著者
塚口 裕康 野間 喜彦 桑島 正道 土井 俊夫 中屋 豊 水野 昭
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

背景 近年のヒトゲノム解析の飛躍的な進歩により、家族性ネフローゼの疾患遺伝子が相次いでクローニングされた。その中でもネフリンとポドシンは共に糸球体ポドサイト細胞間隙に形成されるスリット膜に存在し、濾過膜の構造・機能の保持に働いている。ネフリンは免疫グロブリンスーパーファミリーに属する接着因子で、スリット膜の主要構成分子である。一方ポドシンはカベオリン様のヘアピンループ膜貫通構造を持つ、新規糸球体蛋白であるがその機能は不明である。目的 ポドシンは欠損するとネフローゼや糸球体硬化症発症を引き起こすことが、マウスやヒトで示されており、蛋白尿性腎疾患の発症機序を解明する重要な分子である。ポドシンはストマチンファミリーの属するタンパクであるが、病態解明の第一段階としてまずその細胞や組織レベルでの分子動態を明らかにする。方法 正常ラットとネフローゼモデルであるPAN腎症ラットの糸球体ポドサイト超微細構造下におけるタンパク局在を免疫電顕金染色法にて検討した。同時に、マウスL細胞やイヌ尿細管由来の上皮細胞MDCK細胞にポドシンを発現させ細胞接着装置形成に伴うタンパク動態を検討した。結果 PAN腎症ラットで形成される細胞接着装置にポドシンの集積を確認し、ポドシンが足突起形態の維持に重要であることがわかった(新潟大学・腎研構造病理学・山本格、矢尾板永信博士との共同研究)。培養細胞においても、ポドシンの細胞接着面への集積を認め、生体内のタンパク動態と一致した。考察 ポドシンの局在を解析するのに必要な、動物モデルの確立と培養細胞系の樹立を行った。これらの実験系は新しいポドシン結合タンパクの特性解析に役立ち、新規ネフローゼ遺伝子同定に向けた今後の研究発展に貢献する。
著者
寺嶋 吉保 森 和夫 川野 卓二 永廣 信治 佐野 壽昭 玉置 俊晃
出版者
徳島大学
雑誌
大学教育研究ジャーナル (ISSN:18811256)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.26-35, 2005-03
被引用文献数
1

チュートリアル教育は、少人数グループにチューターが付いて学生の自主的な学習を指導・促進する学習方法である。徳島大学医学部医学科では2001 年から導入して、3 年生の9 月から4 年生12 月までの47 週間行なっている。2004 年度で4 年目を迎えるが、学生が教員に学習課題を少なめに出して早く終了する傾向もみられ始めた。われわれは、こうした傾向を憂い、グループ学習の楽しさを体験させてからチュートリアル学習を開始する方が、好ましい学習態度を形成できるのではないかと考え、3 年生の7 月に従来の2 時間程度の説明会以外に4 時間かけて「沖縄旅行計画」を作る学生ワークショップを行なった。この結果、前年度の学生よりも、このチュートリアル学習に対する好感度・有用感などが高くなり、グループ学習時間も増加して、この導入プログラムの有効性を示唆した。New curriculum of the school of medicine, the University of Tokushima included 47-week PBL-tutorial hybridprogram started in 2001.To improve their learning skill and attitude, and to introduce a new learning style ofPBL-tutorial to students smoothly, we held a half day student workshop. The content of workshop is of makingtour plans for a family who had relationship problems among family members. Twelve groups with eightstudents respectively competed and evaluated each other, and all students enjoyed working as groups. Theefficacy of this introductory program was evaluated with questionnaire and their study time of grouplearning between this year and last year students. Impression and feeling of usefulness toward PBL-tutorialwas improved, and time of group study increased this year. Results suggested usefulness of this introductoryprogram. We will continue the evaluation of this program.
著者
石田 竜弘 EMAM SHERIF
出版者
徳島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2020-11-13

COVID-19に対する独自の免疫技術を用いたワクチンを開発することを目的とする。我々は高分子のPEGに対する自然免疫を利用して、体液性免疫も細胞性免疫も同時に誘導可能な抗原デリバリーシステムを開発している。COVID-19のワクチンは、単に体液性免疫を誘導するだけでは不十分で、細胞性免疫も同時に誘導することが必要とされており、我々のシステムを用いれば細胞性免疫も同時に誘導することができる可能性が高いことから、ユニークかつ有能なワクチンの開発が期待できる。
著者
鈴木 孝明
出版者
徳島大学
雑誌
徳島大学国語国文學 (ISSN:09160280)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.75-81, 1997-03-31
著者
山内 暁彦
出版者
徳島大学
雑誌
言語文化研究 (ISSN:13405632)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.17-36[含 英語文要旨], 2010-12

The element of satire can be seen in various genres of literature, including fantasy. Peter Pan in Kensington Gardens,written by James Mathew Barry,is a fantasy that has elements of satire.In particular,the chapter of 'The Thrush's Nest'has many examples of satiric descriptions, most of which seem to be very easy to understand,even for children. Solomon Caw has a mania for collecting useless things that is peculiar to the elderly. Those who are born in 'The Sparrows' Year' puff and blow as if they think they are bigger than they really are.In Peter Pan in Kensington Gardens,a house is built by fairies for a little girl called Maimie. In Alice's Adventures in Wonderland,Alice enters the White Rabbit's house. In Gulliver's Travels,a temple serves as Gulliver's lodging in Lilliput. All of these houses are very small for Maimie,Alice and Gulliver.The small size and coziness of these houses represent children's preference for a small spot. However,the three houses are quite different because of the difference of the nature of these novels. Maimie'shouse in Peter Pan in Kensington Gardens is a gift from the fairies,who have affection for the girl. The whole scene is abundant with poetic sentiment.The White Rabbit's house is a mere setting for Alice's activity. She strugglesin the house growing bigger and smaller in Wonderland and she escapes from it to continue her adventure. Gulliver's house in Lilliput,which is usually identified with Westminster Hall in London,shows that the politics and society in England is satirized throughout"the Voyageto Lilliput".Because fantasy is opposite to reality, and satire deals with various issues in reality, fantasy is hardly affiliated with satire in general. Hence it seems to be an exceptional case that the chapter of 'The Thrush's Nest' has many examples of satire. The biggest satirical point in Peter Pan in Kensington Gardens is the very existence of fairies who never do anything useful,because everybody in the real world struggles to live a life seeking usefulness. Amongst other literary genres fantasy may have the biggest possibility of being a satire of the real world.
著者
吉田 敦也
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究ではモバイルインターネット社会における成人ICTリテラシーの現状と国際的動向について調査研究を行い、地域ICTリーダー育成に効果的な学習プログラムと標準化を検討した。主な結果は、①日本の成人ICTリテラシー育成プログラムを5分類した。②全体的に高度IT人材育成を目標に技術指向が強い傾向にあった。③海外では国際連携の取組が多く人材育成の生態系が形成されていた。④ECDL/ICDLは実用性を特徴とし政策連携していた。⑤学習内容、教え方、「場」は急速に変化しておりイノベーション促進と社会課題解決強化の方向にあった。⑥これらから日本版ICTリテラシー形成モデル、学習プログラム、標準化を検討した。
著者
依岡 隆児
出版者
徳島大学
雑誌
言語文化研究 (ISSN:13405632)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.57-70, 2006-12

Im Folgenden wird das Verhaltnis zwischen japanischen und deutschen illustrierten literarischen Zeitschriften vom Wendepunkt bis Anfang des 20. Jahrhunderts behandelt. Indem ich versuche, das Verhaltnis zwischen dem Japonismus oder Jugendstil in Deutschland und der Rezeption des neuen Romantizismus in Japan klar zu machen, sollen die diesen beiden gemeinsame Tendenzen gezeigt werden. Das heiβt, die Reaktion gegen das Christentum und den westlichen modernen Rationalismus in Deutschland zeigt auffallende Ahnlichkeiten mit dem Widerstand in Japan gegen die einseitige und oberflachliche Modernisierung der dortigen Gesellschaft und des Landes. Unter diesem Gesichtspunkt sollen hier verschiedene Zeitschriften und deren Beziehungen untereinander vorgestellt werden. Vor allem das Einfluβverhaltnis zwischen den deutschen Zeitschriften (Pan Die Insel Jugend) und den japanischen (Hosun Okujoteen) soil deutlich gemacht werden.
著者
安東 諒
出版者
徳島大学
雑誌
言語文化研究 (ISSN:13405632)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.19-30, 2002-02
著者
服部 恒太 岸江 信介
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

これまでに日本方言の区分は研究者が記述的な方法を用いて行ってきた。しかし、日本語母語話者が実際に方言を聞いてどのように区分をするのかという科学的な検証は未だに行われていない。また、彼らが世代間で方言の認識の仕方をどのように変化させているのかも科学的に検証されていない。本研究では幅広い年齢層(若年層と中年層)の日本語母語話者に各都道府県の老年層の話す方言を聞いてもらい、その区分を行ってもらう。本研究は彼らの区分を統計的に分析することで日本人自身が自分たちの方言をどのように区分しているのか、そしてどの程度若い世代のあいだで方言の消失が進んでいるのかを初めて科学的に明らかにすることを目的とする。
著者
松本 満 三谷 匡
出版者
徳島大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

哺乳動物の遺伝子機能の解析において、遺伝子ターゲティングによるノックアウトマウス作製技術は個体レベルでの解析システムとして、既に必須のツールとなっている。しかしながら、現行のノックアウトマウスの作製過程では胚性幹細胞(ES細胞)に遺伝子改変操作を行い、その後、キメラマウスの交配によってはじめてへテロマウスが樹立されるため、ホモ個体の樹立までには、長い時間を要する。しかしながら、もし仮に遺伝子改変操作を行った細胞から直接へテロマウスを作製することができれば、研究効率を著しく改善できることは論を特たない。このような視点から、最近報告された体細胞を用いたクローンマウス作製技術を応用し、遺伝子改変操作を行なった体細胞の核移植操作により、直接へテロマウスを取得する系の開発を以下のごとく試みた。1)ターゲティングベクターを導入する体細胞の選択過去に体細胞での相同遺伝子組換え効率はES細胞に比べ低いことが報告されたが、近年、その改善が著しいベクターや遺伝子導入方法用いた相同組換え効率については再検討の余地がある。そこで既存のベクターを用いて胎仔線維芽細胞への遺伝子導入を行なった。胎仔線維芽細胞は、遺伝子導入の効率については優れていたものの、相同組換え体を取得するには至らなかった。2)体細胞に由来する個体作製技術の確立上記と同じく、胎仔線維芽細胞の核移植により体細胞クローンの作出を試みたが、今回の研究では技術的に、依然、きわめて困難であった。以上、本年度の研究からは体細胞クローン技術を応用した簡便なノックアウトマウス作製方法を確立するには至らなかったが、理論的にも十分に可能性がおり、さらに研究を進める必要がある。
著者
内藤 悦雄 黒田 泰弘
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

先天性高乳酸血症は有機酸代謝異常症の中で最も頻度の高い疾患であり、本症の確定診断のためにはピルビン酸代謝関連酵素活性の測定が不可欠である。先天性高乳酸血症の自験例および酵素診断を依頼された他施設例の中で、ビタミンB_1、大量投与により臨床症状の改善と血中および髄液中の乳酸値の低下をきたした13症例の培養細胞について、ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDHC)活性の詳細な検討を行った。すなわち反応液中のTPP濃度を一般に用いられる高濃度から組織内の生理的濃度まで変化させてPDHC活性を測定した。そのTPP濃度とPDHC活性との曲線によりPDHCのTPPに対する親和性の低下、すなわちビタミンB_1、反応性の有無を判定した。その結果13例中7例をビタミンB_1反応性PDHC異常症と診断しえた。ビタミンB_1反応性PDHC異常症例はビタミンB_1反応性高乳酸血症例の半数を占めており、本症の頻度が高いことが判明した。さらにそのうち3例の遺伝子解析を行い、3例ともE_1α遺伝子のアミノ酸置換を伴う点変異であった。すなわち2例はエクソン3の変異であり、1例は44番目のヒスチジンがアルギニンに、他の1例は88番目のグリシンがセリンにアミノ酸置換していた。3例目はエクソン8の263番目のアルギニンがグリシンに変異していた。これらの変異に対してはPCRと制限酵素を用いた遺伝子診断が可能であった。これらの方法により、2例は突然変異であり、また1例は母親由来の変異遺伝子によることが判明した。PDHCのTPPに対する親和性が正常であったビタミンB_1反応性高乳酸血症の6例では、PDHCと同様にTPPを補酵素とするαケトグルタール酸脱水素酵素複合体および分岐鎖ケト酸脱水素酵素複合体の異常である可能性があり、今後これらの検討が必要である。
著者
松田 春菜 田代 優秋 浜野 龍夫
出版者
徳島大学
雑誌
大学教育研究ジャーナル (ISSN:18811256)
巻号頁・発行日
no.11, pp.63-68, 2014-03

大学生81名を対象に,身近な自然環境の象徴としたカタツムリをどのように描くかを把握することで,身近な自然環境への認識を調査した。その結果,直近3年間にカタツムリを目撃した人は約50%で,触ることができると回答した人は約70%いたが,カタツムリの形態を正確に描けた大学生は約6%と少なかった。生物全般を好きだと感じている人ほどカタツムリを日常的な生活圏内で目撃しており,そうした人ほど正しく描けていた。つまり,身の回りにある当たり前の自然環境への関心が日常的な関わりを生み,そうした行為を通じて正しく認識されていくというプロセスが想定できた。
著者
武田 英二
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

妊娠期の母親の栄養摂取状態は、子どもの成人期の健康状態に影響を及ぼす。母親のエネルギー摂取が不足すると血糖値およびコレステロール濃度が高値を示した。また、高脂肪食では低メチル化遺伝子が4%多く、肝臓の遺伝子発現は増加し、エネルギー制限では超高メチル化遺伝子が25%増加し、肝臓の遺伝子発現が低下していると考えられた。したがって、胎児の遺伝子発現に母親の栄養摂取が過剰であっても、また欠乏しても影響を与えることが明らかになった。
著者
奥田 拓道
出版者
徳島大学
巻号頁・発行日
1969

博士論文
著者
住谷 さつき 原田 雅史 上野 修一
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

機能性精神疾患における神経細胞の機能や代謝の異常を解明するために、3Teslaの高磁場MR装置を用いて気分、不安障害患者の帯状回、左右基底核におけるプロトンMRS (proton magnetic resonance spectroscopy:^1H-MRS)の撮像を行った。中でもこれまで検出困難であったグルタミン酸やGABAなどの脳内アミノ酸神経伝達物質の変化に注目した。強迫性障害患者は帯状回でN-acetyl aspertate: NAAの有意な低下がみられグルタミン酸も健常者と比較して有意に低値であった。GABAは低値となる傾向があるものの、有意な差は見られなかった。基底核における強迫性障害患者のNAAは健常者と比較して高い傾向があり、右が左に比べて有意に高かったが、脳内アミノ酸神経伝達物質は健常者との間に有意な差はなく左右差も見られなかった。パニック障害患者では右基底核におけるグルタミン酸+グルタミンが健常者よりも有意に高かった。大うつ病障害患者では帯状回でグルタミン酸が健常者よりも有意に低かった。今回の研究では高磁場装置による強迫性障害、パニック障害、大うつ病における脳内アミノ酸神経伝遠物質の定量が行われ、それぞれの疾患に特有な脳部位における脳内代謝物変化が生じているという知見を得た。今後は症例数を増やし臨床症状の特徴との関連、薬物の影響を検討し、治療前後での比較を行うことを計画している。