著者
新井 英一
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

骨粗鬆症は高齢化社会が進む現代にて、寝たきりや他の合併症を誘発する極めて問題となる疾患である。なかでもその治療薬として使用されているビタミンDは腸管からのカルシウム吸収促進および骨での石灰化を促進させる栄養素である。本研究では、ビタミンD受容体(VDR)遺伝子の腸管特異的発現に対するエストロゲンの作用について検討を行ってきた。前年度、腸管での大腸癌由来上皮細胞株(Caco-2)内にエストロゲン添加によるVDR mRNAの発現が増加したことを報告したが、VDR遺伝子5'-転写調節領域におけるエストロゲンの応答領域は同定できなかった。本年度はVDR発現を増加させるエストロゲンの間接的な機構の存在が考えられたため、ホメオボックス遺伝子であるCdx-2の5'-転写調節領域のクローニングを行い、これを含むリポーターベクターを作成し、さらにCaco-2細胞に導入後、エストロゲンの添加による転写活性をルシフェラーゼアッセイにより解析した。その結果、エストロゲン添加によるCdx-2の発現が有意に上昇する事が見出された。そこで、現在種々の異なったサイズのCdx-2遺伝子5'-転写調節領域を含むリポーターベクターを作成し、この領域におけるエストロゲン応答配列の同定を行っている。以上のことより、腸管でのVDRの発現はCdx-2のみならず、エストロゲンによるCdx-2を介した二重支配の調節を受けることが示唆され、さらに閉経後骨粗鬆症患者では、エストロゲンの欠乏により、腸管でのVDRを介したカルシウム吸収の低下を引き起こしていることが考えられた。今後はこのような閉経後の患者におけるカルシウム吸収を上げるような食品ならびにエストロゲンに変わる吸収促進機構を解明する必要があると思われる。
著者
石川 真志 八田 博志 笠野 英行 小笠原 永久 山田 浩之 宇都宮 真
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は赤外線サーモグラフィを用いた大型の構造物の効率的な非破壊検査手法の開発を目標として検討を行った。実験の結果、アクティブサーモグラフィ検査時の加熱方法としてレーザー走査加熱を利用することで、10 m遠方に位置する対象物であっても内部の欠陥検出が可能であることが確認された。また、温度データへのフーリエ変換により得られる位相画像を利用することで、欠陥検出が容易となること、および高周波数の位相画像に注目して検査を行うことで検査時間の短縮が可能であることも確認された。これらの技術を組み合わせることで、高効率かつ高精度な検査の実現が期待される。
著者
近藤 滋
出版者
徳島大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

魚類には、皮膚にストライプ模様を持つものが多い。ストライプの形成原理に関しては、その成長に伴う変化から、反応拡散モデルが適用できることが解っている。しかし、その分子、遺伝子レベルの解明は未だなされていない。ストライプ発生のメカニズムを考えるとき、その波が発生する場についての情報が必須であることはもちろんであるが、魚の皮膚に関しては、その皮膚構造と模様との関係は明らかになっていなかった。そのため、本年度は光学、電子顕微鏡を使い、皮膚の微細構造が模様とどのようなかかわりがあるかについて検討することを目的とした。研究対象としては、今年からはプレコストムスに加え、zebrafish, Genicanthus類のキンチャクダイを用いた。顕微鏡による詳細な観察の結果、皮膚内の微細構造は普段外から見ている模様の部域差以上に複雑であることがわかった。特に、インターストライプの領域が3つに分かれていることが判明し、目に見えるメラノフォアの分布以上に複雑な構成になっていることが解った。さらに、皮膚内のそれぞれの層に存在する細胞群の同定を行った結果、多くの場合メラノサイトよりも、iridophoa(銀色の反射板を持つ細胞種)が構造の細かい部域差を見せていた。今後、模様形成に関与する細胞の候補として注目すべきである。また皮膚内に存在する鱗の基部が縞模様の方向性に関与することが明らかとなった。
著者
近藤 滋
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

目的 動物の形態形成が正確に起きるためには、個々の細胞が胚における自らの位置を正確に知り、分化することが必要である。1952年にチューリングは、「胚の中で化学反応の波(反応拡散波)が発生し、それが正確な形態形成のための位置情報となる。」と提唱した。40年以上のあいだ実例は発見されず、反応拡散波の存在に関しては否定的な意見が強かったが、近藤は、タテジマキンチャクダイの皮膚模様の変化が反応拡散波の理論と一致することを発見し、チューリング理論の実証の可能性を開いた。本研究では「反応拡散波」の分子的実体を迫ることを目的とした。結果 まず、この現象がどの程度の普遍性を持っているかを知るため、タテジマキンチャクダイで観察されたのと同様の模様変化が魚類や他の脊椎動物でも観察できるかを調べた。その結果、模様変化を起こすほとんど全ての脊椎動物で計算機シミュレーションと一致する変化が観察され、全ての皮膚模様は同一のメカニズムで作られている事が強く示唆された。次に、反応拡散波のメカニズムに遺伝的にアプローチする目的で、異なった体表模様をもつゼブラフィッシュのミュータント同士を掛け合わせ、様々なハイブリッドの模様を得た。特にひとつの遺伝子(leopard)に関して、アレル間の模様の違いやハイブリッドの模様が、計算機を使った予測と一致することがわかり、この遺伝子が反応拡散波形成のキーになっていることが強く示唆された。現在クローニングを検討中である。また、最近ではあるが、いくつかの薬剤により表皮模様のサイズをコントロールできることを発見した。それらの薬剤で起きる皮膚の変化を解析することにより、反応拡散波の分子機構に直接迫ることが可能かも知れない。
著者
近藤 滋
出版者
徳島大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

結果 ゼブラフィッシュにおいてもタテジマキンチャクダイで観察されたものと同様な、成長に伴う模様の変化を観察した。ゼブラフィッシュの体表に分布するメラノサイト移動を経時的に観察することにより、(1)メラノサイトの移動は、ごく初期にのみおき、実際に模様形成がおきるときには移動しない。模様の形成は個々のメラノサイトの濃淡の変化でできる。(2)これは他の魚類でも同じであり、模様形成メカニズムに一般性があることが解った。次にクローニングのターゲットとして今のところ最有力なのはleo遺伝子であるが、これが実際に反応拡散波形成の中核に位置する分子をコードしていることを以下のようにして確認した.leo locusの対立遺伝子 wild,t1,tw28,tq270は、ホモの個体を作ると4通りの模様ができるが、それらはいずれも反応拡散方程式の1つのパラメーターを連続的に変化させることにより、作り出すことができる。2つのホモの個体のパラメーターの中間の値をとったときに計算される模様と、実際のヘテロの個体の模様が一致すれば、この遺伝子が「反応拡散波に影響している」という極めて強い証拠になるが、今までのところ、かなり予測と近い結果を得ている。また、別の突然変異で、ストライプの幅が変化するもの(td15,td271d)との二重変異個体についても、ほぼ計算予測と近い結果を得ている。結論 leo遺伝子は反応拡散波を作る因子に直接関与する遺伝子(おそらくアクチベーターの合成をコントロール)で有ることはほぼ間違いと思われる.この結果は98年分子生物学会のワークショップにて発表済みであり、現在論文を準備中です。
著者
藤原 奈津美
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

高齢者や有病者などの易感染性宿主は、口腔細菌による誤嚥性肺炎の発症リスクが高く重症化しやすい。さらに口腔環境が不衛生になりやすく、日和見感染菌の検出率も高い。緑膿菌の病原因子の一つである、ピオシアニンは、誤嚥性肺炎の病態確立に極めて重要な病原因子であることから、「不衛生な口腔環境下において口腔細菌がピオシアニン産生を促進させ、誤嚥性肺炎の重篤化をもたらす」可能性が考えられる。本年度は、口腔細菌の情報伝達物質や分泌蛋白を含む培養上清を緑膿菌に作用させて、非接触系でのピオシアニン産生促進効果について解析した。Streptococcus mutansなどの口腔レンサ球菌、Porphyromonas gingivalis, Fusobacterum nucleatumなどの歯周病原因菌、日和見感染の原因菌となる、Candida albicans, Staphylococcus aureusなどの口腔細菌の培養上清を添加した条件下で緑膿菌を培養し、ピオシアニンの産生量を測定した。その結果、F. nucleatumの培養上清を添加するとピオシアニン産生量が増加することを確認した。ピオシアニンとは異なる病原因子のピオベルジンにおいても同様の条件下で産生量を検討したが、産生促進の影響は示されなかった。F. nucleatumに着目し、F. nucleatum subspeciesや臨床分離株を用いてピオシアニン産生量の違いを確認した。ピオシアニン産生促進効果を発揮する物質をスクリーニングするために、F. nucleatum培養上清を熱処理しピオシアニン産生量を測定したところ、産生量が減少した。よって、ピオシアニン産生を促進する物質は、F. nucleatumの代謝産物中の、熱に対して不安定なタンパクである可能性が示された。
著者
三木 かなめ 福井 誠 伊藤 博夫
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-10-21

平成29年度は、天然植物キャッツクロー抽出物による歯周病原関連細菌に対する抗菌作用およびヒト歯肉線維芽細胞(HGF)の培養系における抗酸化作用・抗炎症作用について、本格的に評価することを目的として行ってきた。またキャッツクロー抽出物による抗動脈硬化作用の評価についても行ってきた。それらの結果について、抗菌作用の評価は、BHI broth培養系に、キャッツクロー抽出物を連続2倍段階希釈法で投与し歯周病原菌を24時間培養した後、菌の生育度への影響を調べた。生育度を濁度として吸光度計で測定したところ、P.g. とP.i. に対して、生育抑制が確認され、抗菌性が示された。HGFにおける抗酸化作用の評価は、キャッツクロー抽出物が過酸化水素の添加による酸化ストレスを抑制するかどうかを調べた。細胞内で酸化をうけて蛍光発色するプローブを用いて、共焦点レーザー顕微鏡にて検出を行ったところ、キャッツクロー抽出物の添加によって、蛍光発色が抑制されてくることがわかり、HGFでのキャッツクローの抗酸化作用が示唆された。次年度では、再現性を確認してゆく。また抗炎症作用の評価は、P.g.LPS刺激による炎症性サイトカインの発現増強を抑制するかどうかを調べるために、条件の検討を行っており、次年度引き続き行ってゆく。マクロファージ培養系を用いたキャッツクロー抽出物による抗動脈硬化作用の評価は、その前に、酸化ストレスで産生した酸化型LDLによるマクロファージの泡沫化促進モデルを構築することができた。次年度は、平成29年度で構築したマクロファージ培養系を用いて、キャッツクローによる泡沫化抑制効果を調べてゆく予定である。本年度までの検討から、キャッツクロー抽出物の歯周病予防および治癒への利用にむけての有用な基礎研究の結果が認められはじめてきている。
著者
斎藤 一郎 坪田 一男
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

シェーグレン症候群(Sjogren's synrome,SS)は唾液腺、涙腺の組織破壊を主徴とする臓器特異的自己免疫疾患である。本症の病体系性の機序は未だに明かではないが最近,SS組織特異的自己抗原が120-kDのα-fodrinであると言う報告がなされ、自己免疫疾患であるSSの発症、病理に深く関与している可能性が考えられている。しかしながら、120-kD α-fodrin自体が生成される機構については殆ど明らかにされていない。一方、従来より本疾患においてEpsten-Barrウイルス(EBV)の著しい活性化が認められることが知られている。本研究は、これらの現象に着目して、EBV感染が120-kD α-fodrin産生を誘導するかについて検討を行った。その結果、本研究に用いたSS患者血清中には、EBVの再活性化の際に検出されるZEBRA抗原に対する抗体およびα-fodrinに対する抗体が存在することがイムノブロット法により確認された。また、EBVの活性化を誘導すると、細胞アポトーシスが惹起され、それに伴って120-kD α-fodrinの発現が認められた。加えて、120-kD α-fodrinの発現は、アポトーシス関連プロテアーゼであるカスパーゼのインヒビターを添加することにより抑制された。これらのことから、自己抗原である120-kD α-fodrinの形成機序の一つにEBVの活性化が示唆された。
著者
岡村 裕彦 羽地 達次 吉田 賀弥 寺町 順平
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

PP2トランスジェニックマウス(PP2A-Tg)およびPP2A発現を抑制した間葉系前駆細胞を用いて骨形成と脂肪細胞分化におけるPP2Aの役割について検討した。PP2A-Tgマウスは野生型に比べて、体重、骨量および骨髄内脂肪量の増加が認められた。PP2Aを抑制した骨芽細胞と共培養した未分化間葉系細胞では脂肪細胞への分化が促進された。また、PP2Aを抑制した骨芽細胞の培養上清は破骨細胞分化を抑制した。PP2Aは、骨関連因子の発現を介して骨形成を調節する重要な因子であることが分かった。さらに、骨芽細胞のPP2A 発現は脂肪細胞や破骨細胞の分化に関与すると考えられる。
著者
AIBA Kazuhiko
出版者
徳島大学
雑誌
徳島大学大学開放実践センター紀要 (ISSN:09158685)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.15-28, 2016-03

2015年9月に日本の国会で強行採決された安全保障関連法は国内外で大きな注目を集めた。日本国外の視点からは,この安保法制の国際的な要素に着目しがちであるが,本来は国内的な要素に対する分析,評価が優先されねばならない。本稿では,国内の観点に基づき,安保法制に関して三種の枠組みから考察する。一点目は憲法論の枠組み,二点目は政策論の枠組み,三点目は人物論の枠組みである。憲法論の観点からは,とくに集団的自衛権の行使が問題になる。安倍内閣は2014年7月の閣議決定で,これまで憲法上不可とされてきた集団的自衛権の行使を可能と変えたが,一内閣による独断的な解釈改憲は立憲主義の崩壊につながるもので,到底,肯定されえない。集団的自衛権の行使が必要なら正規の憲法改正手続きをふんで行うべきである。また政策論の観点というのは,日本の平和と安全が,この安保法制という政策によって,効果的に達成できるのかという考察である。今回の安保法制は自衛隊の海外における活動を質・量ともに拡大し,つまり,武力の強化という手段によって日本の平和と安全を確保しようとしている。しかし,武力にはそれ自体弊害を内包し,また武力以外のやりかたも多様に存在する中,武力に偏重する今回の安保法制は,日本の安全という目的を達成する手段として効果的、合理的とは言いがたい。人物論は安倍首相自身の政治姿勢,人格,知性などの個人的属性の問題である。安保法制の問題に限らず,安倍首相の取組みに対して形容される象徴的な言葉は「不誠実」と「傲慢」である。同じ政策であっても,信用できる政治家によるか,そうでない政治家によるかで,評価は違いえる。安倍首相という個人に対する信頼感が低下する中,安保法制も必然的に信用できないという評価は免れがたい,と言えよう。このように三種の観点から考察すれば、安倍内閣による今回の安保法制は不当であると言える。
著者
王 敏東 李 志偉 仙波 光明
出版者
徳島大学
雑誌
言語文化研究 (ISSN:13405632)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.231-251, 2008-12

The commercials in magazines outweigh those in other medium since the former segment and target clearly the readers and provide creative optical effects than the latter. Also, subscribers of magazine involve deeply the content with payment, hence be conscious at reading. The catchphrases of commercials are essential to attract attention of the readers. However, is there any difference in expressions of catchphrases in Japanese and in Chinese? At the age of personalized business, is there any difference in commercials focusing on males or females? This work studied on linguistic aspect the catchphraes in male and female magazines published in Japan and Taiwan. In particular, the titles in whole year publication 『non-no』( Japan's female magazine) , 『Men's non-no』 (Japan's male magazine) , 『儂儂』 (Taiwan's female magazine) and 『men's uno』 (Taiwan's male mazagine) were studied. The data were interpreted based on rhetoric, vocabulary, wording points of view. Additionally, the obtained results were compared with the characteristics of catchphraes from other medium.