著者
冨田 靖子
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 服装学・生活造形学研究 (ISSN:0919780X)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.37-44, 2000-01

ケーキデコレーションにおける表現技法の一つに装飾砂糖菓子と言われているシュガーデコレーションがある。ケーキの上にシュガーペーストでカバーリングを施し,シュガーペーストで製作したシュガーフラワーやアイシングなどでデコレーションした技法である。本報では,シュガーデコレーションを製作する上で必要な技法に関しての調査を行い,専門書に掲載されている128種を技法別,モチーフ別,用途別に分類した。技法別では「アイシングワーク」「ペーストワーク」「ペインテイング」「その他」と4区分に分類でき,その中に14技法があることが判明した。モチーフ別では,「花」「建物」「人形」「その他」と4区分に分類され,「花」が大半を占めた。用途別にみると「ウェディング」「アニバーサリー」「特別な日」の3区分に分類でき「ウェディング」が半数近くあった。シュガーペーストの扱いについても実験をした結果,調整後3~5分が最も扱い易く,伸展性,形状の観察結果ともに良好であった。この条件を用いて,ウェデイングケーキを製作した。
著者
前田 真理子
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 服装学・造形学研究 (ISSN:13461869)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.35-45, 2006-01

ストリートファッションは,一部の「族」のファッションのことを指していると記されている資料1)が見られるが,現在では大衆現象として捉えられることが多いと考える。本稿では,ファッション史や情報誌などより,「ストリートファッションは自然発生的である」,「ストリートファッションは意図的に生むものである」といった2つの定義を提示した。そこで,東京のファッションタウンにおける定点観測による動向調査,ショップのアンケート調査,若者対象の意識調査といった3方向の視点から実態調査を行い,定義の適合性を検証し,現在のストリートファッションを成立させている要因と現状の関係について考察することを目的とした。3方向の実態調査を行った結果,2つの定義が両者とも見られる結果であったが,ファッションリーダーや,受信側が主役になり,ファッションビジネスや雑誌との連携により,ファッションが生み出されているという,やや自然発生的な要素の強い,「意図的である」との融合であると判断した。
著者
鈴木 正文
出版者
文化学園大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02868059)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.65-72, 1990-01

この研究は, 暈繝彩色が, 装飾位の豊かな桃山時代において新たな発展を見せた彫刻や絵画と, どのような係わりをもちながら受け継がれていったのかを, 建築装飾を主軸として調べた。鎌倉時代以前の建築装飾としての彩色は, 暈繝がその比重の多くを占めていたが, 室町時代の絵画的要素の混在した時期を経て桃山時代に至ると, 霊廟や神社の豊かな装飾彫刻は, モティーフの多様化と同時に絵画的要素を立体化させた。その彩色は纂股が示す様に, 金を多用した濃絵風の彩色が主体となり, 暈繝はこれらの彫刻の周囲を飾る額縁的な役割を果たす様になる。しかし, 立体化された様々なモティーフのうち, 雲は暈繝彩色され, 当時の金碧障壁画の金雲のように, 各モティーフを繋ぐ構成上重要な役割を果たしていることがわかる。一方, 西洋との交易により数多く描かれた南蛮屏風や, 漢画の影響を強く受けた障壁画のなかには,中華風の建物の瓦の表現に暈繝彩色を用いることにより異国情緒滋れるものに仕上げているものがある。当時の人々の異国的イメージと, 暈繝彩色の大陸的手法との結び付きに輿味がもたれる。
著者
小山 真理
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 = Journal of Bunka Gakuen University and Bunka Gakuen Junior College (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.69-79, 2017-01

筆者は2016年度より文化学園大学短期大学部において、初めて「文章表現演習」を担当した。これまで留学生を対象とした「日本語」の授業を主に担当してきたため、日本人学生のみの授業はほとんどなく、誤用も留学生とは違うことに気づいた。そこで本稿では、その誤用を洗い出し、日本人短大生の文章表現に関する諸問題を整理して概観した。誤用では「話し言葉」が最も多く、[話すように書く」傾向がはっきりと現れた。それ以外にも、読点が少ないこと、漢字表記や語彙の選択ミスなども目立ち、漢字力や語彙力の不足が明らかになった。しかし、学生へのアンケート調査では、漢字テストを必要だと感じておらず、危機意識が希薄であることがわかった。また、本授業では、学生が作文嫌いにならぬよう、自己理解・他者理解を織り交ぜた教材を作成し、添削を操り返してきた。アンケートでは、全体の9割弱が楽しんで受講でき、全員が少しでも上達したと答え、当初の目的は達成できた。だが、陥りやすい誤用をどう是正するか、語彙力をどうつけさせるかなど課題は多い。今回得た分析結果や問題点を、今後の授業計画・教材開発、指導の一助としたい。
著者
深沢 祥代
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 服装学・造形学研究 (ISSN:13461869)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.95-108, 2009-01

現在,ファッションは人々の生活の中に根づき,短期間で変化する流行と共に,常に新しさが求められるものであり,一つのビジネスとしても確立されている。今日,世界のファッション・ビジネスが大きく発展している背景には,これまで数多くの歴史を築き上げてきたパリ・モードが深く関係している。それは,華々しくファッションが登場した17 世紀以降のフランスの絵画や, 芸術分野からも見て取れる。さらに, 19 世紀のパリでは, 国の主要な産業となっていた仕立業や手工業が目覚ましい発展を遂げ,モードの中心として確立された。この時代には,これまでのオートクチュール産業の他に,既製服産業が登場し,職人の技術向上を目的とした教育の重要性も高まる。そして,モード産業がパリの主要な産業として位置づけられていく中で,多くのデザイナーが登場し,彼らの功績もまた,今日に通じる偉業となっている。また,多様化する現代において,ファッションはアクセサリーや香水など広範囲に及び,それらはモード産業の主力的な部門になっていることから,現状について論述していく。
著者
吉田 昭子
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.21-33, 2015-01-31

本研究では,公共図書館における図書館員のためのレファレンス研修における,レファレンス事例の活用,評価の実践についてとりあげる。本研究の目的は,図書館の現場で実現可能で効果的な研修方法を検討し,現場の図書館員によるレファレンス事例評価の観点とは何かを整理することである。筆者が,図書館員向けのレファレンス研修で行った国立国会図書館のレファレンス協同データベースの事例を活用した事例検討会について述べる。事例検討会では,グループ学習とプレゼンテーションを組み合わせた研修方法を用いた。実践を通じて,図書館員のレファレンス能力の向上を図る上で,レファレンス事例を活用して事例評価の観点を考察することが,効果的であることを確認することができた。
著者
中尾 七重
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 服装学・造形学研究 (ISSN:13461869)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.39-49, 2011-01

歴史的建造物の建築年代はこれまで建築史研究において様式編年の手法を用いて調べられてきた。重要文化財等の文化財指定においても建築物の歴史的評価においても建築年代は重要な建築情報である。編年法は優れた方法であるが,編年の最初の時期設定や調査遺構数が少ない場合などの弱点も存在する。絶対年代によって相対年代法である編年を補う方法として,年輪年代法と放射性炭素年代測定法の紹介を行う。そして放射性炭素年代測定法の原理(<14>^の生成と壊変,生命体の<14>^C取り込み),高精度化をもたらしたAMS(Accelerator Mass Spectrometry)法,暦年較正法と暦年較正曲線(IntCal),ウィグルマッチ法(wiggle-matching)について解説する。放射性炭素年代測定法を建築史研究において使いこなすために,測定対象の選定,測定部再の選定と試料採取の方法,解析グラフの見方を説明し,放射性炭素年代測定法が建築史研究に益する研究方法であることを述べる。
著者
加藤 薫
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-13, 2012-01

日本語にあっては「文」の成立に占める「主語・目的語」のウェイトが英語等にくらべると軽い(省略,自動詞表現への傾斜,二重主語構文,ウナギ文等の存在)。日本語は,「主体」と「客体」を設定して「文」を組み立てようとする志向が希薄であると言える。いっぽうで,日本語には,敬語,多様な人称表現,授受益を表わす補助動詞,授受動詞「あげる・くれる」の使い分け,終助詞,あいづち等の,英語等においては存在しないか存在はしても日本語におけるよりずっと存在感の薄い表現が認められ,「文」の成立上重要な位置を占めている。これらの表現は,いずれも話者本人すなわち「自分」と「相手」との関係性をめぐるものである。 日英両言語の違いはウェイトの置かれる側面の違いとして理解できる。そして,構文上のウェイトの置かれ方の違いから見えてくるのは,世界を成り立たせるもの(「主体」)の設定・表現に拘りを見せる分析的な志向を持つ英語に対して,「自分」と関係を取り結ぶ「相手」との関係性の表現に拘りを見せる相手志向性を強く持つ日本語の姿である。なお,今回焦点を当てた日本語の姿と日本文化論で指摘されてきた「恥の文化」等の日本人の姿との関連については今後の課題としたい。
著者
本多 吉彦 鈴木 邦成
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.57-66, 2006-01

本稿ではハワイにおけるピジン英語を分析,考察することによって外国語としての英語を学習する最善の方策を探っていくことを視野に入れ,まず標準英語の変種であるピジン英語全般の特徴を中心に分析し,ついでハワイの入植者,現地人が習得したピジン英語のスピーチ形態やその音韻規則,イントネーションにおける標準米語との相違について考察していく。さらに,日本人の話す英語とハワイのピジン英語の共通点について考察し,外国語としての英語学習者の課題を整理していくこととする。なお本稿の続きとなる『ハワイにおけるピジン英語の発達に診る日本語教育の可能性(III)』では,ハワイにおける英語学習の歴史と文法を踏まえて,日本人の英語学習者にとっての最適な英語学習法を詳細に考察していくこととする。
著者
三島 万里
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-18, 2009-01

本稿は企業広報誌の企業広報上の機能を考察することを目的とし,日本の代表的企業広報誌の事例分析を行う研究1)の一環として,東京電力株式会社(1951年設立,以下東京電力)の需要家向け広報誌『東電グラフ』と継続誌『グラフTEPCO』の事例分析研究から,その企業広報上の役割機能を考察しようとするものである。
著者
大石 さおり 北方 晴子
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学紀要. 服装学・造形学研究 (ISSN:13461869)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.63-73, 2013-01

本稿では、現代日本における男性役割観について、次の2点を目的として調査を行った。(1)現代日本社会における男性役割観を測定する尺度の作成、(2)男性役割観についての考えが性別や年代によって異なるのかについての検討、である。予備調査で収集した186の特性が現代男性にとって重要な程度について、関東1都3県在住の男女419名(10〜50代)の回答を対象として分析を行った。(1)尺度の作成については、最終的に55項目からなる尺度を作成した。尺度の因子構造は、5因子とすることが妥当であった。第1因子より"社会的望ましさ"、"見た目のよさ"、"個性"、"豪快さ"、"精神的強さ"と命名し、これらを現代日本における男らしさ測定尺度の下位概念とした。(2)については、現代の男らしさの概念には、性別によって考え方が異なる下位概念と年代によって考え方が異なる下位概念が含まれていることが明らかとなった。具体的には、女性は男性より、男性に対し社会的望ましさや豪快さを求めている傾向がみられた。一方で、10代の男女は男性により外見的なよさや個性を重要視しているということがわかった。
著者
斎藤 嘉代
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 服装学・造形学研究 (ISSN:13461869)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.1-7, 2007-01

たて・よこ方向に伸びるツーウェイ・ニットのなかでもツーウェイトリコット地の縫製について興味深いデータが出現したので報告する。通常この布地は,競泳用水着やレオタードなどの身体に密着した衣料用として使用される。高機能を持った布地は繊維メーカーとスポーツメーカーの共同開発により一般市場に流通しない布地も多い。また,縫製も難しく特殊ミシンでなければ制作できないイメージがありスポーツメーカーの独壇場といった観がある。しかし今回の縫合実験から,家庭用のミシンでの縫製が充分可能なことが分かった。縫い目として使用した直線ミシン地縫い(JIS ステッチ形式301)重ね縫い(301)3 針ジグザグ縫い(321)小型ロック3 本糸ミシン(505)で布目を変え縫合し縫い目に対する方向別引っ張り強伸度を測定し,縫い目の抵抗値を求めた。結果,縫い目方向と引っ張る方向が一致し平行になると抵抗が最大になり糸切れの危険がある。しかし,それ以外の方向では,縫い目に対する抵抗は低く伸びる縫い方をした場合と大差がなくデザインの可能が示唆された。
著者
豊田 かおり
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:21871124)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.101-114, 2014-01-31

大正末期から昭和初期にかけて,日本は近代化が進展し,西欧の文化や思想が一般に浸透しはじめた。第一次世界大戦後,女性の進学や就職の増加に伴い,上流階級ばかりではなく,一般の女性たちがシンプルで機能的な洋服を着用しはじめ,西欧のファッションが同時代的に取り入られていくようになった。さらに1923(大正12)年の関東大震災を契機に合理的・近代化の象徴である洋服の着用がメディアによってさらに促進された。女性たちは長い黒髪を切り,洋服を着こなし,「モダンガール(通称モガ)」と呼ばれるようになった。しかし,さまざまな分野で注目を浴びたモダンガールは,東京人のパーセンテージにすれば,ごくわずかであった。やがてモダンガールには「毛断」ガールという蔑称までつき,その自由で活発な行動が非難されはじめた。本研究では,「モダンガール」が文学作品においてどのように描かれていたか見ていくべく,龍胆寺雄の『放浪時代』,広津和郎の『女給』を取り上げた。
著者
安江 伸夫
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.97-111, 2018-01-31

中国国内の権力闘争と、日中関係の悪化とが関係しているように見えることがある。2012 年9 月に日本が尖閣諸島を国有化したとき、反発が暴動や閣僚交流の停止にまで拡大した。共産党大会の直前だった。東京都の尖閣諸島購入から国有化に至る、その同じ頃、中国では4 人の有力政治家が権力闘争で敗れた。そして新政権の下、4人が逮捕などでとどめを刺される同じタイミングで、なぜか日中関係は改善した。では日中関係の悪化の方も、権力闘争と関係していたのではないか。同様に中国の政局と対日政策との一致は、国交正常化以来度々見られた。1979 年に日中平和友好条約締結の陰で起きた尖閣諸島での漁船団の侵入事件、1992 年の天皇訪中の前後に起きた尖閣諸島領有の法律制定や核実験、2006 年に小泉から安倍への政権交代と同時に上海市トップが失脚し日中関係が改善したこと、2010 年に副主席だった習近平が胡錦涛後継に内定した、会議開催の裏で起きた反日暴動などだ。対日政策に影響を与える要素には、領土や歴史という明確な理由以外に、政権の主導権争いや、米中・日中の力関係、経済的利益、中国の世論の動きなども挙げられるようだ。これら法則の整理を試みた。
著者
菊田 琢也
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学紀要. 服装学・造形学研究 (ISSN:21873372)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.37-45, 2014-01-31

現代社会において、「自分らしさ」の表示や自己形成は無数に存在する商品をいかに取捨選択するかといった消費行動と大きく関係している。アンジェラ・マクロビーらは、少女たちが自分の部屋や身体といった私的領域を雑多なアイテムによって装飾することを通じて独自の文化を形成していく様子について言及しているが、その際に注目されたものの1 つが「雑貨」である。購入しやすく、所有しやすいという特徴を持つ雑貨は、「自分らしさ」を表現する上で容易に選択することができる消費対象として位置付けられる。本稿は、雑誌『オリーブ』における雑貨の取り上げられ方を考察することで、少女たちの自己形成と消費行動との関係について論じたものである。誌面のなかで「おしゃれ小物(おしゃれ生活小物)」として取り上げられる雑貨は、『オリーブ』が80 年代に「リセエンヌ」なる少女像を通して積極的に提案していた「チープ・シック」というスタイルを象徴するものとして位置付けられていた。そしてそれは、『オリーブ』の主要な読者層である中高生の女子という経済的に自立する前段階の「少女」という状況下と結びついた価値の創出でもあったのだ。
著者
高木 陽子 成実 弘至 西谷 真理子 堀 元彰
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 服装学・造形学研究 (ISSN:13461869)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.35-46, 2010-01

服飾文化共同研究拠点「現代日本ファッション・デザインの研究」グループは,研究方法の一つとして,ファッション・システムを変貌させた新興地域,東京とアントワープを比較した。「6+ アントワープ・ファッション」(東京オペラシティアートギャラリー,2009年4月11日-6月28日)の図録を制作するとともに,オープニング・トーク「アントワープを語る」を4月11日に開催した。ゲストに,「アントワープの6人」のプロモーターであったヒェールト・ブリュロート,アントワープ王立美術アカデミーで学んだ日本人デザイナー坂部三樹郎,中章,中里唯馬,ジャーナリスト平山景子,バイヤー栗野宏文を招き,アントワープ・ファッションを日本から検証するシンポジウムとなった。(当日の記録は,http://www.operacity.jp/ag/exh105/j/talk.html)結果,デビュー前の「アントワープの6人」とマルタン・マルジェラが,日本訪問によってクリエイションとビジネス両面のインパクトを受けていた事実,日本人学生が体験した王立美術アカデミーの教育の実態,そして日本におけるアントワープ・ファッションの受容の詳細が明らかになった。
著者
中沢 志保
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.35-55, 2012-01-31

本稿は,20世紀前半期のアメリカにおいて主要な対外政策の立案と決定に関与したヘンリー・スティムソン(Henry L. Stimson)を引き続き考察するものである。本稿では,ファシズムの台頭を背景にアメリカが第二次世界大戦に参戦していく過程と,ローズヴェルト(Franklin D.Roosevelt)政権下の陸軍長官に就任し,戦争計画において中心的な役割を果たしたスティムソンの思想と行動に焦点を合わせる。具体的には,1930年代から明確に示された枢軸国への警告,連合国側への軍事援助を参戦前から可能にした武器貸与法(the Lend-Lease Act)の成立と運用,対独戦における主要な戦略と評価される第二戦線の形成などの内容を振り返り,それぞれにおいてスティムソンが果たした役割を検証する。第二次世界大戦の後半期から重要課題として浮上してくる原爆の開発と投下決定,核の国際管理,戦後処理,対ソ連外交などの問題に関しては次の研究課題としたい。
著者
北方 晴子 大石 さおり
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学紀要. 服装学・造形学研究 (ISSN:21873372)
巻号頁・発行日
no.44, pp.63-73, 2013-01-31

本稿では、現代日本における男性役割観について、次の2点を目的として調査を行った。①現代日本社会における男性役割観を測定する尺度の作成、②男性役割観についての考えが性別や年代によって異なるのかについての検討、である。予備調査で収集した186の特性が現代男性にとって重要な程度について、関東1都3県在住の男女419名(10~50代)の回答を対象として分析を行った。①尺度の作成については、最終的に55項目からなる尺度を作成した。尺度の因子構造は、5因子とすることが妥当であった。第1因子より“社会的望ましさ”、“見た目のよさ”、“個性”、“豪快さ”、“精神的強さ”と命名し、これらを現代日本における男らしさ測定尺度の下位概念とした。②については、現代の男らしさの概念には、性別によって考え方が異なる下位概念と年代によって考え方が異なる下位概念が含まれていることが明らかとなった。具体的には、女性は男性より、男性に対し社会的望ましさや豪快さを求めている傾向がみられた。一方で、10代の男女は男性により外見的なよさや個性を重要視しているということがわかった。
著者
田中 里尚
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学紀要 (ISSN:21873372)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.69-82, 2016-01-31

戦中・戦後期におけるアメリカ文化受容の様相について、服飾雑誌『装苑』という史料を軸にして、その表象の変容を追った。1936 年創刊の『装苑』は、太平洋戦争が始まるまでの間、アメリカの服飾流行を好ましく思い、その「合理性」や「経済性」について、パリ・モードよりも高く評価していた。戦争が泥沼化する中でアメリカの服飾流行は否定されていくが、論者の中には一定の評価を与えるものもあった。戦後において、『装苑』は、論説内においてはアメリカ服飾流行に対して一定の距離を置くが、グラビア表現はアメリカンスタイルそのものであり、論説と画像の方向が乖離していた。1949 年ごろから、それらの乖離を埋める努力が始まったが、洋裁教育自体がパリを向きつつあったため、アメリカ服飾流行の意味づけで議論となった。1952 年には、「アメリカンスタイル論争」が開始され、アメリカ服飾流行への批判が強まった。その結果、アメリカ服飾流行は若者向きで、物質的な力を背景とした既製服製造に最も適合したスタイルとしてのみ描かれるようになった。したがって、日本の戦後において、アメリカ衣料が若者・既製服向けとされるに至った経緯は、服飾雑誌における表象の推移にも見て取ることができよう。