については著しい差異は認められなかった.しかじ1957年8月13日の追調査時には降雨による活動抑制が観察された.前回の,そしてその後の調査から,両種の日週活動には気温と日射量が1次的な影響を及ぼし,風雨などは2次的な影響を及ぼすものと思われた.一方照度は日中の気温が活車有効温度以下(約200℃以下)に降る時期には2次的に働くが,日夜活動有効温度内(約20℃以上)にある時期には活動支配の要因に変るようである.2)温度反応においても,両卵寄生蜂に著しい差異は認められなかった.即ち両種とも95%信頼限界値の平均では,9℃前後で微動をはじめ,18℃前後で正位となり,約20℃前後で匍匐あるいは歩行をはじめる.更に飛翔は23℃前後ではじまり,33℃前後で興奮状態となり,46℃前後で不正伎となり転倒,47℃前後で熱死する.もし,匍匐あるいは歩行開始から興奮状態に至るまでの間を正常活動とみなすならば,その温度範囲は約18℃となる.一方微動から熱死に至るまでの活動可能限界範囲は約40℃となる.これら両種の温度反応の結果は,他の多くの昆虫のそれに較べるとイネツトムシ成虫のそれにかなり似ている.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.245-255, 1968-01

前報において水田に近接した雑草地は,いわゆる水田害虫の生息の場として水田とは密接不可分の関係があり,これら水田と雑草地相互間の虫の移動をつきとめることは,生態学的にも興味深いばかりでなく,害虫防除の面からも是非必要であることを強調した.そして先の1960年と1963年の調査結果から,水田では農薬散布の影響が強くあらわれ,雑草地にくらべて単純な群集構造を示しているが,農薬の散布回数や種類などによって年によって変化があることを推論し,さらに水田と雑草地の間を行き来する2,3のある種害虫では,水田への農薬投入によって水田での個体数は減少するが,時を同じくして雑草地では個体数に増加の傾向が認められ,加えて農薬効果の薄らいだ後は水田と雑草地とでは上とは全く反対の現象のおこることを指摘しておいた.本報では1965年と1966年における調査結果を述べ,先の結果と併せて吟味してみたいと思う.本稿を草するに当り, 日頃ご指導ご鞭撞をいただく阿部襄教授に感謝の意を表する.また調査水田の管理資料は附属農場の五十嵐弘教官からおかりしたので, ここに記してお礼を申し上げる.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 農学 = Bulletin of the Yamagata University. Agricultural science (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.189-193, 1957-02-25

In the primary report,the author considered that,some individuals of the egg parasites may occur twice a year. On October in 1953, the author collected one egg pod in which were enclosed 15 individuals of Scelio tsuruokensis, though it seemed to have passed through the period of the appearance in that year, and was impossible to the emergence (MURAI 1954). Thereupon, the author has continued rearing of this individuals. On the other hand, the adults of Scelio nuraii, which were collected on the ridges of the paddy field, were reared in the laboratory. Thus,the author has gained some knowledge as to the number of times of the occurrence. ln the present paper the results of the ecological studies of adults of the egg parasites are shown. A special study was made on the number of times of theo ccurrerence and the longevity.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 農学 = Bulletin of the Yamagata University. Agricultural science (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.65-72, 1959-02-28

1) 両卵寄生峰の産卵能力は主として温度条件に左右され(関係湿度70%以上において),適温下では能力の増強が認められる.交尾,未交尾の雌の聞には産卵能力に著しい差異は認められない.また,両卵寄生蜂とも平均して1雌,約140個の卵をその体内に臓しているが,実際に寄主卵内に産下されるのは100-110卵位と推察される.2) 両卵寄生蜂とも単寄生と,多寄生をする場合とがあるが,野外においては前者が普通のようである. 後者の場合,それは所謂過寄生で,寄主卵内で首尾よく発育を遂げ脱出してくる成虫は1個体に限られる.多寄生により脱出した成虫は,その体躯小さく,抱卵数もまた少ない.寄主卵内における両卵寄生峰の分布様式は寄生蜂成虫の出現期間内(普通8-9月)の調査では大体中間型分布を示すが,越冬した寄主卵(10月以降産卵された寄主卵を含む)での調査の場合には,寄生率の高低によって集中分布-中間型分布となる.したがって,寄生様式は調査の時期,各地の寄生率などによって変化するものと考えられる.
著者
村井 貞彰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 農学 = Bulletin of the Yamagata University. Agricultural science (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.81-94, 1959-02-28

1)両卵寄生蜂の生活環は胚子の発育同様の寄主卵を供試し,同様の環境条件下で飼育した場合には,殆んど差異を認めない.しかし,野外においては寄生の時期,寄生後の環境条件(特に温度)などによって生活環は変化するようで,大部分の個体は年に1世代しか経過しないが8月中に羽化して直に寄主卵に寄生を完了した個体は年に2世代を経過する.越冬は第1令幼虫でなされる.2)両卵寄生蜂とも,その後胚子発生は極めて類似しており,各ステージの体長,休巾,活動習性などにおいては著しい差異を認めることは出来なかった.ただ,現在のところでは,第1令幼虫及び蛹化後の形態的特徴において,僅かに両卵寄生蜂の区別がつけられる程度のようである.したがって,将来更に詳しい両卵寄生峰の未成熟ステージでの区別点と,両種の血縁関係などについて調査する必要があるものと思われる.一方,両卵寄生蜂の発育速度は,寄生の時期,寄生当時の寄主胚子の発育状態,寄生後の環境条件(特に温度)などによって影響される.