著者
渡辺 崇人
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

非相同末端結合によるノックインを試みた結果、フタホシコオロギにおいて初めてノックインに成功し、マーカー遺伝子をゲノムに組み込むことができた。現在コンディショナルノックアウト実現のためにpiggyBacのコンポーネントが組み込まれたノックインベクターを作製し、コオロギゲノムへ導入している。また、次世代シークエンサーのPacBio RSIIを用いてゲノム解析を進めており,これまでに約5Gbのシークエンスデータが得られ,Gap closing解析を行っている。
著者
野地 澄晴 大内 淑代 三戸 太郎
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

コオロギの脚の再生に着目して、そのメカニズムを解明した。特に、基礎データとして、コオロギのゲノム解析を行った。研究方法の新規開発を行い、人工核酸分解酵素を用いたノックアウトコオロギを作製することに成功した。また、コオロギの再生芽の形成に Jak/Stat 系が関与していることを証明した。これらの結果から、新規ゲノムデータとノックアウト法を組み合わせて、さらに再生メカニズムを解明できることがわかった
著者
三戸 太郎
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

コオロギの初期胚発生メカニズムを,遺伝子機能解析により解明することを目的として研究を行った.昨年度確立した親導入RNAi法による遺伝子機能の系を用い,コオロギ初期胚発生に関与する遺伝子の機能解析を行った.その結果ショウジョウバエのギャップ遺伝子Kruppelのホモログがコオロギでもギャップ遺伝子として働くこと,ペア・ルール遺伝子even-skippedホモログがペア・ルール様の機能に加えてギャップ遺伝子の発現調節に関与することを見出した、また,コオロギのextradenticle遺伝子が,ショウジョウバエとは異なり顎領域の形成に必要であることを発見した.さらに,orthodenticle遺伝子がコオロギ胚の前方(頭部から胸部にかけて)の領域の形成に必要であることが明らかになった.加えて、これらの遺伝子の発現パターンについてもin situ hybridizationにより明らかにした.これらの成果と昨年度までの成果から,コオロギ前後軸パターン形成を司る遺伝子ネットワークのモデルを提唱するに至った.コオロギでは,ショウジョウバエのピコイドの代わりにcaudalとorthodenticleが前後軸パターン形成の初期に主要な役割を担っており,extradenticle, hunchback, Kruppelの順にギャップ遺伝子が活性化され,even-skippedもこの過程に関与していると考えられる.
著者
酒井 徹
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

大豆中に含まれるイソフラボンは、これまで血清脂質低下作用、骨粗鬆症予防およびホルモン依存性の悪性腫瘍予防に関わることが明らかにされている。今回の研究では、大豆イソフラボンが免疫機能にどのように作用するか検討を行った。大豆イソフラボンの一種であるエクオールは、血中の抗原特異的IgE抗体を上昇させた。また、マウスでの実験的大腸炎の系では、炎症を増強することが明らかとなった。
著者
竹谷 豊
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

慢性腎臓病は、日本人の1300万人が罹患していると推定されており、その対策が喫緊の課題である。慢性腎臓病では、腎機能が低下し、悪化すれば人工透析が必要となる。それに加え、心筋梗塞などの心血管疾患のリスクや骨粗鬆症、筋肉の萎縮による低栄養状態を招き、これらが重なると生命予後が悪化する。我々は、腎機能低下に伴い上昇する高リン血症が、これらの病態に共通した因子であることを見出してきた。これまでは、食事や薬剤で高リン血症の改善を試みてきたが、運動を行うことが、高リン血症の改善や骨粗鬆症、筋肉の萎縮などを改善するために効果的であると考え、その効果の検証と分子機序の解明に取り組む。
著者
岩佐 幸恵 谷 洋江 奥田 紀久子 高橋 亜紀
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の目的は,高機能広汎性発達障害者の24時間にわたる自律神経活動の変化を明らかにすることである。定型発達では,交感神経活動は身体の活動に合わせて昼間活性化し,夜間は沈静化する。相反的に副交感神経活動は夜間に活性化し,昼間は沈静化する。高機能広汎性発達障害者においても昼間は交感神経活動が活性化し,夜間は副交感神経活動が活性化し,サーカディアンリズムを有してはいることが明らかになった。しかし,高機能広汎性発達障害者はサーカディアンリズムはあるものの,睡眠時においても心拍は速く,副交感神経活動の各指標は定型発達に比べて極めて低く,副交感神経活動が全体的に低下している可能性が示唆された。
著者
相澤 風花
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

がん化学療法に伴う副作用のうち、しびれや痛覚過敏を生じる末梢神経障害は、難治性であり、既存の鎮痛薬等をもってしても十分な効果は得られていないのが現状である。これまでに、化学療法施行時に生じる末梢神経障害の標的分子も複数報告されているものの、その有効性は基礎的検討のみにとどまり、臨床応用には至っていない。本研究は、実臨床データである大規模医療情報データベースを用い、既承認薬から新たに化学療法誘発末梢神経障害の予防薬を探索する。加えて、遺伝子発現データベース解析やモデルマウスを用いた基礎薬理学的検討から、有効性ならびに作用機序を明らかにすることで、エビデンスに基づいた予防戦略の確立を目指す。
著者
細川 育子 細川 義隆 中西 正
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、ヒト口腔上皮細胞(TR146細胞)やヒト歯根膜由来細胞(HPDLC)を用い、炎症性サイトカインおよびケモカインに及ぼすCarnosic acid(CA)の影響を明らかとすることを目的に実験を行った。その結果、CAはIL-27が誘導したTR146細胞のCXCL9,CXCL10およびCXCL11の産生を抑制すること、また、IL-1βが誘導したHPDLCのIL-6,CXCL10およびCCL20の産生を抑制することが明らかとなった。これらのことより、CAは歯周炎病変局所にてケモカインや炎症性サイトカインの産生を抑制することにより、歯周炎の炎症を調節している可能性が示唆された。
著者
多田 恵曜
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

エストロゲンやエストロゲン受容体作動薬が脳動脈瘤形成および破裂を抑制することを見いだした。しかし、エストロゲン補充療法は子宮体癌や乳癌発生などのリスクがある。選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)は副作用が少ないが、SERMによる脳動脈瘤破裂抑制作用を検討した。雌のラットを用い、高血圧誘導、卵巣摘出、一側脳血管への血行力学的負荷を加えることによって脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血をきたすモデルを確立した。SERMであるバゼドキシフェン酢酸塩を投与すると脳動脈瘤破裂を抑制することを見いだした。さらに、エストロゲン受容体の発現上昇、MMP-9/TIMP-2の低下と関与していることを示した。
著者
永廣 信治 佐藤 浩一 松原 俊二 西 京子
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.脳動脈瘤モデルの確立と動脈瘤形成に至るホルモンの関与脳動脈瘤は1)比較的閉経期の女性に多く発症すること、2)高血圧がリスクファクターでありhemodynamic stressのかかる部位に発生し易いこと、3)estrogenがcollagenの維持に重要な役割を担っていることから、estrogen欠乏状態でcollagenの分解が亢進し血管が脆弱化している状況下で血圧が高ければhemodynamic stressを受け易い部位では脳動脈瘤が発生する可能性が高いと考え、ratを用いてestrogenの脳動脈瘤形成メカニズムへの関与について検討した。嚢状脳動脈瘤(stage III)は雌性高血圧ラット(卵巣摘出)で9/15(60%)に発生し、雄性高血圧ラット:3/15(20%)、雌性高血圧ラット(卵巣非摘出):3/15(20%)および無処置雌性ラット:0/15(0%)と比較して発生頻度が高く(p<0.05)、いずれも主に前大脳動脈-嗅動脈分岐部(7/9,78%)に認められた。また脳動脈瘤形成の初期変化と考えられる血管内皮の不規則な走行(satge I)および血管壁隆起(stage II)も卵巣摘出ラットで高頻度に観察された。この研究では卵巣雌性摘出ラットを用いて世界で初めて脳動脈瘤形成に至る血管内皮の初期の形態学的変化からestrogen欠乏が動脈瘤形成に関与することを示唆した(J Neurosurg,2005;103:1046-51)。さらにestrogen投与によるホルモン補充療法を行い、血管内皮の初期変化から嚢状動脈瘤形成に至るまでの形態学的変化を観察したところ、発生頻度は未治療群:13/15(86.7%)に対してホルモン補充療法群:5/15(33.3%)と有意に低下した(p<0.05)。以上の結果から動脈瘤形成に至る病因として血行動態や高血圧に加えてhormone特にestrogenが強く関与していることを実証した(J Neurosurg.2005;103:1052-7)。2.脳動脈瘤形成に至る血管内皮細胞傷害と炎症性変化血管内皮の形態変化と対応させて免疫組織学的変化を評価した結果、脳動脈瘤形成初期では血管内皮細胞のeNOS発現の減少がみられ、ついで病巣へのmacrophageの浸潤や中膜からの平滑筋遊走などの炎症性変化へと進行し、増加したmacrophageおよびMMP-9陽性細胞の強い発現により炎症性変化がさらに拡大し、血管壁の蛋白分解などによる血管壁の緋薄化が進行することで、ドーム状弛緩から脳動脈瘤形成に至ることを明らかにした(J Neurosurg.2007,in press)。今後脳動脈瘤の予防および治療法を確立するために動脈瘤の形成初期から増大に至る各stageでの分子メカニズムをさらに探求していく予定である。
著者
王 敏東 林 益泓 仙波 光明
出版者
徳島大学
雑誌
言語文化研究 (ISSN:13405632)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.119-145, 2011-12

本研究は2011年3月11日に起きた東日本巨大地震の留学生への影響を調査したものである。具体的には2011 年3~6月に日本に留学していた(またはしている、しようとしている)学生15人(台湾人13人、韓国と中国大陸人各々1人)に対するインタビューをまとめた。また、直接インタビューしたわけではないが、メール等の形で、地震当時日本にいた引率の先生、そして台湾の日本語学科を卒業後ワーキング・ホリデーで日本に行っている人、あわせて4人(いずれも台湾人)の意見も得た。基本的には日本に留学までした学生はもともと日本のことがかなり好きで、今回の地震が発生する遥か前より留学しようと考えていた者が多い。多くの留学生たちは、何もかもよく見えていた日本で今回起きた地震を、最初は驚き、痛々しく思ったが、心のどこかに蓄えていた日本に対する信頼で、敢えて家族の反対を押し切り自分の夢を追うように留学に踏み切った。それに対して、日本に不信感を抱いた人ももちろんいるが、少数である。
著者
石田 竜弘 異島 優 清水 太郎
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

タンパクや核酸など高分子医薬品の低侵襲的投与法として経皮投与技術の開発が切望されている。最大のバリアである皮膚の角質層を突破させるため、透過促進剤やマイクロニードルの活用、超音波や電気などの物理的な刺激を利用する方法などが提案されてきた。しかし、高分子医薬品の透過に成功した報告は乏しく、実用化に進む可能性のある技術の開発は未達である。イオン液体は陽イオンと陰イオンからなる常温で液体の物質であり、その特徴的な性質から、新たな電池材料や溶剤としてなどグリーンケミストリーの素材として活用されてきている。しかし、医療応用に向けた試みは行われていない。本研究の目的は、イオン液体をキャリアとし、皮膚角質層の突破という最も大きな課題を一気に解決するための高分子医薬品の低侵襲的投与法を開発することである。本年度はモデル抗原としてインスリンを用い、in vitroでの皮膚透過性試験を行った。その結果、ある種のイオン液体と混合することで、インスリンの皮膚透過性が飛躍的に向上することが確認できた。次いでin vivoでの皮膚透過性試験を行った。その結果、インスリンが角質層を透過し、血中ににまで移行していることを血糖降下作用によって確認した。現在、がんペプチドであるWT1を用いて同様の検討を行っているが、同様に良好な結果が得られつつあり、当初の目的である画期的な低侵襲性の経皮型がんワクチンの開発に繋げていく予定である。
著者
楠奥 繁則
出版者
徳島大学
雑誌
大学教育研究ジャーナル (ISSN:18811256)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.11-20, 2010-03

本論文では、社会的スキルをテ-マとしない講義でも、ラボラトリー・メソッドによる体験学習(以下、体験学習)を通じて、学生の社会的スキルを高められるかどうかについて考察した。これまでそのような講義に体験学習を導入し、学生の社会的スキルを向上させるということについては、ほとんど注意が向けられてこなかった。そこで本研究では、A大学で関議された講義、「動機づけ」に体験学習を導入し、そのことを磯認した。本稿ではその事例を紹介し、それを基に議論する。The aim of this paper is to consider the potential of oa experimental learning by laborotory method on undergraduate's lectures that are not intended to increase social skills. There has been little attention given to this research area. A panel survey was conducted at the first and last"Motivation Theories at A University" lectures and an experimental learning by laboratory method was conducted in order to determine the effect that these undergraduate lectures had upon social skills. This paper introduces this discussion.
著者
寺尾 純二 向井 理恵 中村 俊之
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

フラボノイドに対するプレニル基の導入がその機能性に与える影響を構造活性相関の観点から解明することを目的とした。用いたフラボノイドはケルセチン(Q)とそのプレニル化誘導体である6-プレニルケルセチン(6-PQ)、5'-PQ、8-PQである。プレニル基の位置により疎水性は異なること、疎水性が最も高い6-PQが最も効果的にヒト血管内皮細胞へ取り込まれるとともにヘムオキシゲナーゼ-1の誘導を最も強く促進することを明らかにした。Qはフラボノイドの細胞内標的分子と予想されるカベオリン-1の機能調節作用を有することを証明した。プレニル化フラボノイドの標的分子としてのカベオリン-1の重要性が推定された。
著者
東 潮
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

3世紀代の、『三国志』東夷伝諸国、5世紀代の『宋書』倭国伝諸国、3~7世紀代の中国・韓国朝鮮・日本古代の墓制(王陵・壁画墓)の比較研究によって、東アジア古代の王権をめぐる国際環境をあきらかにしえた。東アジア諸地域の諸国・諸民族はさまざまな政治的・経済的な国際関係、国際交流のなかで歴史的に発展してきたことを具体的に追求しえた。
著者
山本 理奈 石川 栄作
出版者
徳島大学
雑誌
言語文化研究 (ISSN:13405632)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.19-78, 2008-12

Rosemary SUTCLIFF, englische Schriftstellerin, verfesste 1971 ein Werk Tristan and Iseult, das auf den uberlieferten Tristansagen beruht. Um die Charakteristik ihres Werks klar zu machen, brauchen wir zuerst den Stammbaum der Tristansagen zu verfolgen. Die Stoffquelle der Tristansagen geht auf die altkeltischen Sagen in Wand zuruck. Sie wurden in der zweiten Halfte des 11. Jahrhunderts ubers Meer nach Wales uberliefert, wo das Urbild der Tristansagen entstand, unabhangig von den irlandischen Entlaufen -sagen. Das Urbild wurde danach von manchen Dichtern in ganzem Europa umgearbeitet Der Stammbaum der Tristansagen wird gewohnlich in 3 Gruppen geteilt: Berol-, Thoma- und Prosa-Tristan. Im Gegensatz zu der erzahlenden Beschreibung des Berol-Tristans hat der Thoma-Tristan als Merkmal die vertiefte Innerlichkeit der Hauptpersonen. Und die Charakteristik des Prosa-Tristans besteht darin, dass er in die Arthus-Dichtungen eingeflochten ist Unter den 3 Gruppen benutzte Rosemary SUTCLIFF als Stoff hauptsachlich Berol-Tristan, aber er schuff selbstverstandlich ein neues Tristanwerk, das von den traditionellen Tristansagen selbstandig ist. In der letzten Halfte der vorliegenden Arbeit vergleichen wir das Werk ISHIKAWA Volksbuch Tristrant und Isalde (als Berol-Tristan), und auch mit dem mittelalterlichen hofischen Epos Tristan und Isolde Gottfrieds von Strassburg (als Thoma-Tristan), um das charakteristische Merkmal ihres Werks deutlich zu machen. Das auflallendeste Merkmal zeugt vor allem, dass Rosemary SUTCLIFF den mystischen Liebestrank wegnahm, der traditionell nicht nur in Berol-, sondern auch in Thoma-Tristan eingeflochten war. Damit schildert die Schriftstellerin die Liebe zwischen Tristan und Iseult nicht als die kunstliche, sondern als die naturliche Liebe, die ja wirklichkeitstreu und lebendig ist. Nach diesem Konzept bearbeitete sie durch das ganze Werk den Tristanstoff. Also ist es auch ihr auffallig, dass sie uberall die den Lesern leicht verstandlichen Erklamngen gibt. Ausserdem entwickelt sie ursprunglich zu komplizierte Liebesgeschichte zwischen Tristan und Iseult kurz und knapp, indem sie die unnotigen Elemente der bisherigen Uberlieferungen beiseitelegte. Damit konnte sie die ahkeltischen Entlaufen -sagen und die mittelalterlichen Tristanuberlieferungen in ein modernes Werk umarbeiten.
著者
山西 倫太郎 板東 紀子 木本 真順美
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

我々は、これまでにマウスに高ビタミンEとともにβ-カロテンを摂取させた場合には、抗原斐与により誘導されるIgE抗体の産生が低下し、そして1型ヘルパーT細胞活性が亢進していることを報告している。本研究では、β-カロテンカ晩疫系に対してこのような影響を及ぼすメカニズムを解析することを目的とした。そこで、まずβ-カロテンを摂取したマウスの脾細胞およびそこに含まれる抗原提示細胞を実験材料に種々の検討を行った。また、マウスマクロファージ培養細胞RAW264を用いて、培地にβ-カロテンを添加することにより、β-カロテンの作月のより詳細な分析を行った。β-カロテンを摂取したマウスでは、β-カロテン投与量に応じて脾細胞のβ-カロテン蓄積量が増加し、それに呼応してグルタチオン量が亢進していることを竜出した。その際、グルタチオン合成酵素mRNA量が増加していることも突き止めた。さらに、脾臓細胞のプラスチック付着画分(抗原提示細胞リッチ画分)において、抗原呈示に関与するシステインーカテプシンの活性が亢進していることが判明した。培養細胞実験系では、細胞へのβ・カロテンの蓄積後、細胞膜の脂質過酸化が起こり、その後グルタチオン量の増加が生じるという時間的関係性が明らかとなった。以上より、β-カロテンはそのredox activityにより田胞内のグルタチオン合成を亢進させ、それに由来する還元性に基いて抗原呈示を活性化させるというメカニズムが強く示唆された。今回の研究によって、β-カロテンの免疫調節における作用機序が明らかとなったわけであるが、それにより、どのような場合に、β-カロテンの摂取による効果的な免疫賦活が見込めるのかを判断することができるようになる。この成果は、健康増進の観点からβ-カロテンやそれを含む緑黄色野菜・果物の効果的な摂取を企図する場合に、役に立っ知見であると見込まれる。